社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa

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第4章・ロリっ子な吸血鬼の女の子

166:成長できない理由

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 的確な攻撃でイローナちゃんは勝ったかと思ったのだが、ファンは傷をあまり受けておらず、しかもまだまだ本気を出していないと言い始めた。そんな事を聞いて、さっきまで押していたルイちゃんからしたら、何を負け惜しみ言っているのかという感じだ。


「まだ減らず口を叩けるのなら、こっちだってイラッとしてくる………そんなに全力を出してないっていうのなら、少しでも片鱗を見せて欲しい」

「そんな風に言われれば言われるほど、こっちとしてはドツボにハマっていくのだ!!」

「それじゃあ口が開けないくらいに顔を腫らせてしまえば良いだけ………私は手加減なんてしない」


 どれだけ言ってもファンは、ふざけた態度を改めないのでイローナちゃんは諦める。言ってダメならば、自分の方からファンの口を閉じさせれば良いと考える。
 その考えのままにイローナちゃんは、ファンに向かって突撃していく。そして例に倣ってファンは、腕の柔らかさと剣の上手い使い方でイローナちゃんを寄せ付けないように動き始める。


「馬鹿みたいに勝負を急ぎやがったな!! こんなに楽しい勝負を終わらせようなんてするからだ!!」

「こんな命を賭けた勝負を楽しむ? 全くもって理解できないわ………」


 ファンは何度も自分に突撃してくる、イローナちゃんに対して勝負を急ぐ馬鹿だと言い放つのである。しかし突撃するだけのイローナちゃんではなく、ファンの剣の間合いに入る瞬間に加速した。
 イローナちゃんは馬鹿みたいに、突撃していくわけではなく奇策を考えて動いていた。その奇策にまんまと、ファンはハマる事となった。


「なっ!?」

「自分の事を強いと過信した弱者からリタイアしていくんだよ………」


 ファンは予想外の一手に、姿勢を棒立ちにしてしまって顔が上がる。これは無意識に体が動いたものであって、姿勢が上がった後になってファンはハッと気がついたのである。
 その一瞬をイローナちゃんは見逃す事なく、電気を纏った拳でファンの顎と腹を殴った。さっきとは違って完全に意表を突かれた事によって、グッと身構える事ができずにダメージが直接襲うのである。
 そのままファンは地面に蹲ってしまった、これは演技とかではなく完全に沈黙してしまう。仮面の中でファンは焦りと、痛みで悶絶した顔をしている。


「ど どうなってるんだ………どうして僕が、こんな風に地面に這いつくばっているんだ」

「これが私と貴方の実力の差よ………本当の強者なら自分の強さに過信なんてしない。貴方は確かに、普通の人よりは強いかもしれないは、でも明らかに強さの基準からはみ出しているのよ」

「そ それは一体どういう………」

「それが理解できないから貴方は成長しないのよ。戦闘というのは、根本的に楽しいモノでは無いのよ………人の命を奪うのなら尚更にね。楽しいっていう感情で、人を殺しているから成長できないのよ」


 イローナちゃんはファンに対して、自分の強さに胡座をかいて過信している人間なんだという。それを聞かされて怒るのはではなく、何も言い返せずに何を言っているのかとボソッと溢れた。
 それに対してイローナちゃんは、そこが理解できないから成長できないのだと言い放った。そして続けて人殺しというのは、根本的に楽しいと思ってはいけないモノであり、そこが理解できないからこそ成長できないのだとイローナちゃんはいう。
 そんな事をイローナちゃんに言われて、ファンは地面に落ちている自分の剣をチラッとみる。場所を確認してから、急に動いて剣を取ろうとした。しかしイローナちゃんは剣を蹴り飛ばして遠くにやってから、驚いているファンの側頭部に蹴りを入れる。


「貴方たちも過去に何かあった類の人なんでしょ?」

「どうして分かる………」

「そんなの顔を見れば直ぐに分かるわ。どんな人にも他人には理解されない辛さがあるのよ」


 イローナちゃんは倒れているファンに、諭すように辛い事があったのだろうという。すると言い当てられたように、ファンはハッとした顔を画面の中でする。どうして分かるのかと小さな声で聞いた。
 イローナちゃんは神妙な顔をしながら、人の顔を見たら分かると辛そうな声でいう。そして誰にでも他人に理解されない辛さがあると呟いた。その言葉から、イローナちゃんの辛かった過去が察せられる。


「それじゃあ時間もないから、さっさとギルド・ボガードの情報かブギーマンの話を教えなさい」

「それだけは絶対にしない!! それをしたら、僕たちの絆が壊れてしまう!!」

「絆だって? 人の事を騙して悪事をしている集団に、絆なんて存在しているの?」


 イローナちゃんは時間がないのを思い出すと、ファンにギルド・ボガードについての話をするようにいう。当然ではあるのだが、仲間の話は自分の命にかけて言わないとイローナちゃんに断言する。
 そんな事を言われてもイローナちゃんは、犯罪者集団が絆という言葉を使うなと思った。それでもイローナちゃんは、どこの悪徳な組織でもある一定の事があれば、情のようなモノが芽生える事あるらしい。


「まぁ絆があっても無くても、貴方からギルド・ボガードの情報を聞くのは決定事項よ………」

「だから話さないと言っているだろ!! 僕たちは過酷な運命を乗り越えてきた関係だ………つまりは家族のような存在なんだよ!! 何処の誰が、家族を敵に売るような人間になりたいと思うんだ!!」

「私が嫌いなのは、自分は不幸だったからと過去の辛い事を免罪符にして人を不幸にする人………綺麗事は私だって好きではないけど、貴方たちみたいに人を自分と同じように不幸にして良いと思ってる人が嫌いよ」


 ファンは自分の家族を敵に売る人間が、どこにいるのかと絶対に喋らない宣言をしてくる。それに対してイローナちゃんは、本日2度目の眉毛がピクッと動くような怒りが襲ってきたのである。
 そしてイローナちゃんは、ファンに捲し立てるように嫌いなところを淡々と説明する。あまりにも冷たい声と正論のような説明に、ファンは冷や汗をタラッと流すくらいに緊張感が走っている。


「話さないっていうなら捕まえて、話すまで拷問をすれば良いだけ………そっちの方が早い」

「くっ!! 拷問されるくらいなら………」


 イローナちゃんは話す気がないのならば、拷問をした方が早く情報を聞き出せると言った。それを聞いたファンは、拷問されたら自分は話してしまうかもしれないとゾッとするのである。
 それならばとファンは奥歯に隠しておいた、即死するくらいの毒薬が入ったカプセルを取り出す。あとは飲み込めば情報を持ったまま、仲間の情報を吐かずに死ぬ事ができると、完全に気持ちがハイになっている。
 そしてファンは毒薬のカプセルを飲む瞬間、ファンの脳裏には食うに困って暮らすにも困っていた幼少期の自分を思い出している。ファンは8歳になる頃、一緒に暮らしていた母親が病気で亡くなった事によって、直ぐにホームレスとして暮らす事になる。
 この頃のファンは戦闘なんて、やったことの無いズブの素人だった事もあって、よくボコボコにされていた。
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