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第3章・残念なドラゴンニュートの女の子

088:神に祈りを

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 シュナちゃんはカエデちゃんの仇を取る為に、強力な大魔法を練って動けないオレオンに狙いを定める。


「来世では徳を積むのにゃ………バイバイ」

・氷魔法Level5《氷剣の舞いアイスソード・オブ・ダンス

「ふざけるなぁああああ!!!!!」


 氷の剣を無数に空中へ作り出すと、それをオレオンに向けて放ちズタズタに切り裂いたのである。
 それによって3人は勝利を収めたが、ルイちゃんは目の前で初めてシュナちゃんの本気を見て唖然としている。


「お 終わったみたいでござるな………」

「まだ終わっていないにゃ。カエデを治療しないと………」


 ルイちゃんは肩の力を抜いたが、シュナちゃんはカエデちゃんを助けないと勝った事にならないという。
 それもそうだとルイちゃんが思っていると、村のおじちゃんたちが走ってやってくる。


「犬人族の女の子は大丈夫かっ!! この村には、そこまで良い医者じゃないが治療はできる!!」

「任せて大丈夫なのかにゃ? 本当に信用できるのかにゃ?」

「信用してくれとは言わんが、その子を助けたいなら任せてはくれないか」

「分かったにゃ……信用するにゃ」


 おじさんは村に医者がいるから任せてほしいと言った。
 それを信じるしかないシュナちゃんは、おじさんたちにカエデちゃんの治療を任せる事にした。
 村を助けてくれた為に村民たちは、力を合わせてカエデちゃんの治療を行い始める。



* * *



 クロスロード連盟軍のナミカゼ少尉たちは、最初の任務である古城を占拠している共和傭兵団の拿捕を開始する。
 この古城は昔からフロマージュ王国の中で、難攻不落の古城として知れ渡っているらしい。


「お前たちっ!! ここに時間を割いている暇はない。さっさと王都に向かなければいけないんだからな!!」


 ナミカゼ少尉たちが攻め込もうとすると、古城から火魔法やらが打ち込まれてガード系の魔法使いを前に配置させる。
 しかし今だけなら時間をかければ誰であろうと、この城を落とす事は難しくないだろう。
 どこが難攻不落なのだろうかと、ナミカゼ少尉とダフネ少尉が考えていると理由が直ぐに分かった。


「アレは!? まさか難攻不落って、このモンスターがいるからって事か………」

「ここってサイクロプスの住処なのっ!?」


 サイクロプスとはトロールには似ているが、1つ目にある程度の知能を持ったA級モンスターである。
 ここら辺一体はサイクロプスの住処らしく、その理由から難攻不落と言われているみたいだ。


「サイクロプス程度で騒ぐな!! 将校以外の兵士を直ぐに、後退させて将校が討伐に当たれ!!」

「了解しました!!」


 サイクロプスを討伐できるのは将校の中でも少尉以上のレベルだと言われている。
 その為に将校以外の兵士たちは、後ろに後退させられて将校たちが前に出るのである。
 サイクロプスを前にしてもトラスト中将は、顔色1つ変える事なくナミカゼ少尉たちを叱責している。


「ダフネさん。これは相当な事になりそうだぞ………気合いを入れなきゃ死ぬな」

「こんなところで死ねるわけないじゃん!!」

・オリジナルスキル『猟豹変化チーター

「おぉ珍しくダフネさんがやる気になってる………これは俺も負けるわけにはいかないな」


 いつもならばやる気なんて感じられないダフネ少尉だったが、珍しく猟豹変化チーター』を使ってやる気らしい。
 それをみたナミカゼ少尉は、自分も遅れを取れないと剣を構えてサイクロプスに斬りかかる。
 さすがはA級のモンスターと言えるくらいに、サイクロプスは強くナミカゼ少尉とダフネ少尉の2人がかりで倒す。


「お おいおい。マジかよぉ……あれって私たちと同じ人間がやる事なのか?」

「トラスト中将は元帥になってもおかしくないからね………そんな事よりも気を引き締めなきゃ」


 ダフネ少尉がチラッと横を見ると、素手でトラスト中将がサイクロプスを殴って倒しているのを見て驚く。
 全くもって同じ人間だとは思えず、さすがは生きる伝説と言われている軍人だと2人は感じた。
 サイクロプスをある程度、撃退したところでクロスロード連盟軍は、城を陥す方に作戦を変えた。


「じゃあ私が先陣を切っていきます!!」

「おしっ!! それじゃあダフネ少尉が突っ込んだ後に、続いて中に乗り込んでいくぞ!!」


 ダフネ少尉が手を挙げて、自分が最初に乗り込んで下に向かって魔法を打ってくる兵士を撃退すると言った。
 トラスト中将は志願を認めて、ダフネ少尉が突破した後に続く兵士も用意して陥す準備は完成した。


「よっしゃああああ!!!!」


 ダフネ少尉は叫びながら城壁をチーターのまま登り、自分に向かって魔法を打ってくる兵士の顔面を切り裂く。
 そして城の中に潜入する事に成功し、次々に遠距離魔法を打ってくる兵士たちを倒して回る。
 あらかた倒したところでダフネ少尉は、下で待機している兵士たちに合図をして突入させる。


「思っていたよりも遥かに早く城を陥せそうだな………ケニー少将っ!! 終わり次第、怪我人と動ける人間の数を数えて、俺に報告する様に」

「はっ!! 了解いたしました!!」


 トラスト中将は城は陥せると確信して、直属の部下である《ケニー=マルカチョフ》に兵士の数を数える様に伝えた。
 ピシッとした綺麗な敬礼でケニー少将は返事をした。



* * *



 フロマージュ王国の首都ダフネは、貧困層と裕福な層の貧富の差が激しくなっている。
 西では今日にも餓死するだろうという子供がいたり、東には丸々と太った子供が泣き叫んでいる。
 その中で王様であるオリヴァーは、玉座にだらしなく座って溜息を吐きまくっているのである。


「ノールに続いてオレオンもやられたのか………うちの連中は、どこまで弱いっていうんだ」

「オリヴァー様。そろそろ本日のお祈りの時間になりましたが、いかがいたしましょうか………」

「もちろん、行なうに決まっているだろう。煩悩まみれでたまったもんじゃないな………」


 側近の男はオリヴァーに怯えて、オドオドしながら本日のお祈りの時間を告げる。
 面倒くさそうにオリヴァーは立ち上がると、服についた埃をパンパンッと払ってお祈りの部屋に向けて歩き出す。
 お祈りの部屋は地下にあるらしく、薄暗く地下に伸びた階段をコツコツッと歩く音が響きながら降りていく。


「この国にカホアール教は浸透しているのか?」

「そ それはもちろんでございます………国民は、スミカ様を本当に信仰しているのです」

「それなら良かった。私がしてきた事が報われそうで何よりだ」


 オリヴァーは側近の男にカホアール教は、国民に広がっているかと嫌な確認をしてくる。
 それを側近の男はオリヴァーの言って欲しい言葉で返すと、満足した様に降りる速度を速くする。
 そして地下室に到達すると、神スミカと思われる石で掘られた女神の像が収められた祠があった。
 そしてその周りの壁には、フロマージュ王国の神殿にあった古代文字でびっしりと埋められていた。


「さて、私の愛しのスミカに祈りを捧げるとしようか。ほら、君も私の様に祈りを捧げるんだ………」

「は はいっ!!」


 オリヴァーと側近の男は、女神像の前に正座して座ると頭を下げて祈りを捧げるのである。
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