スキしかいらない

みやび

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踏み出した一歩

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そしてそれから一ヶ月が経った頃…

「本当に辞めるの?」
「はい、すみません…一身上の都合として…」
「私には辞める理由教えてくれても良いんじゃないかしら?」
「…それは…ごめんなさい…」
「そっか…それにしても、ここ最近ですごい変化よねぇ…」
「はい?」
「ほら、会長から社長に変わるって言うし、御門さんも辞めちゃう。もしかして会長となにか関わってたりして」
「断じてありません…」
「だよね、ごめん、冗談よ」
「…今月いっぱいで…」
「解りました。でも残ってる有休もあるから実質半月ってところね」
「はい」

そうして退職を決意した桜。本音を言えば、中条が言ったことは遠からずといったところだろう。間違いでも無い。ただ、牧田と一緒に居た、始まりの場所にとどまっているのはどうしても辛かった。

「…ハァ…」
「どうかした?」

そう声をかけたのは瀬戸だった。

「あ、瀬戸さん、私大変お世話になりました」
「え?何言ってるんですか?もう辞めるみたいな言い方して…」
「辞めるんで…」
「冗談ですよね?」
「冗談で流石にこれは言えないですよ」
「じゃぁ本当に?」
「はい」

そう話をしていた。社員までいったのに?とか何があったんですか?とか、色々と聞かれていたものの牧田とのことを口にすることもなく、一身上の都合で…と答えるのみにしていたのだった。

「そうだ、最後に聞きたいことがあって!」

そう瀬戸が切り出した。

「何?私に解ることなら良いんだけど…?」
「会長って恋人いるんですかね」

突如振られた牧田の恋人事情。桜は気が気ではなかったものの、瀬戸に問いかけた。

「でも、どうして?」
「ほら、会長って結構大人なわりに時々笑ったりする顔とか凄くたまに甘い顔したりするじゃないですか!」
「そう、かな?」
「あ、知らなかったですか?そうなんですよ!で、恋人とかいないなら…とかって思ってたんですけど、もう会えなくなってるし…そう思って…聞いてみました!」
「どうかな、本人に聞いてみたら?って言っても聞けないもん…ね」
「そうなんですよ」
「で、なんでそれ私に聞くんですか?」
「なんか、会長と御門さん、仲良さそうだったから…だから何かそういう話してたりして知ってるかなって思っただけです。」
「そか…ごめんね?役に立てなくて…」
「あ、大丈夫です!」

そう返事をする瀬戸だったものの、それでも変わらずにネットサーフィンを相変わらずしたまま何も変わらないままに過ごしていくのだった。

***

こうして桜の最後の出勤日。金本と一緒になった朝イチの引き継ぎ。

「で、以上です」
「はい、解りました」
「で、御門さん、ちょっと…」
「はい?」

おうして金元に連れられたままに事務所に向かっていく桜。言った移動したのか…少し気になりながらもついて行けば、振り返り、『はい』と手紙を差し出された。

「これって?」
「うん、預かった。」
「あ、ずかった?」
「そう。渡して欲しいって」
「…誰から?」
「ん?会長から」

そう話を聞いて桜はゆっくりとポケットに折りたたんでしまった、

「…折るのか」
「あ、折っちゃダメな奴だったかな…」
「それ言われてもわからんな」
「だよね…でも、ありがとう」
「俺は頼まれたのを渡しただけだって…」

そうして時期に夜勤組は帰っていく。最後の最後というのに、他に誰も居ない。桜一人のシフトだ。

「…読んでも…良いよね…一人だし…」

そうしてカサリと封を開けて中から取り出した。


『桜へ

これ読んでるって事は無事に金本君から手渡されたってことだな。まずは良かった。

俺が最後にホテルに行ったとき、桜は半分しかって言ってただろ。嘘ってことくらい解るよ。でも、桜がそうしたいならそれでいいと思ってた。何をするにも、俺は桜の笑顔が亡くならないならって思ってた。でも、なんだかんだ結局俺は桜から逃げてたのかも知れないな。もっとちゃんと、伝えなきゃいけなかった。

手遅れなのは解ってる。だけど俺が桜を好きになった気持ちは嘘じゃないから。出会ってくれてありがとう。一時でも俺を選んでくれてありがとう。

それから…俺よりも桜が幸せになれよ?

牧田 柾』


~side 桜~

どうして…こんなにも優しい人を傷つけたんだろう…

何の権利があって…私はこの人を傷つけたんだろう…

大切に思ってくれていたのに…これ以上の愛情はないって解っていたのに…もっとなんで…素直になれなかったんだろう…どうして…

本当は誰にも渡したくない…あの優しさも…繋いでくれた手の大きさも…抱きしめてくれた時に感じるフローラルの様な優しい香りと一緒に感じる鼓動…

全部大切だったのに…それを手放したのは私なのに…

後悔しか残らない…もっと一緒に居たかった…

もっと…たくさん笑いあいたかった…

もっと…一緒にやりたいことも…行きたい所もあった…

後悔してももう遅いのに…もう…元に戻れないのに……
私の勝手な感情だけで…

ここが家じゃなくて良かった…

泣いて…

泣いて…

枯れるほど泣いてもまだでてくるくらい泣いて止まらなくなるところだったから…

柾…

「好き…」

そう呟く声は誰のもとにも届くことのないまま、ホテルの中にとどまるのだった。
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