スキしかいらない

みやび

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やって来た二人

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それから数日した時だ。

「お疲れ…」
「お疲れ様です。」
「会長、お疲れ様ですー」
「うん。あ、今日あとで草間が来るんで…来たら呼んで?」
「あ、はい。」

そう瀬戸と返事をしていた桜。仕事をしつつも事務所に牧田が居るという事で少し心があったかくなっていた。そして二十分位した時だ。

「あ、お疲れ様です。」
「お疲れ様です、会長呼んできますね?」
「あ、私行きますよ。序にそのまま休憩入ります。」
「あ、じゃぁお願いします。」

そうして瀬戸が呼びに行った。

「草間さん、今日は何で?」
「会長がここの配線がどうとかで、見に来たんですよ」
「なるほど…!ありがとうございます!」
「いえいえ、会長から言われたなら来ない訳にはいかないですしね」
「確かに」

そう話していると直に牧田がやって来る。

「楽しそうだな」
「はい、あまり草間さんとお話しできないですし?」
「それもそうだ。」
「で、会長?どこです?」
「フロントの中」

そう言ってこっちと連れて裏に回る。すぐさま牧田と草間がフロントに入って来た。

「私邪魔ですか?出てましょうか?」
「いや、また俺が電話出るとか嫌だよ」
「じゃぁ、邪魔にならない様にいますね?」
「邪魔じゃないよ、御門さんなら」
「語弊ありますよ?草間さん」

そう話していながらも桜は仕事を進めていく。ふぅ…と一息つけばあれこれと見ている二人を桜はじっと見ていた。

「…ほぇー、そうなってるんだ…」
「心の声が駄々洩れだな」
「あ…」
「これこれ」

そう言って牧田が手招きをする。それに誘われる様にして、桜が近付く。

「これ。ここを何とか伸ばしたいんだよね」
「出来るんですか?」
「はは、草間さんはね、凄腕何だよ、覚えておいて?」
「盛りすぎですけど?会長」
「そんな事はないだろ。僕の要求をほとんど叶えてくれる」
「それはすごいですね…」
「だろ?」
「自慢げに話してるところ申し訳ないんですけど、ここの配電って図面あります?」
「あー、ちょっと待って?」

そういって牧田は二人を置いて事務所にいったん戻る。その間に、椅子に座りながら話をする草間と桜。

「でも、驚いた…」
「はい?何がですか?」
「会長だよ。」
「へ?」
「御門さんには一人称が『俺』なんだなぁって…」
「あー、はい、なぜか…」
「相当気を許してるんですよね、きっと」
「そうでしょうか?だとしたら嬉しいですけど…」
「うん、たぶんね?」
「あんまり最近会えないのが…」
「お待たせ…」

そう言って桜の話の途中で牧田が不意に帰ってくる。

「…何の話?」
「いや?御門さんと会長の話をしてたんですよ」
「俺の、ねぇ?」
「あ、…変な事は言ってないです。」
「逆にその変なって部分を聞きたいわ」
「クスクス…」
「どうかしましたか?」
「いや、やっぱりそうだなぁって」
「ん?どうかした?あ、これ、配電」
「ありがとうございます。ほら、御門さん相手だと会長の一人称が変わるって話。」
「…あぁ、確かに…」
「自覚はあったんですね?」
「無いと怖いだろ」

そう話していた。そんな中で電話が鳴り、桜が出る。

「……にしても、解りやすいですね」
「何がだ?」
「いえ?…言っていいんですか?」
「言わないと解らんだろ」
「…大事にしてるんですね」
「……何の事?」
「即答されないのがまた…」
「…ハァ…」
「まぁ、会長がスタッフに対しても好き嫌い激しいのは有名ですし?」
「好き嫌い激しいって…草間ほどではないと自負してるが?それに、僕が嫌いなのは口だけで仕事もしないのが嫌いってだけで」
「まぁ、僕も好き嫌いはありますけど…?憎めないですよね、御門さん彼女
「…だな」

そう言いながらも小さく笑う牧田を見て草間は何かを勘付いたのだろう。

「僕、少し裏でこれ見てきますわ」
「ん、解った。」

そうして一足先に草間がフロントを後にする。桜もまた電話が終了したばかりだった。そんな桜に牧田は声をかけた。

「…なにかあったら裏に居るから」
「はい、解りました。」
「…ん」

にこっと笑いかけて牧田もフロントを後にする。事務所に入って行けば扉を閉めた。

「…何で来たんですか、クスクス…せっかく二人にと思ったのに」
「休憩してるのが居るのにさぼらせる訳にもいかんでしょ」
「サボらせる、ねぇ。会長にしては珍しい…」
「それよりも仕事」
「はい、」

そうして牧田と草間は資料を見ながらも本来の仕事に入っていった。

***

「休憩ありがとうございます」

そう言って瀬戸が戻ってくる。

「おかえりなさい」
「何か扉閉めちゃってるんですね」
「あー、何か配電?の工事かねてで草間さんが来てるみたいだから、それでじゃない?」
「部長が来てるんですよね」
「うん、だね」

そんな話をしながらも時間が過ぎれば牧田と草間が事務所から出てくる。午後からのスタッフも出勤してきて引継ぎが済めば、デスクが空くことも無く、桜は裏の事務所で作業をすることにした。

「…はぁ、一人だと意外と楽だよな…」

基本的には事務所と廊下の扉が開いている事も多いといえ、それでも何か話を振られる事も極端に少なくなるため、事務所での仕事も桜は好きだった。

「にしても…」

ふと思い出すのは草間に言われた言葉だった。

「…確かにそうかも…でも…」
「あれ、御門さんだけ?」
「あ、会長…お疲れ様です。草間さんは?」
「また後日しっかりと施工に来るからね。今日は下調べだけだし。」

そういえば牧田は帰り際だったのだろう。鞄を持ってしっかりと帰り支度を済ませていた。

「…?どうかしましたか?」
「…いや、いつも通り過ぎるなって…」
「何が…ですか?」
「いや?別に?」
「変な会長。」
「俺を変人扱いするのは数少ないぞ?」
「…別に変人扱いしてるわけじゃないですけど?」
「そう?」
「はい。」
「あ、そうだ。」
「どうかしましたか?」
「今度の金曜。空いてる?」
「空いてる…と言えば…空いてますけど…?」
「不安定だな。」
「どうかしましたか?」
「丸一日とはいかないけど。どこか行くか?」
「…へ?」
「考えといて?」
「あの、!」
「ん?」

そう。はもう二日後の事だった。考えている時間などはない。それは桜でも容易く解る事だった。

「…空いて、ます」
「ならよかった。そうだな、また時間連絡する。」
「はい…ッッ…」
「じゃ、本社戻ります」
「はい、お気をつけて」
「ん」

そうして牧田は帰っていくのだった。
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