社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa

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第3章・残念なドラゴンニュートの女の子

121:決着の時

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 オリヴァーは悲しい人間だ。自分の大切なモノを失った事で、自分すらも見失ってしまった人間なのだから。しかしどんな理由があろうとも、罪の無い人間を襲うのは論外だ。


「アンタみたいな奴は、大きな大敗して自分を見直さなきゃいけないみたいだな………そろそろ決着をつけようじゃねぇか」

「決着をつけようだと? 押してるのは、お前じゃなくて俺の方なんだぞ!!」

「それが、どうしたってんだ? もう俺の準備が整ったんだ。決着の時じゃねぇか………俺の秘技を見せてやるよ」

・オリジナルスキル『砂男サンドマン


 俺としても長引けば長引く程、パワーや経験値の差で押し切られる可能性がある。ならば、ここら辺で決着をつけにいくのが得策だろうと考えている。


「何をしようとして………なんだっ!? 窓から砂が大量に流れ込んできた………」

「これが俺の秘策だ。いや、ここからが俺の秘策と言った方が良いかもしれないな」

――罪人の蟻地獄シナー・ヘル――


 オリヴァーは俺が何をしようとしているのかと思った瞬間、割れている窓の外から砂が大量に流れ込んできた。尚更にオリヴァーは、何をしようとしているのかと動揺している。
 そして俺は入ってきた砂を操って、オリヴァーと俺を2人分囲んで大きな球体を作ったのである。これによってオリヴァーを蟻地獄の中に閉じ込めた。


「俺を閉じ込めたってわけか………たかが俺を閉じ込めたくらいで勝てると思ってるのか?」

「ただアンタを閉じ込めたと思ってるのか? この壁も天井も床も砂で操れる………どういう意味かは脳筋でも分かるだろ?」

「それくらいのハンデは必要じゃないか?」


 オリヴァーは少し焦った様子だったが、直ぐに落ち着きを取り戻して状況を理解する。オリヴァーからすれば閉じ込められたくらいで、自分の強さは変わらないと思っている。
 だが、この蟻地獄の中は砂の一粒一粒が俺が操っているものであり、この蟻地獄を完成させる為に戦いを長引かせていた。オリヴァーが蟻地獄を出る為には、俺を殺すしか方法は無い。


「ハンデだって? 逆に俺がアンタにハンデをやるよ」

「俺にハンデだと? どんなハンデだが聞かせてくれよ」

「5分間、俺は蟻地獄を使わない………それがハンデだ」


 俺からオリヴァーに提案したハンデとは、この蟻地獄を5分間は操作しないというものだ。その提案を聞かされた、オリヴァーは笑いながら俺に向かって殴りかかる。


「お前……」

「このパンチで、俺にハンデをつけようとしたのか?」


 俺はオリヴァーの拳を避ける事なく頬で受け止める。殴り返すか避けると思っていたオリヴァーは、少し驚きの表情を見せ、パッと俺から距離を取るのである。
 そして俺は口の中の血を地面にペッと吐き捨てて、オリヴァーの拳は効かないと証明した。わざわざ嫌味を言う為に、受け止めたのかと信じられない表情をオリヴァーは浮かべる。


「分かったか? アンタの拳には、何にも乗っちゃいない。だから痛くもねぇんだよ!!」

「お前には分からない世界があんだ………それを否定するってんなら、分からせてやるよ!!」

「なら、最初から本気でやってやるよ。アンタに、本当に大切なものってのを教えてやるよ!!」


 オリヴァーは俺に自分の考えや色々な事を散々コケにされ俺に怒り心頭であり、俺としてもプライドを持っていない人間の拳を受けていてもダルいだけで痛くも痒くもない。
 それならば俺たちが戦う時間が、この世で最も不必要な時間とも言える。この戦いが終われば、俺のリベンジも終えて多くの不幸を被っている人たちを救える。ならば、早い決着こそが両者にとっては得だろう。


「終わらせてやるよ!!」

――拳の桜吹雪ブロッサム・フィスト――


 オリヴァーは俺に向かって走り出すと、桜の花びらを出すと一枚一枚を拳に変える。


「俺が何でハンデをやろうとしたかを教えてやる………使ったら決着が、直ぐついちゃうからだよ」

――罪人の磔シナー・サファリング――

「ゔっ!?」


 向かってくるオリヴァーに対して、その場を動かずに俺は砂を操作するのである。すると地面の砂が動いて、針のような形になるとオリヴァーの手足を貫いた。まさしく罪人を磔にしているかのような状況である。
 この状況こそが、オリヴァーにハンデをやろうとした理由で、完全に動きを奪われてしまう。オリヴァーは、手足をジタバタと動かして逃れようとするが逃げる事ができない。


「これで終わりにしてやるよ!!」

・筋力増強魔法Level2
・高速移動魔法Level2
――――スマッシュ・アタック高速肉弾――――

「スミカ……」


 俺は身動きが取れなくなった、オリヴァーに対して俺は筋力と速度を強化する。そしてオリヴァーの顔面に向かって、渾身の右拳を振り抜くのである。
 オリヴァーは殴られた瞬間に気を失い。そのままオリヴァーは蟻地獄を貫通して城の壁にめり込むのである。完全に白目を剥いて気を失っている。
 そんなオリヴァーだが気を失う瞬間に、頭の中に浮かんだ光景とは、あの忘れたい日の記憶だった。


「どうして……どうして、スミカが死ななきゃいけないんだよ!!」

「お 落ち着け!! これは仕方なかったんだ。世界連盟が、こんな危険な宗教を許してくれるはずがないんだ………それに最近はスミカも天狗になっていたんだ」

「そんなわけないだろ!!」


 スミカに言われたとは言えども、オリヴァーが村を離れた事を自分自身が後悔していた。後に世界連盟へ、告げ口した人間たちをオリヴァーは、自分の手で斬り伏せて回った。
 殺して回っている時に、殺される側の人間が死ぬ寸前に見せる恐怖の表情にオリヴァーは狂い始めていた。だからオリヴァーが独裁者になった理由は復讐と、殺す瞬間の人間を見ると言う快楽の2つがあったのである。
 しかし そんなオリヴァーの真っ暗闇を歩く旅は、俺の手によって終止符を打たれる事になった。そして負けた瞬間に、初めて自分自身が思っていた本当の気持ちと向き合う事となる。



* * *



 俺たちが王都のグラスで、オリヴァーたちの共和傭兵団と戦っている最中。ギルド・ボガードによって、ナミカゼ少尉たちから救出された銀翼の夜明け団の団員は船に戻った。


「アンタらに感謝する………しかし、どうしてラスト様は《ギルド・ボガード》に救出依頼を出したのか………」

「ん? そんなの俺たちに言われても困るけど、俺たちは単純に金を貰って働くだけの人間だからな………そもそも お前たちを救出する依頼は、ラストって奴から受けたんじゃないぞ?」

「なんだって? ラスト様が、アンタらに依頼を出したわけじゃないのか? じゃあ誰が出したんだ………」

「………って奴が出したみたいだぞ? 銀翼の夜明け団の幹部たちは、それぞれに異名があるんじゃないのか? なのに、どうして依頼者だけは普通の名前なんだよ?」

「その名前は、我々のトップ・オブ・トップである………グランドマスター様だ」


 銀翼の夜明け団からしたら、どうして自分たちを救出するという依頼を出したのか、理解できずにいるのである。この人たちは大幹部のラストが出したと思っている。しかし依頼を出したのは銀翼の夜明け団のグランドマスターだった。
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