社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa

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第3章・残念なドラゴンニュートの女の子

104:最大級の猫パンチ

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 地面から丸焦げになって死んだはずのダフネ少尉が、バッと出てきてローブ男を驚かせるのである。そりゃあ完全に丸焦げになったのを見てたら、死んだって思っちゃうもんだよなぁ。
 地面から勢いよく出てきたダフネ少尉は、素早く体勢を整えてからローブ男の顔面を蹴り飛ばした。そしてクルクルッと空中で何回転もしてナミカゼ少尉の横に着地する。


「ど どうして生きてる。この目で、その女が丸焦げの死体になるのを確認したんだぞ!! お前も確認したはずだ!!」

「いいや。俺が確認したのは、ダフネさんの形に盛られた黒焦げの土だけど? あぁアンタは焼けた土をダフネさんと勘違いしちゃったわけか」

「はぁ? な 何を言ってんだよ………」


 蹴り飛ばされたローブ男は、倒れた勢いでフードが外れて顔が露わになる。顔自体は目元がキリッとしていたり、整った顔をしていてイケメンという顔なんだろう。
 そんなローブ男は顔面を蹴られたところを手で押さえて、どうしてダフネ少尉が生きているのかと叫ぶ。まぁ気になって、何があったのかと思うのは当然だ。
 全身土まみれのダフネ少尉は、手でパッパッと払っている隣でナミカゼ少尉がローブ男と話す。ナミカゼ少尉の口から何故、ダフネ少尉が生きているのかという説明が出た。しかしあまりにも信用し難い事だった為、ローブ男の口からはぁ?という言葉が飛び出すのである。


「ん? ちょっと嫌味すぎて、今の説明じゃあ理解できなかったのか?」

「ふざけるな!! だから俺は、この目で女が燃えカスになるのを見てるって言ってんだろ!!」

「じゃあ俺も言ってるよな? 黒焦げになったのは、ダフネさんが地面を掘って作った土の偽物だったな!!」

「だから、どういう………まさかっ!? 苦しくて地面を這い回っていたのは、地面を掘っていたからだというのか!?」


 ここでローブ男の頭の中で、全ての謎が解けた。
 ダフネ少尉は炎全身で浴びた瞬間に、浴び続けたら流石にヤバいと思い、地面を苦しんで這い回るフリをして穴を掘る。自身は穴の中に隠れて、盛った土を自分の燃えカスに置き換えた。
 あまりにも常識とはかけ離れている為に、ローブ男は可能性を頭の中で消してしまっていた。誰も考えないだろうから頭の中で可能性を消すのは仕方ない。
 そんな事を思いながらローブ男が気になる事ができた。それはダフネ少尉が地面から出てきた時も、当たり前のようにトリックを説明していた時もあった。どうしてナミカゼ少尉は、ダフネ少尉が生きていると理解していたのだろうと考えた。


「もしかして………お前は女が突っ込んで行った時に、この穴を掘るトリックに気がついていたのか!?」

「当たり前だ。こっちから見てると穴を掘っているのが丸わかりで、逆にヒヤヒヤしたくらいだ。それにダフネさんが、そう簡単に死ぬ人じゃないって思ってたしな」

「おぉ私の評価が、ナミカゼの中で爆上がりしてるなぁ!?」

「そうやって調子に乗るからダメなんだって………」

「俺の事をコケにしやがって………俺は次期幹部候補だぞ!! こんな事が知れたら、俺の株が大暴落だ!!」


 ナミカゼ少尉からしたら、自分視点の時にダフネ少尉が穴掘ってる姿が丸見えで冷や汗がダラダラ出ていた。それならばと、ダフネ少尉の演技に便乗した方が良いと閃いたのである。その作戦がまんまんと、大成功して一撃を入れられた。
 しかしナミカゼ少尉が穴を掘っている姿を見ただけではなく、恥ずかしそうにダフネ少尉の実力を認めているような発言を珍しくした。そんなのを聞いて、ダフネ少尉が黙っているわけがなく肘でツンツンッと小突くのである。
 完全に舐められたローブ男は、地面を叩いてから立ち上がると怒鳴り散らす。すると自分が銀翼の夜明け団で、幹部候補である事を明かすとナミカゼ少尉は驚いた顔をした。


「お前って幹部じゃないのか? なんだよ。お前が幹部じゃないのかよ………ダフネさん。さっさと拿捕しないと、俺らの株の方が下がっちゃうよ?」

「それは困った困った。この地位に来るのに結構、頑張ったから降格なんてやってやれないよ」

「はぁ? お前ら何言ってんだ?」

「なんだ、理解できて無いのか? 幹部でもない雑魚に、時間をかけてたら俺らの評価が下がるって言ってんだよ」


 ナミカゼ少尉たちのような将校たちが、犯罪集団である銀翼の夜明け団で幹部にすらなっていない人間に、手間取っているというのが上にバレたら評価が下がるという。そんな事を言われてはローブ男の思考は一瞬止まって、ハッと自分がナミカゼ少尉たちに馬鹿にされたのだと理解した。


「ふざけるなよ!! お前たちが前にしてるのは、これから世界を大きく変える魔術師なんだぞ!!」

「そんなこと言っても、今は幹部じゃないんだろ? それなら話は同じじゃん、ナミカゼも思うだろ?」

「そうだな。結果を出していない人間の何かを信じる程、まだ俺たちも身分が高くないんでな」


 ローブ男がナミカゼ少尉たちに、キャンキャンッと吠えているのを見れば見る程、負け犬の遠吠えに見えて仕方ない。こんな冷静な人間たちと、馬鹿にされ平常心を忘れている人間を見比べたら惨めで、俺たちの方が恥ずかしくなってしまう。


「どこまで俺を馬鹿にすれば済むんだ!! 絶対に殺して、俺には向かったのを後悔させてやる!!」

「そうかそうか。まぁ相手になるのは俺じゃないから、俺に言われても仕方ないんだけどさ」

「アンタの相手は私がやるよ。さっきは倒せたと思って、中々に言ってくれたね………次は簡単に行かないよ!!」


 どうやらナミカゼ少尉に怒りを露わにしているらしいが、ローブ男と戦うのは決着をつけたいダフネ少尉の方だ。ナミカゼ少尉としては、2人の勝負に手出しする事はないらしい。
 さっきはやられ役をやったが、今度は完璧にやってやるとダフネ少尉は屈伸をして舌なめずりをする。そしてダフネ少尉はチーターに変化して、ローブ男に向かって走り出すのである。


「さっきよりも遥かに速い!? だが、一直線に………う 動きが捉えきれないだと!?」

「だから、さっきはやられてやったって言ってんじゃん」


 向かってくるダフネ少尉に対して、さっきの火炎放射器のような炎を打ちまくるが、チーターのようなスピードでジグザグに移動しながら狙いをつけさせない。その作戦にまんまとハマって、ローブ男は右に左に魔法を打ちまくる。
 そして気がついた時には、ダフネ少尉がローブ男の懐に侵入し終わっていたところだった。


「だから言ったじゃん。自分の地位に、甘んじてる奴なんて弱い奴のやる事だって」

――猫殴りプッシュ・キャット――

「ゔっ!? こんなところで負けるなんて………」

「こんなところで負ける程度の奴だったんだろ」


 懐に侵入されたローブ男は、距離を取ろうと最悪な判断であるバックステップで後ろに下がろうとした。そんな獲物をダフネ少尉が逃すわけがない。
 そのまま後ろに下がっている勢いのまま、ローブ男はダフネ少尉に猫パンチを喰らって吹き飛んでいく。地面に数回バウンドしてからズサーッと大きな音を立てて地面に擦れて止まる。
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