社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa

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第3章・残念なドラゴンニュートの女の子

113:風獣に気をつけて

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 イローナちゃんに変わってエッタさんが、前衛としてカルロと戦闘する事になった。カルロからしたら後衛のエルフが、前衛として自分と戦うのかと驚いている。
 後衛をやるようなエルフは、前衛なんてもってのほかと言うくらいの事であり、それをエッタさんがやろうとしている。その場に俺がいても驚いて、本当にやるのかとエッタさんに聞いていたかもしれない。エッタさんの意思は固いものだ。


「私が前衛をやれないって思ってるでしょ? そう思っているところが、貴方の敗因になるわ」

「もう思っちゃいないさ。それだけの自信があるって事は、何か秘策でもあるに決まってる………なら、油断するわけがない。俺は覚悟を決めたのなら女性でも本気で相手になるさ」


 エッタさんの目を見たカルロは、かなり本気の目をしていて何かの秘策があって言っているのだと確信する。それならば、女だといって侮るのは危険だと経験から感じている。
 エッタさんとカルロは互いの目から、視線を外す事なくバチバチッという効果音が聞こえてきそうだ。こういうのは不良の世界でも動物の世界でも、視線を外した方が気持ち的に負けるという鉄則が存在している。それをエッタさんは、生まれつきの感覚で感じ取って行なっているみたいだ。
 そしてメンチを切って少し経ったところで、エッタさんはイローナちゃんにも優らずとも劣らない速度で、カルロの懐に容易に侵入するのである。その侵入する速度に、さすがのカルロも驚いて体重を後ろに下げてしまった。


「うぉっ!? 後衛の速度じゃないぞ!?」

「それは、どうも。これでも昔から、なんでもやればできる子だったんで!!」

・風魔法Level4《ウィンド・スピアー》
・火魔法Level2《ファイヤーエンチャント》
――火神の剛槍ブリギッド・スピアー――

「さすがはエルフっ!! 後衛で使う魔法を、上手く前衛で使えるようにアレンジするなんて………惚れなおしちまうなぁ」


 エッタさんは風と火を合わせた槍を作ると、カルロに向かって斬りつけるのである。後衛で使う技を改良して、前衛として戦えるだけの技に変換させたのである。
 そして槍をカルロに向かって振い始めて、それを警戒してカルロは綱体と自分の体を鉄化させて準備をする。だが、それだけの準備を行なったにも関わらず、槍が横腹を掠った瞬間に、横腹の肉が抉れとれたのである。


「ゔぅっ!? 擦っただけで肉を持って行きやがった………なんちゅう威力してんだよ」

「これで分かったかしら? これがド真ん中に決まれば、貴方のお腹に穴ポコが開くって事をね」

「確かに威力は、当たれば即死もありえる。しかし当たらなければ問題ない事だ………1発も当たらずに、お嬢ちゃんを倒して差し上げよう」


 カルロは横腹に鋭い痛みを感じて、触ってみると鉄に綱体を使っていたはずなのに、肉が抉れていて血がダラーッと出ている事に気がついた。完璧な防御をしていたはずなのに、横腹が抉れる威力に驚きを隠せずにいる。
 それをみてエッタさんは次は真ん中に突き刺して、腹に大きな穴を開けてやるという意気込みだ。俺が居たら見せてはくれない顔をしているので、ここに居たら良かったと後悔する。
 痛みと攻撃の威力を目の当たりにして、普通ならば少しでも萎縮するところだが、カルロは冷や汗を流しながら当たらなきゃ良いんだと強気でいられる。これは数多く積んできた、戦いでの経験値なのではないかと考えられる。


「1発も当たらずに……ですか。そうですか、そんなに自信があるならやってみたら良いです」

「なんだい。これ以外にも秘策があるって顔だ……これだけでもゾッとしているのに、何を企んでいるんだい」

「そんなのを馬鹿みたいに教える人はいないでしょ。その身で、自分から味わってみれば分かる」


 経験値が上のカルロが目の前にいて、本気でやると言っているのにエッタさんの顔色は1つも変わらない。逆にカルロの方が、エッタさんに少しの恐怖心を感じてしまっている。
 ここまでの自信があるのならばエッタさんには、この威力の魔法だけじゃなく、なんらかの秘訣があるとカルロは考える。そう考える事が普通の人間の思考であり、ここにきてカルロの思考が普通の人間たちと同じになってきた。


「まぁ確かに味わってみるしか方法は無いか………じゃあ、いっちょ行きますか!!」

――鉄の突進アイアン・タックル――

「そう。そうやって来てくれれば良いのよ………」

「なっ!? どうなってんだ!! 魔法は発動してないだろ」


 味わってから考えようと思ったカルロは、エッタさんに向けて鉄化した体で突進していく。そしてエッタさんの2メートルの間合いに入った瞬間、カルロの全身に切り傷が現れて血を吐く。
 あまりにも突然に起こった事で、カルロは何故に自分の体に切り傷が現れたのかと驚きを隠せずにいる。その驚いた顔を見て、エッタさんはニヤニヤッと企んでいる笑みを浮かべた。そんなのを見たら、カルロは引けずに突進していくのである。


「うぉおおおおお!!!!!!」

「さっきまでは経験とか頭を使ってたのに………少し予想外の事が起きたら、馬鹿みたいに突進だなんてね」

「ゔぅ……はぁ、はぁはぁ。今度は反対の腹かよ」


 身体中に切り傷が出来ても気にせずに突進してくる。しかし痛みで動きが少し鈍ったのを、エッタさんは見逃さずに、今度は反対の横腹を槍で抉ったのである。
 自分の横腹が左右ともに抉られて、さすがの痛みで地面に膝をついて息が荒立っている。横腹を抉られたのは、謎の切り傷が全身に喰らってしまってしまったからだ。それさえなければ、エッタさんには勝てるんだとカルロは思っている。


「魔法が発動してないのに、なんで俺の体には切り傷が出来んだよ………ん? まさか魔法が発動していないって事は、オリジナルスキルっていう事か」

「やっと分かったのね。そう、オリジナルスキルの技の1つを使ったのよ」

――風獣の旋風カマイタチ――

「そういう事か。オートで俺に攻撃してくるってわけだ、そんな怖いスキルを使わないでくれよぉ………まぁカラクリに気がついたのなら、どうにかできる」

「そうかしら? そう思うならやってみたら分かるわ………ここからが本番なのでしょ?」


 カルロは身体中に切り傷ができるカラクリに気がつく。それはエッタさんのオリジナルスキル《神風ゴッドストーム》の技の1つである《風獣の旋風カマイタチ》だった。
 カラクリに気がついたカルロは、横腹を抑えながら立ち上がると冷や汗ダラダラだが、やる気だけは無くなっていない。どうやらカラクリに気がついたのだから、勝つ事だってできると自信満々な作り笑みを浮かべるのである。
 立ち上がったまま動き出すと、またエッタさんのカマイタチの間合に入ろうとしたギリギリのところで、さっきみたいに鉄拳と鉄化のパンチを合わせて、エッタさんの動きを止めた。その隙を突くように、距離を一気に突っ込んで腹を殴り飛ばす。


「うぅ……」

「どうだっ!! 女程度が、この俺様に刃向かうから、こんな風になるんだよ!! このまま殺してやる………」

「えぇ確かに私だけなら死んでしまうかもしれないわ………でも準備は整ったのよね?」

「うん。時間稼ぎありがとう」

「なにっ!?」


 エッタさんは苦しんで少し内容物も出て来ている。それをみてカルロは、完全に勝利したとハイになっているみたいだ。しかし勝利を確信した瞬間、物陰からイローナちゃんが現れた。
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