60 / 127
60 二度と許さない
しおりを挟む
「アリシア、俺がそばにいる、大丈夫だ。」
「無理!」私は掠れる声で訴えた。「無理!怖いの!この世界で、誰も、私の味方が、いないの!居場所が、ないの!」
「俺はアリシアの味方だ」イオリが私とぎゅうときつく抱きしめてくれた。「俺がついている。ここがアリシアの居場所でいい。一緒に、ここにいよう。俺と一緒に呼吸をするんだ。」
トン、トン、とイオリの手が私の背骨に当たる。イオリの白いシャツに私は何度も息を吐いた。イオリがわざと大きく呼吸をしてくれている。私はそれに合わせた。
頭のぐら付きが取れない。私はふらっと倒れそうになった。イオリが頭を支えてくれた。私は彼にしがみついた。
いい匂いがした。後ろにはバリーがいる。でも私を包む温かさに、安心した。
誰かが安心を与えてくれるなんて、思ってもこなかった。彼の優しさに、そして彼のことが好きな気持ちが私を混乱させて、ポロポロと涙が出た。
イオリ、ずっと一緒にいて欲しい。
「アリシア、今に集中するんだ。君は今、俺とここに座って、ゆっくり呼吸をしている。」
「うん……。」
「今、何をしている?教えてくれ。」
「イオリの部屋にいる。イオリがここにいる。一緒に息してる。」
「その通りだ。」
「後ろにバリーがいる。でも、こうしていると安心する。」
「ああ、俺が守る。もうお前しか守らない。大丈夫だ。」
「それってどういうこと?」
サラの声がした。するとサラの足音がこっちに来て、私の肩を掴んで、イオリから引き剥がそうとした。しかしイオリが私を抱き留めて、片手でサラを突き飛ばした。
「邪魔をするな、サラ。……貴様はバリーを選んだのだろう?俺の視界から消えろ。」
「……。」
「まあそれは事実だよな、サラちゃん!ヘッヘッヘ!」
バリーの下品な笑い声だ。私はイオリの肩に頬をつけた。やっと呼吸が落ち着いてきたのに、もう彼を思い出したくなかった。もう許して欲しかった。イオリは私をギュッとしたまま、多分バリーを見つめている。
「なあアリシア。あの時は、ほんとーに悪かった。だからこっちに戻っておいで。一緒に組もう。今度は夫婦じゃないから、もう夜の行為とか、そういうことはしないよ。俺にはサラちゃんがいるしね。お仕事だけ一緒にしよう。だから俺ともう一度仕事をして、ガッポガッポ稼ごう?」
「貴様!」イオリの喉が震えた。「誰のせいでアリシアがこうなったと思う!?お前がアリシアを手にかけたんだろうが!」
「だからなんだ?お兄さんよ。結局アリシアは、生きるよりもいい思いが出来てるじゃねえか!金は手に入るし、死ぬ心配もねえ!俺のおかげだぞ?ハッハ!」
「アリシア、少しここに座っていろ。」
「うん?」
イオリが私を丁寧にソファに座らせてくれた。彼はスッと立ち上がって、バリーの方へ向かったと思ったら、そのままニヤついた彼の顔面を思いっきり殴った。
バリーの顎が一瞬ずれたように見えた、結構な威力の殴りだった。バリーはよろけて、しかし持ち堪えて、すぐにベルトからハンドガンを出してイオリに向け、構えた。
危ない……!
バリーは曲がった鼻と切れた口から赤い血を流しながら、イオリに言った。
「組織の人間だろうが、俺に手を出す奴は生きて帰れねぇ。」
「で、でもバリー?」
「うるせえ、女は黙ってろ!」
バリーが一瞬サラを見た隙に、私はイオリの背後まで、よろけながらも移動した。
「俺を撃つのか?バリー。」
「馬鹿だなイオリ、お前もアリシアと同じ末路を辿ることになるとはな。さあお前の心臓はどんな弾け方をするのか見せてくれ…………どーん!」
そういえば、あの時も彼はどーん!と言っていた。人を撃つ時に、どうしてそんなふざけたことを言うのか、私は不思議だった。
私はイオリの身体をすり抜けて前に出て、胸を広げた。あの時と同じように、バリーの放った地属性のオレンジ色の弾丸は、私の胸に命中した。
「アリシア!?」
倒れない私を見たバリーがにやけ顔を消して、もう一発撃った。胸に穴がどんどん開いていく。私は涙を流して、恐怖に口が震えた。でも私の後ろにはイオリがいる。私はゴースト、私は死なない。イオリの為に、ここで逃げるなんてことは出来なかった。
両手を広げたまま、バリーに向かって歩いた。バリーはかなり焦った顔で額から汗を垂らしながら、私の胸を何発も何発も撃った。命中するたびに、あの時の恐怖が私の胸を支配した。
でも歩き続けた。よだれを垂らして泣いた。彼が銃をリロードをしようとした時に、私は一気に間合いを詰めて、彼の銃を掴んで、揉み合いになった。
すると誰かが横から飛んできて、バリーの横顔を殴った。イオリだった。怒りに顔を真っ赤に染めて、彼がよろめいたバリーをまた殴った。その隙に私はバリーのハンドガンを奪って、それを胸の中に抱えて、その場でしゃがんだ。
急に目眩が襲ってきて私はコロリと倒れた。床の冷たさを感じながら、ハンドガンを奪われないように、それを包むように身体を丸めて、抱きしめた。
イオリは、もうやめてくれと微かに首を振るバリーに馬乗りになり、何度も何度も彼の頬を殴った。その内バリーはぐったりして気絶した。それでもイオリはバリーの体を殴り続けた。私は彼らを、ぼんやりと眺めていた。
「無理!」私は掠れる声で訴えた。「無理!怖いの!この世界で、誰も、私の味方が、いないの!居場所が、ないの!」
「俺はアリシアの味方だ」イオリが私とぎゅうときつく抱きしめてくれた。「俺がついている。ここがアリシアの居場所でいい。一緒に、ここにいよう。俺と一緒に呼吸をするんだ。」
トン、トン、とイオリの手が私の背骨に当たる。イオリの白いシャツに私は何度も息を吐いた。イオリがわざと大きく呼吸をしてくれている。私はそれに合わせた。
頭のぐら付きが取れない。私はふらっと倒れそうになった。イオリが頭を支えてくれた。私は彼にしがみついた。
いい匂いがした。後ろにはバリーがいる。でも私を包む温かさに、安心した。
誰かが安心を与えてくれるなんて、思ってもこなかった。彼の優しさに、そして彼のことが好きな気持ちが私を混乱させて、ポロポロと涙が出た。
イオリ、ずっと一緒にいて欲しい。
「アリシア、今に集中するんだ。君は今、俺とここに座って、ゆっくり呼吸をしている。」
「うん……。」
「今、何をしている?教えてくれ。」
「イオリの部屋にいる。イオリがここにいる。一緒に息してる。」
「その通りだ。」
「後ろにバリーがいる。でも、こうしていると安心する。」
「ああ、俺が守る。もうお前しか守らない。大丈夫だ。」
「それってどういうこと?」
サラの声がした。するとサラの足音がこっちに来て、私の肩を掴んで、イオリから引き剥がそうとした。しかしイオリが私を抱き留めて、片手でサラを突き飛ばした。
「邪魔をするな、サラ。……貴様はバリーを選んだのだろう?俺の視界から消えろ。」
「……。」
「まあそれは事実だよな、サラちゃん!ヘッヘッヘ!」
バリーの下品な笑い声だ。私はイオリの肩に頬をつけた。やっと呼吸が落ち着いてきたのに、もう彼を思い出したくなかった。もう許して欲しかった。イオリは私をギュッとしたまま、多分バリーを見つめている。
「なあアリシア。あの時は、ほんとーに悪かった。だからこっちに戻っておいで。一緒に組もう。今度は夫婦じゃないから、もう夜の行為とか、そういうことはしないよ。俺にはサラちゃんがいるしね。お仕事だけ一緒にしよう。だから俺ともう一度仕事をして、ガッポガッポ稼ごう?」
「貴様!」イオリの喉が震えた。「誰のせいでアリシアがこうなったと思う!?お前がアリシアを手にかけたんだろうが!」
「だからなんだ?お兄さんよ。結局アリシアは、生きるよりもいい思いが出来てるじゃねえか!金は手に入るし、死ぬ心配もねえ!俺のおかげだぞ?ハッハ!」
「アリシア、少しここに座っていろ。」
「うん?」
イオリが私を丁寧にソファに座らせてくれた。彼はスッと立ち上がって、バリーの方へ向かったと思ったら、そのままニヤついた彼の顔面を思いっきり殴った。
バリーの顎が一瞬ずれたように見えた、結構な威力の殴りだった。バリーはよろけて、しかし持ち堪えて、すぐにベルトからハンドガンを出してイオリに向け、構えた。
危ない……!
バリーは曲がった鼻と切れた口から赤い血を流しながら、イオリに言った。
「組織の人間だろうが、俺に手を出す奴は生きて帰れねぇ。」
「で、でもバリー?」
「うるせえ、女は黙ってろ!」
バリーが一瞬サラを見た隙に、私はイオリの背後まで、よろけながらも移動した。
「俺を撃つのか?バリー。」
「馬鹿だなイオリ、お前もアリシアと同じ末路を辿ることになるとはな。さあお前の心臓はどんな弾け方をするのか見せてくれ…………どーん!」
そういえば、あの時も彼はどーん!と言っていた。人を撃つ時に、どうしてそんなふざけたことを言うのか、私は不思議だった。
私はイオリの身体をすり抜けて前に出て、胸を広げた。あの時と同じように、バリーの放った地属性のオレンジ色の弾丸は、私の胸に命中した。
「アリシア!?」
倒れない私を見たバリーがにやけ顔を消して、もう一発撃った。胸に穴がどんどん開いていく。私は涙を流して、恐怖に口が震えた。でも私の後ろにはイオリがいる。私はゴースト、私は死なない。イオリの為に、ここで逃げるなんてことは出来なかった。
両手を広げたまま、バリーに向かって歩いた。バリーはかなり焦った顔で額から汗を垂らしながら、私の胸を何発も何発も撃った。命中するたびに、あの時の恐怖が私の胸を支配した。
でも歩き続けた。よだれを垂らして泣いた。彼が銃をリロードをしようとした時に、私は一気に間合いを詰めて、彼の銃を掴んで、揉み合いになった。
すると誰かが横から飛んできて、バリーの横顔を殴った。イオリだった。怒りに顔を真っ赤に染めて、彼がよろめいたバリーをまた殴った。その隙に私はバリーのハンドガンを奪って、それを胸の中に抱えて、その場でしゃがんだ。
急に目眩が襲ってきて私はコロリと倒れた。床の冷たさを感じながら、ハンドガンを奪われないように、それを包むように身体を丸めて、抱きしめた。
イオリは、もうやめてくれと微かに首を振るバリーに馬乗りになり、何度も何度も彼の頬を殴った。その内バリーはぐったりして気絶した。それでもイオリはバリーの体を殴り続けた。私は彼らを、ぼんやりと眺めていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
王宮メイドは今日も夫を「観察」する
kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」
王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。
ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。
だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……?
※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる