クリスマスには✖✖✖のプレゼントを♡

濃子

文字の大きさ
7 / 29

ー7ー ぼくと蓮と光

しおりを挟む
 揚げ物担当のぼくは、詩さんが仕込んでくれていた鶏肉をどんどん唐揚げにしていく。家でもけっこう作るんだけど、ぼくのと違って詩さんのは格別に美味しいんだ。

「前日につけておくの」
「そうなんだ……。すっごく柔らかいですよね。後、このスペアリブ、教えてもらってからお祝いのときには必ず作ってるんです」
「コーラと醤油で煮るだけだから、簡単でしょ?」
「はい!みんなすごく食べてくれるんです」
「景も?」
「ーーあっ、景君もだけど、蓮も光も好きですよ」
 たくさん作っておすそ分けしたりするんだ。恵さんからも、仕事続きでおかずを作るのが面倒だから、って頼まれることもあるし……。

 ーー景君、『また作ってほしい』、って言ってたな……。

「もう一品簡単なやつで、鶏の紅茶煮はどう?後味がさっぱりでいくらでも食べられるわよ」
「へぇー!教えてください!」
 クリスマス会に作ろうかな……。鶏は唐揚げ以外したことないし……、新しいものに挑戦するのもいいよね?


 ………そうそう、毎年母さんが作るチキンは、鶏の原型をとどめすぎてて、景君は見ないようにしてたっけ……。「俺ああいうのは無理なんだよ」、ってあの言い方がすごく可愛くて………。

「ミノちゃん!肉が焦げてるわ!」
「あっ!すみません!!」
 いけない、いけない、火を扱ってるときに変なこと考えちゃだめだよ。ぼくってーーばかだな……。



 昼近くになると、近所の子供達が次々に道場に飛び込んできた。
「ウタちゃん、来たよ!」
「これ、母ちゃんが野菜持って行けって!」
「あら、ありがとう~~~!大きい子は盛り付けを手伝って!小さい子は空いてるスペースでカードゲームをしましょう」

「はぁ~~~い!」

 元気な声が道場内に響く。ーーいいよね……、みんなでワイワイするのって。こういうの、大人になってもみんな覚えてるんだろうなーー………。



 ーージングルベル~ジングルベル~~♫

 流す音楽はあたりまえだけどクリスマス関係のものばかりだ。子供達も自然にハミングをしてるし、こういう誰もが知ってる歌ってすごいよね。

 詩さんの乾杯ではじまったクリスマス会はとてもにぎやかで、みんな目を輝かせながら食事を楽しんでくれた。
「これ、すっごい美味しい~~~!」
「ウタちゃん、神~~~!」
「最高!この唐揚げおかわりしたい~~~!」

 いつも子供食堂に来る高学年メンバーと、その子供達に誘われて来た友達、20人ぐらいかなーー、みんなうれしそうに、ご飯を食べて、ゲームもしてーー詩さんも本当にうれしそうだーー。

 けど、みんなどんどん騒がしくなっていって、ジュースをこぼす子も続出したり、その対応に忙しいときもあったけど、ぼくもものすごく楽しんだよ。


 子供達の食事が落ち着いた頃に「遅くなってごめん!食事をして!」と言われ、ぼくは台所で食事をとることにした。

 メインのちらし寿司や、唐揚げとスペアリブにエビフライにポテト。ミニ煮込みハンバーグに、ブロッコリーとゆで卵のサラダ……、ってすごいよね、これ全部詩さんの思いやりなんだよ。

 近所のお母さん達は会費を払うって言ってるそうだけど、地域のお年寄りが子供食堂のために寄付してくれてる分もあって、お金は大丈夫なんだってーー。詩さん、お年寄りのために、カフェでランチをつくったりしてるから、まわりからすっごく人気があるんだ。

 ーーこんなひとにぼくもなれたらいいな……。詩さんみたいになれたらーー………。


 キレイに飾り付けされたちらし寿司は、詩さんの性格をあらわしているね。母さんなら、「食べればいいのよ~~~」、って卵も錦糸卵にせずに、スクランブルエッグだろうな。

 ふと、通知に気づきスマホに目をやる。確認すると光と蓮からライツがきていた。内容は水曜日のクリスマス会のことだ。


ピカチュ『オレ寿司とるからな~~~。もち景兄のマネーで!』

イロハス『おれはパスタとサラダをつくるよ』


牛ミノ『了解。ぼくはいつもの揚げ物しま~す』

 ポンッ。


「ーーよし」

 このライツの名前は光に決められたもので、ぼくたちだけのグループのみで使われてる。ホント、バカバカしいよね。
 

ピカチュ『けど、景兄のヤツ、マジはっきりしねえ!』

イロハス『いいじゃん、兄貴にだって付き合いがあるんだから』


 ポン、ポンッと返事がすぐに返ってくる。案外同じ部屋にいて、ライツのやり取りをしてたりしてね……。


 蓮と光とぼくーー。

 よくこの3人で仲良くやってこれたな……、ってつくづく思うけど、これも景君がうまくまとめてくれてたおかげなんだろう……。気づいたら、いつも蓮と光がケンカしだして、ぼくはそれをオロオロ見てるしかできなくて、殴り合いになったら景君を呼びに行ってーー……。

 ーー景君に怒られて、ふたりはいつも泣きながら謝るんだ。光もすっごく荒れてたときでも、景君の前では良い子のフリしてたっけ(バレてただろうけど)……。


ピカチュ『なんだよ!つき合いって!オレ達のほうが大事だろ!?』

イロハス『ーーそういうわけにもいかないって、兄貴も帰りが遅いときもあるしーー』

ピカチュ『あ?あー、風呂はいってくるやつかーー』



「…………」

 ポン!

イロハス『ばか!送信消せ!まだ見てない!』



 焦った蓮の文面に、ぼくは凝視していた画面から目を離す。
「開かずに、見てたから……」
 蓮はぼくがいまの通知を見てない、って思ってるんだ。ーー蓮ってば、……ぼくの気持ちを知ってたんだ……。


「………」
 ちゃんと隠してある気持ちがまわりにバレバレだなんて……、まったく、ぼくは………小さい子供じゃないんだから。

「気を使わせてる……、蓮も優しいから……」



 ーーいずれぼく達のこの関係もなくなるだろう……。



 みんな大好きなひとができて、そのひとのことしか考えられなくなってーー、それが当然なんだから……、当然のことを悲しんじゃだめだよね……。

 送信取り消しになっているライツ、けどそれよりも先に見てしまった、『風呂はいってくるやつかーー』、って言葉……。ーーあたりまえのことに、泣くな、泣くんじゃないよーー………。
 


 忘れたくない思い出ばかりで嫌になる……。でも、忘れてしまったこともたくさんある……。だって、ぼくの頭じゃ覚えきれないぐらい、思い出がいっぱいあるんだものーー。



 あれは、小学1年生のときのマラソン大会だーー。ピストルに驚いて泣き出してしまったぼくを、景君がなだめて一緒に走ってくれた。まわりからは「カッコいいお兄ちゃんでいいねーー」、ってうらやましがられたけど、「おまえの兄ちゃんじゃないのに、なんで?」、とも言われたんだ。

 ーーあのとき、ぼくはなんて返したんだろ?家が隣だから?兄ちゃんみたいなものだから?ーー違うな……、なんて言ったんだろ……。 


『いいの!だって、だって景君はーーーっ!』


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

向日葵畑で手を繋ごう

舞々
BL
琥珀は付き合っていた彼氏に「やっぱり男とは手が繋げない」とフラれてしまい、そこから更に人を避けて生きるようになった。笑うことさえなくなった琥珀を心配した母親は、琥珀の夏休み期間だけ自分の生まれ故郷である秩父へと送り出す。そこで久しぶりに再会した悠介は、琥珀のことを子ども扱いするものの、事あるごとに自然と手を繋いでくれる。秩父の自然に触れながら、琥珀はいつしか明るく優しい悠介に惹かれていったのだった。

発情期のタイムリミット

なの
BL
期末試験を目前に控えた高校2年のΩ・陸。 抑制剤の効きが弱い体質のせいで、発情期が試験と重なりそうになり大パニック! 「絶対に赤点は取れない!」 「発情期なんて気合で乗り越える!」 そう強がる陸を、幼なじみでクラスメイトのα・大輝が心配する。 だが、勉強に必死な陸の周りには、ほんのり漂う甘いフェロモン……。 「俺に頼れって言ってんのに」 「頼ったら……勉強どころじゃなくなるから!」 試験か、発情期か。 ギリギリのタイムリミットの中で、二人の関係は一気に動き出していく――! ドタバタと胸きゅんが交錯する、青春オメガバース・ラブコメディ。 *一般的なオメガバースは、発情期中はアルファとオメガを隔離したり、抑制剤や隔離部屋が管理されていたりしていますが、この物語は、日常ラブコメにオメガバース要素を混ぜた世界観になってます。

沈黙のΩ、冷血宰相に拾われて溺愛されました

ホワイトヴァイス
BL
声を奪われ、競売にかけられたΩ《オメガ》――ノア。 落札したのは、冷血と呼ばれる宰相アルマン・ヴァルナティス。 “番契約”を偽装した取引から始まったふたりの関係は、 やがて国を揺るがす“真実”へとつながっていく。 喋れぬΩと、血を信じない宰相。 ただの契約だったはずの絆が、 互いの傷と孤独を少しずつ融かしていく。 だが、王都の夜に潜む副宰相ルシアンの影が、 彼らの「嘘」を暴こうとしていた――。 沈黙が祈りに変わるとき、 血の支配が終わりを告げ、 “番”の意味が書き換えられる。 冷血宰相×沈黙のΩ、 偽りの契約から始まる救済と革命の物語。

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

強面若頭は、懐っこいナースの献身に抗えない ―極道、はじめての恋を処方される―

たら昆布
BL
ウブで堅物な極道若頭×明るいわんこ系看護師

ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!

ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!? 「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??

招待客は食器を選べない

近井とお
BL
一年生のイセルは庶民出という理由で同級生から嫌がらせを受けており、第三校舎からティーカップを一つ持ってくることを和解の条件として一方的に提示される。第三校舎には不穏な噂が流れており、侵入禁止とされていた。イセルは導かれるように三階の一室にたどり着き、そこには美しい男がお茶会を開こうとしていたところだった。ティーカップの代わりにキャッチャースプーンを借りたことをきっかけに、二人は第三校舎の教室で会うようになる。次第にイセルは彼の美しさに心が飲み込まれていき……。 美しい最上級生×何も知らない一年生

処理中です...