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第6話「一回戦」
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- 第6話「一回戦」 -
会場の空気は張り詰めていた。いよいよ来た一回戦。この漫才の大会は全国規模で、日本一参加者が多い。優勝賞金は3000万円。その他テレビなどに引っ張りだこになり、優勝すれば売れっ子として一生芸人として食っていける。まさに、漫才ドリームだ。しかしその夢を追い、夢に破れたものが一体何人いたのだろうか。夢とは時に残酷である。
僕らの東京会場では、一回戦の参加者がとても多い。ふざけて出場するアマチュアもいるが、準決勝に進出したこともある猛者もいた。
「見ろよ、あいつ」
牧田が指差した先にいたのは、昨年準々決勝進出の、「クラウンアート」というコンビだった。
クラウンアートは今年こそ決勝に行くのではとウワサされる、コンビ結成13年目のベテランだ。
「あんな奴もいるのなぁ」
「大丈夫だ、今年の俺らなら大丈夫だ」
なぜか不思議な自信があった。それには訳がある。俺はあれから毎日のように萌花さんにはネタ見せしていた。萌花さんからアドバイスを受け、大幅に漫才のスタイルも変えた。練習も、今までにないくらいした。もう、ウケる気しかしなかった。
「自分を信じよう。大丈夫だ」
「そうだな。頑張ろう」
いよいよやってきた僕らの出番。
「どーもー!」
元気よくステージに上がる。絶対、大丈夫。
「僕最近ビョーキになっちゃいまして」
「ほう、どんなん?」
「多分大したことないけど、頭が痛くて熱が40度あって、鼻血が出て、口から吐血して……」
「死ぬぞ!病院行け!」
「で、この前美容院行ったんですわ」
「病院行けよ!」
ここまでは、今までのコント漫才と同じだ。しかし、ここからが新しい僕らの賭けだった。
「病院って変態ですよね」
「大変なんだよ!変態じゃないよ!」
「まずお見合い室で待ちまして」
「待合室だよ!なんで結婚相手探すんだよ!」
「で、待ってる間、ずっとテレビジョン見ていたんですよ」
「ふつうにテレビでよくない?」
僕らは、コント漫才からしゃべくり漫才にスタイルを変えた。それも、ボケが次々とボケを入れ、僕も沢山ツッコむ。無論、入れるギャグの数も沢山増える。
それこそ最初はウケはまあまあだったが、僕らがテンポアップしていくにつれ、お客さんもどんどん笑うようになった。最後の方に差し掛かると、もう大爆笑の嵐。
「もうええわ!」
僕がこう言って漫才を終えた時、今までにないくらい大きな拍手をもらった。
「やったな、小栗」
舞台袖に引っ込んで、牧田が嬉しそうに言った。
「ああ、やったな」
僕ら史上、もっとも輝いているステージだった。あとは結果発表を待つだけだ。
会場の空気は張り詰めていた。いよいよ来た一回戦。この漫才の大会は全国規模で、日本一参加者が多い。優勝賞金は3000万円。その他テレビなどに引っ張りだこになり、優勝すれば売れっ子として一生芸人として食っていける。まさに、漫才ドリームだ。しかしその夢を追い、夢に破れたものが一体何人いたのだろうか。夢とは時に残酷である。
僕らの東京会場では、一回戦の参加者がとても多い。ふざけて出場するアマチュアもいるが、準決勝に進出したこともある猛者もいた。
「見ろよ、あいつ」
牧田が指差した先にいたのは、昨年準々決勝進出の、「クラウンアート」というコンビだった。
クラウンアートは今年こそ決勝に行くのではとウワサされる、コンビ結成13年目のベテランだ。
「あんな奴もいるのなぁ」
「大丈夫だ、今年の俺らなら大丈夫だ」
なぜか不思議な自信があった。それには訳がある。俺はあれから毎日のように萌花さんにはネタ見せしていた。萌花さんからアドバイスを受け、大幅に漫才のスタイルも変えた。練習も、今までにないくらいした。もう、ウケる気しかしなかった。
「自分を信じよう。大丈夫だ」
「そうだな。頑張ろう」
いよいよやってきた僕らの出番。
「どーもー!」
元気よくステージに上がる。絶対、大丈夫。
「僕最近ビョーキになっちゃいまして」
「ほう、どんなん?」
「多分大したことないけど、頭が痛くて熱が40度あって、鼻血が出て、口から吐血して……」
「死ぬぞ!病院行け!」
「で、この前美容院行ったんですわ」
「病院行けよ!」
ここまでは、今までのコント漫才と同じだ。しかし、ここからが新しい僕らの賭けだった。
「病院って変態ですよね」
「大変なんだよ!変態じゃないよ!」
「まずお見合い室で待ちまして」
「待合室だよ!なんで結婚相手探すんだよ!」
「で、待ってる間、ずっとテレビジョン見ていたんですよ」
「ふつうにテレビでよくない?」
僕らは、コント漫才からしゃべくり漫才にスタイルを変えた。それも、ボケが次々とボケを入れ、僕も沢山ツッコむ。無論、入れるギャグの数も沢山増える。
それこそ最初はウケはまあまあだったが、僕らがテンポアップしていくにつれ、お客さんもどんどん笑うようになった。最後の方に差し掛かると、もう大爆笑の嵐。
「もうええわ!」
僕がこう言って漫才を終えた時、今までにないくらい大きな拍手をもらった。
「やったな、小栗」
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「ああ、やったな」
僕ら史上、もっとも輝いているステージだった。あとは結果発表を待つだけだ。
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