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作戦が大事!アクロスブルー編
158 救援要請のやり取り
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チェイスからのメールが届いた。私はすぐにそれを開いた。
『ごめんね、途切れちゃって。今、陛下が来たから慌てちゃってさ。まあ、そう言うことで、僕もその戦闘には勿論、参加する予定なんだ。そこでなんだけれど、もう直球に言うけれど、僕はやっぱり、君達の仲間になりたい。もう、この帝国の元帥を担うことは僕にはとても荷が重いんだ。何もかも上手く言っていないって、陛下はイライラして僕に無茶振りに近い指示をしてくるし、大臣のヒステリックに付き合う元気も無くなって来た。それで、君達の仲間になりたいのだけれど、もう検問が厳しい帝都から普通に抜け出すことは、かなり難しいんだ。そこで、僕にあるアイデアがある。それは、僕にとっても、LOZにとってもメリットのある方法だ。よく考えついたななんて、自分で自分を褒めちゃった……えっと、説明するね。』
何だかチェイスっぽい文章だ。それに彼が今の境遇に不自由しているのは、なんだか分かる気がする。シルヴァ大臣とは火山の一件まで、あまり面識が無かったけれど、あの一瞬だけで、とても激情家だと思ったから、あれと毎日一緒に居るのは、骨が折れる所業だろうに。私は同情しながら続きを読んだ。
『僕と君たちの接点があるのは、この時しかない。つまり、戦闘の最中だ。僕は作戦を遂行している振りをして、頃合いを見て離反をしたい。一緒に戦っているヴァルガ騎士団長の部隊を嵌めることだって出来るだろう。ここまで理解してくれただろうか?キルディアの返事を待っています。』
私は読み終えると腕組みをして考えた。チェイスの言っていることは勿論理解している。確かに、帝都から逃げることの出来ない彼は、戦闘中の離反という、我々にとって一つの重要なカードを切らせてくれると言っているのだ。そしてそれが、彼がこちらに来れる唯一の道筋になる。
隣で立つジェーンは、私よりもだいぶ先に読み終えていたが、何度も文章を読んで思考している。そして読み終えたリンが、我々に言った。
「確かにさ、ここ最近のニュース見てると、ネビリス皇帝が腹いせ?なのか、民に負担のかかる政策を平気でしているようだし、場内でもいつもピリピリしている皇帝の機嫌を少しでも損ねると、あらぬ罪を着せられて職を奪われ、すぐさま投獄されるって、内部告発の記事だってあった。」
そして、リンがカウンターに身体を乗り出して、私のナイトアームを掴んだ。
「ねえねえ、チェイスさんってさ、ジェーンが探してたパーツを一緒に取ってくれたりして、本当は良い人なんでしょう?ネビリス皇帝に振り回されてるだけで、本当は優しい人なんでしょう?」
「まあ……海賊船で会った時は、良い人だったけれど、ジェーンはどう思う?」
ジェーンは首を回しながら考えていた。それは私がたまに考えている時にやる仕草だった。動きを止めて、ちょっとしてから口を開いた。
「ああ、あの色情魔の彼ですね。情欲に対する彼の反応は全くもって異質ですが、確かに海賊船では誰かさんに好かれたかったのか、私に協力をしてくれました。因みに帝国研究所でも彼は、ずば抜けて優秀だった。もし私がこの世にいなければ、魔工学において彼の右に出る者はいなかったでしょう。聖人君主の真似としては小さき事かな、ガーデニングボットの研究をしているのも、帝都の農家がここ数年続いている不作に困り果てていたのを知った為だと聞きました。彼は優しいのでしょうね、私と違って。」
所々毒を感じる発言だが、ジェーンはチェイスを助けたいと思っているのだろう、そんな感じだと思った。ジェーンは続けた。
「そして、チェイスは戦闘の最中で我々に投降する事で、我々の仲間になろうとしている。だからこそ、この情報を開示して来たという訳ですか。しかし、光の神殿でコテンパンにやられたというのに、その相手に投降したいと思えるのでしょうか?彼には自尊心が無いのか、それ以上にこちらに来る魅力を考えているのか……あいた。」
ジェーンの肩を叩いたのは、カウンターに上半身を乗せたままのリンだった。リンはジェーンに怒った。
「そんなさ、コテンパンにやられたって行ったら可哀想でしょ~!チェイスさんだって、このピリピリした職場に嫌気がさしたんだよ!私だって前の所長がクソで職場の環境が悪くなった時は、逃げたくて仕方なかった!結局はあの人を追い出せたから良かったけれど、チェイスさんの立場を考えたら、もうここしか逃げるとこないもん!こうやって連絡して来たんだよ?私はチェイスさんの気持ち、とっても分かる。キリーだってそうでしょ?」
そこで私に振るのね……だがチェイスは、今は新光騎士団を束ねる長だ。ジェーンの言っているように、一度負けたのに、簡単にこっちに来たいと思うだろうか?寧ろ恨んでるのではないだろうか?私は静かに答えた。
「……リンの言う通り、チェイスの立場から考えれば、皇帝に気付かれないように、こちらに来るのは難しいから、今からこちら側に来るなら離反しかない。そして実際に情報を漏らしてくれた。具体的に聞いてみて、彼がどれほど本気なのか探ろうか?」
「何ジェーンみたいに疑心暗鬼なこと言ってんのキリー!」と、リンが私の胸倉を掴んだ。苦しい。「純粋に、具体的に聞いて。良い?」
何その注文。だけど、彼女の意見を参考にして、チェイスに質問してみよう。ジェーンが丁度、私をリンから助けてくれて、ついでに彼女をカウンターの奥に押し戻してくれた。私はPCを使った。
『なるほど、心情お察しします。戦いのことですが、どのタイミングで離反しますか?それにどれほどの軍勢が来るのか……それが分かれば助かるのですが。』
すぐに返事が来た。
『アクロスブルーにはヴァルガ騎士団長の師団、それから僕の師団で侵攻します。しかし騎士団長の師団には臨時のギルド兵も加わっているので、通常よりも大人数だ。僕は、アクロスブルーの城下方面、一番奥に陣を引く予定です。エリア名で言うと、Aです。ユークから一番遠い所だ。そしてヴァルガ騎士団長とギルドの複合部隊は、実はアクロスブルー中腹のEエリアの線路に潜んでいる予定なんだ。奇襲、というものだね。それは、僕がLOZを引き付けて挟み撃ちする作戦だと伝えたからです。』
何だか、すごく教えてくれる。
『だから、君たちは敢えて僕の師団に近付いてくる先行隊を作り、僕がそれに合流する。君たちは本陣をユーク側の入り口付近に構えていれば、僕たちが合流した先行隊と共に、ヴァルガ隊をサンドイッチのように挟める。ヴァルガ騎士団長は僕と先行隊を挟めると思っていたんだから、驚くだろうし、その兵力差に、幾ら彼でも手も足も出ないだろうね。アクロスブルーは線路の階と高速道路の階に分かれているが、線路の階にはEエリアしかおりれないし、そこから別のエリアには行けない。セキリュティがあって、通るのに時間が必要だ。』
「はあ、もう少し、簡略化して物事を伝えられないものでしょうか。有難いですが。」
「ジェーン、文句を言わないの。」
『挟み撃ちはもうこりごりだけど、アクロスブルーは実質上、一本道の密室だ。ヴァルガ隊がLOZの先鋒隊の後ろに出現して、僕たちと挟めると思っているところを僕が離反して、ヴァルガ隊を挟んでしまえば逃げ道は無く、この戦は簡単だ。他の案があるなら、それで良い。でも僕を騙して殺すことはやめてね。どうだろうか?お願いします、キルディア、返事を待っております。』
私が読み終わる頃には、皆はもう読み終えていて、リンとアリスはテンションが上がっているのか、手を合わせて喜んでいた。ジェーンは思案顔で沈黙を決め込み、私はぼーっとして、どうすべきか考えた。チェイスの言うことは分かる、と頭の中で整理をしようとした時に、またカウンター越しにリンに肩を叩かれた。
「ねえねえキリー、良いじゃん、今度はチェイスと一緒に、ヴァルガ隊を挟んじゃおうよ!」
「うーん……この通りに行けば、それは簡単だよ。ヴァルガもイタズラに抵抗して、兵を見殺しにする真似はしないだろう。」
「それに!」と、大きな声で言ったのはアリスだった。「伏兵の場所だって教えてくれてるよ!こんなに教えてくれるんだもん、ねえキリー、いやボス、彼を助けましょうよ!」
するとジェーンが言った。
「ここまで開示をして、例えチェイスが宣言通りに離反しなかったとしても、ヴァルガ隊をこちらからも挟めてしまいますからね。我々にはナイトアームのキルディアという新兵器がありますし、帝国側に何の利益もありません。彼の話を信じても良いかと、私は思いますよ。」
「ほうら!ボス!」
と、アリスが私の肩を叩いた。まあ確かにジェーンがそう言うなら、リンも口を尖らせて今にも胸倉掴んできそうだし、私は渋々頷いた。
「まあ、そうだね。チェイスに返事をしよう。」
「ちょっとそれ貸して。」
リンがこちらに手を伸ばしてきたので、PCをリンに向けると、返事を書き始めた。チェイスのような人物が、ここまで追い込まれるような状況が、今の城内にあるのは確かに分かる。そうだね、彼を助けよう。そうと決まれば、彼を助けるしかないのだ。
「チェイスを助けよう。」
おう、とアリスとリンが同時に言った。それからリンがPCを返してくれたが文面を見て、私はすぐにリンを睨んだ。
『分かりました、迎えに行きます。海賊船の続きはその後で。』と、書かれていたのだ。それを確認したジェーンはリンに少し怒鳴った。
「これをあの男が間に受けたらどうなさいますか、リン……!」
「だって、返事くださいって言うから返事しただけです。ほら、返事すぐにきたよ?」
それにはこう書いてあった。
『恩に着るよ、キルディア。どうか僕を迎えに来てくれ。そしたら、本当にあの時の、続きをしたいと、切実に願っている。でもこれは、二度目だ。 チェイス・R・C』
二度目?確かにその後で、あの時の続きをするなら、接吻するのは二度目にはなるが……変な言い回しだ。しかし思ったよりも情熱的な文章が来てしまった。リンとアリスは腹を抱えてしまい、ジェーンはPCを思いっきりバタンと音を立てて閉じてしまった。
『ごめんね、途切れちゃって。今、陛下が来たから慌てちゃってさ。まあ、そう言うことで、僕もその戦闘には勿論、参加する予定なんだ。そこでなんだけれど、もう直球に言うけれど、僕はやっぱり、君達の仲間になりたい。もう、この帝国の元帥を担うことは僕にはとても荷が重いんだ。何もかも上手く言っていないって、陛下はイライラして僕に無茶振りに近い指示をしてくるし、大臣のヒステリックに付き合う元気も無くなって来た。それで、君達の仲間になりたいのだけれど、もう検問が厳しい帝都から普通に抜け出すことは、かなり難しいんだ。そこで、僕にあるアイデアがある。それは、僕にとっても、LOZにとってもメリットのある方法だ。よく考えついたななんて、自分で自分を褒めちゃった……えっと、説明するね。』
何だかチェイスっぽい文章だ。それに彼が今の境遇に不自由しているのは、なんだか分かる気がする。シルヴァ大臣とは火山の一件まで、あまり面識が無かったけれど、あの一瞬だけで、とても激情家だと思ったから、あれと毎日一緒に居るのは、骨が折れる所業だろうに。私は同情しながら続きを読んだ。
『僕と君たちの接点があるのは、この時しかない。つまり、戦闘の最中だ。僕は作戦を遂行している振りをして、頃合いを見て離反をしたい。一緒に戦っているヴァルガ騎士団長の部隊を嵌めることだって出来るだろう。ここまで理解してくれただろうか?キルディアの返事を待っています。』
私は読み終えると腕組みをして考えた。チェイスの言っていることは勿論理解している。確かに、帝都から逃げることの出来ない彼は、戦闘中の離反という、我々にとって一つの重要なカードを切らせてくれると言っているのだ。そしてそれが、彼がこちらに来れる唯一の道筋になる。
隣で立つジェーンは、私よりもだいぶ先に読み終えていたが、何度も文章を読んで思考している。そして読み終えたリンが、我々に言った。
「確かにさ、ここ最近のニュース見てると、ネビリス皇帝が腹いせ?なのか、民に負担のかかる政策を平気でしているようだし、場内でもいつもピリピリしている皇帝の機嫌を少しでも損ねると、あらぬ罪を着せられて職を奪われ、すぐさま投獄されるって、内部告発の記事だってあった。」
そして、リンがカウンターに身体を乗り出して、私のナイトアームを掴んだ。
「ねえねえ、チェイスさんってさ、ジェーンが探してたパーツを一緒に取ってくれたりして、本当は良い人なんでしょう?ネビリス皇帝に振り回されてるだけで、本当は優しい人なんでしょう?」
「まあ……海賊船で会った時は、良い人だったけれど、ジェーンはどう思う?」
ジェーンは首を回しながら考えていた。それは私がたまに考えている時にやる仕草だった。動きを止めて、ちょっとしてから口を開いた。
「ああ、あの色情魔の彼ですね。情欲に対する彼の反応は全くもって異質ですが、確かに海賊船では誰かさんに好かれたかったのか、私に協力をしてくれました。因みに帝国研究所でも彼は、ずば抜けて優秀だった。もし私がこの世にいなければ、魔工学において彼の右に出る者はいなかったでしょう。聖人君主の真似としては小さき事かな、ガーデニングボットの研究をしているのも、帝都の農家がここ数年続いている不作に困り果てていたのを知った為だと聞きました。彼は優しいのでしょうね、私と違って。」
所々毒を感じる発言だが、ジェーンはチェイスを助けたいと思っているのだろう、そんな感じだと思った。ジェーンは続けた。
「そして、チェイスは戦闘の最中で我々に投降する事で、我々の仲間になろうとしている。だからこそ、この情報を開示して来たという訳ですか。しかし、光の神殿でコテンパンにやられたというのに、その相手に投降したいと思えるのでしょうか?彼には自尊心が無いのか、それ以上にこちらに来る魅力を考えているのか……あいた。」
ジェーンの肩を叩いたのは、カウンターに上半身を乗せたままのリンだった。リンはジェーンに怒った。
「そんなさ、コテンパンにやられたって行ったら可哀想でしょ~!チェイスさんだって、このピリピリした職場に嫌気がさしたんだよ!私だって前の所長がクソで職場の環境が悪くなった時は、逃げたくて仕方なかった!結局はあの人を追い出せたから良かったけれど、チェイスさんの立場を考えたら、もうここしか逃げるとこないもん!こうやって連絡して来たんだよ?私はチェイスさんの気持ち、とっても分かる。キリーだってそうでしょ?」
そこで私に振るのね……だがチェイスは、今は新光騎士団を束ねる長だ。ジェーンの言っているように、一度負けたのに、簡単にこっちに来たいと思うだろうか?寧ろ恨んでるのではないだろうか?私は静かに答えた。
「……リンの言う通り、チェイスの立場から考えれば、皇帝に気付かれないように、こちらに来るのは難しいから、今からこちら側に来るなら離反しかない。そして実際に情報を漏らしてくれた。具体的に聞いてみて、彼がどれほど本気なのか探ろうか?」
「何ジェーンみたいに疑心暗鬼なこと言ってんのキリー!」と、リンが私の胸倉を掴んだ。苦しい。「純粋に、具体的に聞いて。良い?」
何その注文。だけど、彼女の意見を参考にして、チェイスに質問してみよう。ジェーンが丁度、私をリンから助けてくれて、ついでに彼女をカウンターの奥に押し戻してくれた。私はPCを使った。
『なるほど、心情お察しします。戦いのことですが、どのタイミングで離反しますか?それにどれほどの軍勢が来るのか……それが分かれば助かるのですが。』
すぐに返事が来た。
『アクロスブルーにはヴァルガ騎士団長の師団、それから僕の師団で侵攻します。しかし騎士団長の師団には臨時のギルド兵も加わっているので、通常よりも大人数だ。僕は、アクロスブルーの城下方面、一番奥に陣を引く予定です。エリア名で言うと、Aです。ユークから一番遠い所だ。そしてヴァルガ騎士団長とギルドの複合部隊は、実はアクロスブルー中腹のEエリアの線路に潜んでいる予定なんだ。奇襲、というものだね。それは、僕がLOZを引き付けて挟み撃ちする作戦だと伝えたからです。』
何だか、すごく教えてくれる。
『だから、君たちは敢えて僕の師団に近付いてくる先行隊を作り、僕がそれに合流する。君たちは本陣をユーク側の入り口付近に構えていれば、僕たちが合流した先行隊と共に、ヴァルガ隊をサンドイッチのように挟める。ヴァルガ騎士団長は僕と先行隊を挟めると思っていたんだから、驚くだろうし、その兵力差に、幾ら彼でも手も足も出ないだろうね。アクロスブルーは線路の階と高速道路の階に分かれているが、線路の階にはEエリアしかおりれないし、そこから別のエリアには行けない。セキリュティがあって、通るのに時間が必要だ。』
「はあ、もう少し、簡略化して物事を伝えられないものでしょうか。有難いですが。」
「ジェーン、文句を言わないの。」
『挟み撃ちはもうこりごりだけど、アクロスブルーは実質上、一本道の密室だ。ヴァルガ隊がLOZの先鋒隊の後ろに出現して、僕たちと挟めると思っているところを僕が離反して、ヴァルガ隊を挟んでしまえば逃げ道は無く、この戦は簡単だ。他の案があるなら、それで良い。でも僕を騙して殺すことはやめてね。どうだろうか?お願いします、キルディア、返事を待っております。』
私が読み終わる頃には、皆はもう読み終えていて、リンとアリスはテンションが上がっているのか、手を合わせて喜んでいた。ジェーンは思案顔で沈黙を決め込み、私はぼーっとして、どうすべきか考えた。チェイスの言うことは分かる、と頭の中で整理をしようとした時に、またカウンター越しにリンに肩を叩かれた。
「ねえねえキリー、良いじゃん、今度はチェイスと一緒に、ヴァルガ隊を挟んじゃおうよ!」
「うーん……この通りに行けば、それは簡単だよ。ヴァルガもイタズラに抵抗して、兵を見殺しにする真似はしないだろう。」
「それに!」と、大きな声で言ったのはアリスだった。「伏兵の場所だって教えてくれてるよ!こんなに教えてくれるんだもん、ねえキリー、いやボス、彼を助けましょうよ!」
するとジェーンが言った。
「ここまで開示をして、例えチェイスが宣言通りに離反しなかったとしても、ヴァルガ隊をこちらからも挟めてしまいますからね。我々にはナイトアームのキルディアという新兵器がありますし、帝国側に何の利益もありません。彼の話を信じても良いかと、私は思いますよ。」
「ほうら!ボス!」
と、アリスが私の肩を叩いた。まあ確かにジェーンがそう言うなら、リンも口を尖らせて今にも胸倉掴んできそうだし、私は渋々頷いた。
「まあ、そうだね。チェイスに返事をしよう。」
「ちょっとそれ貸して。」
リンがこちらに手を伸ばしてきたので、PCをリンに向けると、返事を書き始めた。チェイスのような人物が、ここまで追い込まれるような状況が、今の城内にあるのは確かに分かる。そうだね、彼を助けよう。そうと決まれば、彼を助けるしかないのだ。
「チェイスを助けよう。」
おう、とアリスとリンが同時に言った。それからリンがPCを返してくれたが文面を見て、私はすぐにリンを睨んだ。
『分かりました、迎えに行きます。海賊船の続きはその後で。』と、書かれていたのだ。それを確認したジェーンはリンに少し怒鳴った。
「これをあの男が間に受けたらどうなさいますか、リン……!」
「だって、返事くださいって言うから返事しただけです。ほら、返事すぐにきたよ?」
それにはこう書いてあった。
『恩に着るよ、キルディア。どうか僕を迎えに来てくれ。そしたら、本当にあの時の、続きをしたいと、切実に願っている。でもこれは、二度目だ。 チェイス・R・C』
二度目?確かにその後で、あの時の続きをするなら、接吻するのは二度目にはなるが……変な言い回しだ。しかし思ったよりも情熱的な文章が来てしまった。リンとアリスは腹を抱えてしまい、ジェーンはPCを思いっきりバタンと音を立てて閉じてしまった。
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