冷酷な皇帝陛下の妃候補(身代わり)になったんだけど、男だってバレたら殺されるらしい。

濃子

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20.皇帝という名の赤ちゃん

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「………」
 皇帝の皇帝……、とても立派といいますか、気品があるというのかーー、うん、何いってんの、俺?

「手が止まっている」
 わかってるよ。なんだよ、楽しそうな声しやがって……。
「ーーここは自分で洗えよ」
「自分で洗ったことなどない」
「じゃあ、練習しとけ。3歳児じゃあるまいし」
 自分で身体を洗わないなんて、逆にめんどくさいだろ。やってもらうのは背中だけにしとけ。

「ここに乗れ」
「どこだよーー……、って嫌に決まってるだろ!」
 ルイリが自分の膝の上を指差した。なんでそんなところに乗らなきゃならないんだ?
「跨るように座れ」
「死ね」
 さすがに許容範囲外だ。皇帝でも下品なギャグかますんだな。

「つまらんな」
 がっかりしたように言われたんだけど、どこまで本気なんだろうーー?雑と言われようが、ガシガシ秘部を洗い、俺は風呂接待を終える。

「……ーーなあ、ルイリ」
「何だ?」
「冷え性なのか?」
 ルイリの肌はいつもひんやりとしてるんだけど、お湯をかけたらあったかくなるかな~?って思ってたんだよ。でも、お湯をどれだけかけようが温まってくる様子がない。

「………ああ」
「それは大変だ」
 体質かな?寒い国で冷え性って、キツいよなーー。

 俺が湯船に戻ると、ちゃっかりこいつも入って来やがった。ーーこれから毎日これじゃないだろうな……、ホント厄介だよ……、言う事聞かない中坊みたいだ。

「……嫌か」
「ん?」
「触りたくない…か……?」
「え?そんなわけないじゃん」
 ひとの体質にケチなんかつけちゃダメだよな。本人にはどうにもならないことだってあるだろうしさ。

「ーーあっ、ルイリ」
「なんだ?」
 白い湯気の中でルイリが薄く笑ってんだけど、それがなんかエロくて、……俺は困る。マジで何かにつけて困ってんだよ……。

 ーー男でも色っぽいって表現が使えるんだな…。ヤベーぐらい色気エグいじゃん。

「庭にたくさん植わってる木、あれがロウバイなのか?」
 ロウバイ宮殿の庭には、いまは枝だけの木がたくさん植わってるんだ(枯れ葉が残ってるやつもあるけど)。なんだろうな…、って思ってたけど、他の姫様がユリとかダリアとかついてるなら花の名前なのかな?

「知らないのか?」
「ああ」
「ーー冬に黄色い花を咲かせる。感じの良い花だ」
「へぇーー」
「ーー咲いたら花見をしよう」
「ん?ああーー……」
 花見か……、それはいいなーー。楽しそうだ………。


 ーーでも、……まだ次の人が来なければの話だよ…。











「おい、歯を磨いたか?」
 ふぅー、とバスローブもどきを着てくつろいでいらっしゃる皇帝に、俺は声をかける。まったく、俺ってば何を聞いてんだよな?

「磨け」
 腰かけていた長椅子に横になり、ルイリが言った。
「………はいはい」
 クラメンが道具をもってきて俺に手渡す。ルイリの横に座り、頭を少しもちあげてそこに自分の膝をいれる。何が悲しくて俺は同じヤローに膝枕なんかしてやってんだろな?

 慣れてしまったが、毎晩これなんだよーー。ここまで皇帝って自分のこと自分でしないの?大丈夫か?すぐにボケないーー?……とはいうものの、ルイリのきれいな歯並びを見るのは別に嫌じゃない。ーーあれ?俺って変態だったかな?まっ、たしかに膝に頭をのせて磨いてる図は、何のプレーだよ、って感じだけどさ。


 ちなみに使うのは豚毛で作られてる歯ブラシなんだ。磨き粉はハーブのセージと塩みたいなものが混ざったやつ。なんでもそうだけど、塩って大事だよなーー。

「ーーはい、クラメン」
 こいつは私生活を誰に見られても恥ずかしいとかないんだろうな。まわりにひとばっかりいるし、きっと慣れっこなんだ。

「失礼いたします」
 うがいした後の容器をクラメンが持っていってくれる。侍女ってやることが多い……、見てると申し訳なくなってくるよーー……。

 柔らかい手拭いでルイリの口元を拭く、その口が笑っているようにみえるけど見間違いかな?
「ぷっ」
 ヤバいヤバい、我慢できずに吹いちゃったよ。
「どうした?」
「……ルイリは甘えん坊だな」
 なんか、俺もたいがい遠慮のない人間だけど、こいつもけっこうひどいだろ。

「ーー甘えん坊……」
 ふんっ、と鼻で笑われちゃったけど、事実じゃねえか。ルイリがおかしそうな顔で俺の頬に触れて、そのひんやりとした指で俺の火照りを冷ましてくれる。湯上がりにこれは最高だけどさーー。

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