スキしかいらない

みやび

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戸惑い

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それからさらに半月が経ち、桜達二人が別れてから一カ月が経とうとしていた。そんな中で牧田が一人連れてホテルにやって来る。

「…お疲れ様です、あ、初めまして…御門と言います。」
「初めまして!」
「御門さん、こっち社長のくすのき
「楠です、よろしくお願いします」
「あ、お願いします。」
「営業体系変わるから」

そう言われて桜は呆けてしまう。

「え…?営業体系…?」
「うん、俺から社長の楠に代わる。」

そう聞かされた桜。その後楠に何か言われていたけれど、何も耳に入ってこなかった。

「あ、すみません失礼します」

そう答えれば桜はすっと事務所を後にするしかなかった。それから時期に草間も合流してくる。

「んー、あ、お邪魔していい?」
「あ、はい」

そうして桜一人のフロントに草間が入って来た。

「…最近どう?」
「最近、ですか?」
「うん。なんか最後にあってから随分と元気なさそうだから。どうかしたのかなって思って…」
「あー、そんなことないですよ?」
「そう?」
「はい。」
「なんかうまくいかないんじゃない?」
「……あー、バレちゃいますかね…そんなに私…解りやすいですか?」
「うん、まぁね?」
「うまくいかないと言えば…その言い方が正しいのかも解らないですが…」

そう言って桜は『会長が…』とはいう事も無いままに伏せつつも話し始めた。

「まぁ、完全な個人的な事ではあるんですが…」
「うんうん」
「付き合っていた彼と…別れちゃいまして…」
「あー、そっち系って事ね?」
「クス…そっち系…?」
「いやいや、続けて?」
「それで…身勝手ながらも私が振っちゃったんです。でも後悔って言うか…良く解んないんですが…」

そうゆっくりと話し出す桜の言葉をゆっくりと聞いている草間。

「正直まだ好きなんです…相手の事。でも…邪魔したくない…って思って…」
「邪魔だって言われた?」
「言われてないんです。重荷とも言われてない…んだけど、それでもそう思っちゃって…自分の中で、何ですけど…」
「うーん、男女の事だとさ?僕がどうこう言うのもおかしいのかも知れないけど、後悔するというならしっかりと話し合ってみたらいいんじゃないかな?」
「話し合いは…したらダメなんです」
「ダメ?」
「…きっと関係ないって言われるから…」
「相手が関係ないって言うなら本当にそうなんじゃないの?」
「言われる事は予想つくんです。『気にするな』『君の考えてることはない』『重荷なんて誰が言った?』とか…それが理由なら別れる意味が解らないってきっと言われる…」

草間は小さく笑っていた。

「それでも相手は御門さんの事大事に思ってるって事じゃないのか?」
「…解ってるんです…」
「そっか」
「優しすぎるんです。」
「それが嫌だって事…?」
「違うんです…私にもったいない位なのに、本当はずっと一緒に居たい…だけど、それは私のわがままな気がして…どうしても…彼の事守りたいけど…私じゃ守り切れない気がして…」
「…大丈夫だと思うよ?」
「……・・・でも…」
「きっとさ、御門さんの中でその相手がとても大切で…それと同じ位に相手も御門さんの事大切に思ってると思うよ。相手の事が大切だから、時間を割くのだって苦とも思わないだろうし、好きだって言ってくれるから自分も伝えたいんだって思う。」
「…あの、草間さん?」
「何?」
「……もしかして…」

そう桜が言いかけた時だ。草間はどことなく嬉しそうににこりと笑っていた。

「まぁ?どちらにしても僕は良いと思ってたんだけど…」
「え…?」
「間違いでなかったら、恐らく相手は僕も知ってる人だよね?」
「それは…はい…」
「だと思った。まぁ、誰かって相手は聞かないどくけど」

そう言われても桜にしてみればもう少なくても草間にはバレている…と言う気持ちでしかなかった。

「でも、どうして…」
「だいぶになるよね…?きっと付き合いだしてさ?」
「…ん」

小さく頷く桜をみて草間は嬉しそうに笑っていた。それでも互いに誰というのをはっきり口に出すことも無いまま話は続いていく。

「好きだって思うのは、良いことだと思うのよ、僕はね?だってそれがいい証拠に表情一つとっても柔らかくなってるし、いろんなことがうまく回っていたからさ?」
「草間さん…」
「僕的にはバレてないって思ってるのか、それとも気づいていないと思い込みたいのか、その真相はわからないんだけど、それでもあんな風に有給取ったりさ?そんな姿を見るのは初めてだったんだよ」

そのひと言で桜の中で確信に変わっていた。バレていないなんてことは一切無くて、それよりも草間がこうして思ってくれていることに少なからず安堵して居る自分に気づいた。

「まだ…好きなんだって…自分自身に嘘つくのも…凄く嫌なのに…」
「うん、でもそういうのも全部踏まえて、2人で本当は話し合えたら良いんだよね…?」
「…でも…もうその時間は取れそうにありません…」

そう寂しそうに話す桜。草間も恐らく営業形態の変更に関しては解っているのだろう。

「このまま終わっていい?」
「それは…」
「…だよね?」
「……ッッ」
「僕が少し時間取ろうか?」
「…草間さんが?」
「うん、もし良ければ、ってとこだけど?」

迷惑をかける…そう思うのがくせになってしまっているのだろう。それでも草間は優しく笑いかけていた。

「…どうする?」
「…話し、たい…」
「了解。」
「でも…無理はしてほしくないです…」
「無理してるつもりは無いから大丈夫」

そう言って草間はよっと椅子から立ち上がった。

「んじゃ、また後で…」

そう話してフロントから事務所に向かっていくのだった。

「会長?あ、あれ、社長は」
「今帰った。今から少し確認して…」
「あー、それで少し相談がありまして…」
「ん?どうした?」
「僕少しちょっと確認したい所あるんで、十分くらい時間を貰えたら…」
「あぁ、解った。じゃぁ、少し待ってるさ」
「…いや、たまには少し話してきたらどうですか?」
「…誰と?」
「言わないと解りません?…では、僕少し見てきますわ」

そう言って配電配置図を見つつも草間は事務所を出ようとした。

「あ、ちゃんと言ってくださいね?」
「……」

そう言い残して事務所を後にすれば少しの間、牧田は一人で考えていた。

「…いけと言われても…避けられてるのに何を話せっていうんだ…」

そう呟きながらも、少し躊躇いがちにフロントに続く扉をノックすれば顔を覗かせた。

「あ、お疲れ様です。」
「ん、…おつかれ…」
「どうかされましたか?」
「少し良い?」
「はい」

その桜の返事を聞いて牧田はギッと椅子に腰掛ける。

「……草間と何か話したか?」
「…あ、世間話を…少し…」
「そっか…」
「はい。」

そう言えば会話が止まる。すこしの間があった後に牧田は話しだした。

「さっきの話、ほら、営業形態が変わるっていう…」
「あ、はい」
「時任さんも時間減らしてるとは言えいるし。基盤作りは粗方できたからそれでね」
「あ、そういうことだったんですね?」
「そう。」
「ていうことは、会長も後少しでいなくなっていくってことですか?」
「まぁ、引き継ぎが全部終われば?楠がいれば問題は無い」
「グラッド的には、ですよね?」
「…御門さん?」

珍しくも桜の仕事の手が止まっている。それを気付いた牧田は小さくため息を吐いた。

「ホテル的に問題がなければ、それで大丈夫だろう?」
「…本当にそう思いますか?」
「どういう意味?」
「…別に…これと言って深い意味は無いんですけど…」
「そう?」
「…はい」
「でも…」

そう言いながらも牧田は桜の方に顔を向けることも無いままに話を続ける。

「さっきの言い分からしたら、ってだけだけど。ここは良くても、桜自身は良くないって言い分に聞こえるのは俺だけ?」
「…ッッ」
「もう一回聞くけど…」

そう言えば視線を感じた桜は牧田の方に体ごと向き直す。

「…俺と別れたいのは桜の本心?」
「それは…ここでは…」
「はじめはここで話すつもりだったでしょ?」
「…それは…」
「どうなわけ?」
「…本心かどうかと言われたら…本心が半分…」
「もう半分は?」
「…それは…まだ好き…だよ。」
「じゃぁなんで別れようって…」
「好きだけど、それは嫌いじゃないから…」
「……嫌いじゃないけど…恋人としてみれなくなったってこと?」
「…そう」

実際はそんな事がないにいしても、ちょうどいい言葉を牧田が出してくれた。桜はそれに乗っかるようにしてイエスを出した。

「…そっか…」
「ん…」
「でも、これ…」

そう切り出せば牧田はポケットからすっと取り出した。

「…これは…桜を思って買ったやつだから…捨てれないって言うなら捨てなくても良い。別にそれを持っていようが居まいが、どっちでも構わない。捨てるって言うなら捨ててくれても良い。でもそれを決めるのは俺じゃないから。」
「ま、さき…」
「クス…ここでそれ聞くのは何よりもの新鮮だな」
「あの…!」
「そろそろタイムオーバーだ」

そう言って牧田は椅子から立ち上がる。そのまま誰も居ない中で桜の頭をぽん、と撫でてフロントを後にした。
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