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第4章・ロリっ子な吸血鬼の女の子

189:大きくするな

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 俺は元気になったローズちゃんと、城のキッチンで高そうなステーキを食べながら、これからの方針に関して話し合いを行なっていた。俺としては休息をとって準備を整えてから、奴らがいるトゥンシム王国に向かった方が良いのではないかと思っている。


「俺はそう思ってるけど、今回の騒動の当人はローズちゃんでしょ? それなら自分の心臓を早く取り戻したいって気持ちでしょ?」

「妾は別に休んでも良いと思っておるぞ? ブギーマンの言い方では、妾たちと決着をつけるまでは心臓を、どうにかするつもりは無さそうじゃしな」

「意外とローズちゃんは、そういう落ち着いたところもあるんだねぇ………」


 俺はローズちゃんが自分の心臓の安否を気にして、今直ぐにでも行きたいのでは無いかと考えていた。しかしローズちゃん的には、今直ぐに行っても良いし休んで準備を整えてからでも良いという意見だった。
 自分の事なのに、ローズちゃんは異様な落ち着きようを見せていて、さすがだとシンプルに思った。我慢しているようには見えなかったので、本当に今からでも休んでからでも良いんだと分かったのである。


「それじゃあ2人のダメージが、ある程度まで抜けるまでは休んで行くとしようか。それにエッタさんたちの事も考えなきゃいけないしね」

「そっちの方が問題なんじゃないかのぉ? この広い国で離れ離れになったら、そう簡単に落ち合う事は不可能だと思うが?」

「確かに居場所が互いに分かるわけ無いからなぁ………落ち合う方法は、何かないものだろうか」


 準備を整えてから出発する方針に決まったが、それよりも難しい問題が残っている。それはエッタさんたちと合流する方法である。
 互いに居る場所が分からず、その話をするにも方法がないので現在では落ち合う方法は無いに近い。あるとするのならば、俺たちが王都で待機してエッタさんたちが来るのを待つ事ではあるが、それではローズちゃんの心臓が危ないところがある。
 そんな要素から俺は頭を抱えている。待つのも良いが時間が経てば経つほど、ローズちゃんの心臓が危機に迫ってしまうのではないのかと思っている。それを話してもローズちゃんは、合流するのを待っても良いと言うだろうから、結局は俺が決める事になる。


「ここは厳しい判断をしなきゃダメみたいだ。2人が回復したら、直ぐにトゥンシム王国に出発しよう!!」

「ん? あのエルフたちはどうするんじゃ? このままでは生き別れになりかねないぞ?」

「それなら心配ない。エッタさんたちが、この王都に来ると仮定して置き手紙を残していくんだ」

「あの街の時と同じじゃな?」

「そう!! ここを割り切らないと、何もかも失敗をしてしまう可能性もある」


 俺は厳しい判断を下す覚悟を決めた。
 ここでエッタさんたちを待つのは辞めて、イローナちゃんたちが治り次第、隣国のトゥンシム王国へと出発するのを決めたのである。
 そして出発する時、この城に置き手紙を残してトゥンシム王国で合流する事を決めた。そうしなければ、2つの目的が両方とも達成する事ができないと、俺なりに色々と考えてみたからだ。


「それはそうと、ブギーマンが入れ替わっているってローズちゃんは気づかなかったの? 匂いとオーラが同じって言ってたと思うんだけど」

「うっ!? お主痛いところをついてくるなぁ。アレは妾にしては恥ずかしい事をしてしまったわ………それに仕方ないと言ってもよかろう?」

「何があったんですか?」

「ブギーマンは、きっとオリジナルスキルを使ってストレガに自分の匂いとオーラを纏わせていたのだろう。だから本物と勘違いしてしまったんじゃ」


 俺は一通り考えたところで、ふと疑問に思った事あったのである。それはブギーマンとストレガが、入れ替わっている事にローズちゃんが何故に気づかなかったのかと言うところだ。
 俺たちは初対面だから知らないのは仕方ないとして、ローズちゃんのようにオーラと匂いで判断した人を騙せたカラクリが分からなかった。するとローズちゃんは、飲んでいたワインを俺の顔にブーッと吹いた。
 そんなローズちゃんは、ほんのりと顔を赤ながらブギーマンに騙された理由を話し始める。それはブギーマンのオリジナルスキルであるマジシャンによって、匂いやオーラをストレガに纏わせていたからではないかと、ローズちゃんは思っているみたいだ。


「あぁ確かにマジシャンなら、それくらいはできそうな感じるよねぇ。それにしたってマジシャンって、相当なチートスキルな感じするんだよなぁ………魔法を無詠唱で打てたり、姿を消せたりするんだよ?」

「お主が思っている程ではないと思うぞ? ミスディレクションというのも、お主は見えなかったらしいが妾たちからしたら、バッチリと見えておったからな」

「そうなの!? ミスディレクションは、対象の1人にしか姿を隠せないって事なの?」

「そうじゃ。魔法の無詠唱で打っているのだって、魔法を保管する時には魔力を使うんじゃぞ? そう考えたら弱点もあるし、そこまで相手を大きくする必要はないんじゃないのか?」

「確かに………」


 俺がブギーマンのオリジナルスキルが、チートなのではないのかと言ったところローズちゃんは反論する。ローズちゃんは、ブギーマンが大した事ないのではないだろうかという説明を行なった。
 その理由は確かにタネが分からなければ、俺のようにチートと思ってもおかしくはない。しかしローズちゃんの話を聞く限りでは、さっきまでの意見は真逆になって怖がり過ぎるのはダメだと思った。



* * *



 クロスロード連盟軍・本部のトラスト中将の部屋に、大尉に昇進したナミカゼ大尉がやってくる。毎回の事ではあるが、ナミカゼ大尉はトラスト中将の部屋に入る前に緊張をほぐす為、深く深呼吸をしてから部屋に入る。


「失礼します!! ナミカゼ大尉であります!!」

「そんなに固くなるな。毎回のように、俺と話す時、そんなに緊張してたら話しづらいだろうが」

「も 申し訳ありませんでした!! それで今回は、どのような用件でしょうか………」


 ナミカゼ大尉が緊張をしながら挨拶をすると、トラスト中将は窓の外を見ているので背を向けられている。その感じも相まって、いつもよりナミカゼ大尉を緊張させる結果になったのである。


「ダフネ中尉とは。いつも通りにやっているのか?」

「はい、それなりに変わりなくやっております」

「そうか。かなり色々な組織を行ったり来たりして、大尉までなったのは素晴らしい事だ」

「は はぁ……」


 ナミカゼ大尉は話の流れが分からず、どういう理由で呼んだろうと疑問を覚えている。するとトラスト中将はパッと立ち上がって、ナミカゼ大尉の前まで歩いていくとポンッと手を肩に乗せる。


「俺からの直接的な指令だ。上から……まぁネルマなんだが、ノースカリクッパ王国とトゥンシム王国に乗り込んで、ブギーマンを確保する許可が許された」

「それは本当ですか!? あれだけネルマ元帥は、関わるなって言っていたのに………それを自分に任せてもらえるんですか!!」

「その通りだ。お前は、俺の部下の中でトップで優秀だからな」


 トラスト中将はネルマ元帥から、ブギーマン確保の為の許可を取る事に成功した。
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