8 / 9
船の操縦は思った以上に大変
しおりを挟む
澪ちゃんの魔法は『器物浮遊』。前も軽く説明したから割愛するけど一日中使い続けるとキャパオーバーを起こすことはもう一度言っておく。一日だけでもそうなのに何日も何日も使い続ければそりゃ急に倒れても可笑しくないわけで。
「でも今年は大分長引いた方だよね」
「なんかもう倒れる前提で話しちゃってるもんね」
春はどうしても自動操縦が出来なくなるから澪ちゃんが魔力をゴリゴリ削って操作するしか無いみたい。それがここのデメリットの一つでもあるよね。
「でも毎度のことだけど澪ちゃん倒れたら自動操縦しなきゃなんないよね」
「ああ。修ちゃんと悠ちゃんと拓ちゃんが交代で夜操作するんだって」
「へえ」
今のところ機関室に入っていいのは両親と兄弟の内、上から数えて四番目の澪ちゃんまで。それ以外は危険だから入っちゃ駄目みたい。
「優ちゃんはともかく私は不用意に機械触って壊さないのに」
「待って奏。私も分別くらいはつくから」
姉を差し置いて機関室に入ることはたとえ奏でも許さん。
「二人とも、もう寝なさい。明日も学校でしょ。特に優」
「生活を改めますので『特に』ってつけないでくださいお母さん」
バタバタしてて気づかなかったけどもう時計は十一時を指してる。今日はお父さんも船を見張ってなきゃいけないから結達の世話は私達の仕事。お母さんは澪ちゃんを看病してるし。
「結、剛。寝るよ……って寝ちゃってるわ」
「あ、ほんとだ……って怜もか。優ちゃん怜抱っこしてくれる? 私二人抱えるから」
「うん」
手間がかかるけど小学生がこんな夜遅くまで寝てちゃいけないしね。夜更かしするより何倍も良い。
「怜部屋に置いてくるから」
「じゃあ先にそっちに結寝かしとくよ」
「お願い」
怜は小さい頃から誰かと寝るのを嫌がる体質だったから早々に一人部屋に移った。なんか寝てる近くに魔力が放出されてるのが嫌なんだって。
「怜ちょっと大きくなったかな? 弟に抜かされるのも遠い話じゃ無いかも?」
両親はどちらも背が平均より高い。それに比例して兄弟全員とまでは行かないものの皆それなりに背丈はある。特に男は。
「せめて怜が中学卒業するまでは抜かさないで欲しいんだけどな」
自然の摂理にブーイングしながら怜をベッドに寝かした。
「ゆうおねえちゃん。おきて」
「んぁ……ああもう朝か」
いやー誰かが側で寝ているのって寝心地がいいんだよね。結は小さいし寝相も良いからぐっすりだし。
「おしっこ」
「そうだね。早く行かないと混むわ」
それにしても結は寝起きが良いな。ぐずってるところなんて見たことない。
「おはよう修ちゃん」
「おはよう優」
トイレに行っている結を待つ間、私も洗面所で先に髪を梳かしちゃう。やっぱ髪切ろうかな。長くて鬱陶しい。
「寝不足じゃ無いの修ちゃん?」
「俺は先に操縦したから。ちゃんと計算したから皆それなりに寝られてるよ」
「ふーん」
それでも時間は削られるから眠いはずだけど。こういうの耐えられるのが大人なんだろうな。
「それより澪ちゃん大丈夫なの? 今年は大分持ってたけど」
「ああ。貧血で目眩を起こして動けなかっただけだから。ただやっぱりこの頃ちゃんと栄養を取ってなかったから」
「毎年思うんだけどこの船構造変えようよ」
「そんなに簡単に出来るものじゃないからね」
簡単じゃないのは分かるけどこのままぶっ倒れ続けてたら澪ちゃんの体が持たない気がする。
そろそろ洗面所も混んできたし結に洋服着させて先にリビングに行かせる。
「優ちゃんおはよう。これからは結を目覚ましにすれば?」
「いやー結に起こされても三日で切れちゃうから」
「試したんかい」
私も制服に着替えるために部屋に戻ろうとすると先に着替えてメイクも終わった奏が付いてきた。
「それにしても可愛いよねそのネイル。ねえ私もやって欲しい」
「良いけどこういうゴテゴテは出来ないよ。優ちゃん絶対どこかで折るから」
「えーそんなことしないよ」
「神様に誓っても良い。絶対全部折って帰ってくる」
「全部!?」
神様にまで誓われちゃったよ私。
「それより~今日のご飯は何かな~」
「お腹空いてんの奏」
「ペコペコ」
昨日お説教したせいで更に空腹になってるみたいだね奏は。成長期も加わってるし。
「そういえば澪ちゃん久しぶりに朝ごはん食べに来るって」
「まじ!?」
瞬きするとすぐ奏はいなくなってた。
「か、奏?」
多分リビングに行ったんだろうから私もそっちに向かう。
「澪ちゃん髪! 髪寄越せ!」
「ひ、引っ張らないでください奏。痛いです!」
大和撫子と呼んでも良いような腰までストレートに伸びた黒髪。お母さん譲りの整った顔立ち。平均より少しだけ低い身長に細身な体。
それを持っている澪ちゃんが何故か奏に髪を引っ張られてた。
「時間が無いの! だから今日はポニーテールで我慢するから!」
「や、やめてください! どうせ外に出ないんですよ」
「それでもやるの!」
「またやってんのこの二人」
おしゃれ大好きな奏にとって澪ちゃんのサラサラ黒髪は格好の的。暇があれば弄ろうとしては澪ちゃんが嫌がってる。
「助けてください優!」
「頑張れー」
「優ぅぅ!!」
澪ちゃんをいじくり倒すのは私と奏の楽しみの一つ。だから久しぶりだし存分に楽しむ……
「遅刻するから早く食べなさいよあなた達」
澪ちゃんをいじりたかったのにお母さんにテーブルの方へ突っぱねられた。残念。
「でも今年は大分長引いた方だよね」
「なんかもう倒れる前提で話しちゃってるもんね」
春はどうしても自動操縦が出来なくなるから澪ちゃんが魔力をゴリゴリ削って操作するしか無いみたい。それがここのデメリットの一つでもあるよね。
「でも毎度のことだけど澪ちゃん倒れたら自動操縦しなきゃなんないよね」
「ああ。修ちゃんと悠ちゃんと拓ちゃんが交代で夜操作するんだって」
「へえ」
今のところ機関室に入っていいのは両親と兄弟の内、上から数えて四番目の澪ちゃんまで。それ以外は危険だから入っちゃ駄目みたい。
「優ちゃんはともかく私は不用意に機械触って壊さないのに」
「待って奏。私も分別くらいはつくから」
姉を差し置いて機関室に入ることはたとえ奏でも許さん。
「二人とも、もう寝なさい。明日も学校でしょ。特に優」
「生活を改めますので『特に』ってつけないでくださいお母さん」
バタバタしてて気づかなかったけどもう時計は十一時を指してる。今日はお父さんも船を見張ってなきゃいけないから結達の世話は私達の仕事。お母さんは澪ちゃんを看病してるし。
「結、剛。寝るよ……って寝ちゃってるわ」
「あ、ほんとだ……って怜もか。優ちゃん怜抱っこしてくれる? 私二人抱えるから」
「うん」
手間がかかるけど小学生がこんな夜遅くまで寝てちゃいけないしね。夜更かしするより何倍も良い。
「怜部屋に置いてくるから」
「じゃあ先にそっちに結寝かしとくよ」
「お願い」
怜は小さい頃から誰かと寝るのを嫌がる体質だったから早々に一人部屋に移った。なんか寝てる近くに魔力が放出されてるのが嫌なんだって。
「怜ちょっと大きくなったかな? 弟に抜かされるのも遠い話じゃ無いかも?」
両親はどちらも背が平均より高い。それに比例して兄弟全員とまでは行かないものの皆それなりに背丈はある。特に男は。
「せめて怜が中学卒業するまでは抜かさないで欲しいんだけどな」
自然の摂理にブーイングしながら怜をベッドに寝かした。
「ゆうおねえちゃん。おきて」
「んぁ……ああもう朝か」
いやー誰かが側で寝ているのって寝心地がいいんだよね。結は小さいし寝相も良いからぐっすりだし。
「おしっこ」
「そうだね。早く行かないと混むわ」
それにしても結は寝起きが良いな。ぐずってるところなんて見たことない。
「おはよう修ちゃん」
「おはよう優」
トイレに行っている結を待つ間、私も洗面所で先に髪を梳かしちゃう。やっぱ髪切ろうかな。長くて鬱陶しい。
「寝不足じゃ無いの修ちゃん?」
「俺は先に操縦したから。ちゃんと計算したから皆それなりに寝られてるよ」
「ふーん」
それでも時間は削られるから眠いはずだけど。こういうの耐えられるのが大人なんだろうな。
「それより澪ちゃん大丈夫なの? 今年は大分持ってたけど」
「ああ。貧血で目眩を起こして動けなかっただけだから。ただやっぱりこの頃ちゃんと栄養を取ってなかったから」
「毎年思うんだけどこの船構造変えようよ」
「そんなに簡単に出来るものじゃないからね」
簡単じゃないのは分かるけどこのままぶっ倒れ続けてたら澪ちゃんの体が持たない気がする。
そろそろ洗面所も混んできたし結に洋服着させて先にリビングに行かせる。
「優ちゃんおはよう。これからは結を目覚ましにすれば?」
「いやー結に起こされても三日で切れちゃうから」
「試したんかい」
私も制服に着替えるために部屋に戻ろうとすると先に着替えてメイクも終わった奏が付いてきた。
「それにしても可愛いよねそのネイル。ねえ私もやって欲しい」
「良いけどこういうゴテゴテは出来ないよ。優ちゃん絶対どこかで折るから」
「えーそんなことしないよ」
「神様に誓っても良い。絶対全部折って帰ってくる」
「全部!?」
神様にまで誓われちゃったよ私。
「それより~今日のご飯は何かな~」
「お腹空いてんの奏」
「ペコペコ」
昨日お説教したせいで更に空腹になってるみたいだね奏は。成長期も加わってるし。
「そういえば澪ちゃん久しぶりに朝ごはん食べに来るって」
「まじ!?」
瞬きするとすぐ奏はいなくなってた。
「か、奏?」
多分リビングに行ったんだろうから私もそっちに向かう。
「澪ちゃん髪! 髪寄越せ!」
「ひ、引っ張らないでください奏。痛いです!」
大和撫子と呼んでも良いような腰までストレートに伸びた黒髪。お母さん譲りの整った顔立ち。平均より少しだけ低い身長に細身な体。
それを持っている澪ちゃんが何故か奏に髪を引っ張られてた。
「時間が無いの! だから今日はポニーテールで我慢するから!」
「や、やめてください! どうせ外に出ないんですよ」
「それでもやるの!」
「またやってんのこの二人」
おしゃれ大好きな奏にとって澪ちゃんのサラサラ黒髪は格好の的。暇があれば弄ろうとしては澪ちゃんが嫌がってる。
「助けてください優!」
「頑張れー」
「優ぅぅ!!」
澪ちゃんをいじくり倒すのは私と奏の楽しみの一つ。だから久しぶりだし存分に楽しむ……
「遅刻するから早く食べなさいよあなた達」
澪ちゃんをいじりたかったのにお母さんにテーブルの方へ突っぱねられた。残念。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる