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第11話 わがままと嫉妬が招く不協和音~SIDEゼシフィード&ロラ
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「ああ、もういい加減にしてくれ!」
「そんな言い方はないんじゃないですの?!」
そんな怒号が王宮内の一室で響き渡っている。
原因は至極簡単であった──
「毎日毎日、執務室に来て、お前は私の仕事の邪魔をしたいのか!」
「そんなわけ……! あなたが心配で……」
「ああ~エリーヌはそんなわがままじゃなかった」
その言葉がロラの怒りを買った。
真っ赤なルージュを引いた唇は血が出そうなほど噛みしめられ、右手は強く握り締められている。
目をぴくぴくとさせながら彼をにらむと、机に自分の手をドンと叩きつけた。
「──っ!!」
さすがのゼシフィードも驚いたのか、一気に彼女のほうへと視線を向けざるを得ない。
「エリーヌエリーヌエリーヌっ!!! みんなエリーヌばかりじゃないっ!!!!」
ロラはそのブロンドの長い髪を振り乱しながら机にある書類を床に叩きつけていく。
その狂気の沙汰にゼシフィードもやめろと叫ぶが、彼女の耳には届いていない。
彼女の嫉妬深さは異常なほどであった──
ゼシフィードの婚約者の座を奪い取った後は、彼にべったりとくっつき、女性を牽制する。
部下の女性や仕事関係の人間、通りかかる令嬢にすら色目を使ったと騒ぎ立てては第一王子の婚約者という立場を利用して処罰を命じた。
もちろん、ロラにそのような権限はないのだが、その当時はゼシフィードも彼女にベタ惚れで彼女のわがままを全て聞いていた。
しかし、最近はあまりの嫉妬深さゆえに窮屈さを感じて、うっとおしくなってしまっていた。
数週間と持たずにそのような関係になってしまった二人は、徐々に言い争いが絶えなくなり、ついにロラが執務室で暴れるようになってしまった。
そうして、彼女にとって一番の地雷であった「彼女」の名をゼシフィードは口にしてしまった。
『エリーヌはそんなわがままじゃなかった』
全てはこの一言で崩れ落ちてしまった。
彼女にとって何よりの嫉妬の対象がエリーヌであり、歌姫であった彼女に敵わないことに腹を立てていた。
(なんで、なんでみんなエリーヌエリーヌって!! もっと私を見てよっ!! 私のほうがすごいのに!! 私の方がうまいのにどうして、どうして!!!!!)
激情した彼女は怒りに狂いながらも涙をためてゼシフィードの首根っこを掴む。
「ロラ、落ち着けっ!」
「ふざけないでよっ! いつまであんな女のことを想ってるのよ。知ってるのよ!? 大事にエリーヌのしていたブローチを持っていること」
「──っ!!」
引き出しを乱暴に開けてその中の小さな箱を取り出すと、開けて中にある真っ赤な石の入ったブローチを手に取る。
「やめろっ!!」
「こんなものがあるから、こんなエリーヌのものを大事に持っているから悪いのよっ!!」
そう言って彼女は勢いよく窓に向かってブローチを投げつけた。
大きな甲高い音を立てて割れた窓ガラスを通り抜けて勢いよく外に飛んでいく。
「なんてことをするんだっ!」
「きゃっ!!」
ゼシフィードはロラの頬をぶち、その衝撃で彼女は床に倒れる。
「──っ!!」
その瞬間、ゼシフィードはぎょっとした。
目の前で倒れた彼女が、ガラスの破片で傷つき、真っ赤な血で濡れた顔で見つめてきていたから──
「そんな言い方はないんじゃないですの?!」
そんな怒号が王宮内の一室で響き渡っている。
原因は至極簡単であった──
「毎日毎日、執務室に来て、お前は私の仕事の邪魔をしたいのか!」
「そんなわけ……! あなたが心配で……」
「ああ~エリーヌはそんなわがままじゃなかった」
その言葉がロラの怒りを買った。
真っ赤なルージュを引いた唇は血が出そうなほど噛みしめられ、右手は強く握り締められている。
目をぴくぴくとさせながら彼をにらむと、机に自分の手をドンと叩きつけた。
「──っ!!」
さすがのゼシフィードも驚いたのか、一気に彼女のほうへと視線を向けざるを得ない。
「エリーヌエリーヌエリーヌっ!!! みんなエリーヌばかりじゃないっ!!!!」
ロラはそのブロンドの長い髪を振り乱しながら机にある書類を床に叩きつけていく。
その狂気の沙汰にゼシフィードもやめろと叫ぶが、彼女の耳には届いていない。
彼女の嫉妬深さは異常なほどであった──
ゼシフィードの婚約者の座を奪い取った後は、彼にべったりとくっつき、女性を牽制する。
部下の女性や仕事関係の人間、通りかかる令嬢にすら色目を使ったと騒ぎ立てては第一王子の婚約者という立場を利用して処罰を命じた。
もちろん、ロラにそのような権限はないのだが、その当時はゼシフィードも彼女にベタ惚れで彼女のわがままを全て聞いていた。
しかし、最近はあまりの嫉妬深さゆえに窮屈さを感じて、うっとおしくなってしまっていた。
数週間と持たずにそのような関係になってしまった二人は、徐々に言い争いが絶えなくなり、ついにロラが執務室で暴れるようになってしまった。
そうして、彼女にとって一番の地雷であった「彼女」の名をゼシフィードは口にしてしまった。
『エリーヌはそんなわがままじゃなかった』
全てはこの一言で崩れ落ちてしまった。
彼女にとって何よりの嫉妬の対象がエリーヌであり、歌姫であった彼女に敵わないことに腹を立てていた。
(なんで、なんでみんなエリーヌエリーヌって!! もっと私を見てよっ!! 私のほうがすごいのに!! 私の方がうまいのにどうして、どうして!!!!!)
激情した彼女は怒りに狂いながらも涙をためてゼシフィードの首根っこを掴む。
「ロラ、落ち着けっ!」
「ふざけないでよっ! いつまであんな女のことを想ってるのよ。知ってるのよ!? 大事にエリーヌのしていたブローチを持っていること」
「──っ!!」
引き出しを乱暴に開けてその中の小さな箱を取り出すと、開けて中にある真っ赤な石の入ったブローチを手に取る。
「やめろっ!!」
「こんなものがあるから、こんなエリーヌのものを大事に持っているから悪いのよっ!!」
そう言って彼女は勢いよく窓に向かってブローチを投げつけた。
大きな甲高い音を立てて割れた窓ガラスを通り抜けて勢いよく外に飛んでいく。
「なんてことをするんだっ!」
「きゃっ!!」
ゼシフィードはロラの頬をぶち、その衝撃で彼女は床に倒れる。
「──っ!!」
その瞬間、ゼシフィードはぎょっとした。
目の前で倒れた彼女が、ガラスの破片で傷つき、真っ赤な血で濡れた顔で見つめてきていたから──
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