社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa

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第4章・ロリっ子な吸血鬼の女の子

179:気力

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 ブギーマンとストレガの2人の耳に、四本刀の4人と幹部のアイダハルが戦死した事が伝えられた。ストレガが特に可愛がっていた部下を、一気に4人も失った事に驚愕するのである。ブギーマンも幹部の中では、アイダハルもトップレベルで強いので驚く。


「ふざけるな!! あの4人は、私の部下の中でも飛び抜けて強い奴らだ!!」

「それにアイダハルだって、頭は良いタイプの人間では無いが強さは折り紙付きだ………それを殺せるだけの人間が、ノースカリクッパ王国に居るとは思えないが?」


 ストレガは愛する幹部を殺されたと聞いて、事実が信じられないと動揺しているのが分かる。そしてブギーマンもアイダハルは、頭が悪い人間ではあるが決して弱くはなくノースカリクッパ王国に倒せるような人はいないだろうとブギーマンは聞いた。


「それが冒険者たちによってやられたという話です」

「冒険者にやられただと? あの国に冒険者が訪れるものか………あの国には冒険者ギルドは無いよな?」

「はい。確か名前は《ミナトファミリー》という連中でリーダーは、期待のルーキーにして16歳でSSランクの冒険者だそうです」

「ミナトだと? 我々の耳には入って来てないが………それだけの人数をやってくれたのは見逃せないな」


 下っ端の人間は四本刀たちがやられたのは、俺であると報告したのである。それを聞いてストレガは、プルプルッと怒りのあまりに身震いをしている。それに対してブギーマンは、そんな連中がノースカリクッパ王国に、どうして居たのかと疑問になる。
 あまりにもギルド・ボガードが舐められているのでは無いかと言って、ブギーマンも憤りを感じている。しかし何よりも怒りを覚えているのは、愛する部下を4人もやられたストレガだった。


「ブギーマン様。ここは我々の沽券の為にも死んだ同胞の為にも動いた方が良いのではありませんか?」

「そうだな。どっちにしてもノースカリクッパに対しての動きは始めなきゃいけなかった………その冒険者の討伐をしに行こうか」

「はいっ!! 私が指揮を取らせていただきます。絶対に先に行った部下たちの報いを、私が死んでも取ってやりますよ!!」

「お前まで失ったら、ギルド・ボガードとしては大打撃になりかねないがな。とにかく今は、このギルド・ボガードが舐められる事だけは絶対に許されない」


 ブギーマンにストレガは、ギルド・ボガードという組織の沽券の為にも、四本刀の4人の為にも動く必要があると強く押してくる。それを聞いて確かに舐められたままでは終われないと判断して、元々考えていたノースカリクッパ王国での作戦を行なう事を決めた。
 ブギーマンは英断したのだとストレガは評価して、深々と頭を下げて感謝を伝える。そして自分が先頭になって戦ってみせるのだとやる気を見せるが、ブギーマンはストレガすらも失ったら、我々の戦力が大幅に落ちるから注意して欲しいと言った。


「直ぐに準備させろ!! このまま冒険者どもを逃すなんて事があれば、お前たちを1人残らず殺すぞ!!」

「は はい!!」

「待っていろよ。俺が、お前たちの仇を取ってやるからな………待ってろ冒険者風情のガキが」


 ストレガは部下に準備をするように指示を出す。もしも失敗して俺が国外に行くような事があれば、暴れてるからなと部下に脅しを入れる。それを見ているブギーマンは、さすが義理に厚い男だと思っている。



* * *



 砦攻略に結果だけで見ると失敗となってしまった。
 ルイちゃんたちは気を失った俺を背負って、近くの街に運んでくれた。街の人たちは警戒していたが、背負ってもらっている俺の傷が深かった事もあって、街の診療所まで案内してくれた。


「どうしたら、こんな傷になるんだい!? それに生きてるってだけでも奇跡な感じがするなぁ………」

「まぁ近くにある砦で、ノースカリクッパ王国兵たちと戦いになってたんでござる。そこで深傷を負ってしまって、応急処置をして即死は食い止めたんでござるが、その後の処置に困ってしまって」

「応急処置をすると言っても、この傷は切り傷を無理矢理に火で炙った感じがするね。それにしても痛みのショックで死んでいてもおかしく無いぞ」


 俺の傷を診療した医者は、あまりにも深い傷と無理矢理に皮膚を焼いて止血した事で生きているのが奇跡だと引いているみたいだった。それに皮膚を焼いて止血したとして、痛みのショックで死んでもおかしくないと、ルイちゃんたち的にはゾッとする話をした。
 ルイちゃんたちは医者に、ここからは専門職の人に任せたいと話した。やっては見るが、どう処置したら良いのかと専門職の医者ですら困るレベルの怪我らしい。とにかく一刻を争うという話らしく処置室に運ばれる。


「まぁ止血方法としては、火で炙るというのはあるにはあるが………ここまでの深傷を、火で炙るなんて常人の人間がやれる所業じゃないぞ。さすがは冒険者というべきなのだろうか」

「ここから、どう処置するんですか?」

「このままでは火傷での合併症になるリスクが、かなり高く命を落とす可能性が高い。とにかく焼いた部分の除去をしてから、人工皮膚を移植しよう。それしか今の我々にできる事は無い」


 医者は俺の止血方法は、あるにはあるが火傷での合併症リスクがある為に推奨する事はできないという。そして手術の手順としては、火傷した部分を切開して傷の大元を処理してから世界的に開発された人工皮膚で、覆って終了という手術内容らしい。
 ルイちゃんたちは衛生面的に、中には入れないので外で待っていると手術が始まった。
 イローナちゃんは、いつもはツンデレではあるが、今は心配してくれているので廊下をウロウロしている。ルイちゃんは正座をして目を瞑り終わるのを待ってくれていた。そしてローズちゃんは付き合いとしては短いが、心配してくれているみたいで、外に出て星空を見上げているのである。


「ミナトなら大丈夫よ………」

「ミナト殿ならば、どんな問題も解決するでござる」

「妾を待たせるとは、そんな男は初めてじゃ」


 3人とも3人らしい心持ちで、俺の手術が終わるのを待ってくれている。そして5時間が経って、もう少しで朝日が上がるというタイミングで手術室の扉が、ガチャッと開いて医者が出てきた。
 その医者のところに3人は駆け寄る。


「で、どうなったんでござるか!!」

「ミナトは無事なんでしょうね?」

「死んでいたら許さぬぞ!!」

「お 落ち着いて下さい!! 手術自体は成功したのですが、傷の状態や気力の問題で目を覚ますかは………こちらとしても判断しきれません」


 医者は額に汗を滲ませながら手術は成功したと話すのだが、それでも傷が深い事や痛みや精神的なショックなどで目を覚ますかは医者としても判断できないらしい。それは目を覚ますかもしれないし、もしかしたら目を覚さない可能性もあるという。
 それを聞いてイローナちゃんたちは、もしかしたら俺が目を覚さないのかもしれないという恐怖で、全身の血の気が引いていくのである。
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