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不良更生
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「修兄」
「大丈夫か怜。怪我は?」
「平気。その前に修兄が来たから」
ギリギリセーフ。修ちゃんが何とか間に入ってくれて怜が殴られずに済んだみたい。
「優、奏。三人を見ててね」
「分かった」
私が怜を、奏が他二人を庇うように前へ出る。
「無茶しちゃ駄目でしょ怜」
「だって囮がいた方が逃げられる」
「全く」
「優ちゃん魔法まだ使ってないよね」
奏が後ろに下がりながら聞いてくる。
「まだ。だけど修ちゃんなら平気だと思うよ」
「念には念を。何出すか決めといて」
「おっけー」
どうせこの準備も無駄に終わるんだけどいつ何が起きても良いように。
「俺の弟と妹が随分世話になったようで」
「ああ? お前は知らない奴だな。本田の兄貴か?」
「大体予想はついてるけど一応聞いておくよ。本田って言うのは誰のことを言ってるんだい?」
掘り下げて聞いてくる修ちゃんを不良っぽい――いや不良だな普通に――男達はヘタレだと感じたのか舐めた態度を向ける。
「なんだぁ? 時間稼ぎってか? 怖いなら怖いって泣き叫べよお兄ちゃん」
一人が笑うと全員感染症のようにうるっさい笑い方をする。
「……仕方ないか」
「あぁん?」
「失せろ」
修ちゃんが一人に目を合わせて命令をする。するとその男は突然生気を失ったような目をして公園の出口の方へ向かっていった。
「お、おいどうしたんだよ」
事情を知らない人には奇妙に思えるその光景。でも見慣れている私達にとっても奇妙程ではないけど怖いもの。それが修ちゃんの魔法。
「妹弟の手前、魔法の濫用はしたくないんだけど。手を出されて何もしないほど俺は穏便じゃ無いんだ。
全員俺の前から消えろ」
修ちゃんが命令すると否が応でも従ってしまう『絶対服従』。
目的が達成されない限り死んでもその命令が解けることが無いから修ちゃんはこの魔法を使おうとはあまりしない。
「さてと。あの人達は修ちゃんが片付けてくれたから私達はあの馬鹿兄を連れてきますか」
「馬鹿兄って奏……」
私が呆れている間にも奏はその長い爪で器用にスマホを連打している。
「あれ。ねえ修ちゃん」
「何、優」
「全員帰らせちゃったら拓ちゃん誰に喧嘩売られたか分かんないじゃん」
「大丈夫。さっき写真撮ってから帰らせたから」
「いつの間に」
流石九人兄弟の長兄。昔から仕事でいなくなることも少なくない両親の代わりに他八人の保護者だったわけもあるよね。
「それより呼び出すのもいいけどまずは帰ろう。誰もいないとなると澪も心配するし」
「拓ちゃんは今呼び出しちゃったよ。あ、でも悠ちゃんも」
「悠は先に帰らせてるから」
「あ、そうなんだ」
結構時間が危うくなってきたので皆急いで学校に戻って荷物取って門に直行した。
門が閉じるギリギリにオー・タマールに着いたせいで船までも走らなきゃいけなくなり、学校帰りにはきつかった。
夕ご飯も食べてお風呂にも入って一段落。自由時間になったのでさあお説教の時間だ。
「た・く・ちゃぁん? ちょいとそこに腰掛けろや」
「奏が説教担当なの?」
一人だけ事情を知らない次男の悠ちゃんが修ちゃんとコーヒー飲みながら聞いてくる。カフェイン取ってて眠れなくなんないのかな。
「……悪かったよ。迷惑かけて」
無理矢理奏の前に座らせられた拓ちゃんはバツが悪そうに視線を逸らす。
「だぁからいっつも無闇に喧嘩すんなっつってんじゃん。私とか優ちゃんなら兎も角小学生を拉致るようなクソ不良なんかと喧嘩しないでよ」
「奏、言葉言葉」
怒る気持ちを理解できないとまでは言わないけどせめてもう少し落ち着こうぜ。
「あ、そうだ! 拓ちゃん魔法。魔法発動して」
「何でだよ」
「今日喧嘩しないように覚えさせればその後も」
「奏。拓の魔法ちょっと原理が違うから」
拓ちゃんの魔法は『完全記憶』。覚えようと思ったものはどれだけ難関でも一生忘れることは無い、これだけなら超便利な代物。
でもやっぱりデメリットは付き物。それ以外の内容は一切覚えられない。たとえ私達兄弟の名前も全て鳥頭並に忘れてしまう。だからテストとかでは使えないんだって。
「喧嘩が駄目なものは拓も知ってるんだろ」
「ああ」
「駄目なものって分かってんならやるなコラ」
奏の怒りが最骨頂まで到達しそうだったその時だった。
「かなでおねえちゃん」
「どうしたの結」
服の裾を結が引っ張ってこっちへ来いと言っている。
「おそと」
「外に何かあるの?」
可愛い妹には勝てないらしく、奏はお説教を中断して中庭――空気は薄いし寒いから殆ど飾り要員だけど――に連れていかれた。と思ったら
「おおおお父さん! 船、船!」
「船がどうしたんだ」
「沈んでる!!」
「え?」
急いで中庭に出てみるとその船の状態のままどんどん降下していってる。
「悠! 澪のとこに行け。大至急!」
「う、うん」
悠ちゃんが猛烈走行で機関室へ向かっていった。
「大丈夫か怜。怪我は?」
「平気。その前に修兄が来たから」
ギリギリセーフ。修ちゃんが何とか間に入ってくれて怜が殴られずに済んだみたい。
「優、奏。三人を見ててね」
「分かった」
私が怜を、奏が他二人を庇うように前へ出る。
「無茶しちゃ駄目でしょ怜」
「だって囮がいた方が逃げられる」
「全く」
「優ちゃん魔法まだ使ってないよね」
奏が後ろに下がりながら聞いてくる。
「まだ。だけど修ちゃんなら平気だと思うよ」
「念には念を。何出すか決めといて」
「おっけー」
どうせこの準備も無駄に終わるんだけどいつ何が起きても良いように。
「俺の弟と妹が随分世話になったようで」
「ああ? お前は知らない奴だな。本田の兄貴か?」
「大体予想はついてるけど一応聞いておくよ。本田って言うのは誰のことを言ってるんだい?」
掘り下げて聞いてくる修ちゃんを不良っぽい――いや不良だな普通に――男達はヘタレだと感じたのか舐めた態度を向ける。
「なんだぁ? 時間稼ぎってか? 怖いなら怖いって泣き叫べよお兄ちゃん」
一人が笑うと全員感染症のようにうるっさい笑い方をする。
「……仕方ないか」
「あぁん?」
「失せろ」
修ちゃんが一人に目を合わせて命令をする。するとその男は突然生気を失ったような目をして公園の出口の方へ向かっていった。
「お、おいどうしたんだよ」
事情を知らない人には奇妙に思えるその光景。でも見慣れている私達にとっても奇妙程ではないけど怖いもの。それが修ちゃんの魔法。
「妹弟の手前、魔法の濫用はしたくないんだけど。手を出されて何もしないほど俺は穏便じゃ無いんだ。
全員俺の前から消えろ」
修ちゃんが命令すると否が応でも従ってしまう『絶対服従』。
目的が達成されない限り死んでもその命令が解けることが無いから修ちゃんはこの魔法を使おうとはあまりしない。
「さてと。あの人達は修ちゃんが片付けてくれたから私達はあの馬鹿兄を連れてきますか」
「馬鹿兄って奏……」
私が呆れている間にも奏はその長い爪で器用にスマホを連打している。
「あれ。ねえ修ちゃん」
「何、優」
「全員帰らせちゃったら拓ちゃん誰に喧嘩売られたか分かんないじゃん」
「大丈夫。さっき写真撮ってから帰らせたから」
「いつの間に」
流石九人兄弟の長兄。昔から仕事でいなくなることも少なくない両親の代わりに他八人の保護者だったわけもあるよね。
「それより呼び出すのもいいけどまずは帰ろう。誰もいないとなると澪も心配するし」
「拓ちゃんは今呼び出しちゃったよ。あ、でも悠ちゃんも」
「悠は先に帰らせてるから」
「あ、そうなんだ」
結構時間が危うくなってきたので皆急いで学校に戻って荷物取って門に直行した。
門が閉じるギリギリにオー・タマールに着いたせいで船までも走らなきゃいけなくなり、学校帰りにはきつかった。
夕ご飯も食べてお風呂にも入って一段落。自由時間になったのでさあお説教の時間だ。
「た・く・ちゃぁん? ちょいとそこに腰掛けろや」
「奏が説教担当なの?」
一人だけ事情を知らない次男の悠ちゃんが修ちゃんとコーヒー飲みながら聞いてくる。カフェイン取ってて眠れなくなんないのかな。
「……悪かったよ。迷惑かけて」
無理矢理奏の前に座らせられた拓ちゃんはバツが悪そうに視線を逸らす。
「だぁからいっつも無闇に喧嘩すんなっつってんじゃん。私とか優ちゃんなら兎も角小学生を拉致るようなクソ不良なんかと喧嘩しないでよ」
「奏、言葉言葉」
怒る気持ちを理解できないとまでは言わないけどせめてもう少し落ち着こうぜ。
「あ、そうだ! 拓ちゃん魔法。魔法発動して」
「何でだよ」
「今日喧嘩しないように覚えさせればその後も」
「奏。拓の魔法ちょっと原理が違うから」
拓ちゃんの魔法は『完全記憶』。覚えようと思ったものはどれだけ難関でも一生忘れることは無い、これだけなら超便利な代物。
でもやっぱりデメリットは付き物。それ以外の内容は一切覚えられない。たとえ私達兄弟の名前も全て鳥頭並に忘れてしまう。だからテストとかでは使えないんだって。
「喧嘩が駄目なものは拓も知ってるんだろ」
「ああ」
「駄目なものって分かってんならやるなコラ」
奏の怒りが最骨頂まで到達しそうだったその時だった。
「かなでおねえちゃん」
「どうしたの結」
服の裾を結が引っ張ってこっちへ来いと言っている。
「おそと」
「外に何かあるの?」
可愛い妹には勝てないらしく、奏はお説教を中断して中庭――空気は薄いし寒いから殆ど飾り要員だけど――に連れていかれた。と思ったら
「おおおお父さん! 船、船!」
「船がどうしたんだ」
「沈んでる!!」
「え?」
急いで中庭に出てみるとその船の状態のままどんどん降下していってる。
「悠! 澪のとこに行け。大至急!」
「う、うん」
悠ちゃんが猛烈走行で機関室へ向かっていった。
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