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「は、俺?」
自身を指差して確認するかのように少女を見ると、少女はこくりと頷いた。
「そ。ここは夢魔の住処だと言ったわよね?だから、勿論この屋敷の外にも沢山夢魔はいるワケ。……ここまで分かるかしら?」
「ああ」
相槌を打つと、少女も頷き話を続ける。
「で、夢魔には悪夢と呼ばれる者もいるの。……なんとなく、どーゆーやつかは名前で想像できるでしょう?」
「悪夢って言われるくらいだから恐ろしいやつなのか?」
そう聞くと、少女は何かを考えるように虚空を見つめた。
黙ったまま、ずっと動かない。
「おい……?」
話しかけると、ハッとしたような表情をし、さっきのことはなかったかのようにまた、淡々と続ける少女であった。
「…………ま、そーゆー認識でいいわ。そいつらは、……いや、その中でもタチの悪いやつらは、人間を見つけると永遠に醒めない夢……縄張りに閉じ込めてしまうの」
「怖っ!てか、最初の間はなんなんだ」
「……まぁ、全ての悪夢が醒めない夢へと誘う訳ではないわ。悪夢に魘されて目が覚めた、とかあるでしょう?それが一般的な悪夢の仕業ね」
……少女はさっきの俺の質問に答える気はないようだ。
まぁ、別にそんなに追求しようとも思っていなかったから、俺は気にせずまた頷いた。
「ふーん……?じゃあ、屋敷の中ならお前の縄張りなんだし問題ないんじゃないか?」
「人間は好奇心旺盛な生き物だから、必ず外に出ようとするわ」
「あのなぁ、何を根拠に……。てかお前、俺を心配してくれてるのか?」
最初に心配なのは__と続けていたから心配してはくれているのだろうけど。
「当たり前じゃない。自分の縄張りに訪れた人間に何かあったら責任に問われるのは私なのだもの。こっちの世界も色々大変なワケ」
「ふーん」
どうやらこの世界……夢の中でも法律的なものがあるらしく、縄張りに入ってきた人間を安全に現世に返せなかったりした場合は、どうやらペナルティがあるらしい。
「つまり俺自身を心配してる訳じゃないってことか……」
「悪いかしら?どうして出会ったばかりの人間を気遣わなきゃいけないワケ?」
小さく呟いていた筈だが、どうやら聞こえていたみたいだ。
少女がツンッとそっぽを向く。
「お前、本当に可愛いのは見た目だけなんだな……」
「イチイチ煩いのよ、バカ人間。全部説明してやったのだから感謝しなさい。あと……」
ぽいっと少女はそっぽを向いたまま、俺に何かを差し出してきた。
淡いピンク色のハンカチに大事そうに何かが包まれている。
「これは?」
「……御守りよ、受け取りなさい。……壊したら承知しないから大事に扱うのよ」
中を見ると手鏡が入っていた。何やら複雑な模様の装飾がしてあり、かなり高価なものに見える。
「お、……ありがとな。ありがたく貰っておくよ。」
手鏡をポケットにしまい、あれ、と首を捻る。
「あれ、お前……俺が外に出るの止めてんじゃなかったっけ?」
少女はひらひらと手を振った。
「……別に。気が変わったわ。貴方がいるときっと煩くて本が読めないのよ。……屋敷の中を回るだけならいいんじゃない?」
そう言いながら、ドアの取っ手を捻る。
「私は本の続きを読みたいから、出るなら早く出て頂戴。……厄介事は御免だから頼むから屋敷の外には出ないでね、本当。あ、あとあと、屋敷の中にいるかもしれない銀髪の男と黄色い髪の女の破廉恥な夢魔に気をつけなさい。というか関わらないで!私のこと聞かれても知らないって言って頂戴!!」
なんだなんだ、以外と心配性なのかコイツは。
……というか銀髪の男はともかく破廉恥な夢魔ってちょっと気になるな、言い方からするに、知り合いなんじゃないか?
居場所を隠しているってことは喧嘩中?
いや、こいつって多分引きこもりだからもしかして他の奴らとコミュニケーションを取りたくないだけだったり……
「……全部声に出てるのよ、バカ人間。私の夢魔関係とか勝手に想像しないでくれる?早く私の眼中から消えて」
少女の声には、まぁ当然と言えば当然なのだろうが、怒りが含まれていた。
そして……その言葉と共に俺はドアの向こう側に締め出されてしまった。
自身を指差して確認するかのように少女を見ると、少女はこくりと頷いた。
「そ。ここは夢魔の住処だと言ったわよね?だから、勿論この屋敷の外にも沢山夢魔はいるワケ。……ここまで分かるかしら?」
「ああ」
相槌を打つと、少女も頷き話を続ける。
「で、夢魔には悪夢と呼ばれる者もいるの。……なんとなく、どーゆーやつかは名前で想像できるでしょう?」
「悪夢って言われるくらいだから恐ろしいやつなのか?」
そう聞くと、少女は何かを考えるように虚空を見つめた。
黙ったまま、ずっと動かない。
「おい……?」
話しかけると、ハッとしたような表情をし、さっきのことはなかったかのようにまた、淡々と続ける少女であった。
「…………ま、そーゆー認識でいいわ。そいつらは、……いや、その中でもタチの悪いやつらは、人間を見つけると永遠に醒めない夢……縄張りに閉じ込めてしまうの」
「怖っ!てか、最初の間はなんなんだ」
「……まぁ、全ての悪夢が醒めない夢へと誘う訳ではないわ。悪夢に魘されて目が覚めた、とかあるでしょう?それが一般的な悪夢の仕業ね」
……少女はさっきの俺の質問に答える気はないようだ。
まぁ、別にそんなに追求しようとも思っていなかったから、俺は気にせずまた頷いた。
「ふーん……?じゃあ、屋敷の中ならお前の縄張りなんだし問題ないんじゃないか?」
「人間は好奇心旺盛な生き物だから、必ず外に出ようとするわ」
「あのなぁ、何を根拠に……。てかお前、俺を心配してくれてるのか?」
最初に心配なのは__と続けていたから心配してはくれているのだろうけど。
「当たり前じゃない。自分の縄張りに訪れた人間に何かあったら責任に問われるのは私なのだもの。こっちの世界も色々大変なワケ」
「ふーん」
どうやらこの世界……夢の中でも法律的なものがあるらしく、縄張りに入ってきた人間を安全に現世に返せなかったりした場合は、どうやらペナルティがあるらしい。
「つまり俺自身を心配してる訳じゃないってことか……」
「悪いかしら?どうして出会ったばかりの人間を気遣わなきゃいけないワケ?」
小さく呟いていた筈だが、どうやら聞こえていたみたいだ。
少女がツンッとそっぽを向く。
「お前、本当に可愛いのは見た目だけなんだな……」
「イチイチ煩いのよ、バカ人間。全部説明してやったのだから感謝しなさい。あと……」
ぽいっと少女はそっぽを向いたまま、俺に何かを差し出してきた。
淡いピンク色のハンカチに大事そうに何かが包まれている。
「これは?」
「……御守りよ、受け取りなさい。……壊したら承知しないから大事に扱うのよ」
中を見ると手鏡が入っていた。何やら複雑な模様の装飾がしてあり、かなり高価なものに見える。
「お、……ありがとな。ありがたく貰っておくよ。」
手鏡をポケットにしまい、あれ、と首を捻る。
「あれ、お前……俺が外に出るの止めてんじゃなかったっけ?」
少女はひらひらと手を振った。
「……別に。気が変わったわ。貴方がいるときっと煩くて本が読めないのよ。……屋敷の中を回るだけならいいんじゃない?」
そう言いながら、ドアの取っ手を捻る。
「私は本の続きを読みたいから、出るなら早く出て頂戴。……厄介事は御免だから頼むから屋敷の外には出ないでね、本当。あ、あとあと、屋敷の中にいるかもしれない銀髪の男と黄色い髪の女の破廉恥な夢魔に気をつけなさい。というか関わらないで!私のこと聞かれても知らないって言って頂戴!!」
なんだなんだ、以外と心配性なのかコイツは。
……というか銀髪の男はともかく破廉恥な夢魔ってちょっと気になるな、言い方からするに、知り合いなんじゃないか?
居場所を隠しているってことは喧嘩中?
いや、こいつって多分引きこもりだからもしかして他の奴らとコミュニケーションを取りたくないだけだったり……
「……全部声に出てるのよ、バカ人間。私の夢魔関係とか勝手に想像しないでくれる?早く私の眼中から消えて」
少女の声には、まぁ当然と言えば当然なのだろうが、怒りが含まれていた。
そして……その言葉と共に俺はドアの向こう側に締め出されてしまった。
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