LOZ:彼は無感情で理性的だけど不器用な愛をくれる

meishino

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試行錯誤するA君編

153 タージュ博士のお家

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「ジェーン、少しいいか?」

 オフィスの扉が開いていたことに気が付かなかった私は、声を掛けられて、少しばかりビクッと身体を震わせた。振り返れば、扉に寄りかかるようにクラースが立っていて、私を手招いていた。

 時刻は午前十一時、特段クラースに呼ばれる身に覚えのない私は、取り敢えず作業を中断した。身に付けていたゴーグルやゴム手袋を脱着し、作業台に置いた。

「何でしょう?どうぞ、中へ。」

「そ、そうか?まあ、ここなら誰も来ないか。じゃあお邪魔する。」

 と、クラースは念入りに外を右左と誰も見ていないか確認してから、私のオフィス内へと入り、ドアを閉めた。内緒話でもしようというのか。私は取り敢えずシンクへ向かい、クラースの分のお茶をポットで淹れた。

「あ、悪いな、お茶まで。」

「インスタントの紅茶です。それで……」私はクラースにソファに座るよう促した。彼と対面するように私も着席した。ふと、最初にキルディアと面接した時を思い出した。今の私の場所に、彼女は座っていた。

「何だ、考え事か?」

「ああ、いえ」私は眼鏡の位置を調節した。クラースはじっと私を見ている。「大したことではありません。それで話というのは一体、何の要件でしょう?」

「それなんだがな」と、彼が言ったところで、私のオフィスの扉がノックも無しにいきなり開いた。顔を覗かせたのはキルディアだった。

 昨日は私が彼女のマットで寝てしまい、朝起きたら彼女は私のベッドで寝ていた。無断で、私のそばから居なくなるなんて。……それが原因で本日、私は少し、彼女に対して不機嫌である。キルディアはクラースが居ることに少しばかり驚いた。

「あれ、クラースさんどうしたの?ジェーンのオフィスに来るなんて珍しいね。」

「あ、ああ……」クラースは前髪をかき上げた。「なんだ、いや、まあちょっとな、はは。お前は何をしに来たんだ?」

「いやぁ、さっきジェーンに渡した依頼なんだけど、アリスがやるっていうから担当変更してもらおうと思ってここに来た。いいかな?ジェーン。」

「ええ構いませんよ。」

 キルディアは微笑んだ。

「うん、分かった。じゃあそういうことで、またね。」

 扉は閉じられた。私はお茶を一口飲んでいるクラースに対して言った。

「もう少し、上手く誤魔化せませんか?」

「じゃあ」と、クラースがテーブルに音を立ててカップを置いた。「お前が俺をフォローしてくれれば良かったじゃないか。大体お前、キリーが困っていたら喜んで救いの手を差し出すのに、キリー以外の人間に冷たいぞ。アイリーンは知らないがな。どうなんだ、アイリーンとキスしたらしいじゃないか、アリスから聞いたぞ。」

「ああ、確かにそれは事実です。彼女が急に、私の唇を奪いました。出来ればもう二度と思い出したくない、悲劇の様なものです。それで、あなたは何用ですか?」

 悲劇か……とクラースは小さく呟いた。暫く他所を見て考えた後に、クラースは口を開いた。

「大切な話だ。お前はキリーをどう思っている?」

「どうとは?」

 私は腕を組んで、ソファに深く座った。何だその質問は。クラースはいたって真剣な顔で、私に聞いた。

「だから……ただの友達なのか?それとももう既に、奥さんには言えない関係なのか?」

「困りましたね。確かに、彼女との同居や友好関係は、常軌を逸しているかもしれませんが、それがどうしました?私はいずれ、自分の世界に帰ります。限りのある蜜月ぐらい、お許し頂きたい。関係としては、ただの友人です。」

「そうか、まあ、いずれジェーンは過去の世界に帰るのか……それはそうだよな。」

 気のせいか、彼が少しばかり寂しげな目をした様に思えた。クラースも、私が居なくなっては寂しいと思ってくれるのか。この世界の住人は、温かい。

「そうか、なら話は早い。実はある人物にキリーとの仲を取り持ってほしいと頼まれてな。あいつも良い奴だし、俺も出来れば一緒になってくれたら嬉しいと思っている。」

 先程の思考を訂正する。何が話は早い、ですか。二言目には私が帰ることを待ち望んでいる様な事を言って、真の目的を聞いてみれば何と、くだらない。私は鼻から思いっきり息を吐いて、彼に質問した。

「誰ですかその人物は?あなたの発言から、彼女とはもう既に顔見知りの様ですが、職場の誰かとは考え難い。士官学校の人物か?しかしそうなると、あなたとの接点が見えない。」

 クラースは何故かへらへらと笑いながら、更に私に質問した。

「何だ、随分と動揺しているようじゃないか。何をそんなに狼狽えているんだ?」

「その人物は、キルディアに想いを寄せていると言うのですか?今、この瞬間も。」

「ぶっ」と、クラースが笑ってしまった。何がおかしいものか。私は眉間に力が入ってしまった。「今この瞬間もきっと、多分キリーに想いを寄せているだろうな。あ、あのな、結構真剣にキリーのことが好きらしい。」

「まさかとは思いますが、丸眼鏡をかけていて、色白で痩せた男ですか?今、結構有名になっている。」

 クラースは首を傾げた。チェイスではないようだ。

「いや、色白ではないし、特に有名ではない。でもその男は丸眼鏡を時たまにかける。まあ、勿体ぶる事でもないから言うが、その男はタージュだ。分かるだろう、お前の部下だ。」

 ……ああ、確かに私の部下に、その名の男が居る。まさか、彼が密かにキルディアに想いを寄せていたとは。あの男め、カラスのように、私の死角から私のキルディアを狙っていたか。

「……何だか、今までで見た事ない顔しているぞ、お前。あまりこの事は話さない方がいいか?ジェーンだって実は、キリーのことを大切に思っているんだろう?」

「いえいえ、」私は得意の無表情を取り戻した。「私もキルディアが幸せになる為なら、喜んで彼らの関係に協力したいと思っております。」

「そうか!」と、クラースが笑顔になった。「何だかタージュの奴、昔からキリーと気が合うと思っていたらしいが、最近になって彼女を自分の嫁さんにしたくなったらしい。タージュはタマラの農耕地帯の出身だから、ああいうたくましい女性に惹かれやすいんだと思……ジェーン?」

「嫁にしたい、のですね。」

 あんな丸ハゲの男より、私の方が彼女にお似合いだと決まっているのに……!

 私は今、クラースに嘘をついた。応援など出来るものか。寧ろ邪魔することしか考えられない。悪しき我が心よ、上司としても人間としても失格だろうが、この件に関しては譲歩出来ぬ。ギュスタージュ・アンナ・ベルリオーズ、一生進めぬ無限回路を味わせて差し上げあげましょうね。

「何だかやばい笑みだな。ジェーン素直に言ってくれ、」クラースはため息をついた。「お前、最初から協力する気など無かっただろう?タージュがどんな気持ちを持っているのかを聞き出す為に、わざと協力するふりをしたな?」

「そんな、とんでもございません。そうですか、あの二人なら私も応援したいと心から思っております。とてもお似合いです。」

 一つ懸念すべき点がある、今夜キルディアがタージュの部屋で食事をする予定だ。なるほど、彼には立派な下心があるらしい。タージュは生物学上はオスであり、私と同様、男性である。一方で、キルディアは女性だ。

 ふと、先日キルディアが見ていた男女の動画を思い出した。冒頭の部分、男女二人は男の独り住まいの部屋におり、女性による悩み相談から徐々に雰囲気が変わり、二人は接吻をし始めた。今夜それが起こるかもしれないと考えた瞬間、一気に私の手の先から血の気が引いた。しかしクラースは何知らぬ笑顔で、続きを話し始めた。

「そうだよな、俺もタージュだったら応援したいと思ってな。早速、今夜二人は食事をするらしい。キリーから何か聞いたか?」

「ええ、彼女からその件について聞きました。」

「なんでもタージュがグラタンを作るらしいな。いやぁ、あいつ料理が上手いんだよ。俺も一回ご馳走になったが、どうも料理が趣味らしくてな。まるでレストランで食べる味、いや、そんじょそこらのレストランよりも美味かった。」

 スコピオが教えてくれた通り、タージュは手順に従い、彼女の胃袋を掴んで彼女の心をさらおうというのか。

 キルディアがあの男を気に入ってしまう可能性は大いにある。私だって彼女の手料理を気に入っている。それの殆どが冷凍食品だとしても、いやそれが寧ろ、彼女の手作業と魔工学の交響曲で、まるでカラーコーンが重なった時のように絶妙にしっくりと、私の心を掴むものがあるのだ。

 ああ、私も以前より料理をしていくべきだった。今宵、彼女は手料理を頂き、それもプロ同等とくれば、このままではいけない、私が彼女を守るべき時がやってきた。今夜の食事を引き止めるか?いや、それでは自然では無い。この計画、知られてしまっては、私の株を下げることに繋がる。

「ジェーン、」

「……。」

「ジェーン、なあ、やっぱり気になるのか?」

 私はハッとした。クラースが険しい顔で私をじっと見ていたので、私は全力で笑顔を作り、彼を安心させた。

「いえいえ、どのように応援をしようか考えておりました。ああ、お似合いです彼らは、ええその通りですとも、早く彼らが結ばれれば、我々も幸せですね。」

「今までで一番怖いぞお前、絶対嘘だろう。はあ、全く不気味な笑顔を見せないでくれ、夢に出てきそうだ。兎に角、そういう訳だから、まあジェーンもキリーと仲が良いらしいし、応援してやってくれないか?出来れば。」

「出来ますとも。あなたの頼み、承知致しました。」

 満足げに何度か頷いた後に、クラースは私のオフィスから出て行った。私はテーブルに置いてあった紅茶を一気に飲み干した。人はこうまで悪になれるのかと思えるほどに、私の心は闇で汚れている自覚がある。その後もPCで設計を行っていたが、頭の中は今夜のことでいっぱいだった。

*********

 今日の業務は無事、定時に終えることが出来た。帝国は揺らごうとも、我々市民の仕事は変わらないものだ。今となっては一般市民と称していいのか分からないが。

 どうやらジェーンはまだ今日の分の作業が終わっていないらしく、私は先に一度帰宅した。今夜はタージュ博士がご馳走してくれる日。まあそんなにめかし込まなくてもいいかと思い、普段通りの格好で、ユークタワービルの前に行った。街行く人にはキルディアだとバレたく無いので、サングラスを掛けた。

 待っているとすぐにタージュ博士がやって来た。いつもは白衣の下はラブ博士みたいにシャツとネクタイだが、今夜は黒いVネックのTシャツにチノパンだった。首にドッグタグを付けて、ちょっとワイルドな雰囲気で笑いそうになった。

「すみません、待ちましたか?」

「いえ、全然、本当に。後これ、お土産です。」

 私は博士にワインとおつまみの入った袋を渡した。博士は笑顔で受け取った。

「ああ、お気を遣わせてしまいましたね。ありがとう、ああ!シロープワイン、嬉しいです。さあ、向かいましょうか。僕の家はこちらです。」

 私はタージュ博士について歩いて行った。タワービルから程近い、飲み屋の多いココ通りをちょっと歩いてすぐに、タージュ博士が脇道に入った。そこにはやや大きめなマンションがあった。エントランスはオートロックシステムがあり、タージュ博士はパネルにウォッフォンをかざしてロックを解除した。

 間接照明の綺麗なマンションだった。彼の部屋は最上階の角部屋だった。家賃、高そうだ。

 博士が玄関の扉を開けてくれた。黒くて綺麗なドアの向こうは、白い大理石の床の廊下だった。奥にひとつ扉があり、そこに行く間にも四つ扉がある。どんな暮らしをしているんだと思いながら、私は靴を脱いで、その靴を端に寄せて置いた。

 廊下を歩いていると段々とクリームソースの美味しそうな匂いがしてきた。タージュ博士が奥の扉を開けると、アイランド型のキッチンダイニングがそこにあった。同じく綺麗な石の床に、ソファとテーブルの下にはボルドー色のふわふわとしたラグが敷いてある。本当に同じ職場の仲間なのか?いや、本当に私の部下なのか?

「どうぞ、ソファでくつろいでください。すみません、狭いでしょう?」

 うちの三倍ほど広いですなんて、ちょっと言えない私は大人しくソファに座ることにした。アイランド型のキッチンを見ると、キッチンで作業をしているタージュ博士と目が合い、ふっと笑われた。何だか緊張するなぁ。でも落ち着かないので何か話したい、私は話しかけた。

「ず、随分綺麗なお家ですね。住んで長いのですか?」

 博士はキッチンで用意しながら答えた。

「ええ、ソーライ研究所で働く前から、ここに住んでいます。その前はユーク市大で研究職を務めていて、その時に取得した特許が今でも効いて副収入を得ています。インテリアにも興味があって、こんな形になりました。その代わり、休日はあまり外には出ないんだけれど、はは。」

「そうだったんですね、タージュ博士は私よりも前から居たから、どういう経緯で来たとか、あまり知らなかった。でも今日、色々お話出来れば嬉しいと思いました。」

「うん、それは僕も、そう思います。」

 何だろう、博士は研究所に居る時よりも、柔らかい雰囲気がある。職場の博士も優しいことは優しいが、言いたいことはズハズバ言うし、集中している時話しかけると怖い。まあ職場だもんなぁと、私はふと、目の前の大きなモニターに目が奪われた。

「それ、大きいでしょう?たまに1人で映画を見たくなるので、大きめのを購入しました。」

「ああ、」私は博士の方を見た。「そうなんですね。どんな映画を?」

 タージュ博士はしゃがんで一度姿を消し、ピーと音がした。多分オーブンを入れたのだろう。それから立ち上がって私の方へと近寄ってきた。少し照れた顔をしている。

「実は、恋愛映画を好みます。自分で言うのもなんだけど、色恋には情熱的でして。」

「えええ!それは意外!」

 博士は私の隣に座った。ちらっと目が合った、心做こころなしか博士は、まだ照れている。そんなに恋愛映画を見てることが恥ずかしいと思っているのかな、私はそんなことないと伝えることにした。

「でも恋愛映画ってサスペンスっぽかったり、コメディだったり、折衷してる感じのものが多いですよね、なんか色々と面白そう。私も今度見てみようかな、あまり普段、映画を見ないもので。」

「ええ、今度是非、宜しければ共に観ませんか?」

「はい、是非とも。」

 私は博士に微笑んだ。すると何故か、タージュ博士が頬を染めつつ優しく微笑み返してくれた。何だか妙だ。妙な雰囲気がここにある。これは既視感がある。たまにジェーンとの間に流れる間に似てる。
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