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第4章・ロリっ子な吸血鬼の女の子

142:デジャヴ

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 俺は街を破壊した張本人と戦闘を行なっている。やはり街を破壊するだけの力があると分かるが、オリヴァーと戦った後の俺ならばある程度は良い勝負になった。
 しかし今の俺は弱い人間との連戦で、勝負の感覚が鈍くなっている為、男の攻撃を捌ききれなくなって攻撃を体に受け始めるのである。


「ここまで耐えられるとは思わなかったな。俺は強い奴には名乗る事にしてるんだ………俺の名は《アウワ》という、お前の名前を聞いといてやる」

「アウワか。名前は聞いた事なかったが、覚えておいて損は無さそうだな………俺の名前は《ミナト=カインザール》だっ!!」

「ミナトか……覚えた。その名を覚えておいてやるから安心して死ぬんだな」


 戦闘狂の思考なんて理解する事はできないが、強い奴ほど相手の名前を聞きたがる習性がある。アウワも漏れる事なく俺の名前を聞いてきた。
 俺としては、こんな奴に負けたくはないが、負ける事も想定もしなければいけないくらいの強さである。ここで俺が負けてしまったら、街の中を調べているイローナちゃんたちの方に向かわれてしまう。


「面倒だが、お前の相手をしてやるよ………アウワ。俺を殺す気でかかって来い!!」

「言われなくても男の勝負に手を抜くわけ無いだろ? 君が望むように本気で殺しに行ってあげるよ」


 こっちも覚悟を決めなければいけない。腹を括った俺はアウワに殺す気でかかって来いと、相手の気持ちと共に俺の気持ちを高めて覚悟を決める。アウワも戦闘狂であるが為に、男同士の戦いに手を抜かないみたいだ。


「さてと行くか!!」

・炎魔法Level1《ファイヤーボール》
・光魔法Level1《ライトボール》
――餓狼の咆哮フェンリル・ロア――

「おぉ。素晴らしい威力の攻撃だ………危ない!! 追撃も忘れちゃいないな」


 俺は光魔法と炎魔法を合わせた技を放つが、アウワは拳をぶつけて攻撃を防いだ。レベル1の魔法にしては良い威力だと褒めている隙に、俺は視覚から距離を詰めて殴りかかっていく。
 しかし俺の拳をアウワが受け止めると、褒めてから俺の事を横っ腹を蹴り飛ばす。そのまま俺はヒュンッと飛んで行き、瓦礫の中に突っ込んでいくのである。


「なんちゅう強さだよ………」

「君も強いみたいだけど、やっぱり強い止まりで俺たちレベルじゃない………そういう事だね」


 アウワの実力は確かに本物である。俺も強いと思っていたのであるが、まだアウワと俺には経験値という差で負けているのは明らかだろう。


「うぉおおおお!!!!! この俺様に恥をかかせやがって………こんなもんで終わらねぇぞ!!」


 さっき殴り飛ばして終わったと思った、カンが瓦礫の中から這い上がって叫ぶ。そしてカンは胸ポケットから錠剤のようなものを取り出す。


「おっとっと、これはダメだなぁ………」

「うっ!? うぅうううう………」


 その錠剤を5個くらいを口の中に放り込んで、飲み込むと突然に苦しみ始めたのである。そんな姿を見て、アウワは頭を抱えて残念がる。


「気持ちが高まってくるなぁ!! こんなに気持ちが高まっているのは、初めてってもんだよ!!」


 ひとしきり苦しみ終えたら、カンは顔を上げて気持ちが高まると発言している。明らかに魔力量が跳ね上がっているのが見てわかる。
 この感じは俺にも見覚えがある。そう元十二聖王の地位にいたアランと似ている雰囲気だ。つまりカンは、アランのように魔人化したという事なのだろう。


「こうなったら、俺たちは手を引かせてもらうよ………そうそうカン君は、女神の雫を大量摂取によって魔人化したけど、スペリアル魔石と同等の魔人化だからねぇ」

「やっぱり、アレが女神の雫って奴かよ………1体の討伐だけで英雄になれるってのに、どうして2体目になるんだよ」


 やはりアランが使ったスペリアル魔石と同じくらいの力が、女神の雫にはあるのだと理解した。そして魔人化の強さも元の人間の強さにも比例するのだろうが、魔人であるならば強いのだろう。
 しかし こんなところで魔人化した人間が、現れるなんて俺としてはついていないと言わざるを得ない。アウワとの戦闘でボロボロになっているところに、魔人が登場なんて踏んだり蹴ったりとしか言えない。


「この力があれば、お前なんかに負けやしないんだよ」

「そうかよ。魔人化なんてくだらない力を手にしたからって、お前と俺の穴は埋まらないんだよ」

「それを今から証明してやるよ!!」


 俺としては強がる他は無い。
 そんな俺に対してカンは、さっきまでとは比べ物にはならない速度で攻撃を仕掛けてきた。倒れていたところから俺は、真横に飛んでギリギリで避けられた。


「ちっ避けやがったか。今ので死んでれば、そう苦しまずに死ねたというのにな………苦しんで死にたいみたいだな!!」

「そう思ってるように見えるか? というよりも、そんな力を使わなきゃ戦えない人間に………俺が負けると本気で思ってるのか?」

「そうやってほざいてろ!!」


 魔人化とかいう馬鹿みたいな力を使わなければ戦えない人間に、俺が負けるとは思えない。
 しかしカンからすれば魔人化した自分が、格下と思っている俺に負けるわけが無いと思っている。その想いと共に動き出して俺に襲いかかるが、やはりアウワよりも遥かにスピードとしては遅い。


「お前が魔人に変化したってんなら、俺も俺なりの変化を見せてやるよ!!」

オリジナルスキル『牛変化バイソン

「なんだと!? 牛の獣人に変化しただと………まさかオリジナルスキルが、牛に変化するスキルなのか?」


 向かってくるカンの拳を、俺はバイソンになって真っ向から受け止める。魔人になったのはアランと同じだろうが、ここまで魔人としての個体差があるとは思っていなかったのである。
 やはり元々の人間として強さが、魔人化した後の強さにも影響するのだろうと思える。それにしたってバイソンになったからといって、簡単にパンチが相殺されるなんてカンの弱さは根っからなのだろう。
 しかし魔人化したというところで、魔力量は遥かにレベルアップしていて、魔力量だけならば俺を凌駕しているから気をつけなければいけない。


「これでも喰らえ!!」

・火魔法Level1《ファイヤーボール》

「なっ!! 魔力量が上がってるだけはあるな………初級の魔法でも威力が上がってる」


 カンは初級魔法ではあるが魔力量が上がった為、威力と数を打てるようになっている。さすが俺でもまともに喰らったら、全身火傷では済まない攻撃だ。
 魔人化するのは危険ではあるが、その代わりに異様なまでの力を手に入れられる。こんな雑魚でも俺と渡り合えるようになっているのが、とてつもなく腹が立つのは俺だけなのだろうか。


「そっちがその気なら、俺も本気の拳を喰らわせてやるから覚悟しろ!!」

・オリジナルスキル『牛変化バイソン
・筋力増強魔法Level2
――肩肉連打ロース・ラッシュ――

「連打だと!?」


 俺はカンの飛び魔法を見切って避けると、一気に懐に飛び込んでバイソンにパワーを上乗せする。そのまま深く深呼吸してから、カンを連打で殴りまくる。
 カンの体が左右に揺れながら、数秒続いた後に白目を剥いて完全に気を失ってしまったのである。
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