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第4章・ロリっ子な吸血鬼の女の子

164:理解できない

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 アングリー元いペーターは、後の主君と仰ぐストレガに拾われると屋敷で夜ご飯を振る舞わられた。本当は施しなんて受けたくは無いが、死ぬよりかはマシだと思って行儀悪く食べまくるのである。


「こんなに飯を食っていう事じゃないが、どうして俺みたいな子供を拾ったんだ?」

「なんだ話を聞いて無かったのか?」


 ペーターは一通り食べたところで、自分のような子供に何の用があるのかとストレガに聞いた。拾って来る時には死にそうで、聞く気力が無かったので何の用があるのか理解できていなかった。


「改めていうが、君は現在9歳にして武の力では圧倒しているのだろう? ならば、その力を喧嘩だけに使うのは勿体無い………俺たちと一緒に仕事をして、食いっぱぐれないくらいの金を手に入れようじゃないか」

「アンタみたいな貴族階級の人が、俺らみたいな下民に頼んで良いんですか? もっと氏族で良い人材が居ると思いますが?」


 ストレガは齢9歳にして喧嘩自慢を誇っている、ペーターを組織に勧誘しに来たらしい。
 しかしペーターからしたら、身なりの良い貴族階級の人間が自分のようなホームレスを雇って良いのかと思った為に聞いた。


「俺たちが貴族階級だって? そんなわけないだろ。俺たちは、お前たちと同じヤンリュウマウル出身の下民階級だぞ? 今は稼いで身なりを変えているけどな」

「えっ!? アンタたちが、俺と同じ下民階級の出身だって………」

「その通りだ」


 ストレガたちもペーターと同様に、このヤンリュウマウルの出身で下民上がりだという。それを聞いて本当に下民が、こんな綺麗で高そうなスーツを着れるのかと子供のペーターには、あまりにも衝撃的だった。
 確かにストレガの下で働いたらば、こんな風に貴族階級の人間たちにも負けないような身なりになれるのではないかと唾を飲む。今までは貴族の人間たちに、酷い思いをさせられてきたので成り上がりたいと、心の底から強くペーターは思っているのである。


「本当に、アンタらに協力すれば貴族階級の人間にも負けないようになれるのか?」

「もちろんだ。俺の下で働けば、確実に金は入るし世界を少しは良くできる。俺たちのボスであるブギーマンこと《カマス=バイファルト》様は、綺麗事が大嫌いな人であるからな」


 ブギーマンこと《カマス=バイファルト》は、綺麗事が大嫌いな人なんだとストレガはいう。そこで本気で底辺からの革命を起こすべく作ったのが、ギルド・ボガードなんだとペーターに説明した。
 それを聞いた事によってペーターの中で、ギルド・ボガードに入って成り上がるんだという気持ちが、強固な事になったのである。


「是非ともストレガ様の下で、自分の力を試させてもらえないでしょうか………」

「野心があるのは素晴らしい事だ。今日からペーターの名前を捨てて、アングリーと名乗れ!!」


 ペーターは椅子から立ち上がってストレガに対して、深々と頭を下げて下っ端になるのを懇願した。それを受けてストレガは、名前を捨てて新しい人間として働くようにと仲間なんだと認めた。



* * *



 アングリーの脳裏にペーターの名を捨てて、現在の自分になった日の事を思い出していた。そんなアングリーにルイちゃんは刀を向けて、ギルド・ボガードについての情報を聞き出そうとしていた。


「時間がないでござるよ。早くギルド・ボガードに関する情報を教えるでござる!!」

「何度も言わせるな!! 絶対に死んでも仲間の情報は吐かん!!」


 ルイちゃんの脅しにもアングリーは口を閉ざす。少しでも情報を話せば、ここでは殺されずに済むのだがアングリーは仲間を思って話さない。
 ルイちゃんは、このままでは時間は使っても話は聞けなそうだからと躊躇なく左腕を斬り落とした。斬られた瞬間にアングリーは、口を大きく開けて廊下が揺れるくらいの絶叫するのである。


「力尽くになってすまぬな。こっちも時間がなくて焦っているでござる………情報を話すだけで、貴殿の命だけは許してやると言ってるのでござるよ?」

「ふざけるな!! いくら痛みを与えられようとも我々は、血の繋がり以上の情で繋がっているのだ!! そんな人たちを裏切るくらいならば、腕だけじゃなく命を取られたって話はしない!!」

「そこが理解できないでござるよ。友情以上の繋がりがあるのは理解できる………しかし!! それができるというのに、どうして関係のない人を巻き込めるのだ?」


 アングリーは涙と共に冷や汗を全身にかいているが、それでもアングリーは仲間についての情報は吐かないと強い意志を見せつける。そんな意志を見て、ルイちゃんはキョトンとした顔で理解できないという。
 ルイちゃんが理解できない事とは、自分たちが最底辺の苦しみを味わって、それらを共感できる仲間ができたというのに組織に入った瞬間、それらを忘れて関係のない人たちを巻き込む事だ。


「関係のない人を巻き込むだと? そんなの関係ない。我々は世界中に裏切られた………その世の中に対して宣戦布告をして戦っているだけだ!!」

「それで関係のない子供が巻き込まれて死んでも、貴殿らは苦しくならないっていう事でござるか? それなら貴殿らは、ただ自分の境遇を免罪符に快楽を求めているだけでござろう」

「何を言いやがる!! 我々が快楽を理由に、悪事を働いていると言ったのか!! ふざけるなよ………ふざけるな!! 何度も言うが、我々の敵は世の中であり幸福になる為、悪事を働いているのだ!!」


 自分たちが昔から酷い境遇になっている事を免罪符に犯罪行為を正当化させて、それどころか悪事によって快楽を感じている集団だと詰った。しかしアングリーとしても考えていなかった事であり、自分たちが快楽の為に悪事を働いていると言われた事に憤りを感じる。
 確かにアングリーたちが、下民として大変な思いをしてきたのは本当だろうとルイちゃんは思っている。だからと言って、復讐と自分たちの幸福の為に関係のない人たちを巻き込む事には納得できない。


「だから言ってるであろう!! 幸福になる為ならば、貴殿らと同じ境遇だった子供たちが、苦しんでしまっても良いと思っているでござるか!!」

「そんなの関係ないだろ!! 弱者は搾られるだけ搾られて、自分で動こうとしないから搾られる………つまりは俺たちの悪事に、巻き込まれないだけの行動をしなかった人間の落ち度だろうが!!」

「確かにでござる。確かに自分から動こうとせずに、不幸だと言っているだけの人間には共感できないでござるよ………しかし!! 足掻こうとしている人間たちを、貴殿らが騙しているのも事実であろう!!」


 ルイちゃんとアングリーの意見は、互いに食い違うところがあれば納得できるところもある。しかし根本的な人格の違いによって、最大限の論点である関係のない人たちを巻き込むというところで理解できない。
 ルイちゃんにはルイちゃんの正義があり、アングリーには信念を持っているという点で、この2人が真に分かりあうのは難しいと言えるだろう。
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