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故郷帰還編
第27話 揺れる心と、決意(2)
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心の迷いが少しあった後、やっぱり母が心配な気持ちが膨らんできていた。
今までなんとか考えないようにしていた母への会いたい気持ちも同時にどんどん大きくなる。
そんな気持ちを見透かしたようにユリウス様は、私を見てにこりと微笑んだ。
そうして私の背中を押すように一つ頷く。
「ユリウス様、私……」
「ああ、それでいいと思う。君は元の世界に戻るのがいい」
私を心配してくれるその言葉に、私は心がすっと軽くなる。
一人じゃないことを感じて、今まで誰にも言えなかったことを少しずつ話し始めた。
「母が、あまり体調が良くなかったんです」
「──っ!」
「この世界にくる数日前も体調がよくなく……。元々身体が強くなかったようですが、最近はよく体調を崩していました」
「ユリエ、それは……」
ユリウス様は私に帰ったほうがいいと言っているのだと、その声色だけでもわかる。
そうだ、やっぱり母が心配だ。
私はようやく彼の目を見た。
「私はユリウス様が好きです。それでも、母も好きで……」
泣くつもりはなかったのに、心配な気持ちと今まで抑えていた不安が混じって雫として流れ落ちる。
まるで母に会いたくてたまらない子供のように泣いて、そうして私はそっと抱きしめられた。
背中をポンポンとあやしてくれる彼は、なんだか母の手のように優しく、そして愛しさが込められている。
「ああ……ふえ……ユリウス、さ……ま……母に……母に……!」
「会いに行くといい。この世界に戻ることも全て忘れて、まずは帰ってお母上に会っておいで」
「でも、でも……」
私を慰めながらそっと身体を離すと、私の頬に手を添える。
そうしてその手は頭の上に移動して、壊れ物を扱うほどに優しく、優しくなでた。
「大丈夫、私はいつでもユリエの心にいる。傍にいるから」
「ユリウス様……」
寂しい思いを感じていた私に安心させるように笑顔を見せてくれる。
彼の傍から離れたくないほど、もう私は彼が好きでたまらない。
だけど……。
「ユリウス様、私は……行きます」
「ああ」
私は戻りたい。
元の世界に、そして母の元に──
手に持っていた小瓶の蓋を開けて、じっと見つめる。
これを飲めば元の世界に戻ることができる。
もう一度ユリウス様に視線を移して一つ頷いたあと、私はそれを一気に飲み干した──
──何も感じなかった。
痛みも苦しみもなく、目を開けたその時にはユリウス様は目の前にいなくて、私は一人で外に立っていた。
手には卒業証書が抱えられていて、右肩には三年間共に過ごした学生バッグの重みを感じる。
自分の胸元に目を移すと、赤いリボンが結ばれていて、その下に視線を移すとグレーの短いスカートがあった。
風が少しだけ強めで、私の髪をさらっていく。
ああ、あの日、あの場所に戻ってきたのだと、理解して涙が頬を伝う。
周りから見れば卒業に浸っている学生に見えるだろう。
数年ぶりのように思えるこの景色と空気は私を一気にあの日へ戻した。
そうして私は振り返って駆けだした──
神社を超えて住宅街を抜けた先にある河川敷。
よくここで自転車で遊んだな……。
そんな風に少しだけ思いながら、急いで家に戻る。
「はあ……はあ……」
息は切れているけれど、それでもやっぱりこの学生靴は走りやすい。
ふふ、ヒールはやっぱり私には早かったのかしら。
そんな風に思っていると、小さな集合住宅が見えてきた。
「はあ……はあ……はあ……」
私は息を整えてその扉を見つめる。
「帰ってきた……」
私は嬉しさと懐かしさで喉の奥がつんとしてくる。
心を落ち着かせて一歩踏み出したその時、家の玄関が開いた。
中からは私のずっと会いたかった人がきょとんとしてこちらを見ている。
母は確か、私の卒業式を見た後で先に帰ると話していた。
「お母さん……」
「卒業おめでとう、友里恵。おかえりなさい」
母も私の涙をきっと思い出に浸っているそれだと思っているだろう。
だけど、だけど……たまらなく溢れてくる感情。
「ただいま」
そう言って私は母の元へと近づいていった──
******************************
【ちょっと一言コーナー】
お母さんに会えました。
ずっとずっと会いたかったお母さんに。
【次回予告】
無事に戻ってきた友里恵は、母との再会を喜ぶ。
そうして母との楽しい時間を過ごすうちに、彼の事を思い出して。
次回、『平和で懐かしい日常』。
今までなんとか考えないようにしていた母への会いたい気持ちも同時にどんどん大きくなる。
そんな気持ちを見透かしたようにユリウス様は、私を見てにこりと微笑んだ。
そうして私の背中を押すように一つ頷く。
「ユリウス様、私……」
「ああ、それでいいと思う。君は元の世界に戻るのがいい」
私を心配してくれるその言葉に、私は心がすっと軽くなる。
一人じゃないことを感じて、今まで誰にも言えなかったことを少しずつ話し始めた。
「母が、あまり体調が良くなかったんです」
「──っ!」
「この世界にくる数日前も体調がよくなく……。元々身体が強くなかったようですが、最近はよく体調を崩していました」
「ユリエ、それは……」
ユリウス様は私に帰ったほうがいいと言っているのだと、その声色だけでもわかる。
そうだ、やっぱり母が心配だ。
私はようやく彼の目を見た。
「私はユリウス様が好きです。それでも、母も好きで……」
泣くつもりはなかったのに、心配な気持ちと今まで抑えていた不安が混じって雫として流れ落ちる。
まるで母に会いたくてたまらない子供のように泣いて、そうして私はそっと抱きしめられた。
背中をポンポンとあやしてくれる彼は、なんだか母の手のように優しく、そして愛しさが込められている。
「ああ……ふえ……ユリウス、さ……ま……母に……母に……!」
「会いに行くといい。この世界に戻ることも全て忘れて、まずは帰ってお母上に会っておいで」
「でも、でも……」
私を慰めながらそっと身体を離すと、私の頬に手を添える。
そうしてその手は頭の上に移動して、壊れ物を扱うほどに優しく、優しくなでた。
「大丈夫、私はいつでもユリエの心にいる。傍にいるから」
「ユリウス様……」
寂しい思いを感じていた私に安心させるように笑顔を見せてくれる。
彼の傍から離れたくないほど、もう私は彼が好きでたまらない。
だけど……。
「ユリウス様、私は……行きます」
「ああ」
私は戻りたい。
元の世界に、そして母の元に──
手に持っていた小瓶の蓋を開けて、じっと見つめる。
これを飲めば元の世界に戻ることができる。
もう一度ユリウス様に視線を移して一つ頷いたあと、私はそれを一気に飲み干した──
──何も感じなかった。
痛みも苦しみもなく、目を開けたその時にはユリウス様は目の前にいなくて、私は一人で外に立っていた。
手には卒業証書が抱えられていて、右肩には三年間共に過ごした学生バッグの重みを感じる。
自分の胸元に目を移すと、赤いリボンが結ばれていて、その下に視線を移すとグレーの短いスカートがあった。
風が少しだけ強めで、私の髪をさらっていく。
ああ、あの日、あの場所に戻ってきたのだと、理解して涙が頬を伝う。
周りから見れば卒業に浸っている学生に見えるだろう。
数年ぶりのように思えるこの景色と空気は私を一気にあの日へ戻した。
そうして私は振り返って駆けだした──
神社を超えて住宅街を抜けた先にある河川敷。
よくここで自転車で遊んだな……。
そんな風に少しだけ思いながら、急いで家に戻る。
「はあ……はあ……」
息は切れているけれど、それでもやっぱりこの学生靴は走りやすい。
ふふ、ヒールはやっぱり私には早かったのかしら。
そんな風に思っていると、小さな集合住宅が見えてきた。
「はあ……はあ……はあ……」
私は息を整えてその扉を見つめる。
「帰ってきた……」
私は嬉しさと懐かしさで喉の奥がつんとしてくる。
心を落ち着かせて一歩踏み出したその時、家の玄関が開いた。
中からは私のずっと会いたかった人がきょとんとしてこちらを見ている。
母は確か、私の卒業式を見た後で先に帰ると話していた。
「お母さん……」
「卒業おめでとう、友里恵。おかえりなさい」
母も私の涙をきっと思い出に浸っているそれだと思っているだろう。
だけど、だけど……たまらなく溢れてくる感情。
「ただいま」
そう言って私は母の元へと近づいていった──
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【ちょっと一言コーナー】
お母さんに会えました。
ずっとずっと会いたかったお母さんに。
【次回予告】
無事に戻ってきた友里恵は、母との再会を喜ぶ。
そうして母との楽しい時間を過ごすうちに、彼の事を思い出して。
次回、『平和で懐かしい日常』。
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