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ギャルちゃんとヤンキーくん
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ああ。中等部が懐かしい。
なんてしみじみしながら着いたのは三年四組。メールするより直談判した方が早いと思って一組ずつ周ってたけど音沙汰無しだから最後の四組にいるということだろう。そうじゃなかったらどこにいんだ。
「かーなーで」
「あれ、優ちゃん? 何でいるの?」
丁度掃除当番だったのか一つ下の妹、奏が箒を持ったままこちらへ近づいてきた。
奏はおしゃれが大好きな軽いギャル。ちゃんと規定ラインは守ってるから――ピアスとかアクセサリーとか――咎められたことは一度も無い。規則には厳しいからね本田家。
「掃除当番なの奏?」
「ううん。教室汚れてたから」
「率先してやってるの?」
「だって教室が綺麗だと皆嬉しいでしょ?」
金髪に染めてるギャルが言うことじゃない。この子が内申めっちゃ良い理由ってこれか?
「それにしても優ちゃんいい加減一人で起きられるようになろうよ」
「あ、それ! なんで奏起こしてくれないの!? 隣の部屋なのに」
「何度も起こしたのに起きなかったの優ちゃんじゃん!」
「え、そうなの?」
ハートとか星が散りばめられている長い爪で頬を抓られる。
「その爪で目潰しされたらひとたまりもないだろうね」
「そんなことしないよグロい。ところで何しに来たの」
「門が開くまでに時間あるから皆の顔を拝みに来た」
「それで虱潰ししてたのね」
「そういうこっとー。でも奏を最初に選んだのは他でもない」
「能力使わせる気でしょ。それ以外思い当たんないもん」
箒を置いてきた奏は私を引き連れて中等部の五階にある音楽室まで歩いた。
「早くしないと吹奏楽が来ちゃうから手っ取り早くやるよ」
「お願い」
さっきの私とは違って奏はピアノをセットするとその長い爪で一定音を鳴らした。
「絶対音感」
原理はよく分からないけど奏曰く今鳴らした音の反響を聞いて特定の人がどこで何をしているのか分かるらしい。声にも違いがあるんだからびっくりだよね。
「終わったよ」
「今誰調べてたの?」
「一番近い人。拓ちゃん」
「喧嘩してる?」
「終わったところみたい。さっさと行ってまたお説教しようよ」
「してもどうせまたするんだけどね~」
「ね~」
いない兄の話をしながら奏の音を頼りに中等部と高等部を繋ぐ人気のない方の渡り廊下に向かう。
「今日は目立たないところで喧嘩したんだ拓ちゃん」
「始業式で喧嘩するのもどうかと思うんだけど」
「拓ちゃんにそれは通じないよ優ちゃん」
中等部と高等部を繋ぐ渡り廊下は二つある。一つは部室の関係上殆どの人が行き交う廊下。もう一つは微妙な角度で一日の大半日が射すことが無い廊下。
後者は薄気味悪くて、たとえぎゅうぎゅうに混んでいても皆は前者を使う。
そんなところだからこそ逆に不良の喧嘩場にはもってこいなんだよね。私達の目的もそれだし。
「あ、いた」
「どこどこ」
私は一回魔法使っちゃったし奏のも喧嘩じゃ役に立たないから万が一に備えて壁から覗くと着崩れた制服と切り傷を付けている兄の拓ちゃんが同学年くらいの男の人の胸元を掴んでいた。
「終わってないじゃん!」
「あれ? バコッて音が連続しなくなったから」
「殴るのをやめたんじゃない?」
「あ、そっか」
とりあえずこのまま放置してても被害受けてる方が可哀想だし止めに行ってやろう。
「拓ちゃんもうやめなよ。とっくに気絶してるよその人」
「……優に奏か。なんでいるんだ」
「優ちゃんの暇潰しに付き合ってる。それより拓ちゃんいい加減傷作るのやめなよ。手当てすんの誰だと思ってんの?」
拓ちゃん喧嘩は強いのに他のことに関しては不器用さんだからね。絆創膏とかは私達の仕事。それも毎日。
「こいつらが下級生から金を巻き上げようとしたから殴ってやめただけだ」
「まあ助けたのはいいけどさ。もっとやり方が……こいつら?」
「ああ。こいつを置いて先に逃げた」
「奏。居場所特定してやろうぜ」
「おけまる」
パーカッション――土を一定リズムで踏むだけでもピアノの代わりになるらしい奏は早速ダンスをするようにステップを踏もうとして拓ちゃんに止められていた。
「能力濫用するなよ。後が大変なんだから」
「「ぶー」」
揃って口を尖らせる。
「ていうかそんなこと言うんだったら拓ちゃんも無闇に喧嘩すんのやめなよ。絶対最低一割程度は魔力使ってるでしょ」
「そうだそうだー」
「お前ら束になると強くなるな」
拓ちゃんが顔に出来た傷を拭いながら呆れたように言う。だからそれ私達が処理すんだよ。
「もう。ちょっと待っててよ。教室行って絆創膏持ってくるから」
「絆創膏持ってるんだ」
「誰かが怪我した時大変でしょ?」
「だからギャルが言う言葉じゃないよねそれ」
奏が教室に向かっている間私と拓ちゃんは完璧に伸びた男子生徒を通りかかった先生に渡しておいた。勿論拓ちゃんのことも言われたけどこれはいつもの事だから流した。
なんてしみじみしながら着いたのは三年四組。メールするより直談判した方が早いと思って一組ずつ周ってたけど音沙汰無しだから最後の四組にいるということだろう。そうじゃなかったらどこにいんだ。
「かーなーで」
「あれ、優ちゃん? 何でいるの?」
丁度掃除当番だったのか一つ下の妹、奏が箒を持ったままこちらへ近づいてきた。
奏はおしゃれが大好きな軽いギャル。ちゃんと規定ラインは守ってるから――ピアスとかアクセサリーとか――咎められたことは一度も無い。規則には厳しいからね本田家。
「掃除当番なの奏?」
「ううん。教室汚れてたから」
「率先してやってるの?」
「だって教室が綺麗だと皆嬉しいでしょ?」
金髪に染めてるギャルが言うことじゃない。この子が内申めっちゃ良い理由ってこれか?
「それにしても優ちゃんいい加減一人で起きられるようになろうよ」
「あ、それ! なんで奏起こしてくれないの!? 隣の部屋なのに」
「何度も起こしたのに起きなかったの優ちゃんじゃん!」
「え、そうなの?」
ハートとか星が散りばめられている長い爪で頬を抓られる。
「その爪で目潰しされたらひとたまりもないだろうね」
「そんなことしないよグロい。ところで何しに来たの」
「門が開くまでに時間あるから皆の顔を拝みに来た」
「それで虱潰ししてたのね」
「そういうこっとー。でも奏を最初に選んだのは他でもない」
「能力使わせる気でしょ。それ以外思い当たんないもん」
箒を置いてきた奏は私を引き連れて中等部の五階にある音楽室まで歩いた。
「早くしないと吹奏楽が来ちゃうから手っ取り早くやるよ」
「お願い」
さっきの私とは違って奏はピアノをセットするとその長い爪で一定音を鳴らした。
「絶対音感」
原理はよく分からないけど奏曰く今鳴らした音の反響を聞いて特定の人がどこで何をしているのか分かるらしい。声にも違いがあるんだからびっくりだよね。
「終わったよ」
「今誰調べてたの?」
「一番近い人。拓ちゃん」
「喧嘩してる?」
「終わったところみたい。さっさと行ってまたお説教しようよ」
「してもどうせまたするんだけどね~」
「ね~」
いない兄の話をしながら奏の音を頼りに中等部と高等部を繋ぐ人気のない方の渡り廊下に向かう。
「今日は目立たないところで喧嘩したんだ拓ちゃん」
「始業式で喧嘩するのもどうかと思うんだけど」
「拓ちゃんにそれは通じないよ優ちゃん」
中等部と高等部を繋ぐ渡り廊下は二つある。一つは部室の関係上殆どの人が行き交う廊下。もう一つは微妙な角度で一日の大半日が射すことが無い廊下。
後者は薄気味悪くて、たとえぎゅうぎゅうに混んでいても皆は前者を使う。
そんなところだからこそ逆に不良の喧嘩場にはもってこいなんだよね。私達の目的もそれだし。
「あ、いた」
「どこどこ」
私は一回魔法使っちゃったし奏のも喧嘩じゃ役に立たないから万が一に備えて壁から覗くと着崩れた制服と切り傷を付けている兄の拓ちゃんが同学年くらいの男の人の胸元を掴んでいた。
「終わってないじゃん!」
「あれ? バコッて音が連続しなくなったから」
「殴るのをやめたんじゃない?」
「あ、そっか」
とりあえずこのまま放置してても被害受けてる方が可哀想だし止めに行ってやろう。
「拓ちゃんもうやめなよ。とっくに気絶してるよその人」
「……優に奏か。なんでいるんだ」
「優ちゃんの暇潰しに付き合ってる。それより拓ちゃんいい加減傷作るのやめなよ。手当てすんの誰だと思ってんの?」
拓ちゃん喧嘩は強いのに他のことに関しては不器用さんだからね。絆創膏とかは私達の仕事。それも毎日。
「こいつらが下級生から金を巻き上げようとしたから殴ってやめただけだ」
「まあ助けたのはいいけどさ。もっとやり方が……こいつら?」
「ああ。こいつを置いて先に逃げた」
「奏。居場所特定してやろうぜ」
「おけまる」
パーカッション――土を一定リズムで踏むだけでもピアノの代わりになるらしい奏は早速ダンスをするようにステップを踏もうとして拓ちゃんに止められていた。
「能力濫用するなよ。後が大変なんだから」
「「ぶー」」
揃って口を尖らせる。
「ていうかそんなこと言うんだったら拓ちゃんも無闇に喧嘩すんのやめなよ。絶対最低一割程度は魔力使ってるでしょ」
「そうだそうだー」
「お前ら束になると強くなるな」
拓ちゃんが顔に出来た傷を拭いながら呆れたように言う。だからそれ私達が処理すんだよ。
「もう。ちょっと待っててよ。教室行って絆創膏持ってくるから」
「絆創膏持ってるんだ」
「誰かが怪我した時大変でしょ?」
「だからギャルが言う言葉じゃないよねそれ」
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