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60 二度と許さない
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「アリシア、俺がそばにいる、大丈夫だ。」
「無理!」私は掠れる声で訴えた。「無理!怖いの!この世界で、誰も、私の味方が、いないの!居場所が、ないの!」
「俺はアリシアの味方だ」イオリが私とぎゅうときつく抱きしめてくれた。「俺がついている。ここがアリシアの居場所でいい。一緒に、ここにいよう。俺と一緒に呼吸をするんだ。」
トン、トン、とイオリの手が私の背骨に当たる。イオリの白いシャツに私は何度も息を吐いた。イオリがわざと大きく呼吸をしてくれている。私はそれに合わせた。
頭のぐら付きが取れない。私はふらっと倒れそうになった。イオリが頭を支えてくれた。私は彼にしがみついた。
いい匂いがした。後ろにはバリーがいる。でも私を包む温かさに、安心した。
誰かが安心を与えてくれるなんて、思ってもこなかった。彼の優しさに、そして彼のことが好きな気持ちが私を混乱させて、ポロポロと涙が出た。
イオリ、ずっと一緒にいて欲しい。
「アリシア、今に集中するんだ。君は今、俺とここに座って、ゆっくり呼吸をしている。」
「うん……。」
「今、何をしている?教えてくれ。」
「イオリの部屋にいる。イオリがここにいる。一緒に息してる。」
「その通りだ。」
「後ろにバリーがいる。でも、こうしていると安心する。」
「ああ、俺が守る。もうお前しか守らない。大丈夫だ。」
「それってどういうこと?」
サラの声がした。するとサラの足音がこっちに来て、私の肩を掴んで、イオリから引き剥がそうとした。しかしイオリが私を抱き留めて、片手でサラを突き飛ばした。
「邪魔をするな、サラ。……貴様はバリーを選んだのだろう?俺の視界から消えろ。」
「……。」
「まあそれは事実だよな、サラちゃん!ヘッヘッヘ!」
バリーの下品な笑い声だ。私はイオリの肩に頬をつけた。やっと呼吸が落ち着いてきたのに、もう彼を思い出したくなかった。もう許して欲しかった。イオリは私をギュッとしたまま、多分バリーを見つめている。
「なあアリシア。あの時は、ほんとーに悪かった。だからこっちに戻っておいで。一緒に組もう。今度は夫婦じゃないから、もう夜の行為とか、そういうことはしないよ。俺にはサラちゃんがいるしね。お仕事だけ一緒にしよう。だから俺ともう一度仕事をして、ガッポガッポ稼ごう?」
「貴様!」イオリの喉が震えた。「誰のせいでアリシアがこうなったと思う!?お前がアリシアを手にかけたんだろうが!」
「だからなんだ?お兄さんよ。結局アリシアは、生きるよりもいい思いが出来てるじゃねえか!金は手に入るし、死ぬ心配もねえ!俺のおかげだぞ?ハッハ!」
「アリシア、少しここに座っていろ。」
「うん?」
イオリが私を丁寧にソファに座らせてくれた。彼はスッと立ち上がって、バリーの方へ向かったと思ったら、そのままニヤついた彼の顔面を思いっきり殴った。
バリーの顎が一瞬ずれたように見えた、結構な威力の殴りだった。バリーはよろけて、しかし持ち堪えて、すぐにベルトからハンドガンを出してイオリに向け、構えた。
危ない……!
バリーは曲がった鼻と切れた口から赤い血を流しながら、イオリに言った。
「組織の人間だろうが、俺に手を出す奴は生きて帰れねぇ。」
「で、でもバリー?」
「うるせえ、女は黙ってろ!」
バリーが一瞬サラを見た隙に、私はイオリの背後まで、よろけながらも移動した。
「俺を撃つのか?バリー。」
「馬鹿だなイオリ、お前もアリシアと同じ末路を辿ることになるとはな。さあお前の心臓はどんな弾け方をするのか見せてくれ…………どーん!」
そういえば、あの時も彼はどーん!と言っていた。人を撃つ時に、どうしてそんなふざけたことを言うのか、私は不思議だった。
私はイオリの身体をすり抜けて前に出て、胸を広げた。あの時と同じように、バリーの放った地属性のオレンジ色の弾丸は、私の胸に命中した。
「アリシア!?」
倒れない私を見たバリーがにやけ顔を消して、もう一発撃った。胸に穴がどんどん開いていく。私は涙を流して、恐怖に口が震えた。でも私の後ろにはイオリがいる。私はゴースト、私は死なない。イオリの為に、ここで逃げるなんてことは出来なかった。
両手を広げたまま、バリーに向かって歩いた。バリーはかなり焦った顔で額から汗を垂らしながら、私の胸を何発も何発も撃った。命中するたびに、あの時の恐怖が私の胸を支配した。
でも歩き続けた。よだれを垂らして泣いた。彼が銃をリロードをしようとした時に、私は一気に間合いを詰めて、彼の銃を掴んで、揉み合いになった。
すると誰かが横から飛んできて、バリーの横顔を殴った。イオリだった。怒りに顔を真っ赤に染めて、彼がよろめいたバリーをまた殴った。その隙に私はバリーのハンドガンを奪って、それを胸の中に抱えて、その場でしゃがんだ。
急に目眩が襲ってきて私はコロリと倒れた。床の冷たさを感じながら、ハンドガンを奪われないように、それを包むように身体を丸めて、抱きしめた。
イオリは、もうやめてくれと微かに首を振るバリーに馬乗りになり、何度も何度も彼の頬を殴った。その内バリーはぐったりして気絶した。それでもイオリはバリーの体を殴り続けた。私は彼らを、ぼんやりと眺めていた。
「無理!」私は掠れる声で訴えた。「無理!怖いの!この世界で、誰も、私の味方が、いないの!居場所が、ないの!」
「俺はアリシアの味方だ」イオリが私とぎゅうときつく抱きしめてくれた。「俺がついている。ここがアリシアの居場所でいい。一緒に、ここにいよう。俺と一緒に呼吸をするんだ。」
トン、トン、とイオリの手が私の背骨に当たる。イオリの白いシャツに私は何度も息を吐いた。イオリがわざと大きく呼吸をしてくれている。私はそれに合わせた。
頭のぐら付きが取れない。私はふらっと倒れそうになった。イオリが頭を支えてくれた。私は彼にしがみついた。
いい匂いがした。後ろにはバリーがいる。でも私を包む温かさに、安心した。
誰かが安心を与えてくれるなんて、思ってもこなかった。彼の優しさに、そして彼のことが好きな気持ちが私を混乱させて、ポロポロと涙が出た。
イオリ、ずっと一緒にいて欲しい。
「アリシア、今に集中するんだ。君は今、俺とここに座って、ゆっくり呼吸をしている。」
「うん……。」
「今、何をしている?教えてくれ。」
「イオリの部屋にいる。イオリがここにいる。一緒に息してる。」
「その通りだ。」
「後ろにバリーがいる。でも、こうしていると安心する。」
「ああ、俺が守る。もうお前しか守らない。大丈夫だ。」
「それってどういうこと?」
サラの声がした。するとサラの足音がこっちに来て、私の肩を掴んで、イオリから引き剥がそうとした。しかしイオリが私を抱き留めて、片手でサラを突き飛ばした。
「邪魔をするな、サラ。……貴様はバリーを選んだのだろう?俺の視界から消えろ。」
「……。」
「まあそれは事実だよな、サラちゃん!ヘッヘッヘ!」
バリーの下品な笑い声だ。私はイオリの肩に頬をつけた。やっと呼吸が落ち着いてきたのに、もう彼を思い出したくなかった。もう許して欲しかった。イオリは私をギュッとしたまま、多分バリーを見つめている。
「なあアリシア。あの時は、ほんとーに悪かった。だからこっちに戻っておいで。一緒に組もう。今度は夫婦じゃないから、もう夜の行為とか、そういうことはしないよ。俺にはサラちゃんがいるしね。お仕事だけ一緒にしよう。だから俺ともう一度仕事をして、ガッポガッポ稼ごう?」
「貴様!」イオリの喉が震えた。「誰のせいでアリシアがこうなったと思う!?お前がアリシアを手にかけたんだろうが!」
「だからなんだ?お兄さんよ。結局アリシアは、生きるよりもいい思いが出来てるじゃねえか!金は手に入るし、死ぬ心配もねえ!俺のおかげだぞ?ハッハ!」
「アリシア、少しここに座っていろ。」
「うん?」
イオリが私を丁寧にソファに座らせてくれた。彼はスッと立ち上がって、バリーの方へ向かったと思ったら、そのままニヤついた彼の顔面を思いっきり殴った。
バリーの顎が一瞬ずれたように見えた、結構な威力の殴りだった。バリーはよろけて、しかし持ち堪えて、すぐにベルトからハンドガンを出してイオリに向け、構えた。
危ない……!
バリーは曲がった鼻と切れた口から赤い血を流しながら、イオリに言った。
「組織の人間だろうが、俺に手を出す奴は生きて帰れねぇ。」
「で、でもバリー?」
「うるせえ、女は黙ってろ!」
バリーが一瞬サラを見た隙に、私はイオリの背後まで、よろけながらも移動した。
「俺を撃つのか?バリー。」
「馬鹿だなイオリ、お前もアリシアと同じ末路を辿ることになるとはな。さあお前の心臓はどんな弾け方をするのか見せてくれ…………どーん!」
そういえば、あの時も彼はどーん!と言っていた。人を撃つ時に、どうしてそんなふざけたことを言うのか、私は不思議だった。
私はイオリの身体をすり抜けて前に出て、胸を広げた。あの時と同じように、バリーの放った地属性のオレンジ色の弾丸は、私の胸に命中した。
「アリシア!?」
倒れない私を見たバリーがにやけ顔を消して、もう一発撃った。胸に穴がどんどん開いていく。私は涙を流して、恐怖に口が震えた。でも私の後ろにはイオリがいる。私はゴースト、私は死なない。イオリの為に、ここで逃げるなんてことは出来なかった。
両手を広げたまま、バリーに向かって歩いた。バリーはかなり焦った顔で額から汗を垂らしながら、私の胸を何発も何発も撃った。命中するたびに、あの時の恐怖が私の胸を支配した。
でも歩き続けた。よだれを垂らして泣いた。彼が銃をリロードをしようとした時に、私は一気に間合いを詰めて、彼の銃を掴んで、揉み合いになった。
すると誰かが横から飛んできて、バリーの横顔を殴った。イオリだった。怒りに顔を真っ赤に染めて、彼がよろめいたバリーをまた殴った。その隙に私はバリーのハンドガンを奪って、それを胸の中に抱えて、その場でしゃがんだ。
急に目眩が襲ってきて私はコロリと倒れた。床の冷たさを感じながら、ハンドガンを奪われないように、それを包むように身体を丸めて、抱きしめた。
イオリは、もうやめてくれと微かに首を振るバリーに馬乗りになり、何度も何度も彼の頬を殴った。その内バリーはぐったりして気絶した。それでもイオリはバリーの体を殴り続けた。私は彼らを、ぼんやりと眺めていた。
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