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5.月璃の策
しおりを挟むーーあっ、そうか!
「………」
俺はひらめいた案をクラメンに耳打ちをする。その言葉にクラメンが、目を見開いて頷いてくれた。そして、彼女がこれ以上ないぐらい床に頭をつけて、言葉を発する。
「恐れながら申しあげますーー。あいにくと、セラフィナ様は穢れの最中でございまして、恐れ多くも皇帝陛下にお渡りいただくことがかないませんーー!」
け、けがれ……、生理中ってそう言うの?
断って殺されるのか、男だとバレて殺されるかの違いだけど、俺は『現在生理中』、だってことにした。これで向こうが気に食わなかったら、俺達殺されるのかな?クラメンの手が震えている。それを見ていたら俺も泣きたくなってくるよ……。
「そうか」
クラメンの発言など気にした様子もなく、皇帝は立ち上がった。護衛の兵士達が皇帝のまわりに張り付く。SPみたいなんだなーー……、と俺も頭を下げないとーー。
俺は床についた自分の手を見た。指先がぶるぶると震えてるよ。うん、怖かったよなーー……、本当、もうやだなーーー。あれ?桜の花びらが消えてるよ。時間が決まってるのか……。
ロウバイ宮殿に戻った俺は、空気の抜けた風船みたいに気力が抜けて、目から涙がとまらなくなった。こんなとこちっとも馴染みがないのに、無事に帰ってこられて俺は感無量だよ。
「よくがんばってくださいました」
本当に、俺のメンタルじゃあんなの何回も乗り越えられないぜ……。
クラメンが褒め称えてくれたけど、ホントこれからどうしようーー……。
「生理が終わるまでに、本物が見つからないかな……」
「ーー5日もありますから、大丈夫ですよ」
そう言って励ましてくれるクラメンの、表情がなんだか暗い。
「………」
ーーこれ、もしかして、姫様は見つからないってクラメンは思ってるんじゃないかーー?見つからなかったら、俺はどうしたらいいんだ?
「ーーこうなったら、何がなんでも他に行ってもらおう」
「ーーどうやってですか?」
「とりあえず、生理が終わるタイミングで熱をだす。流行病とかだったら1週間ぐらいいけるぞ」
俺の提案を聞いて、クラメンの表情が少し明るくなった。
「たしかに、陛下に病気うつすわけにはいきませんものね。大事をとって二週間はいけるかもしれません」
「それだけ空いたら俺のことなんか忘れるよな」
「だと、よろしいのですが……」
クラメンの顔からも疲労がただよってる。ーーよし、こういうときこそ元気をださなきゃな!
「大丈夫、大丈夫。他の姫様のほうがきれいだし出るとこでてるじゃんーー!心配いらないって!」
寝室になんとか辿り着き、俺は着替えもせずに横になった。あーー、しかし、眠い……、お腹はすいてるけど、とりえず寝たいよ。
……目が覚めたら、いつもと一緒かなーー……?
そうさ、普通の朝が来るよな?
スマホのアラームが鳴りっぱなしの俺の部屋に、あきれた声の母さんがとめにきて、下からは父さんが、「行ってきまちゅ!」、って猫のタマにかまうんだけど、まったく相手にされないまま、仕事にでていくんだ。
俺は弁当を詰める母さんにガミガミ叱られながら、冷蔵庫を開けて、晩ご飯のおかずで朝ご飯をすませる。ないなら卵かけでもして、それから学校に行く時間になってーーー……。
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