社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa

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第1章・綺麗なエルフ族の女の子

007:話はディナーの後で

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 ケモノっ子を拾ったが訳ありみたいだ。
 しかし詳しい話は、ご飯を食べてから聞こうじゃないか。
 エッタさんにレッドボアを解体して貰っている間に、俺は街で買っておいたフライパンと調味料を出す。


「ミナトしゃん。これから何を作るんだわん?」

「レッドボアの生姜焼きだっ!! 血抜きも完璧だし、絶対に美味しく作るぞ!!」

「しょうが? 生姜ってなんだわん?」

「そっか、生姜じゃあ伝わらないのか………んーっとジンジャーって分かるかな?」

「ジンジャーって、あの体がポカポカする奴かにゃん?」

「そうっ!!」


 俺は生姜焼きを作る上での下準備をしているが、獣人族は料理に こだわりがあるわけじゃ無さそうだな。
 街で調達したボウルの様なモノに、生姜・砂糖・酒に醤油の様なモノを混ぜて、エッタさんが捌いてくれたレッドボアの肉を作ったタレに30分漬け込む。


「これだけで良い匂いするわん!!」

「そうだにゃ。これはクセになりそうにゃ………」

「ミナト様が、キチンと血抜きをしてくれたので、とても質高く捌く事ができました!! それにミナト様の手料理を、食べさせてもらえるとは光栄です!!」


 生姜焼きのタレに漬け込んでいるだけで、女性陣の表情がユルユルのユルになっている。
 そして30分が経ったところで、焚き火で熱したフライパンにレッドボアの肉を乗せる。
 するとジュワーッという音と共に、湯気が俺たちを包み込んで自然と口からヨダレが垂れる。


「さらに、ここへタレを入れる!! そして焦げる前に、サッと皿の上に取り付ければ………レッドボアの生姜焼きの完成!!」

「本当に美味しそうだわん!! こんなの見た事ないわん!!」

「まさか、こんなところで ご馳走にありつけるにゃんて………思ってなかったにゃん」

「ミナト様が、こんなにも料理が上手だったとは………少し見直しました!!」


 ただの生姜焼きで、ここまで感動されると照れる。
 ブラック企業に働きながらも、家では自炊ばかりしていた為に身についたスキルの様なものだ。
 しかし食べる前から感動されては、少しハードルが上がっているのでは無いかと不安感はある。


「それじゃあ冷める前に食べようか!! いただきます!!」


 皆んなで挨拶してから食べ始めるが、俺は皆んなの反応が気になって口にせず、ドキドキしながら顔を確認する。


「う 美味いわんっ!!」

「うにゃい………」

「美味しいです!!」


 生姜焼きを口にすると3人ともプルプルと震え、少しの間合いが空いてから美味しいと叫んでくれた。
 その感想を聞けて意外にも緊張していた俺の胸が降りて、それじゃあと俺も実際に食べてみる。


「う 美味!? 俺が作って来た中で、1番美味しいんだけど………これは肉と下処理が良いからか?」

「料理人の腕が良いからですよ。本当に、こんな美味しいモノを食べさせていただいて感謝しかないですね………」

「本当に美味しいわん!! これなら幾らでも食べられそうだわん!!」

「カエデのいう通りにゃ………」


 シュナは食べるたびに頬を赤らめて、ゆっくりと味わう様に食べ進めており、カエデの方は実家で飼っていた犬と被る様な食いっぷりで おかわりを重ねていく。


「美味かったぁ。腹ごしらえも終わったところで………それで、どうして森の中で襲われてたんだ?」

「そうだったわん!! すっかり忘れてたわん!!」

「カエデの理性は、そこら辺の獣と同じにゃ………私から説明させてもらうにゃ」


 全員が満腹になって少し落ち着いたところで、どうして2人が森の中で狼に襲われていたかの話が始まる。
 エッタさんの時の様に、2人が何やら問題を抱えている様に見えたから俺は話を聞く事にしたのだ。
 決して猫耳や犬しっぽをモフモフしたいから、この子たちを助けたわけじゃ無い………断じて違う事だ!!


「私たちは、中陸の森に住んでるにゃ。それがある日に、別の魔物に襲撃されたにゃ」

「ある魔物? シュナちゃんたちが、ここに居るって事は、一族は散り散りになったのかい?」

「その通りにゃ。みんな逃げる事に必死で、たまたまカエデとは一緒だったけどにゃ」


 そうか魔物に襲撃されて、森に住んでいた獣人族が散り散りに散らばってしまったのか。
 そんなに散り散りになるくらいの魔物が、獣人族の集落を襲ったと考えると相当な化け物に違いないな。


「それで魔物ってのは、どんな魔物なんだい? 獣人族が手も足も出ないってなると、相当な奴を想像しちゃうんだけど」

「その通りにゃ。種族としては、大して強くはないゴブリンの集団にゃ………しかし、あの中にはゴブリンロードが居たにゃ」

「ゴブリンロードですか!? 獣人族の集落に姿を現すんですから確実に、ゴブリンロードが誕生してますね………」

「エッタさん。ゴブリンロードの説明をして貰って良いかな?」


 エッタさんの説明では、ゴブリンロードとはゴブリンの集団の中に、かなりの低確率で生まれる存在であるらしい。
 そのゴブリンロードは普段は統率の取れないゴブリンたちを手懐ける事ができ、魔王が統べる四天王に名前を連ねられるくらいの強さを持っているらしい。


「それで僕たちは、ゴブリンロードを倒して集落を取り戻してくれる人を探してるんだわん………」

「そういう経緯があったのかい………エッタさんの用事の後であれば、俺が力になるけど?」

「良いんですかわんっ!? ゴブリンロードは、かなりの強敵で命を落とすかもしれないわんよ?」

「そんなの考えてたら人助けなんてできやしないさ………自己満かもしれないけど、人を助けた後の飯ってのは、これはこれで最高に美味いもんなんだよ」


 シュナとカエデは、ゴブリンロードを倒せる人間を探して中陸から小陸まで渡って来たんだよな。
 俺で良いなら手助けしてやりたい………だから、断じてケモノっ子への見返りを求めてるわけじゃないんだよ?


「エッタさん的にも、それで問題ないよね?」

「え? えぇ別に問題はないですよ。同じ中陸出身として手を貸してあげたいって思っていますから」

「ありがたいわん。こんなにも美味しいモノを貰った上に、僕たちの集落まで助けてくれるなんて………」

「感謝、感謝しかないにゃん。私たちも、エッタさんの手助けをやれればやらさせていただきますにゃ」

「えぇ獣人族の力は、とても凄いと聞いているので、是非とも力を借りさせてもらいます」


 シュナとカエデはエッタさんの妹奪還に、微力ながら参加してくれると言ってくれており、動物界でのご飯への恩は熱いと聞いていたが、まさかこれがそうなのか?
 まぁ理由なんて何でも良いけど、話しを聞く限りでは獣人族は相当な戦いのプロが多くいると聞く。


「ここに《ミナトファミリー》が誕生しましたね!! これは何と良い日なんだろうか………そうだ、祝日にしよう!!」

「ミナト様。パーティーではなくファミリーなのですか? これはミナト様の願望が漏れたミスでは?」


 ここに来てもエッタさんの冷たい視線が刺さる。
 こんなにも冷たい目をできるのは、相当な《ドS》のスキルを持っているのではないだろうかと思える。


「が 願望とかじゃないけどさ………ファミリーって言った方が、なんか温かい感じがしないか?」

「ミナト様って、たまに乙女のような事を言いますね………」

「そんな事はないさ。とにかく今日は、明日の出発に向けて、早めに休息を取ろうか………」


 なんとかファミリーに関するところを言いながらできたのではないかと、自分自身に及第点をあげてやりたいくらいだよ。
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