星空に恋するハッピーゴースト

meishino

文字の大きさ
97 / 127

97 真実を背負う者

しおりを挟む
「イオリ、もう全部話してよ。私は消えるんでしょう?だから何を言われたっていい。覚悟してる。何でも言って欲しい。」

 イオリは一瞬目を逸らした。言いにくいことなのなら、やはりサラとまた一緒に居たいとか?いいよ、彼女の方が長く一緒に居てあげられるんだから。

「……ここだけの話だ。」

「うん。」

「俺は最初から、FOCに魂を奪われてはいない。」

「え?」

「……ノアズが俺を犯罪者と見立てたのは事実だ。その結果ノアズに居場所がなくなり、FOCを頼ったのも事実だ。そのおかげで大きな収入を得られたもの事実。だが、どこか、どこかで、俺はノアズのことをやはり、想ってしまう。小さい頃から憧れて、いつかフーリガンなんて倒してやるんだなんて意気込んで、そのまま真っ直ぐ大人になった。」

 彼は、ノアズの為に生きてるってこと?

 私が言葉が出ないでいると、彼は私の手を優しく握って微笑んだ。

「もういいだろう、あとはお前には関係ない。今を楽しく過ごそう。」

「いや関係ある。じゃあ、じゃあさ!……どういうこと?ノアズに戻るの?」

「俺は罪を犯している、戻れはしないさ。俺はいつかオリオンに裏切り者だとバレてしまうだろうな。その時まで、内部からFOC、それからバリーのことが分かった時はボードンも、やり方によってはノアズにとって驚異的な二つの組織を内部から破壊出来ると考えた。それによってノアズに戻ろうなどとは思わない。俺の勝手な行動だと思ってくれていい。兎に角、だから絶好の機会を伺い、それに作戦を水面下で考えていたから、最近は呆けてしまった。それと……。」

「え?え?まだ何か考え事してたの?」

「あ、ああ。アリシアが正直に言えって言うから言うが……シードロヴァが心配だった。」

「どうして?」

「どうしてって。レモン飴、俺たちが勝手に使ってるだろう?そのことを以前電話で彼が俺のことを責めた。誰が使っているか気にした。彼はあれをまだ公表したく無かった。でも俺たちがたくさん使っている。それが彼を苦しめているのではと……なんだ?ドゥっ」

 私は両手でイオリの頬をサンドイッチのように挟んだ。彼の口がタコみたいに突き出た。

「イオリはさ、シードロヴァが心配とか、私と一緒にいる時間を大切にしたいとか、相手のことを考えすぎだよ!だったらこの前シードロヴァにどうしてオリオン様に忠誠誓ってるなんて言ったの!?」

「……だって、あの時ノアズに戻りたいと言えば、お前に知られるだろ。」

「は!?」

 イオリは私の両手を掴んでどかしてから、体を起こしてベッドに座った。

「そうすればアリシアのことだから必死こいて俺をノアズに戻させようとするはずだ。それこそシードロヴァに直談判でもしてな。しかしそれは俺が求める帰還とは違う。帰るなら帰るで、もう二度とノアズには仲間だと思われなくていいから、この組織と、特にボードン財閥に傷痕を残したかった。すまないアリシア、何も言えずに。」

「確かに、もし最初に知ってたら私はそうしてたかもしれないから……私もごめん。でもイオリは背負すぎだよ。人のことばっか読んで、イオリは幸せなの?」

 彼があまりにも大変な時間を歩んでいたのを知って、私はついボロボロ泣いた。彼が私を抱きしめて、ベッドに倒れた。彼の胸に頬を寄せた。

「何度も言うように、お前がそばにいるだけで俺は幸せだ。……あ、……あ、」

「え?」

「……。」

「ん?」

「アイスクリーム、買ってあるから、後で食べるか?」

「……うん。」

 こんなに抱きしめてくれる。こんなに全てを話してくれる。一緒に居たいと言うのに、愛してるって言ってくれない。

 でもいい、イオリが幸せならいい。私は彼のことを抱きしめた。

 よく考えたら、彼はノアズのこと、シードロヴァのこと、色んなことを同時に考えている。それに私との別離が加われば、彼がそのうち壊れてしまうかもと、怖くなった。

 だったら、最後まで、私は彼を明るくしてあげたい。いい思い出だったって思わせるような時間を与えたい。

 そうだ、

 私は彼から離れて、ベッドをハイハイで移動して、ベッド脇のランプの乗っかった小さなサイドテーブルの引き出しを開けた。あれがこの中に入ってるはずだ。生きてる時に、劇場の裏で入手したアレが……!

 私はそれを顔につけて、イオリの方を見た。すると彼は最初は驚いた顔をしたけど、私が顔を左右に揺らすと「はっはっは!」と笑ってくれた。

「どう?似合う?」

「似合う、なんてな。俺を笑わそうって言うのか?」

「そう。ほら笑えるでしょ?」

「ああ、久しぶりに見たよ、鼻眼鏡。」

 イオリは目に涙を溜めたまま、私を見つめて笑顔になった。彼の笑顔が好きだ。最後まで見ていたい。

 だから『イオリ、大丈夫だから笑ってプロジェクト』略してIDWPを始動しようと思う。これから私はノアフォンで芸人さんをお手本に生きる。

「イオリ、そのうちとても面白いトークをするから待っててね。」

「その発言でハードル上がった気もするが……、ふふ、期待している。アリシアは優しい人だ。俺にとても優しい。……あ、……あ、」

 きた! 私はさあ!と言わんばかりに手招きをした。

「……アイスクリームを食べよう。今から。」

「ああそうですか……まあ食べたいからいいけど。」

 イオリは体を起こして、私の腕を掴んで、ソファルームへと連れて行ってくれた。ミニキッチンの四角い冷凍庫からちょっと高級なバニラアイスを取り出して、彼が床に座った。

 私も彼の隣に座った。彼は蓋を開けて、引き出しから取り出したスプーンで掬って、私に食べさせてくれた。

 甘くていい匂いがした。彼も自分で一口食べて、「おいしい」と言った。

「もう一口いるか?」

「うん。」

 彼は白いアイスを掬った。でもどう言う訳か私にはくれずに、自分で食べてしまった。戸惑っていると、彼は床にアイスとスプーンを置いて、私の顎を指で押さえた。

 キスをしてくれた。彼が唇を動かすと、少し溶けたバニラの冷たくて柔らかい感触が入ってきて、口の中でとろけた。

 彼はキスをやめて、私に聞いた。

「お代わりが欲しいか?」

「うん。」

 するともう一口、今度は大きめに彼が頬張って、キスをした。バニラを二人の舌でとろけさせた。冷たいものが溶けて、奥から温かい彼の舌の感触が出てくると、それを舐めたくなった。

 私は彼の肩にしがみついて、まだバニラの味がする彼の舌を舐めた。「ふっ、ん」と彼が甘く呻いた。

 バニラはもうどうでも良くなった。彼も同じなのか、次第にキスはエスカレートして、私は床に倒された。

 初めてした日を思い出した。あの時も、背中が硬くて、冷たかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

王宮メイドは今日も夫を「観察」する

kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」 王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。 ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。 だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……? ※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

処理中です...