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108 錆びた倉庫
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ヴィノクールに近づくと、皆のノアフォンがブーブーと震えた。それでイオリとレイヴはハッと起きて、それぞれの持っているノアフォンを確認した。
震えた理由は、紛争エリアに接近中ということを知らせるものだった。ヴィノクールから上空に向かって、シュッシュッと魔弾の筋が通っていく。
魔弾は主に、ヴィノクール上空で旋回しながら地上へ攻撃を与えているノアズの戦闘車に向かって飛んでいった。ボードンFOCの攻撃だった。
このまま飛んでヴィノクールへ近づくのは危険だと思った私は、街の外れの草原で一度車を地上に下ろしてから、車を走らせて街の中心へ向かった。
街は静かだった。住人は外に出ないように指示されているからだ。時が止まったような錯覚さえある。ただ、遠くで銃声がひたすら聞こえている。
「最初にどこに向かう?」
私が聞くと、イオリが答えた。
「バリーの元へと向かってくれ。この作戦内容は、イルザ様も大佐も理解している。それに俺に賛同してくれているダニーやイーグルがそっちでまだ仲間の演技をしてくれている。最初にそっちへ行こう。」
「俺」レイヴが不安げな声を出した。「ちゃんとバレないように演技出来るかな。超不安。」
「演技だと思わなければいい。俺に従っていればいいと考えれば、シンプルだろう。お前が俺にべったり動いていても、バリーは変に思わない。」
「まーそうか、なるほどな。」
ならばと私は倉庫地帯の奥へと向かうためにハンドルを切った。誰もいない街なので、ちょっとだけ速度を上げた。
レンガ道で、車がカタカタと揺れた。南から街に入って、倉庫地帯へ近づいてくると、銃声がどんどんと大きくなって、車内でも大声で話さないと聞こえないくらいになってきた。
私はイヤーピースをはめて、それを二人にも勧めた。音がうるさすぎるので、ここからは通信で会話をすることになる。倉庫地帯に車を止めて、リュックを背負って降りた。
雪の街に比べるとここは少し暖かいので、イオリとレイヴは防寒着を脱いで、防弾チョッキ剥き出しのスタイルになった。イオリの腰にはマグナムが、レイヴの腰には彼のシルバーのハンドガンがある。
私は車のトランクからレモン飴スナイパーを取り出して背負った。早速向かおうと走ったら、イオリに腕を掴まれた。
彼の真剣な瞳と目が合った。
「いいかアリシア、銀の銃弾が飛んでくる可能性は非常に高い。姿を消して、俺についてこい。」
「嫌だ。私はイオリの為なら囮にだってなりたい。私はあなたを守りたいの。」
「いいから姿を消せ。ならば俺についてくるな。」
「やだー。」
私は姿を消してイオリの手から逃れると、また姿を現してから走り出した。「あ!こら!」とイオリが追いかけてくる音と、「ちょっとこんなところでいきなり走んなよー!」とレイヴの叫びが聞こえている。
倉庫の影から顔を覗かせると、ドラム缶を遮蔽物にして、ノアズの衛兵とボードン兵が撃ち合いをしていた。あそこは通れそうにない。
私はすぐそこのドアを開けて、倉庫の中からバリーの元へと向かうことにした。一つ倉庫を抜けて、もう一つ抜けて、その間にもノアズ兵とFOCやボードンの兵が撃ち合いを続けていて、結構な最前線に我々はいる。
私はバリーに通話をかけた。彼はすぐに出た。
『ようアリシア!そっちは静かか?』
「どうもです。今ヴィノクールに駆けつけてきた。我々はどうすればいい?」
『それはいい情報だ!勿論、イオリもいるんだよな?へへっ。』
「いるよ。今どこにいる?」
『E306って書いてあるな、その倉庫の事務室にいるよ。そこがFOCの本拠地だ。さあイオリを早く俺の元へ連れてきてくれ。これで俺たちは無敵になったぞ!』
そう思っててください、我々が到着するまで。少し笑いそうになったけど必死に我慢して、「分かった」と答えてから通話を切った。
私は一度倉庫から出て、倉庫の外壁に書いてある倉庫の番号を確認した。この辺りはちょうどEの番号のエリアだった。バリーは近くにいる。私は倉庫の番号を頼りに、E306の方へと向かって走った。
すると誰かに腕を掴まれた。息を荒くして、顔を真っ赤に染めているイオリだった。
「お前ぇ……ダァ、ハアハア!……っあ、どこに向かってる!?」
「バリーのところ。彼に居場所を聞いた。この近くにいるよ。」
「そうか……いやお前、俺の話を聞け。いいから聞け。」
「何?」
「姿を消せと言っている。それだけは頼むから俺の望み通りにしてくれ。」
「やだー。」
「あのなぁ「おいいい!お前らまじで早いっ……!」
倉庫からちょっと遅れてレイヴが出てきて、彼は肩で息をしながら膝に手をついて、激しい呼吸を繰り返している。……そんなに持久力ないの?あんたら。
もういいや。イオリがレイヴに気を取られている隙に、私は走った。「あ」とイオリの声がしたけど構わない。私はE306へと向かって走った。
時々後ろを振り返ってちゃんと彼らがついて来ているか確認した。イオリもレイヴもヘロヘロとしながらくっついて来ていた。
途中の倉庫の影で、背後に注意を向けていた私は、そこでクリアリングをしていたノアズ兵とばったり会ってしまった。彼は驚いて銃を私に構えた。
でも「かたじけない」と言って、銃をすぐに下ろした。きっとイルザが、我々が実は味方であることをもう既に衛兵に知らせてあるんだと理解した。
今のをイオリもレイヴも見ていた。我々は一度顔を見合って、コクっと頷いてから先を急いだ。
震えた理由は、紛争エリアに接近中ということを知らせるものだった。ヴィノクールから上空に向かって、シュッシュッと魔弾の筋が通っていく。
魔弾は主に、ヴィノクール上空で旋回しながら地上へ攻撃を与えているノアズの戦闘車に向かって飛んでいった。ボードンFOCの攻撃だった。
このまま飛んでヴィノクールへ近づくのは危険だと思った私は、街の外れの草原で一度車を地上に下ろしてから、車を走らせて街の中心へ向かった。
街は静かだった。住人は外に出ないように指示されているからだ。時が止まったような錯覚さえある。ただ、遠くで銃声がひたすら聞こえている。
「最初にどこに向かう?」
私が聞くと、イオリが答えた。
「バリーの元へと向かってくれ。この作戦内容は、イルザ様も大佐も理解している。それに俺に賛同してくれているダニーやイーグルがそっちでまだ仲間の演技をしてくれている。最初にそっちへ行こう。」
「俺」レイヴが不安げな声を出した。「ちゃんとバレないように演技出来るかな。超不安。」
「演技だと思わなければいい。俺に従っていればいいと考えれば、シンプルだろう。お前が俺にべったり動いていても、バリーは変に思わない。」
「まーそうか、なるほどな。」
ならばと私は倉庫地帯の奥へと向かうためにハンドルを切った。誰もいない街なので、ちょっとだけ速度を上げた。
レンガ道で、車がカタカタと揺れた。南から街に入って、倉庫地帯へ近づいてくると、銃声がどんどんと大きくなって、車内でも大声で話さないと聞こえないくらいになってきた。
私はイヤーピースをはめて、それを二人にも勧めた。音がうるさすぎるので、ここからは通信で会話をすることになる。倉庫地帯に車を止めて、リュックを背負って降りた。
雪の街に比べるとここは少し暖かいので、イオリとレイヴは防寒着を脱いで、防弾チョッキ剥き出しのスタイルになった。イオリの腰にはマグナムが、レイヴの腰には彼のシルバーのハンドガンがある。
私は車のトランクからレモン飴スナイパーを取り出して背負った。早速向かおうと走ったら、イオリに腕を掴まれた。
彼の真剣な瞳と目が合った。
「いいかアリシア、銀の銃弾が飛んでくる可能性は非常に高い。姿を消して、俺についてこい。」
「嫌だ。私はイオリの為なら囮にだってなりたい。私はあなたを守りたいの。」
「いいから姿を消せ。ならば俺についてくるな。」
「やだー。」
私は姿を消してイオリの手から逃れると、また姿を現してから走り出した。「あ!こら!」とイオリが追いかけてくる音と、「ちょっとこんなところでいきなり走んなよー!」とレイヴの叫びが聞こえている。
倉庫の影から顔を覗かせると、ドラム缶を遮蔽物にして、ノアズの衛兵とボードン兵が撃ち合いをしていた。あそこは通れそうにない。
私はすぐそこのドアを開けて、倉庫の中からバリーの元へと向かうことにした。一つ倉庫を抜けて、もう一つ抜けて、その間にもノアズ兵とFOCやボードンの兵が撃ち合いを続けていて、結構な最前線に我々はいる。
私はバリーに通話をかけた。彼はすぐに出た。
『ようアリシア!そっちは静かか?』
「どうもです。今ヴィノクールに駆けつけてきた。我々はどうすればいい?」
『それはいい情報だ!勿論、イオリもいるんだよな?へへっ。』
「いるよ。今どこにいる?」
『E306って書いてあるな、その倉庫の事務室にいるよ。そこがFOCの本拠地だ。さあイオリを早く俺の元へ連れてきてくれ。これで俺たちは無敵になったぞ!』
そう思っててください、我々が到着するまで。少し笑いそうになったけど必死に我慢して、「分かった」と答えてから通話を切った。
私は一度倉庫から出て、倉庫の外壁に書いてある倉庫の番号を確認した。この辺りはちょうどEの番号のエリアだった。バリーは近くにいる。私は倉庫の番号を頼りに、E306の方へと向かって走った。
すると誰かに腕を掴まれた。息を荒くして、顔を真っ赤に染めているイオリだった。
「お前ぇ……ダァ、ハアハア!……っあ、どこに向かってる!?」
「バリーのところ。彼に居場所を聞いた。この近くにいるよ。」
「そうか……いやお前、俺の話を聞け。いいから聞け。」
「何?」
「姿を消せと言っている。それだけは頼むから俺の望み通りにしてくれ。」
「やだー。」
「あのなぁ「おいいい!お前らまじで早いっ……!」
倉庫からちょっと遅れてレイヴが出てきて、彼は肩で息をしながら膝に手をついて、激しい呼吸を繰り返している。……そんなに持久力ないの?あんたら。
もういいや。イオリがレイヴに気を取られている隙に、私は走った。「あ」とイオリの声がしたけど構わない。私はE306へと向かって走った。
時々後ろを振り返ってちゃんと彼らがついて来ているか確認した。イオリもレイヴもヘロヘロとしながらくっついて来ていた。
途中の倉庫の影で、背後に注意を向けていた私は、そこでクリアリングをしていたノアズ兵とばったり会ってしまった。彼は驚いて銃を私に構えた。
でも「かたじけない」と言って、銃をすぐに下ろした。きっとイルザが、我々が実は味方であることをもう既に衛兵に知らせてあるんだと理解した。
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