クリスマスには✖✖✖のプレゼントを♡

濃子

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ー25ー キモストーカーって……。

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「そうか……。なら、今後は兄弟の縁を切る」
「えーー!?」
 ちょっと、景君!
「な、なんで!ふざけんなよ!!」
「言ってわからないなら、行動に出るしかない」
 拳を固めた景君を見て、光の顔から血の気が引いた。サアーーー、って音が聞こえてきそうなぐらい、光の顔は青くなっていく。

「いや、ちょ、ちょっと待ってくれよ!謝るから!景兄!ごめんってーー!蓮、助けてくれ!」
「だから、おれは言ったのに……」
 はあ…、と蓮がため息をついたその次の瞬間、ーーゴッ!って鈍い音が光の顔からあがったんだーー。


「ーーけ、け、景、く…ん」
 光が仰け反った。あの、ケンカなら誰にも負けたことがない光が、いとも容易く後ろに倒れていく。だけど、さすがは双子のお兄ちゃん、床にぶつかる前に蓮が光を全身で受け止めた。


「~~~ッ!ーーーーーいってぇ~~~~!」
 涙まじりの光の叫び声を聞いて、西崎さん達が目を大きく見開いた。次第にぶるぶると震えていく彼らは、光ならこの状況をなんとかしてくれると思ったんだろうか……。

「ーーウソだろ……!」
「ぴ、ピカ!おまえ、ケンカなら無敵なはずじゃーー」
「か、帰ろうよーー!」
「あっ、ボクの車で送っていくよ。警察署でいいよね?署長がボクのパパの後輩だから、いいようにしてくれると思うけど♡」
「………」
 絶望的な表情になった4人は、がっくりと肩を落とし、その後、何も言えないまま倉内さんのボディーガードみたいなひとに連れられて行った。





「ーークソッ、マジ痛い!」
 泣きながら、光が頬を冷やしている。
「蓮、母さんから連絡はきたか?」
「大丈夫だって。明後日の晩、予定通り帰るってさ」
「そうか」
「そうかじゃねえ!ひでぇ!ひでぇーーッ!」
「それだけ話せるんだ、俺も甘い……」
「クソ景兄ぃーー!」

 嵐が去った後っていうのかな……?西崎さん達がいなくなって、一番ホッとしているのは、ぼくだね……。

「明日は腫れあがるだろう」
「痛くて眠れないぜーー!」
「ーーとてもじゃないが、実律とデートは無理だろうな」
「!」
「はあ?光、おまえ……」
 何してるんだよーー、とつぶやいた蓮が、光を頭を軽く叩いた。呆然と天井を見る光は、深い息を吐いて、景君を睨む。

「……うっわぁ、えげつねえ……」
「安心しろ。おまえの代わりに、明日は俺が実律とデートをする」
「はっ、景兄なんかどうせ明日は仕事だろっ!」
「ふふっ」
 喚いた光に、残念そうな目を向けて笑ったのは倉内さんだ。何かおかしなこと、あったかな……?

「?」
「明日はねー、ボクがボウリングをしたくなったから、景の会社の新人社員達に接待をお願いしたんだぁ」
「ーーはあ…」
「それが……?」
「景も接待に来てることにするんだよー」
 なんでもないことのように倉内さんが話す。

 ーーすごい、さすが世界に誇る倉内財閥の超御曹司。一流企業の社員も、簡単に接待に呼び出せるんだーー。

「グッジョブ」
 景君が親指を立てて倉内さんにつき出すと、彼も同じ手の形をして軽くぶつける。
「……………」
 蓮と光がすごく冷めた目になってるよ。「最悪」、とかブツブツ言ってるけど、親友って感じで素敵だと思うなーー。


「でも、クルージングでいいの?セスナもあるよ」
「実律は飛行機が苦手なんだ」
「へぇーー、胴体着陸でもしたの?」
「……そんなわけない」
「ボク、近々アメリカのサファイアエンジェルスの同乗飛行に乗せてもらえるかもしれないんだぁ♡」
「……そうか」
「Ride Alongっていって、メディア関係者や、非常に限られた人しかダメなんだよー」
「ふうん」
 倉内さんがうれしそうに話しているのに、景君はまったく話を聞いていない。そういう関係なんだろうな……。


 ん?



 あれ?景君、蓮と光にもしかして、………話したのーー……?



「景君……、あの…ね…」
 倉内さんを乗せたリムジンを見送った後(近所のひとが窓から見てたよ)、ぼくは気になったことを思い切って尋ねてみた。

「ああ、明日は朝から出かけよう」
 さわやかすぎて目が眩む。もう、景君はカッコよくないときなんかないでしょ?

「いや……、えっと……その……、蓮と光って……あのーー……」
 言いにくそうにするぼくを見て、景君が微笑む。
「問題はないよ」
 いや、だからキラキラまぶしすぎるんだって……、背景がイルミネーションって素敵すぎるーーじゃない、問題ないって、問題だらけのような……。


「とりあえず、光は駿河湾に沈めよう」
 リビングに戻った景君が、楽しそうな顔で宣言した。
「異議なし」
 蓮が頷く。
「なんでだよ!」
 うん、もちろん光は、「嫌だ!ふざけんな!」、とギャーギャー叫んだ。

「実律に恐喝紛いのことをした罪だ」
「はあ!そんなの、オレがグッジョブだわ!景兄とミノがウジウジやってるから、起爆剤になってやったんだぜ!感謝しろっての!!」
「ふうん……、まあ、そういうことにしといてやる」
 ーー景君、手に持ってるロープは、何?ーーまさか、本当に光を………、そんなわけないよね?

「けっ、なんでリーマンのくせに激強なんだよ……」
 愚痴をこぼす光を見ながら、景君がぼくに目配せした。また剣道の稽古に通いだしたこと、言わないのかな……、なんでだろ?


「ーー実律……。こいつらは元々、俺の気持ちを知っているんだ」
「ーーあ……」
「黙っているように頼んでいた……」
 その言葉に、ぼくの心臓がドキッとなる。ーーうん、そっか……、ぼくと同じことを景君も……。

「いや……、両想いなのにじれったいとは思ってたけど、将来とかを考えたら慎重になるのもわかるしね……」
 言葉を選びながら、蓮が控えめに言う。そんな彼とは真逆で、光は顔をしかめながら言葉を放った。
「ふんっ、障害なんか、同性ってだけなのによーー。めんどくせーんだよ」
「蓮……光……」
「正直、同情はするよ」
「え?」
「兄貴は、嫉妬深いし、心は狭いし、性格もかなり歪んでいるしーー」
 蓮が言い出したことに、ぼくは首をひねる。蓮ったら、誰の話をしてるんだろう?

「ちょっと待ってよ、蓮。景君がそんなわけないでしょ?」
「そんなわけあるぜ!ミノとふたりでランニングしたいからって、カワイイ弟に、『邪魔だから来るな』、って言ったり」
「ミノに近づくヤツは、『おまえ達が追い払え』、って言ったり」
「ミノが好きなバンドがあるって言ったら、急にギターをやりだしたり……、やることなすこと完全にキモストーカーなんだよ」

「……」
 け、景君……、それ本当のことーー?そんなこと聞いたら……、ぼく……、ぼくはーー………。

「ーー景君……、そんなの……、うれしくて泣きそうだよ」
「実律……」

 好きなひとにこんなに大切にされていただなんて……、幸せすぎて泣くしかない……。
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