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交差する、最後の戦い編
234 民に照らされる帝都
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中途半端に攻撃するなら、煙幕はやめて欲しかった……。入り口から、黒煙がどんどんと外に流れていってはいるが、まだ咳き込むほどに、私の周りは煙っている。
しかし、先程の放送は本当だったのだろうか。チェイス、私達に協力してくれた?確かに外は、真っ暗だった。ウォッフォンでライトを付けていないと、月明かりだけでは足りない。チェイスの言葉を聞いて、民兵達に、何か動きはあるだろうか?私は、入り口の影から顔を覗かせて、ウォッフォンのライトの集団、彼らの様子を覗いた。
すると、彼らは武器をおろしていて、何やら真剣に話し合っている様子だった。きっと放送の言葉を聞いて、どうするのか考えているのだろう。私は施設内から出て、石碑の傍に移動し、彼らを見守った。彼らは私を見ると、一瞬身構えたが、私に敵意がないことが分かると、また話し合いを続けた。
その時、メットからヴァルガの声が聞こえた。
『こちらヴァルガ隊。新光騎士団の城下民兵が、チェイス元帥に賛同して、投降してくれた。手当ても済んだので、今から彼らと共に、噴水広場に向かう。』
『そのようですね……これはこれは、チェイスに何と礼を申せばいいか。』
ジェーンの声が、少し嬉しそうだった。これは、明らかにいい展開だった。皆はやはり、皇帝と同じぐらいに、元帥であるチェイスのことも信じているのだ。
しかし、このままでは城内にいるチェイスが、ネビリスに狙われて危険だ。民の為、ジェーンとの未来の為、そして普通にチェイスの為、早く私も彼のことを助けに行きたいが……ここの皆は、まだ話し合っている。
しかし漸く、先程の皆のリーダー的存在のおじいさんが、こちらに二、三歩、向かって来てから、大声で私に聞いた。
「ギルバート様は……我々がLOZに加勢すると言ったら、賛成してくれるだろうか?先程、この子が、煙幕を投げてしまったのだが……。」
おじいさんは、自分の足にしがみつく小さい騎士の頭に、手を置いた。私は笑顔になった。
「ふふ、それくらい何も、気にしておりません。いい援護だった。今度は、LOZの為に、チェイス元帥の為に、煙幕を投げて欲しい。」
私の言葉を聞いた新光騎士団の民兵の表情がほころんだ。その場に拍手が湧き上がり、私も一応拍手をしておいた。おじいさんは、私の目の前までやってきて、喜びながら言った。
「それなら、我らもLOZに加勢します!この城下を、そして何卒、チェイス元帥をお救いください!彼こそが、我らの光なのです!どうか!」
「分かりました、そ、それはみんな?みんなが加勢してくれるの?」
私は皆に聞いた。すると、皆は互いに目を合わせながら、頷いてくれたのだ。これは……これは、とてもいい展開だった。私は微笑み、皆の間を通りながら、施設前に停めたブレイブホースの方へと向かった。
「ありがとうございます!皆さん、本当にありがとう!それでは、ルミネラ城に行きましょう!」
皆が、私の為に道を開けてくれている。ああ、こんな展開になるなんて、なんてチェイスにお礼を言うべきか、彼はやはり、大徳の人だったのだ。疑ったこともあったけど、信じて良かった。私はブレイブホースに乗り、避けて道を作ってくれた皆の間を駆け始めた。
そうだ、と状況報告をした。
「キルディア隊『大丈夫見てたよ!キリーの方も、新光騎士団の民兵がLOZになったんでしょ!?』
「そうそう」
リンの声に私は思いっきり微笑んだ。ブレイブホースの速度を上げて、脇道から商いの広場に出たところで、衝撃の光景が広がっており、我が目を疑った。
そこには、大勢の帝都の住人が、木や鉄板を紐で体に括り付けて、護身用の魔銃を手に持ち、噴水広場に向かって走っていたのだ。途中、騎士が住人達に取り押さえている光景もあった。
これは一体……!?私は、ブレイブホースを停めて、近くを走っていた、ちょっと小太りの、魚のTシャツを着たおじさんに聞いた。
「な、何をあなた達はしているのです?」
私に気付いたおじさんは、目を丸くして答えた。
「お、おお、ギルバート様!我らも非力ながら加勢しに来たのです!ヴィノクールや他の街の皆だって、本当は兵士じゃないのに、帝都の為に頑張ってくれているんだ!今までは正直、遠くの地域の話だから関係ないと思ってたけど、こうして実際に巻き込まれて、助けられたら、俺たちだってやらないといけないんだって思った!それに俺の中学の息子だって、新光騎士団の何処かで戦っている……でも、民兵は、LOZの方に来たのでしょう?」
「え、ええまあ。」
「だったら尚更だ。」おじさんは笑顔になった。「陛下に怯えて家にいるだけじゃダメなんだ。息子を失ったら俺の魚屋を一体誰が継ぐんだ!チェイス様を見習って、俺たちも頑張らないとって、近所の連中と話して、今こうなってます!はは!」
おじさんの周りに居た、おじさんと同年代ぐらいの男達が、おお!と、天に手を掲げた。私は嬉しくなった。
「そ、そうか……ありがとう。」
と、照れながら言って、私は彼に、自分のLOZのメットを渡して、「はっ!」とブレイブホースを走らせた。今の一瞬で、どれほど元気と勇気をもらったことか。
私は、帝都の民と共に、商いの広場を駆け抜けて、噴水広場に向かった。ウォッフォンで連絡をしようとしたら、丁度その時に、ジェーンから連絡が入った。
『キルディア隊の情報によると、一般の方々も次々と、我々の援護に駆けつけてくれています。護身用の魔銃でも、数がまとまれば脅威になります。さて、キルディア。大事なヘルメットを一般男性に預けましたね。おかげで我らの情報が一般の方々に伝わる事になりました。まあ、それは別に、もう構わないのですが、それで、視点カメラから逃れられたおつもりなら、あなたは詰めが甘かった事になります。』
「え!?なんで!?もう私に視点カメラ付いて無いでしょ!?」
『ふっ……ふはははは!ここまで、上手くいくとは思いませんでしたよ。ヴァルガはメットに付けましたが、あなたに付いているカメラは、ふふっ……私のプレゼントした、ロケットにつけられております。あなたのことだ、ネビリス戦を私に見せない為に、そうする可能性がありましたからね。』
「お察しの通りでございます……流石ですね。」
そうなのだ。ナチュラルに、視点カメラを誰かに渡せたらいいなと思っていたが、はあ、だから彼は急にチョーカーなんてものをプレゼントしてきたのか。どう足掻いても彼の監視から逃れる事が出来なかったのね。はあ……ならば。
「じゃあこのチョーカー置いていきますね。」
『……私のミスです。時期早々に種明かしをしてしまいました。認めますから、置いて行かないでください。』
まあ、彼はきっと今、とても喜んでいるに違いない。帝都の民兵がこちら側に来てくれたのだから。そして珍しく舞い上がっちゃったのだろう。私は仕方のない奴め、と微笑みながら答えた。
「分かった、置いて行かないよ。」
『さて、』切り替え早いな。『もう直ぐ陽動部隊が、噴水広場に到着します。クラース、噴水広場の状況はどうでしょうか?』
『こちらクラース。さっきまでは、前からも後ろからも敵が来るもんで、守るのに必死こいてたが、今は街方面から来る新光騎士団が居なくなったから、城との交戦に集中出来ている!きっとそう言う事だったのだな!城とは主に、射撃合戦になっているが、ゲイル隊とヴィノクール隊で何とかやりあっているぞ!あ、ヴァルガ達が来た。』
『そうですね、ヴァルガ率いる西門部隊が合流完了しました。キルディアも、もうすぐ着きそうですね。』
私は頷いた。
「うん、もう目の前に装甲車や、皆の姿が見えているよ。」
『了解しました。キルディアが到着次第、何とか城内へ戦線を押してください。それから、チェイスの捜索をし、彼を救出しましょう。』
「了解!」
私はブレイブホースの出力をあげた。遥か前方に見える噴水広場に向かっていると、脇道からブレイブホースに乗った、オーウェン隊が合流した。
「オーウェン!」
「ギルバート様!これは、行くしかありません!」
「うん行こう!みんな行こう!」
私が叫ぶと、走っていた帝都の民も、おお!と叫んで手を掲げた。私には皆がいてくれる。それが勇気の源だった。
停電している都市の中、商いの広場では煉瓦畳みの道路が、ブレイブホースのライトや、皆のウォッフォンで、塗り潰されたかのように眩く照らされていた。ユークの目抜き通りを思い出したが、それよりも綺麗だった。
今の私は、最強な気がした。早く、チェイスを助けたい!
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すると、彼らは武器をおろしていて、何やら真剣に話し合っている様子だった。きっと放送の言葉を聞いて、どうするのか考えているのだろう。私は施設内から出て、石碑の傍に移動し、彼らを見守った。彼らは私を見ると、一瞬身構えたが、私に敵意がないことが分かると、また話し合いを続けた。
その時、メットからヴァルガの声が聞こえた。
『こちらヴァルガ隊。新光騎士団の城下民兵が、チェイス元帥に賛同して、投降してくれた。手当ても済んだので、今から彼らと共に、噴水広場に向かう。』
『そのようですね……これはこれは、チェイスに何と礼を申せばいいか。』
ジェーンの声が、少し嬉しそうだった。これは、明らかにいい展開だった。皆はやはり、皇帝と同じぐらいに、元帥であるチェイスのことも信じているのだ。
しかし、このままでは城内にいるチェイスが、ネビリスに狙われて危険だ。民の為、ジェーンとの未来の為、そして普通にチェイスの為、早く私も彼のことを助けに行きたいが……ここの皆は、まだ話し合っている。
しかし漸く、先程の皆のリーダー的存在のおじいさんが、こちらに二、三歩、向かって来てから、大声で私に聞いた。
「ギルバート様は……我々がLOZに加勢すると言ったら、賛成してくれるだろうか?先程、この子が、煙幕を投げてしまったのだが……。」
おじいさんは、自分の足にしがみつく小さい騎士の頭に、手を置いた。私は笑顔になった。
「ふふ、それくらい何も、気にしておりません。いい援護だった。今度は、LOZの為に、チェイス元帥の為に、煙幕を投げて欲しい。」
私の言葉を聞いた新光騎士団の民兵の表情がほころんだ。その場に拍手が湧き上がり、私も一応拍手をしておいた。おじいさんは、私の目の前までやってきて、喜びながら言った。
「それなら、我らもLOZに加勢します!この城下を、そして何卒、チェイス元帥をお救いください!彼こそが、我らの光なのです!どうか!」
「分かりました、そ、それはみんな?みんなが加勢してくれるの?」
私は皆に聞いた。すると、皆は互いに目を合わせながら、頷いてくれたのだ。これは……これは、とてもいい展開だった。私は微笑み、皆の間を通りながら、施設前に停めたブレイブホースの方へと向かった。
「ありがとうございます!皆さん、本当にありがとう!それでは、ルミネラ城に行きましょう!」
皆が、私の為に道を開けてくれている。ああ、こんな展開になるなんて、なんてチェイスにお礼を言うべきか、彼はやはり、大徳の人だったのだ。疑ったこともあったけど、信じて良かった。私はブレイブホースに乗り、避けて道を作ってくれた皆の間を駆け始めた。
そうだ、と状況報告をした。
「キルディア隊『大丈夫見てたよ!キリーの方も、新光騎士団の民兵がLOZになったんでしょ!?』
「そうそう」
リンの声に私は思いっきり微笑んだ。ブレイブホースの速度を上げて、脇道から商いの広場に出たところで、衝撃の光景が広がっており、我が目を疑った。
そこには、大勢の帝都の住人が、木や鉄板を紐で体に括り付けて、護身用の魔銃を手に持ち、噴水広場に向かって走っていたのだ。途中、騎士が住人達に取り押さえている光景もあった。
これは一体……!?私は、ブレイブホースを停めて、近くを走っていた、ちょっと小太りの、魚のTシャツを着たおじさんに聞いた。
「な、何をあなた達はしているのです?」
私に気付いたおじさんは、目を丸くして答えた。
「お、おお、ギルバート様!我らも非力ながら加勢しに来たのです!ヴィノクールや他の街の皆だって、本当は兵士じゃないのに、帝都の為に頑張ってくれているんだ!今までは正直、遠くの地域の話だから関係ないと思ってたけど、こうして実際に巻き込まれて、助けられたら、俺たちだってやらないといけないんだって思った!それに俺の中学の息子だって、新光騎士団の何処かで戦っている……でも、民兵は、LOZの方に来たのでしょう?」
「え、ええまあ。」
「だったら尚更だ。」おじさんは笑顔になった。「陛下に怯えて家にいるだけじゃダメなんだ。息子を失ったら俺の魚屋を一体誰が継ぐんだ!チェイス様を見習って、俺たちも頑張らないとって、近所の連中と話して、今こうなってます!はは!」
おじさんの周りに居た、おじさんと同年代ぐらいの男達が、おお!と、天に手を掲げた。私は嬉しくなった。
「そ、そうか……ありがとう。」
と、照れながら言って、私は彼に、自分のLOZのメットを渡して、「はっ!」とブレイブホースを走らせた。今の一瞬で、どれほど元気と勇気をもらったことか。
私は、帝都の民と共に、商いの広場を駆け抜けて、噴水広場に向かった。ウォッフォンで連絡をしようとしたら、丁度その時に、ジェーンから連絡が入った。
『キルディア隊の情報によると、一般の方々も次々と、我々の援護に駆けつけてくれています。護身用の魔銃でも、数がまとまれば脅威になります。さて、キルディア。大事なヘルメットを一般男性に預けましたね。おかげで我らの情報が一般の方々に伝わる事になりました。まあ、それは別に、もう構わないのですが、それで、視点カメラから逃れられたおつもりなら、あなたは詰めが甘かった事になります。』
「え!?なんで!?もう私に視点カメラ付いて無いでしょ!?」
『ふっ……ふはははは!ここまで、上手くいくとは思いませんでしたよ。ヴァルガはメットに付けましたが、あなたに付いているカメラは、ふふっ……私のプレゼントした、ロケットにつけられております。あなたのことだ、ネビリス戦を私に見せない為に、そうする可能性がありましたからね。』
「お察しの通りでございます……流石ですね。」
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『こちらクラース。さっきまでは、前からも後ろからも敵が来るもんで、守るのに必死こいてたが、今は街方面から来る新光騎士団が居なくなったから、城との交戦に集中出来ている!きっとそう言う事だったのだな!城とは主に、射撃合戦になっているが、ゲイル隊とヴィノクール隊で何とかやりあっているぞ!あ、ヴァルガ達が来た。』
『そうですね、ヴァルガ率いる西門部隊が合流完了しました。キルディアも、もうすぐ着きそうですね。』
私は頷いた。
「うん、もう目の前に装甲車や、皆の姿が見えているよ。」
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「了解!」
私はブレイブホースの出力をあげた。遥か前方に見える噴水広場に向かっていると、脇道からブレイブホースに乗った、オーウェン隊が合流した。
「オーウェン!」
「ギルバート様!これは、行くしかありません!」
「うん行こう!みんな行こう!」
私が叫ぶと、走っていた帝都の民も、おお!と叫んで手を掲げた。私には皆がいてくれる。それが勇気の源だった。
停電している都市の中、商いの広場では煉瓦畳みの道路が、ブレイブホースのライトや、皆のウォッフォンで、塗り潰されたかのように眩く照らされていた。ユークの目抜き通りを思い出したが、それよりも綺麗だった。
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