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王宮内乱編
第4話 一杯の紅茶とメッセージ
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ある日の午後、私はいつものように自室でアフタヌーンティーをして一息ついていた。
手慣れた手つきでリアが給仕をしていると、執事の身なりをした見慣れないご年配の方がそっと部屋に入ってきた。
「執事長っ!」
リアが驚いた声をあげてその執事の元へと向かう。
「本日はわたくしが王妃様の命で紅茶の準備をしにまいりました」
「……王妃様のご命令ですか」
そんなことは聞いていないといった様子でリアは顔をしかめながら執事長とやり取りをする。
「はい、聖女様に極上の一杯を召し上がってほしいと」
「わかりました、お願いします」
リアはしぶしぶ納得した様子で道を開けると、執事長という方が私のもとへと歩み寄ってくる。
(執事長? 初めて見る顔。それに聖女様? なんのことだ?)
そう考えているうちに執事長はメイドに背を向けながらソーサーの下に何か手紙を挟んできた。
(──? 手紙? 『あなたは第一王子を愛していますか? YESならため息をひとつ。NOならあくびをひとつ』? 第一王子……? まさか……)
この違和感には覚えがあった。
現王妃様側の人間は皆おそらく第一王子を「王太子」と呼んでいた。
つまり、エリク様を第一王子と呼んだということは元王妃様側の人間……。
私はそっと手を当てて一つあくびをした。
すると、さらに執事長は今度手紙を自分の身体の前で広げてそっと私に見せた。
(『王宮書庫室で明日お待ちしております』)
私はため息を一つ吐いてYESの合図をすると、満足そうに笑みを浮かべて執事長は去っていった。
明日は王妃様と第一王子が外出する日だった──
◇◆◇
翌日、私は何度かおこなっているようにリアの目を搔い潜って王宮書庫室に行くと、そこには書庫室長と昨日部屋に来た執事長、そしてユリウス様が立っていた。
「お待ちしておりました」
私はそこにいる者たちの瞳の奥に何か自分のまわりにいた者たちと違う雰囲気を感じた。
「リーディア、あなたはもしや何かの術にかけられていましたか?」
「──っ!」
「ここにいる者たちは皆私の近しい者。王妃に告げ口するような人間ではありません」
ユリウス様は、私を安心させるようにそう言った。
(本当に彼を信じていいの?)
不安そうな顔を自然と浮かべてしまったのか、ユリウス様は胸の前に手を当てて丁寧に頭を下げながら名乗った。
「改めて、私はこの国の第二王子ユリウス・リ・スタリーです。あなたがこの書庫室で調べていた内容の通り、今は亡き元王妃の息子です」
やはり、彼は元王妃の息子で間違いない。
いや、でもそれだけで信じるわけにもいかない。
どうする?
そんな私の考えを見抜いてか、ユリウス様は胸の内を語り始める。
「私はあなたを助けたい。まずは話を聞いてから信頼に足る情報か聞いてほしい」
そう言うと、ユリウス様は王妃や元王妃、そして自分自身の立場を語り出した。
──30年前、元王妃は王の元に嫁いで来たが、一向に子宝に恵まれずに苦肉の策で王は第二王妃を娶った。
その第二王妃が現王妃だった。
現王妃はすぐに子宝に恵まれ、エリク様を出産した。
やがて、エリク様に第一王位継承権が与えられる直前に元王妃は子宝を授かって王子を生んだ。
それが第二王子のユリウス様だった。
しかし、元王妃はそのまま病で亡くなり、王は憔悴して同じく床に臥せてしまった。
王がいなくなった王宮を支配したのが、現王妃だった。
現王妃は自ら王に正妃の座を迫って実権を握り、元王妃の代の宰相や騎士団長、メイドらを辺境の地へと追いやって自らの息のかかった者たちばかりを王宮に入れた。
(私が王宮書庫室で調べた内容と同じ、食い違いはない)
「そして、今度は第一王子を次期国王とするために聖女を婚約者とした。それがあなたです」
「──っ!」
「調べられたかもしれませんが、この国は元々聖女の力で繁栄した国でした。聖女は他の世界からの人間だったと過去の文献にあったのを王妃は見たのでしょう。私の調べでは王宮魔術師の手を借りてあなたを召喚したことまで把握できています」
(やはり、私は聖女として利用されるためにこの世界にやって来た。そして、昨日執事長の言っていた『聖女』はこのことか)
「そして、王妃は私欲のためにあなたの記憶を改ざんして第一王子の婚約者だと嘘をついて王宮の一角に住まわせた」
そこまで聞き、なんとなく自分の立場と今までの王妃の言動やエリク様の動き、周りの見張るような視線に納得がいった。
ふっと息を吐いて私は自分の出した『答え』を信じることにした。
「私は第一王子の婚約者として過ごしてきました」
その言葉にユリウスは目を逸らさずに私を見つめて聞く。
「しかし、同時に別の世界で生きていた本当の18年間の記憶もあります」
「──っ!」
私はユリウスを真っすぐに見つめ、18年間の現代の記憶とここで過ごした1年の記憶を語り始める。
その日からユリウス様と私の共闘生活が始まった──
*********************************
【ちょっと一言コーナー】
執事長が出した極上の一杯は第二王子ユリウスの好きなダージリンティーでした。
あまり紅茶は飲まなかったゆりえちゃんですが、これ以降紅茶が好きになったとか・・・
【次回予告】
王子ユリウスとの共闘生活が始まる中、ユリエはエリクも共犯者なのかの調べに入る。
エリクとの一年の婚約生活とは。。。
次回、『第5話 疑いの目と王宮』
手慣れた手つきでリアが給仕をしていると、執事の身なりをした見慣れないご年配の方がそっと部屋に入ってきた。
「執事長っ!」
リアが驚いた声をあげてその執事の元へと向かう。
「本日はわたくしが王妃様の命で紅茶の準備をしにまいりました」
「……王妃様のご命令ですか」
そんなことは聞いていないといった様子でリアは顔をしかめながら執事長とやり取りをする。
「はい、聖女様に極上の一杯を召し上がってほしいと」
「わかりました、お願いします」
リアはしぶしぶ納得した様子で道を開けると、執事長という方が私のもとへと歩み寄ってくる。
(執事長? 初めて見る顔。それに聖女様? なんのことだ?)
そう考えているうちに執事長はメイドに背を向けながらソーサーの下に何か手紙を挟んできた。
(──? 手紙? 『あなたは第一王子を愛していますか? YESならため息をひとつ。NOならあくびをひとつ』? 第一王子……? まさか……)
この違和感には覚えがあった。
現王妃様側の人間は皆おそらく第一王子を「王太子」と呼んでいた。
つまり、エリク様を第一王子と呼んだということは元王妃様側の人間……。
私はそっと手を当てて一つあくびをした。
すると、さらに執事長は今度手紙を自分の身体の前で広げてそっと私に見せた。
(『王宮書庫室で明日お待ちしております』)
私はため息を一つ吐いてYESの合図をすると、満足そうに笑みを浮かべて執事長は去っていった。
明日は王妃様と第一王子が外出する日だった──
◇◆◇
翌日、私は何度かおこなっているようにリアの目を搔い潜って王宮書庫室に行くと、そこには書庫室長と昨日部屋に来た執事長、そしてユリウス様が立っていた。
「お待ちしておりました」
私はそこにいる者たちの瞳の奥に何か自分のまわりにいた者たちと違う雰囲気を感じた。
「リーディア、あなたはもしや何かの術にかけられていましたか?」
「──っ!」
「ここにいる者たちは皆私の近しい者。王妃に告げ口するような人間ではありません」
ユリウス様は、私を安心させるようにそう言った。
(本当に彼を信じていいの?)
不安そうな顔を自然と浮かべてしまったのか、ユリウス様は胸の前に手を当てて丁寧に頭を下げながら名乗った。
「改めて、私はこの国の第二王子ユリウス・リ・スタリーです。あなたがこの書庫室で調べていた内容の通り、今は亡き元王妃の息子です」
やはり、彼は元王妃の息子で間違いない。
いや、でもそれだけで信じるわけにもいかない。
どうする?
そんな私の考えを見抜いてか、ユリウス様は胸の内を語り始める。
「私はあなたを助けたい。まずは話を聞いてから信頼に足る情報か聞いてほしい」
そう言うと、ユリウス様は王妃や元王妃、そして自分自身の立場を語り出した。
──30年前、元王妃は王の元に嫁いで来たが、一向に子宝に恵まれずに苦肉の策で王は第二王妃を娶った。
その第二王妃が現王妃だった。
現王妃はすぐに子宝に恵まれ、エリク様を出産した。
やがて、エリク様に第一王位継承権が与えられる直前に元王妃は子宝を授かって王子を生んだ。
それが第二王子のユリウス様だった。
しかし、元王妃はそのまま病で亡くなり、王は憔悴して同じく床に臥せてしまった。
王がいなくなった王宮を支配したのが、現王妃だった。
現王妃は自ら王に正妃の座を迫って実権を握り、元王妃の代の宰相や騎士団長、メイドらを辺境の地へと追いやって自らの息のかかった者たちばかりを王宮に入れた。
(私が王宮書庫室で調べた内容と同じ、食い違いはない)
「そして、今度は第一王子を次期国王とするために聖女を婚約者とした。それがあなたです」
「──っ!」
「調べられたかもしれませんが、この国は元々聖女の力で繁栄した国でした。聖女は他の世界からの人間だったと過去の文献にあったのを王妃は見たのでしょう。私の調べでは王宮魔術師の手を借りてあなたを召喚したことまで把握できています」
(やはり、私は聖女として利用されるためにこの世界にやって来た。そして、昨日執事長の言っていた『聖女』はこのことか)
「そして、王妃は私欲のためにあなたの記憶を改ざんして第一王子の婚約者だと嘘をついて王宮の一角に住まわせた」
そこまで聞き、なんとなく自分の立場と今までの王妃の言動やエリク様の動き、周りの見張るような視線に納得がいった。
ふっと息を吐いて私は自分の出した『答え』を信じることにした。
「私は第一王子の婚約者として過ごしてきました」
その言葉にユリウスは目を逸らさずに私を見つめて聞く。
「しかし、同時に別の世界で生きていた本当の18年間の記憶もあります」
「──っ!」
私はユリウスを真っすぐに見つめ、18年間の現代の記憶とここで過ごした1年の記憶を語り始める。
その日からユリウス様と私の共闘生活が始まった──
*********************************
【ちょっと一言コーナー】
執事長が出した極上の一杯は第二王子ユリウスの好きなダージリンティーでした。
あまり紅茶は飲まなかったゆりえちゃんですが、これ以降紅茶が好きになったとか・・・
【次回予告】
王子ユリウスとの共闘生活が始まる中、ユリエはエリクも共犯者なのかの調べに入る。
エリクとの一年の婚約生活とは。。。
次回、『第5話 疑いの目と王宮』
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