冷酷な皇帝陛下の妃候補(身代わり)になったんだけど、男だってバレたら殺されるらしい。

濃子

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28.川辺の子供達

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「本当に美味しいですものね、セラフィナ様のパン」
「よかった」
 パン屋をはじめるのもいいかも。フランスパン作って、アヒージョにつけて食べたいな……。ミルクと卵があるし、フレンチトーストなんかも最高だ。

「オリーブオイルもバターもあるし、なんでもあるんだな」
「各国から集まってくるのでしょう」
「たしかに、ないものは物々交換しながらでも手に入れるしかないよな。ニバリスは?特産品はあるの?」
「ーーー編み物が盛んです」
「編み物かーー……、毛糸があるなら絨毯とか作ってる?ラグとかさ」
 俺が寝室に敷きたいんだよな、朝が寒くて仕方がないから。

 ーー編み物でソックスをつくるのもありかもしれないぞ。靴下の上にさらにモコモコの毛糸で編んだソックスカバー、母さんが履いてたな………。あんなものを俺が欲しがるようになるとはねーー……。
 
「ーー主に服を拵えています。冬が長いものでーー」
「ふ~ん。燃料が大変だね」
「はい。ですが、壁を温石という自然な温かさを放つ石で組んでいるので、室内は厚着をするだけでいいのですよ」
「え?それじゃ、夏は暑いんじゃ」
「夏は別の屋敷に住みます。セラフィナ様の住まれていたニバリス城も、夏と冬の2城あるのですよ」

 ーーすごいな、セラフィナ様。城のふたつ持ちって、とんでもない金持ちじゃないか……。

「てっきり、すごく貧しいのかと思ってたよ」
 俺の言葉にクラメンが、まあ、と眉毛をあげた。たしかに、セラフィナの服もいつも豪華だし、貧乏じゃないか。

「ライ麦がよく収穫できますし、極寒でしか育たない作物があり、それを各国との交易にしております」
「ーー自分の国が豊かなら、セラフィナ様もこんなところに来て、皇妃になろうとは思わないよな……」
「ーー………」
 
 その後、噂を聞いたのか、チョコスコーンを求めてたくさんのひとが来たんだ。みんな、喜んで食べてくれた、へへっ、こういうのってうれしいよなーー。



 ーーでも、そのひと達の話している会話の内容が、ちょっと聞き流せないものもあったんだよな……。

「ーー城前の中央公園では、陛下と妃候補がおでましになられるそうだぞーー」
「たしかに、あっちにずいぶんとひとが流れて行くねーー」
「今日は向こうには行けないよ」
「この辺で飲もうぜ。めでたい建国祭なんだからーーー」
 
 ははははっ、と楽しそうなひと達の顔を見て、クラメンが顔を曇らせた。
 
「ーーセラフィナ様……」
「ん?どうしたんだ、クラメン」
 俺は気にしないようにしたよ。ルイリも皇帝の仕事をちゃんとやってるみたいだな。

「まさか……、騙されたのでは?」
「ん~~~、結果そうでもよかったんじゃないか?パンを配ることは悪いことじゃないんだしさ」
「………」
「はい。笑顔、笑顔ーー」
 クラメンが落ち込むのは、俺のことを考えてだ。俺なんか温室育ちの姫様と違って雑草なんだから、そんなに心配しなくてもいいんだよーー。

 ーーでも、ルイリも建国祭にでるんだ。イベントとか嫌がりそうなのに……。

 思わず笑ってしまって、クラメンには変な顔をされたよ。帰ったらちゃんとやってたのか、あいつに聞いてやろう~っと。











「ーーなくなりましたわ……」
 クラメンの言葉に、がっかりした声が沸く。すみませんねーー、今度は倍作りますんで……。

「ありがと!カッコいい兵士のお姉ちゃん!」
 ーーおい!お姉ちゃんじゃないんだよーー!
 子供達が俺の側ではしゃぐ。家の不自由を感じさせない元気さに、俺は息を吐いた。

 ーーこの子達のために、俺がしてやれることなんか、何もないんだろうな……。


「ーーいやいや、俺も楽しかったよ」
 はじめて城の外に出たし、なんだか新鮮な気持ちだな。今日は出会ったひとみんな良い人ばっかりだったし、ルイリの国は良い国なんだろうな。

「そういえば、ここはどこなのですか?」
「ん?カラン大橋だよ」
「カラン大橋……。城からはかなり距離がありますね……」
 クラメンが方角を確認するようにまわりを見る。でも、クラメンだって普段は城の外に出ることはないし、土地勘もないはずだ。

「馬車が迎えにくるだろ?ーーって、川の水飲んでるの?」
 子供達が桶で川の水をすくって飲むのを見て、俺は目を丸くした。
「うん」
「きれいだよ」
「いやいや、きれいだけどダメなんだよ。菌とかがあるからさ」
「え?じゃあどうしたらいいの?」
「一番は、沸騰させるんだ。ゴミをろ過しといてから、5分ぐらいグラグラ煮る」
「えーー、めんどくさい」
「ママもやらないよ」
「ーーお腹痛くならないか?」
 そこが心配なとこなんだけど。

「ーーたまになる」
「だからなの?」
「そうだーー。ちゃんとやっとかないと、生命に関わるんだぜ」
「へぇー」
「そうなんだ……」

 あんまり信じていないな?ーー子供達の顔に、「やらない」、って書いてる気がするよ。う~ん、外国のひとは腹が丈夫なのか?そりゃ、この国って城の下水配管はちゃんとしてるみたいだけど、自由に暮らしてるひと達はどうなんだ?川で洗濯するなら色々流してるよな……。
 
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