冷酷な皇帝陛下の妃候補(身代わり)になったんだけど、男だってバレたら殺されるらしい。

濃子

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41.予言なのか?

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「ひどいな」
「でしょ?ヤダヤダ、あたしは絶対に男なんかと一緒にならないんだから」
「え?恋人を作らないの?」
「美人なお姉様と暮らすの」
「はははっ、バカだなーー、アビは。おまえみたいなちんちくりんを好いてくれる美女なんかいないぜ」
 カヤがアビの発言を笑いとばすけど、俺が気になったのはそこじゃない。

「同性同士ってありなの?」
「ん?ありだよ」
「ツキリはないの?」
「あるじゃん。サージさん、ツキリを狙ってるでしょ?」
「あのひとはよくないわ」
「なあ!すぐ怒鳴るんだぜ!」
 
 俺は俯いて、子供達の会話を聞いていた。ああ、そうか……、同性同士もおかしくはないんだーー。でもそれは、是が非でも子供が必要じゃないひとだよな……。


 ルイリと俺じゃどうにもならないーー………。



 ーーーッ!!



「ーーどうしたのツキリ?」
「か、顔が変だよ……」
「あ、ああっ。ごめんごめんーー」
 嫌だな……、顔が熱いや。俺ってば頭大丈夫かな?なんでルイリとどうにかなろうとしてるんだよ。
 
「そういえば、マモン。昨日言ってた仕事はどうだった?」
 カヤが俺の反対側に座っている少年に声をかけた。片目が不自由なマモンだ。

「だめだったよ。年が若すぎるって」
「そっか……」
「何の仕事なんだ?」
「ああ、魔法薬のモルモット」
「……えっ!」
 あまりにも軽い口調で言われたけど、とんでもないことを言ってないか?子供がモルモットーー?

「魔法師ギルドが作った、新しい魔法薬を試しに飲むんだ」
「………」
 内容からして、それは子供には無理だろ。
「魔法薬を試しに飲むなんて……、そんな仕事があるの?」
「あるよ。カラン大橋とミモザ大橋の間に小さいけど魔法師ギルドがあって、たまに母さん達にお願いにくるんだ。新薬協力だって、母さん達は言うよ」
「そうなんだ」
 治験バイトみたいなことって、ホントにあるんだな……。女性でもいけるんじゃ、安全なやつなんだろうけど……。

 俺は不安になってしまうけど、みんなケロッとしているからなんでもないことなのかな?ーー魔法薬なんて知らないから、俺が知ってる薬とは違うのかも……一度売り物を見ないとーー。
「お金がいいんだよな……」 
「やりたかったな」
「ーーそっか……。また、良い話があったらいいね……」
 危なくなくて儲かる話って、現代社会じゃ危険の象徴みたいに言われるけど、文明が発展してないこの世界じゃないこともないのかな……。








「ーーカヤ、ツキリいる?あっ、いたいた」
 ファナさんに呼ばれ、俺は作業の手を止める。
「どうしたの?」
「グランドじいちゃんのお風呂を手伝って」
「わかった」
 こう見えて、あっちこっちモテモテな俺は、いろんなところから呼び出しがあるんだよ。

 そのひとつが橋下の唯一のご老人、グランドじいちゃんの入浴の手伝いだ。じいちゃんは3日間眠ったままで、4日目に1日だけ起きて、また3日間寝るって生活をずっと送ってるそうなんだ。ファナさん達が橋下に
来る前から、ここで暮らしているんだって。

 目がまんまるで、ちっちゃくてとってもかわいいおじいちゃん。俺が生まれたときには両親にどちらも父親がいなかったから、接し方がよくわからないんだけど、いまのところ嫌われてはいない。むしろ、お風呂の世話はご指名なんだから、好かれてるのかな?

「ーーじいちゃん。お湯を沸かすからまっててね」
「ーーーあい」
 
 かわいいーーー!おじいちゃんが、あい、って~~~!

 心の中は子供みたいになってるんだけど、心の澄み具合が子供よりきれいで赤ちゃんぐらいじゃないか?ーー失礼か……。


「はい、気をつけてね」
 深さのない低い容器にお湯を張る。そうじゃないとおじいちゃんが危ないから。
「ちょっと温まってから身体を洗うからね」
「あい」
「……」
 いや、だから『あい』はだめですよ。俺、キュンキュンくるから。

 抱っこしながら湯の中に入れてあげるんだけど、とっても軽い。俺でも楽々抱えれるんだ。
「ーーあんた、帽子ぐらいとったら?濡れるよ」
 いつもファナさんには心配されるんだけど、帽子ははずせないんだよな。どこを見ても黒髪のひとっていないから、かなり目立つと思うんだ。

「ちょうど洗いたかったから、いいんだよ」
「……ふうん」
「ーーーチュキリ」
「何?おじいちゃん?」
「チュキリ、遠い国のにおいすりゅ」
「ーーーニバリス、のかな?」
 言葉を返した俺に、じいちゃんはニコニコと笑ったまま、それ以上何も言わなかった。

「お湯を足すよ」
「熱いから気をつけな」
「ーーー帰れない、かわいそう」
「え?」
 差し湯がはいった壺を持つ手がとまる。

「じいちゃん、何言ってるんだい。ニバリスなら地続きだし、1ヶ月もあれば着くだろ?」
 不思議そうな顔でファナさんが首をかしげた。でも、じいちゃんの目は真っすぐに俺をとらえ、これが真実なんだ、って訴えてきているようで、俺の心がざわざわしてくる。

「ーー俺、国には、ーー帰れないの?」
 おじいちゃんは何も知らないはずなのに、なんでそんなことを言うんだろ……?きっとたまたまだよ、なんとなくの言葉じゃないかな?

 信じたくないからか、俺はグランドじいちゃんの顔を見ないように世話を続けた。
「じいちゃんの食事の準備をしてくるから」
「ーーうん、わかった」
 ファナさんの足音がなくなると、俺はおじいちゃんに再び尋ねる。

「俺が帰れない、ってなんでじいちゃんはわかるの?」
「たまたまできた歪み。召喚とは違う」
「………」
 どういう意味なんだ?召喚、って向こうの世界から呼び出されるひともいるってことか?

「チュキリ、この国で幸せになりゅ」
「ーーなれるかな?」
「なりゅ。ーーチュキリだからできりゅこと、ありゅ」
「おじいちゃんは予言者なの?」
 かわいい見かけに、そのふっとい声はあっていないけど、グランドじいちゃんは先生とかだったのかな?

「信じりゅ。信じれば幸せになりゅ」
 教会にいる神官みたいに教本を読む顔で、じいちゃんは話をまとめた。
「ーーそうだね。それは大切なことだよね……」
 












 その夜、橋の下のみんなが寝静まった頃、俺は上流のひと気がないところで体を洗っていた。ついでに耳当て帽子も丁寧に洗う。

 温泉が混ざっているっていっても、川の温度はお湯よりかなり水に近い。身体を温めるのは無理だ。でも、火をおこしてるから、でたら火の側にダッシュするんだよ。

「ふ~~~、寒い……」
 ぶるぶる震えながらファナさんにもらった着替えをまとう。亡くなったご主人の服を一式ポンッてくれるんだから、気前のイイ人だよな。

 だけどやっぱり軍服はすごい、風を通さないように作ってるから凄くあったかいんだよ。いまは着られないから仕舞ってるけど、ホントあれはいいよ。クラメンが「中にウールを縮絨してフェルト化した毛織物をいれてある」、って言ってたけどーーまあお高いものは工程が違うんだろな。

「よし」
 チュニックもどきと古いマントを羽織れば、俺も立派なフリーギドゥム人だな……。あーー、帽子は乾くまで、髪の毛を見られないようにしないと……。

「………」
 洗う度にーー、いや、とっくに消えているあいつの匂い……、もう二度と嗅ぐこともないだろう。


「ーーおやすみーー、ルイリ……、好きだよ………」

 帽子に告白をして、俺は苦笑した。本人には間違っても言えないからさ……。

 
 胸が痛い……。痛いけど、そのうちに消える痛みだーー。

「……それにしても帰れないとは……。俺なんか意味なくここにいるんだから、さっさと帰れてもいいものなのにーー」

 勇者でも魔王でもない俺は、この世界でどうするのがいいのか、考えたって何にも浮かんでこない……。時間だけが無駄に過ぎるのなら、違う国に行くのもありだよな、とも思う。

「ーー幸せになる、か……。次は季節に恵まれた国を希望したいなぁ」

 
 このあたりじゃ、ロウバイの木はないーー……。ロウバイ宮殿の木はもう植え替えたのかな……ーー、どこに行けば見られるんだろ……。
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