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第3章・残念なドラゴンニュートの女の子

089:砂漠の歩き方

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 俺たちは共和傭兵団の騎馬を奪って、砂漠の村を目指しているがある問題が起きている。
 それは砂漠を生息地にしている巨大ミミズ《サンドワーム》に追われているという事だ。


「2人とも全力で逃げるんだぁ!!!!」

「全力で頑張ってますぅ!!」

「これは絶体絶命………」

「イローナちゃん、諦めないでぇ!! こうなったら、俺が討伐するしかねぇか………やってやんよぉ!!」


 サンドワームはS級モンスターであり、俺が単体でギリギリ倒せるか倒せないかくらいのランクだ。
 難しいモンスターだがイローナちゃんが食べられるくらいならば、俺が犠牲になってでも守ってやりたいと思っている。


「俺たちの前に現れた事を後悔させてやるよ!!」

・炎魔法Level2《ファイヤーエンチャント》
・斬撃魔法Level3
―――炎帝剣フレイム・カイザー―――

「ミナト様ぁっ!!」


 馬の進行方向をサンドワームの方に変えて、背負っている剣を抜くと炎をエンチャントさせた。
 そしてサンドワームに向けて勢いをつけて走り出すと、そのまま通りすがりざまにサンドワームを一刀両断した。
 サンドワームの胴体が地面に落ちると、ドンッと重量を感じる音と共に砂が空中に舞い上がっている。


「ミナト様、さすがです!! あのサンドワームを一刀両断するなんて!!」

「でも、このサンドワーム微妙に小さくないか?」

「ミナト。多分だけど、これはサンドワームの幼体………つまりは子供なんだと思う」

「やっぱり、そうだよな? 子供で、この大きさって事は大人はデカすぎるよなぁ………」


 目をキラキラさせながらエッタさんは俺を褒めてくれたが、俺には1つ気になる事があった。
 それは倒したサンドワームが微妙に小さい感じがした。
 ジーッとイローナちゃんが、倒したサンドワームを観察してみると、どうやら幼体なんじゃないかという話になった。


「サンドワームが、こんなところにもいるって事は、村とかにも出てくるって事だよね?」

「そうですねぇ。そうだと思いますけど、そうなったら大変ですよね………冒険者ならまだしも、村人には荷が重いですよね」

「S級モンスターを倒せるなら、その村人は冒険者になるべきだと思う………」


 このモンスターが当たり前のように、村にも出ると考えたら当たり前だが相当な被害になるんだろうなと妄想する。
 そう思うとフロマージュ王国は、住める国では無いのではと考えてしまった。


「まぁ何とも無かったわけだから、とにかく今は先に進む事にしようか」

「そうですね!!」

「早くベットで寝たい………」


 想像するのは終わりにして俺たちは馬に乗る。
 イローナちゃんは早く寝たいと欠伸をして、ウトウトしながら馬は進んでいく。
 危険なんじゃないかと、イローナちゃんとは同い年ではあるが母心が生まれてしまったかもしれない。
 そんな事を考えながらも俺たちは馬を進めると、エッタさんが水をゴクゴクッと飲んでいるのが横目で見えた。


「エッタさん、まだ水は残ってる? 俺の少し分けようか?」

「大丈夫です。結構、共和傭兵団の人たちが飲み水を持っていたので十分にあります!!」

「それなら良かった。もしもの時の為にも水は取っておいた方が良いからね」


 砂漠での冒険では水の配分が命運を分ける事になる。
 多く飲んでしまったら、何かあった時に脱水症状で命を落としてしまう可能性が十分にある。
 その為、エッタさんとイローナちゃんの水が無くなったら、俺の水を全て差し出す気持ちでいる。
 馬も息が上がり始まっているところで、地平線の先に小さく建物が見え始めて村を発見した。


「村があった!! あそこまでなら、馬たちの体力も持ちそうかな?」

「うーん。ギリギリってところですかねぇ」

「まぁ持つんじゃない?」

「とにかく行ってみるしかないな」


 村を発見したものの馬の体力が持つか、どうかの瀬戸際で休憩を取るかを迷っている。
 2人に意見を求めるといけるのでは無いかというので、その意見を尊重して向かう事にした。


「後もうちょっとだからもってくれぇ!!」


 俺の頼みを聞いてくれるかの様に、馬は何とか村まで倒れる事なく連れてってくれた。


「良くぞ、ここまで連れてきてくれた!!」

「ご褒美に、お水と食事をたくさんあげましょう!!」

「この子を、サンダースって名付けました………」

「サンダース? どうして、その名前にしたの?」

「なんかサンダースって感じがするから」


 イローナちゃんの独特な感性に唖然しながら、俺とエッタさんは馬に食事と水を与える。
 休ませている間に俺たちは村の中に入るが、中々に食糧不足なんだろうと分かるくらいに村民は痩せ細っている。


「この国の財政状況や独裁制が手に取るように分かるな」

「そうですね。この土地では食べ物なんて、ほとんど取れたもんじゃ無いでしょうから………」

「これから、どうするの?」

「今日は、ここに泊まって飲み物とかを買おう………そして日が上に登る前に出発しよう」


 今から次の村に出発しても馬が持たないと判断して、俺たちは村に1泊する事にした。
 泊まる事は決まったが、泊まる場所はあるのかという新しい疑問が出てくる。


「すみません。我々、冒険者なんですけど、泊まるところってあるんですかね?」

「宿屋かい? それなら、ここから少し行ったところに古い宿屋があるから泊めさせて貰いな」


 どうやら古いらしいが泊まるところはあるみたいだ。
 ならば古さなんて、どうでも良いから安心して眠れる場所であるか、どうかだけを確認したい限りだ。
 俺たちは言われた通りの道順で進むと、ここかと目を疑ってしまうくらいに古びた建物が現れる。


「こ ここって本当にやってるのか………」

「見た目で判断………これはするな」

「と 取り敢えず、入ってみないと分かりませんよ!!」


 俺とイローナちゃんは思った事を思わず声に出してしまう。
 それをエッタさんが何とかフォローするが、3人とも思っている事は同じであろう。
 とにかく俺たちは宿屋の中に入ってみると、薄暗い中で奥に受付の様なカウンターがあり、少しのランプの光が見える。
 そこに行ってみると誰もいないので、置いてあった鈴をチリーンッと鳴らすが反応が無い。


「何です? お客様かい?」

「うおっ!? は 初めから、ここに居たのかよ………」

「そうみたいですね………」


 俺たちの視線の下から声が聞こえてみてみると、こんなに小さい人が居るのかっていうくらいの老婆がいた。
 驚いて数十秒の間、心臓がドキドキッと お化け屋敷に入った感覚になるのである。


「あぁ泊まりたいんだけど、今からでも泊まれるか?」

「えぇ泊まれますよ。部屋の数は、何部屋でしょうか?」

「んー、ベットが3つあるのなら一部屋で良いんだが」

「ちょうど、3つ置いてある部屋がありますよ………そこで問題ありませんか?」

「えぇそこで良い」


 なんとか部屋は空いていたみたいだ。
 まぁこんなオンボロのところに、わざわざ泊まろうとする奴も居ないだろうから泊まれるだろうけどな。
 そんな事を思いながら部屋に案内してもらうと、あの外装とは思えないくらいに部屋の中は綺麗だった。


「今日は、ゆっくりと休む事にしよう………」

「そうですね。思ったよりも時間は短縮できましたが、疲労感は高いですからね………」

「私は、もう寝るね………」

「イローナちゃんはマイペースだよねぇ………まぁそこが良いところなんだけどね」


 俺たちは意外にも綺麗なベットで、今日は移動の疲れを取る為に早めに眠りにつく。
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