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第4章・ロリっ子な吸血鬼の女の子

170:身売りの少女

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 ソロウはローズちゃんによって開けられた、横っ腹の傷で意識が飛びそうになっている。そんな意識が混濁している時に、ソロウの頭の中で子供の時にも同じような時があったなと思い出す。
 それは14年前のソロウが7歳の時の話だ。ソロウも他の四本刀と同じくヤンリュウマウルの出身で、小さい時から母親に身売りをやるように言われて、多くの男の人と体の関係になっていた。


「1日で、こんなもんかい!! 1食分にしかならないじゃないか………本当に使えない子だね!!」

「ごめんなさい……」


 決してソロウが悪いわけではない。しかし生まれた時から、こんな母親に育てられた事で自分への自尊心が欠如している。
 ソロウの母親だって、このヤンリュウマウルの出身で同じく売りをやって生活していた。その時に初めて惚れた男ができて、身請けの約束までするようになったのだが、それは簡単に破られてしまう事になった。
 その男との間にできた子供というのが、このソロウという女の子だったのである。直ぐにでも堕したいところだったが、あの男への未練があって堕ろせなかった。しかし堕ろせなかったにしても、ソロウが憎い男と似ていて腹が立っていたのである。


「アンタの顔を見てると気分が悪くなるんだよ!! 暇なら体でも売って金を作って来いよ!!」

「はい……」

「たくっ。どうして、お前みたいな子を産んじゃったんだろうね………」


 男たちからの性的暴力や、母親からのモラハラによって精神は壊れ始めていた。何の感情も感じず、痛みや快楽すらも感じる事はなく、とてもじゃないが生きているとは思えないくらいの地獄を見ているようだった。
 この時のソロウには誕生日という感覚はなく、自分が何歳なのかという感覚も無くなっていた。そんな時に花束を持ってくる人間が現れたのだが、その男はギルド・ボガードで幹部《タハス》だった。


「お嬢ちゃんは、ラモーナっていうんだって? ここら辺じゃあ綺麗な子で有名だったよ」

「おじさん、だぁれ? お母さんの知り合い?」

「んー、知り合いといえば知り合いだけど………まぁとにかく、これは俺からのプレゼントだよ」


 タハスは、どうやらソロウの母親の知り合いらしいが怪しさ満点で、ソロウに花束を渡したのである。その花束はソロウの人生からしたら、灰色だった世界に初めて見たカラフルなモノだったのである。
 花束を貰ってからソロウは、次の身売りに向かおうとしたのであるが、それをタハスは止めて自分が今日から父親代わりになるという。どういう事なのかと、ソロウは困惑しながら着いていくのである。
 そこは見た事もないような綺麗で大きな屋敷だった。そして屋敷の中に入るとメイドたちによって、ソロウは綺麗な服に着替えさせられた。あまりにも手早すぎる技に、言葉も出せずにやられるままだった。


「どうして、私は着替えさせられたの?」

「今日から君は、俺の子供だからだ!! 俺の子供なら綺麗で豪華な服を着ないとな!!」


 子供のソロウからしたら何が何なのかと困惑する。そこから毎日のように、受けた事がないような愛情を受けるようになって段々と感情を取り戻していく。
 そしてソロウが12歳になった時に、父親代わりになってくれたタハスは、世界三大疫病の黒戦病にかかって危篤になるのである。ソロウは、とてもじゃないが愛を教えてくれた人が死ぬという事で、取り乱して大泣きしてしまっている。
 そんなソロウの頭に手をポンッと置いて、タハスがソロウを引き取った理由を話すのである。


「ラモーナを引き取る事になったのは、お前が俺の………姪だったからだ」

「わ 私がタハス様の姪………」


 そうタハスが何の関係もないはずのソロウを引き取った理由は、ソロウがタハスの姪だという事だった。あまりの衝撃的な事実に、ソロウは全くもって理解できずにパクパクと口を開けたり閉じたりしている。


「そ それはどういう事でしょうか?」

「お前の母さんは、身請けする相手に裏切られたと思っているらしいが、それは勘違いなんだよ………」

「裏切られたのが勘違い? ずっとお母さんは、私のお父さんに捨てられたって言ってたんですよ………それがいきなり裏切られてなかったなんて信じられません」

「そりゃあそうだろうな。どうして裏切っていないかというと、お前のお父さんは俺と同じ病によって急死したんだよ………」

「お父さんが急死………」


 ソロウの父親は、ソロウの母親を見受けする事を楽しみにしていたが、それはタハスと同じ黒戦病によって阻まれてしまったのである。
 そして何故、ソロウたちを放置していたのかというとタハスは周りに身請けする話を話していなかった為だ。そのせいで兄であるタハスも、弟に子供も妻もいる事を知らずに暮らして来ていた。


「だが、奴の部屋を掃除している時に出て来たんだ」

「何が出て来たんですか?」

「弟の日記だよ………そこには君の事や、君の母親の事が楽しそうに綴られていたよ。それを見てから、俺たちはお前たち家族の捜索に当たったわけだ」


 タハスの弟の部屋に隠すように置かれていた、日記をたまたま見つける事になった。どんな内容が書かれているのかと確認したところ、ソロウたち親子の話が楽しそうに、それは本当に楽しそうに綴られていたらしい。
 それを見てから全ての話を、ソロウたちにしなければいけないと思って捜索を開始したみたいだ。そして遂に2人を見つけたが、その2人は弟が愛していた時とは大いに異なる生活をしていた。
 どうにか救い出したいと思って、タハスは弟の妻になるはずの女であり、ソロウの母親である《マクシー》に全ての真実を話す事にした。


「うぅううううう!!!! 私は捨てられたわけじゃなかったんだ………あの人との大切な宝物に、たくさんの傷を付けてしまったわ………もうあの人に、見せる顔なんて無くなってしまったんだわ」

「そんな事はない。確かに君が、ラモーナにやって来た事は、この世の地獄のような行為だ。しかしそれでも君たちが、俺の弟が愛した人たちだ………ここから真っ当に生きていく事を誓ってくれ」

「はい……」


 タハスは全ての真実を話してから自分のところで、新しい生活をしないかと打診をしたが、マクシーは娘だけを養子に貰って欲しいと頭を下げて頼んだ。それは不幸の象徴である自分が、ソロウの側にいてしまっては乗り越えられないからだと話した。
 どうにか説得をしようとしたのだが、マクシーも頑固な人でソロウが大人になったら、その時にソロウが会いたいと言ったら、謝罪をしにいくと言ったのである。その覚悟は揺るがないと、タハスは分かって条件を飲み、ソロウを養子として迎えたのである。


「そうだったんですか………私は、もうお母さんには恨んでおりません。確かに酷い事をされたのは、事実ですが唯一の家族ですから………いえ、お母さんもタハス様も皆んな家族ですね」

「はははは。俺を家族に入れてくれるのか………全く弟の子供とはいえど、養子にの取るのは迷ったが正解だったな………お前の父親には、先に会いに行かせて貰う」


 タハスは自分がやった事に、間違いはなかったと思えた。そしてまだまだ生きて、ソロウと暮らしたかったという悔しさが込み上げてくる。
 その強く握られた拳は、スーッと力が抜けていき体は冷たく冷めていく。
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