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第49話 見つかった痕跡
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「結論から言うと、複数のフェンリルの足跡が見つかった」
「……!」
えりとの言葉に目を見開き、思わず聞き返す。
フェンリルって希少なんじゃなかったか!?」
「ああ、超がつくほどな。図鑑を確認してみろ」
「そ、そっか」
そう言われて図鑑を開く。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
フェンリル
希少度:EX(規格外)
戦闘力:EX(規格外)
最難関ダンジョンの最下層で数件のみ確認されている魔物であり、生態は不明。
最大の武器である「速さ」を生かし、魔物すら気づかぬ間に首を狩り取る魔物の頂上たる種族。
またその強さに反して、白色のモフモフな毛並みは人々を癒す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
久しぶりにフェンリルのページを見たけど、中々にすごいことが書いてある。
それと同時に、とあることに気づく。
「数件は確認されているんだ。どこのダンジョンなの?」
「挙げればいくつかあるが、今はもっと重要な事がある」
「どういう意味?」
「フェンリルは基本、単独行動をしていると言われててな」
えりとの説明によると、フェンリルは一匹狼の習性を持つらしい。
基本的に行動は単独であり、今まで見つかったどの例も一匹だったという。
となると、先程のえりとの発言に疑問が浮かぶ。
「ん、ちょっと待てよ。複数って言ったか?」
「ああ、言ったぞ」
「それってすごいことなんじゃ!?」
「そうだ」
えりとがこくりと頷いた。
「はっきり言ってこんな前例は無い。研究所を含め色々と考察した結果、ある仮説が一番可能性が高いという判断に至った」
「その可能性とは?」
これが言いたかったんだ、えりとはそんなことを言いたげな顔を浮かべた。
「この足跡の近くに、“フェンリルの里”がある」
「……!」
俺は思わず目を見開いた。
世界中で過去何十年と調査されてきたダンジョン。
それでも数件しか見つからなかったフェンリル。
その里の可能性があるというのか。
「それはどこのダンジョンなんだ?」
「日本の最難関ダンジョン。東京の『地獄谷』だ」
東京には四つのダンジョンが存在する。
難易度が易しい順に、『はじまりの草原』、『まあまあの密林』、『難しめの湖』、そして今の話題の『地獄谷』だ。
思ったよりずっと近くで驚く。
しかし、それ以上に想起されたのはフクマロと出会った時のこと。
「……」
段ボールに入れられていたあの時のフクマロ。
俺が水を上げるまでは傷ついた状態だったんだ。
フクマロはその里から出てきた?
でもどうして?
いやそれよりも、里が近くにあると知ったフクマロは帰りたくな──
「バカなこと考えんなよ」
「……! いや、俺は別に」
「顔に出てんだよ」
ちょっと不安げな顔を浮かべてしまっていたのか、えりとには気づかれた。
さすが相棒、としか言いようがないな。
「フクマロはもうお前の家族だ。こうなるから言うか迷ったが、一応言っておくべきだと思ってよ」
「そっか。教えてくれてありがとうな」
「いいんだよ」
えりとも迷っていたのが表情に出てる。
「で、行くのかよ」
「どうだろうなあ」
行きたいかは分からない。
だけどなんとなく、行っておかなければならないとは思った。
そんな時、
「やすひろさん、温泉ありがとうございました~」
ペット達を連れた目銅佐オーナーが入ってくる。
「オーナー。いえ、いつでも自由に使ってください」
「ワフッ!」
「おおっ、フクマロ」
さらにフクマロが声を上げて俺の元に寄ってきた。
へっへっ、と舌を出しながら陽気な様子だ。
だが、
「ワフゥ?」
「……!」
やすひろ元気ない? と言いたげな表情を浮かべたフクマロ。
鋭すぎて困ってしまうな。
「んじゃ、やすひろ、俺は行くわ」
「ああ、ありがとう」
「どうするかは、また教えてくれ」
「了解」
その件だけだったのか、えりとが立ち上がる。
俺に整理する時間をくれたんだろうな。
「めどさんも、また」
「もう帰るんですね、えりとさん」
「まーな」
特に長居することもなく、えりとはそのまま帰って行った。
「ワフ?」
「ははっ。何でもないよ」
「ワフー」
俺の気持ちを察してか、フクマロがいつも以上に甘えてくる。
本当にモフモフは俺を癒してくれるな。
でも……そうだな。
モフモフに癒されて落ち着くと、決心がついた。
えりとの言う通り、俺たちは家族だし離れることもないだろう。
そう思うと自然と言葉は出てきた。
「フクマロ。故郷に行ってみたいか?」
「……!」
えりとの言葉に目を見開き、思わず聞き返す。
フェンリルって希少なんじゃなかったか!?」
「ああ、超がつくほどな。図鑑を確認してみろ」
「そ、そっか」
そう言われて図鑑を開く。
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フェンリル
希少度:EX(規格外)
戦闘力:EX(規格外)
最難関ダンジョンの最下層で数件のみ確認されている魔物であり、生態は不明。
最大の武器である「速さ」を生かし、魔物すら気づかぬ間に首を狩り取る魔物の頂上たる種族。
またその強さに反して、白色のモフモフな毛並みは人々を癒す。
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久しぶりにフェンリルのページを見たけど、中々にすごいことが書いてある。
それと同時に、とあることに気づく。
「数件は確認されているんだ。どこのダンジョンなの?」
「挙げればいくつかあるが、今はもっと重要な事がある」
「どういう意味?」
「フェンリルは基本、単独行動をしていると言われててな」
えりとの説明によると、フェンリルは一匹狼の習性を持つらしい。
基本的に行動は単独であり、今まで見つかったどの例も一匹だったという。
となると、先程のえりとの発言に疑問が浮かぶ。
「ん、ちょっと待てよ。複数って言ったか?」
「ああ、言ったぞ」
「それってすごいことなんじゃ!?」
「そうだ」
えりとがこくりと頷いた。
「はっきり言ってこんな前例は無い。研究所を含め色々と考察した結果、ある仮説が一番可能性が高いという判断に至った」
「その可能性とは?」
これが言いたかったんだ、えりとはそんなことを言いたげな顔を浮かべた。
「この足跡の近くに、“フェンリルの里”がある」
「……!」
俺は思わず目を見開いた。
世界中で過去何十年と調査されてきたダンジョン。
それでも数件しか見つからなかったフェンリル。
その里の可能性があるというのか。
「それはどこのダンジョンなんだ?」
「日本の最難関ダンジョン。東京の『地獄谷』だ」
東京には四つのダンジョンが存在する。
難易度が易しい順に、『はじまりの草原』、『まあまあの密林』、『難しめの湖』、そして今の話題の『地獄谷』だ。
思ったよりずっと近くで驚く。
しかし、それ以上に想起されたのはフクマロと出会った時のこと。
「……」
段ボールに入れられていたあの時のフクマロ。
俺が水を上げるまでは傷ついた状態だったんだ。
フクマロはその里から出てきた?
でもどうして?
いやそれよりも、里が近くにあると知ったフクマロは帰りたくな──
「バカなこと考えんなよ」
「……! いや、俺は別に」
「顔に出てんだよ」
ちょっと不安げな顔を浮かべてしまっていたのか、えりとには気づかれた。
さすが相棒、としか言いようがないな。
「フクマロはもうお前の家族だ。こうなるから言うか迷ったが、一応言っておくべきだと思ってよ」
「そっか。教えてくれてありがとうな」
「いいんだよ」
えりとも迷っていたのが表情に出てる。
「で、行くのかよ」
「どうだろうなあ」
行きたいかは分からない。
だけどなんとなく、行っておかなければならないとは思った。
そんな時、
「やすひろさん、温泉ありがとうございました~」
ペット達を連れた目銅佐オーナーが入ってくる。
「オーナー。いえ、いつでも自由に使ってください」
「ワフッ!」
「おおっ、フクマロ」
さらにフクマロが声を上げて俺の元に寄ってきた。
へっへっ、と舌を出しながら陽気な様子だ。
だが、
「ワフゥ?」
「……!」
やすひろ元気ない? と言いたげな表情を浮かべたフクマロ。
鋭すぎて困ってしまうな。
「んじゃ、やすひろ、俺は行くわ」
「ああ、ありがとう」
「どうするかは、また教えてくれ」
「了解」
その件だけだったのか、えりとが立ち上がる。
俺に整理する時間をくれたんだろうな。
「めどさんも、また」
「もう帰るんですね、えりとさん」
「まーな」
特に長居することもなく、えりとはそのまま帰って行った。
「ワフ?」
「ははっ。何でもないよ」
「ワフー」
俺の気持ちを察してか、フクマロがいつも以上に甘えてくる。
本当にモフモフは俺を癒してくれるな。
でも……そうだな。
モフモフに癒されて落ち着くと、決心がついた。
えりとの言う通り、俺たちは家族だし離れることもないだろう。
そう思うと自然と言葉は出てきた。
「フクマロ。故郷に行ってみたいか?」
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