4 / 29
ー4ー 光からの提案
しおりを挟む「――なんで?光……」
「うるせーー。景兄といい、おまえといい、なんなんだよ……」
「え?」
「レポートが忙しいからって、うちに来る日が減ってるのに、ボランティアはやるし……」
「………」
すねたように言われて、ぼくは苦笑する。光のこういうところは昔からのものだ。末っ子だし、みんなに甘やかされてきたもんなーー。
「ごめん」
素直に謝ると光の眉がパッと開いた。家族ワイワイが一番好きなのが光なんだよね。
「――クリスマス会は絶対だからな!やらねえと気分が悪いだろ!」
「………光」
「なんだよ!ガキ臭いっていうなら笑えよ!」
「いや、おかしいけど……、ふふっ―――はははっ!」
くすくす笑いがばか笑いになってしまった。こんなイケメンなのに、小型犬みたいなところがあるんだから――。
「元気になったか――?」
笑いがおさまったときを見計らって、光が尋ねてきた。
「え?」
「なんか、昨日帰るとき、元気なかっただろ?――何があった?」
「………」
長年の付き合いはごまかすのが難しいね。
「大丈夫だよ……。ぼくも光と一緒で、景君が社会人になったから家にいないことも増えて、さみしいだけだよ……」
「ミノーー」
これは幼なじみとしての言葉だ。
「クリスマス会もやりたいけど……、景君に無理言っても駄目でしょ?」
「………それは、ーーどういう意味でさみしいんだ?」
声が低くなった。急にどうしたんだろうと、ぼくは光の顔をまじまじと見る。
「光?」
そして、いままで見たことがない光の真剣な目を見てしまう。きついと思えるぐらい、強く真剣な眼差しをーー。
ぼくは目を見張ったまま、何も言えなくなった。だって、体格のわりに精神の幼い、兄弟みたいな幼なじみーー、それが光だったはず。なのに、いま目の前にいる彼は、まるで別人のような大人びた顔をしている。
「ミノ……。おまえの『さみしい』って気持ちは、家族や幼なじみのさみしさじゃねぇだろ?」
「ーーえ?」
「何が原因か、あててやろうか?」
「………」
嘘だ……。ぼくはうまくやってきたはずーー。バレないように、普通に、普通に、普通の幼なじみとしてやってきたんだ。
ーーわかるはずがない。そんなわけ……。
「景兄に会えないから、切ないっていうのか、男と女みてぇな『さみしい』だろ?」
光の言葉が真っ直ぐに心を貫いた。刺さったと言ってもいいーー、その言葉にぼくの足元がぐらっと揺らいだのを感じる。
でも、次に彼が発した言葉で、ぼくの頭の中は少しだけ冷静さを取り戻すことができた。
「ーー景兄に抱きしめてもらいたいんだよなーー?」
「え?」
ふてくされたような光の言葉に、目を瞬かせる。
『景兄に抱きしめてもらいたい』
そんなことーー……、そんなたいそれたことをぼくがーーー!?そういうのはいままで考えたことがないよ。……えっと、ーーじゃあ、ぼくは景君との関係に何を求めているのーー?
……たしかにはっきりとしたビジョンなんかもってない。だって……、ただ好きなだけなんだもんーーー……。
ぼくじゃ一生知ることがない、景君の腕の中の温もり……。景君の隣を歩いていた、長い黒髪のきれいな女のひと、それがぼくだったらーー?景君の部屋でふたりになれる金のピアスの持ち主、それがぼくだったとしたらーー………。
ーー想像に、顔が熱くなってくる。
「………ッ」
ううん、この想像で死ぬよ。も、もうこれからどんな顔したらいいんだよ!絶対に無理無理、もう、何もなくていい、景君が幸せならなんでもいいよーーー!
「――なんだよ、その顔。景兄に抱きしめられてる想像でもしてんのか?」
あっ、光がいたんだった。
「ち、ちがうっ!」
ぼくは慌てて首を横に振って、彼の言葉を否定する。冗談じゃない、失礼にも失礼だ!
「嘘つけ!……おまえ、いまどんな顔してると思ってんの?」
「わ、わかるわけないよ!」
燃えるように熱い頬を押さえて、ぼくは涙をこらえた。頭がかぁーーっとして、いまなら頭の熱でお湯が沸かせそうだ。
「ーー景兄に言わないのか?」
「言わない!光も絶対に黙ってて!」
「……」
「言ったら絶交だからね!」
「ふ~ん、どうしよっかな……」
「え!?」
ぼくは呆然と目を見開いて、光の顔を見る。いま、彼の表情は、いたずらを考えているときのものだ。
「光!お願いだからーー!」
「ーーーう~ん、よしっ!」
「言わないでいてくれるの……?」
必死のぼくに同情してくれたのか、光が「仕方ねえな」、ってつぶやいた。
「黙っててやる」
派手な金髪をかきあげて、楽しそうな顔で光が答える。
「ーーありがとう……」
安堵したぼくは、ほっと胸を撫で下ろした。この気持ちは鍵をかけてしっかり閉めておかないといけないものなのに、ーーこれからはもっと気をつけなきゃ……。
「その代わり、クリスマスはデートだ」
「は?」
「決まりな!イブにパーティーして、そのままうちに泊まれ」
「ひ、ひか、る……?」
「クリスマスは朝から出かけような、ふたりっきりで!」
「…………」
強引に話をまとめられ、ぼくは口をぽかんとしたまま何も言葉を返すことができなかったーー………。
「ーーで、デート……?」
生まれてはじめてのデートが、……好きなひとの弟ってーー………、
「不毛だよ……」
12
あなたにおすすめの小説
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
向日葵畑で手を繋ごう
舞々
BL
琥珀は付き合っていた彼氏に「やっぱり男とは手が繋げない」とフラれてしまい、そこから更に人を避けて生きるようになった。笑うことさえなくなった琥珀を心配した母親は、琥珀の夏休み期間だけ自分の生まれ故郷である秩父へと送り出す。そこで久しぶりに再会した悠介は、琥珀のことを子ども扱いするものの、事あるごとに自然と手を繋いでくれる。秩父の自然に触れながら、琥珀はいつしか明るく優しい悠介に惹かれていったのだった。
発情期のタイムリミット
なの
BL
期末試験を目前に控えた高校2年のΩ・陸。
抑制剤の効きが弱い体質のせいで、発情期が試験と重なりそうになり大パニック!
「絶対に赤点は取れない!」
「発情期なんて気合で乗り越える!」
そう強がる陸を、幼なじみでクラスメイトのα・大輝が心配する。
だが、勉強に必死な陸の周りには、ほんのり漂う甘いフェロモン……。
「俺に頼れって言ってんのに」
「頼ったら……勉強どころじゃなくなるから!」
試験か、発情期か。
ギリギリのタイムリミットの中で、二人の関係は一気に動き出していく――!
ドタバタと胸きゅんが交錯する、青春オメガバース・ラブコメディ。
*一般的なオメガバースは、発情期中はアルファとオメガを隔離したり、抑制剤や隔離部屋が管理されていたりしていますが、この物語は、日常ラブコメにオメガバース要素を混ぜた世界観になってます。
沈黙のΩ、冷血宰相に拾われて溺愛されました
ホワイトヴァイス
BL
声を奪われ、競売にかけられたΩ《オメガ》――ノア。
落札したのは、冷血と呼ばれる宰相アルマン・ヴァルナティス。
“番契約”を偽装した取引から始まったふたりの関係は、
やがて国を揺るがす“真実”へとつながっていく。
喋れぬΩと、血を信じない宰相。
ただの契約だったはずの絆が、
互いの傷と孤独を少しずつ融かしていく。
だが、王都の夜に潜む副宰相ルシアンの影が、
彼らの「嘘」を暴こうとしていた――。
沈黙が祈りに変わるとき、
血の支配が終わりを告げ、
“番”の意味が書き換えられる。
冷血宰相×沈黙のΩ、
偽りの契約から始まる救済と革命の物語。
【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。
明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。
新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。
しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…?
冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。
ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!
ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!?
「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??
招待客は食器を選べない
近井とお
BL
一年生のイセルは庶民出という理由で同級生から嫌がらせを受けており、第三校舎からティーカップを一つ持ってくることを和解の条件として一方的に提示される。第三校舎には不穏な噂が流れており、侵入禁止とされていた。イセルは導かれるように三階の一室にたどり着き、そこには美しい男がお茶会を開こうとしていたところだった。ティーカップの代わりにキャッチャースプーンを借りたことをきっかけに、二人は第三校舎の教室で会うようになる。次第にイセルは彼の美しさに心が飲み込まれていき……。
美しい最上級生×何も知らない一年生
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる