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朝チュン
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チュンッと可愛らしい鳴き声を残し、バサリと飛び立つ。
その音に無理やり覚醒させられた俺は、気だるい身体に疑問を抱きながらも起き上がる。
「いたっ」
身体の軋む感覚と共に、昨夜の光景がフラッシュバックする。
思い出される記憶に頭が追いつかずフリーズしていると、隣で身動ぎする気配を感じ、バッと振り返った。
「ふぅ.....」
どうやら、起きた訳では無いということが分かり肩をなでおろす。
(それにしても、綺麗な顔だな)
彫りの深い彼の顔はさながら、古代ギリシャの彫刻のよう。鴉の濡れ羽色の髪は、朝日に照らされ艶やかな紫光りの黒を強める。そして、固く閉ざされた目に焦点を定めた。
目を開いた彼の瞳は曇りのない漆黒だ。彼の熱っぽい視線を思い出し、つま先からビリビリと痺れる。起きて欲しくない。でも、その瞳に俺を写して欲しい。そんな矛盾している感情から視線を逸らした。
「.....っ」
彼の背中にミミズ腫れのような無数の痛々しい傷を見つける。恐らく昨夜、爪を立てたせいでついた傷だろうが、まさか傷になるほどとは思っていなかった。
__『そうだ。俺を掴んでろ』
(痛かった筈なのに、何も言わなかった...)
ミミズ腫れの他にも、血が滲んでいる箇所もあった。眠る彼に手を伸ばすと、痛々しい背中に手を這わす。
「またしたくなったか?」
「うわぁっ!」
「ふっ、そんなに驚くな」
ちゅっ、軽い音が響いた。
「なっ、!」
驚いて仰け反る俺を後目に、終夜は機嫌良さげにどこかへ向かう。少し経ってシャワーの音が聞こえてきた。
まるで唇だけ自分の身体の一部じゃないような錯覚に陥る。昨夜の荒々しいキスではない触れるだけのキスに年甲斐もなく浮かれてしまう。
確信めいたその感情の熱を覚まそうと、視線を逸らした。
一瞥した先に高そうな大理石柄のテーブルに無造作に置かれた財布を見つける。整理整頓された部屋に似つかわしくないそれは異質で、おのずと気になってくる。
『思い出せ。忘れたとは言わせない』
息絶え絶えの俺に向けられた言葉も後押しした。
(免許証の名前を見るだけ.....)
自分に言い聞かせながら、シャワーの音が鳴り止まないのを確認すると、意を決して財布に手をかける。
触った瞬間の吸い付くような感触から、本革であることが分かり怖気づく。ジッパーを引くと、とてもじゃないが財布に入れる量ではない札束が覗いた。まるで本当に犯罪を侵しているようで、罪悪感が募る。
「えっ.....?」
目当ての免許証を見つけ、手に取ると氏名の欄に目を向ける。
見覚えのある名前と、あまりに顔が一致せず、思わず声を漏らした。
その音に無理やり覚醒させられた俺は、気だるい身体に疑問を抱きながらも起き上がる。
「いたっ」
身体の軋む感覚と共に、昨夜の光景がフラッシュバックする。
思い出される記憶に頭が追いつかずフリーズしていると、隣で身動ぎする気配を感じ、バッと振り返った。
「ふぅ.....」
どうやら、起きた訳では無いということが分かり肩をなでおろす。
(それにしても、綺麗な顔だな)
彫りの深い彼の顔はさながら、古代ギリシャの彫刻のよう。鴉の濡れ羽色の髪は、朝日に照らされ艶やかな紫光りの黒を強める。そして、固く閉ざされた目に焦点を定めた。
目を開いた彼の瞳は曇りのない漆黒だ。彼の熱っぽい視線を思い出し、つま先からビリビリと痺れる。起きて欲しくない。でも、その瞳に俺を写して欲しい。そんな矛盾している感情から視線を逸らした。
「.....っ」
彼の背中にミミズ腫れのような無数の痛々しい傷を見つける。恐らく昨夜、爪を立てたせいでついた傷だろうが、まさか傷になるほどとは思っていなかった。
__『そうだ。俺を掴んでろ』
(痛かった筈なのに、何も言わなかった...)
ミミズ腫れの他にも、血が滲んでいる箇所もあった。眠る彼に手を伸ばすと、痛々しい背中に手を這わす。
「またしたくなったか?」
「うわぁっ!」
「ふっ、そんなに驚くな」
ちゅっ、軽い音が響いた。
「なっ、!」
驚いて仰け反る俺を後目に、終夜は機嫌良さげにどこかへ向かう。少し経ってシャワーの音が聞こえてきた。
まるで唇だけ自分の身体の一部じゃないような錯覚に陥る。昨夜の荒々しいキスではない触れるだけのキスに年甲斐もなく浮かれてしまう。
確信めいたその感情の熱を覚まそうと、視線を逸らした。
一瞥した先に高そうな大理石柄のテーブルに無造作に置かれた財布を見つける。整理整頓された部屋に似つかわしくないそれは異質で、おのずと気になってくる。
『思い出せ。忘れたとは言わせない』
息絶え絶えの俺に向けられた言葉も後押しした。
(免許証の名前を見るだけ.....)
自分に言い聞かせながら、シャワーの音が鳴り止まないのを確認すると、意を決して財布に手をかける。
触った瞬間の吸い付くような感触から、本革であることが分かり怖気づく。ジッパーを引くと、とてもじゃないが財布に入れる量ではない札束が覗いた。まるで本当に犯罪を侵しているようで、罪悪感が募る。
「えっ.....?」
目当ての免許証を見つけ、手に取ると氏名の欄に目を向ける。
見覚えのある名前と、あまりに顔が一致せず、思わず声を漏らした。
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