102 / 127
102 全ての原因
しおりを挟む
陽がだんだんと落ちてくると、窓の外が曇り始めた。灯の雪原が近づくにつれ、車内も一気に気温が下がって、吐く息は白く色付いた。
私はずっと前に買った黒いダウンジャケットを着て、イオリは黒いボロビアのコートと白いマフラーを付けて、レイヴは黒いダウンベストをいつものパーカーと合わせて着た。
そして三人でソファに座ってガタガタと震えている。そう、この車内の暖房機能が少し弱いのを忘れていた。この間のトレーラー改造ショップで、それも直して貰えば良かった。てっきり暖かい南国で過ごして終わりだと思っていたから。
「すげえ寒い……風邪引きそう。」
レイヴが私に抱きついた。私もレイヴを抱いた。するとイオリが引き剥がそうとした。私は言った。
「寒いから一緒にくっついているだけだよ?」
「じゃあ俺を真ん中に入れろ。それなら許す。」
「……。」
言われる通りにレイヴと私が動いた。イオリを挟むようにして二人で抱きついた。これなら大丈夫だ。
「リアちゃんは寒さを感じないようにすれば寒くないと思うけど。」
助手席から飛んできたヤギさんの言葉に、私は反応した。
「寒さを感じないようにすると、その他の感覚も感じなくなるからいい。イオリに触って何も感じないのは辛い。」
「いいねー愛されてるねー。」レイヴが言った。「お兄ちゃん、そういえばもう愛してるって言ったの?」
「……貴様に関係ないだろうが。」
そう、彼はまだ、というかもうずっと言ってくれない気がする。そこはまだ私のことゴーストだからとか一線を置いてるのかもしれない。
するとレイヴがイオリ越しに私を見てきた。
「リアちゃんはいいの?それで。」
「いいよ。私ゴーストだからだよ。ちょっとイオリはケチかもしれないけど。」
「あっはっは!」
と、レイヴが笑った。イオリはムッとした顔で私をジロリと睨んだ。
「ケチなら、俺に憑依するのを許さないだろう。違う、色々と考えることがあるんだ。」
「出た出た、」レイヴが呆れ声で言った。「考えてる考えてるって、いつも何か考えてるよな兄ちゃんは。」
「……大体の話をさせていただこうか、よく考えれば、アリシアが俺に取りついてから、ろくなことがない。」
それは言えてるかもしれない。すごい正論すぎて、苦笑いした。イオリは続けた。
「ノアズを追われてしまったのは、アリシアのせいだ。」
「そうなのー?」
「ああ。誰が俺の家に血痕を残した?体温のように出血も自制が効くのなら、どうしてそのままにしたんだ?」
「それはやり方を知らなかったから、だってあの日に私はゴーストになっちゃったんだもん。」
私が答えると、「ふん」とイオリが不満そうに頷き、また続けた。
「今でも思う。誰が奴のレモン飴を盗んだ?」
「奴って誰?「誰がオリオンを守る為に、ボードンのスナイパーを俺の手を使って殺した?」
レイヴが遮られてる……しかも全部正論すぎて、私は苦笑いを続けた。イオリは更に続けた。
「誰がレモン飴で、シードロヴァを追い込む真似をしたんだ?誰がそれを使って、多数の人間を……。」
「え?じゃあレモン飴ってシードロヴァの……?」
レイヴがイオリから離れて、目を丸くした。イオリは「そうだ。」と答えた。なんか、雰囲気が変わってきた。イオリの横顔は、結構真剣なものだったからだ。
「今だに、俺は、あの時アリシアを拒絶していたら、どんな人生を歩んでいただろうかと、思う時はある。どうしてか?それは、アリシアがいなければ、俺はまだノアズだった。あの組織にいながら、FOCを、ボードンを狙えた。」
「それはそうだけど……。」
私は俯いた。確かにイオリに対しては悪いことをしてきてしまった。精一杯頑張ったけど、でも迷惑かけた。私がいなければ彼はノアズにいたのは本当だ。犯人扱いされもしなかっただろうし。
「こんなことを今考えても仕方ないが、時々、アリシアがいなければ、もしかしたらシードロヴァだって、あんなバカな真似をして意思表示することもなかった、と思う。」
「ごめんねイオリ……。」
「でもお前は、俺を支えてくれもした。それは礼を言いたい。しかし愛しているかどうかについては、少し考えたいところがある。」
「ごもっともです。分かった。」
それから誰も話さなくなった。窓にボタボタと雪が当たる音だけが響いていた。
暫くすると、トレーラーは灯の雪原の外れに止まった。窓を覗くと、三角屋根の家々が連なっていて、屋根にはこんもりと雪が積もっているのが見えた。街灯がぼんやりと丸く灯っていて、美しかった。
でもどこか、儚くもあった。雪の中を歩く、厚着をした男女のカップルの姿があった。彼らは話しながら笑っていた。
何がこの世で一番楽しかったんだろう。それを私は、忘れてしまった気がする。
私はずっと前に買った黒いダウンジャケットを着て、イオリは黒いボロビアのコートと白いマフラーを付けて、レイヴは黒いダウンベストをいつものパーカーと合わせて着た。
そして三人でソファに座ってガタガタと震えている。そう、この車内の暖房機能が少し弱いのを忘れていた。この間のトレーラー改造ショップで、それも直して貰えば良かった。てっきり暖かい南国で過ごして終わりだと思っていたから。
「すげえ寒い……風邪引きそう。」
レイヴが私に抱きついた。私もレイヴを抱いた。するとイオリが引き剥がそうとした。私は言った。
「寒いから一緒にくっついているだけだよ?」
「じゃあ俺を真ん中に入れろ。それなら許す。」
「……。」
言われる通りにレイヴと私が動いた。イオリを挟むようにして二人で抱きついた。これなら大丈夫だ。
「リアちゃんは寒さを感じないようにすれば寒くないと思うけど。」
助手席から飛んできたヤギさんの言葉に、私は反応した。
「寒さを感じないようにすると、その他の感覚も感じなくなるからいい。イオリに触って何も感じないのは辛い。」
「いいねー愛されてるねー。」レイヴが言った。「お兄ちゃん、そういえばもう愛してるって言ったの?」
「……貴様に関係ないだろうが。」
そう、彼はまだ、というかもうずっと言ってくれない気がする。そこはまだ私のことゴーストだからとか一線を置いてるのかもしれない。
するとレイヴがイオリ越しに私を見てきた。
「リアちゃんはいいの?それで。」
「いいよ。私ゴーストだからだよ。ちょっとイオリはケチかもしれないけど。」
「あっはっは!」
と、レイヴが笑った。イオリはムッとした顔で私をジロリと睨んだ。
「ケチなら、俺に憑依するのを許さないだろう。違う、色々と考えることがあるんだ。」
「出た出た、」レイヴが呆れ声で言った。「考えてる考えてるって、いつも何か考えてるよな兄ちゃんは。」
「……大体の話をさせていただこうか、よく考えれば、アリシアが俺に取りついてから、ろくなことがない。」
それは言えてるかもしれない。すごい正論すぎて、苦笑いした。イオリは続けた。
「ノアズを追われてしまったのは、アリシアのせいだ。」
「そうなのー?」
「ああ。誰が俺の家に血痕を残した?体温のように出血も自制が効くのなら、どうしてそのままにしたんだ?」
「それはやり方を知らなかったから、だってあの日に私はゴーストになっちゃったんだもん。」
私が答えると、「ふん」とイオリが不満そうに頷き、また続けた。
「今でも思う。誰が奴のレモン飴を盗んだ?」
「奴って誰?「誰がオリオンを守る為に、ボードンのスナイパーを俺の手を使って殺した?」
レイヴが遮られてる……しかも全部正論すぎて、私は苦笑いを続けた。イオリは更に続けた。
「誰がレモン飴で、シードロヴァを追い込む真似をしたんだ?誰がそれを使って、多数の人間を……。」
「え?じゃあレモン飴ってシードロヴァの……?」
レイヴがイオリから離れて、目を丸くした。イオリは「そうだ。」と答えた。なんか、雰囲気が変わってきた。イオリの横顔は、結構真剣なものだったからだ。
「今だに、俺は、あの時アリシアを拒絶していたら、どんな人生を歩んでいただろうかと、思う時はある。どうしてか?それは、アリシアがいなければ、俺はまだノアズだった。あの組織にいながら、FOCを、ボードンを狙えた。」
「それはそうだけど……。」
私は俯いた。確かにイオリに対しては悪いことをしてきてしまった。精一杯頑張ったけど、でも迷惑かけた。私がいなければ彼はノアズにいたのは本当だ。犯人扱いされもしなかっただろうし。
「こんなことを今考えても仕方ないが、時々、アリシアがいなければ、もしかしたらシードロヴァだって、あんなバカな真似をして意思表示することもなかった、と思う。」
「ごめんねイオリ……。」
「でもお前は、俺を支えてくれもした。それは礼を言いたい。しかし愛しているかどうかについては、少し考えたいところがある。」
「ごもっともです。分かった。」
それから誰も話さなくなった。窓にボタボタと雪が当たる音だけが響いていた。
暫くすると、トレーラーは灯の雪原の外れに止まった。窓を覗くと、三角屋根の家々が連なっていて、屋根にはこんもりと雪が積もっているのが見えた。街灯がぼんやりと丸く灯っていて、美しかった。
でもどこか、儚くもあった。雪の中を歩く、厚着をした男女のカップルの姿があった。彼らは話しながら笑っていた。
何がこの世で一番楽しかったんだろう。それを私は、忘れてしまった気がする。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
王宮メイドは今日も夫を「観察」する
kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」
王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。
ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。
だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……?
※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる