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勤務先は第二隊副隊長付き!
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私の配属先が決まった。
何と!騎士団第二隊副隊長付き事務官だった。
副隊長と言えば、グラント・ロックス先輩では無いか!
まぁ、向こうは3学年下の地味な中坊など覚えて無いだろう。
うんうん、問題無い。
彼は人格者と言われてるし、無茶振りなどもしないだろう。
安心安心。
事務官にも普段着る執務用と式典用の軍服があり、黒に金のボタンの上着に膝丈のタイトスカートだった。
式典用はさらに細かい金で刺繍や房飾り、帽子やベルトも付いており、かなりゴージャスでカッコイイ。
式典用を着て家族に見せる。
黒の軍服にハニーブロンドの髪は映えると思うが・・・
母が興奮気味に声を上げる。
「やだ、似合うじゃない!!!」
「「お姉ちゃんカッコいい!」」
「ミランダ、凛々しくて女優さんみたいだぞ。騎士団のみんなにモテそうでお父さん心配だなぁ~」
「お父さん、何言ってるの。私は仕事しに行くんだから」
小さかった弟妹も今年魔術学校高等部1年生、妹も中等部2年になった。
相変わらず父の仕事は俳優だが、ナレーションの仕事やCMも以前よりは来るようになった。
また、連続テレビドラマのチョイ役などもあり、昔に比べれば収入は格段に増えた。
しかし、収入が増えるという事は、世に出て来るという事で、いつ私がヴィクトルの娘とバレるのかヒヤヒヤする。
身バレはしたくない。
まあ、他人の空似などよくある事だ。
よし、気にしない。
***
4月に入り、いよいよ騎士団入隊式が行われた。
事務官も騎士団所属なので、当然入隊式に参列する。
各隊にはカラーがあり、第一隊は白、第二隊は黒、第三隊は赤となっている。
それぞれ軍服も白、黒、赤になっており、式典などでは帽子も被り、全騎士団が揃う様はそれはそれは見事な眺めであった。
くっ!なんたる事だ。写真が撮れないことが口惜しい。
顔を引き締めていないと、ニヤけてしまうから要注意だ。
スン、と澄ました顔して心のシャッターを切りまくっていた。
こういう時、父の仕事の手伝いで、台本の読み合わせなどしておいてよかった。
チョイ役のくせに父は無駄にプロ意識が高い。
何故か配役全ての台詞を覚えるのだ。
もしもに備えて代役が出来る様にというのと、配役全てを覚える事で役に入りやすいからだそうだ。
必要か?犯人に最初に殺されるのに?ましてや女優の代役が出来るわけでは無いのに?
まあ、父がそう言うのならそうだろう。
だが、地道な努力の結果、徐々に仕事が増えて来たのも事実だから文句は言うまい。
母は仕事で遅くなる事も多いため、自然と読み合わせは子供達(まあ主に私)が相手をさせられた。
そのお陰か、自分で言うのも何だが、素人にしちゃかなり演技は上手いと思う。
今もこうして、好みの軍服姿を脳味噌のヒダにこれでもかと染み込ませて、後から妄想に耽ろうと思っているなど、はたからみれば微塵も思うまい。
ふっふっふっ。
その時、名を呼ばれたのか、壇上に一人の男性が上がった。
おおっ!何と麗しい肉体美!理想ですよ、理想。
頭と肩と腰から足のかけてのバランスも素晴らしいじゃ無いかっっ!!
黒の軍服の似合う事、神の如し。眼福、眼福。
心のシャッター、シャッターっと、よく見たらマクシミリアン様・・・じゃなくて、グラント・ロックス副隊長じゃないか。
軍服姿の記憶をするのに忙しくて、ちゃんと聞いて無かった。
辞令を貰いに行ったのね。
ふー危ない。
生けるマクシミリアン様。物語では青薔薇だが、黒薔薇も良いな。
***
無事、式典も終了し、いよいよそれぞれの執務室に向かう。
私の場合はグラント副隊長の執務室だ。
私の他にも二人、副隊長補佐官がついているのでその二人の後に続いて執務室へ向かった。
グラント副隊長は辞令をもらってから先に中にいるらしい。
ちょっと緊張してきた。
目の前にあの軍服姿があるのだ。
脳内録画スタート。
前の一人がノックをし、応えがあってドアを開ける。
私は節目がちに補佐官二人の後に続いて入室した。
「デパルさん、こちらへ」
「はい」
私は内心ドキドキしながらも、表情はスンと、したまま、グラント副隊長の隣に並んだ。
「今日から新しく配属された。事務官のデパルさんだ」
「ミランダ・デパルと申します。慣れるまでは皆さんにご迷惑おかけしますが、一日でも早く仕事に慣れるよう精進致しますので、よろしくお願い致します」
私は女優、と心に言い聞かせて、父に習った美しいお辞儀をした。
ほぅ、と感心されたようなため息が聞こえたが、ニヤけるな、堪えろ私。
頭を上げた時は元のスンとした顔にする。
グラント副隊長が私の席まで案内してくれた。
「副隊長、わざわざありがとうございました」
「いや、いい。仕事はおいおい覚えてもらう事にして、ロッカーや食堂などは後で女性隊員に案内させよう」
「はい。ありがとうございます」
「・・・」
「何か?」
「いや。明日からよろしく頼む」
戻って行く、グラント副隊長をさりげなく目で追いながら、自分の席に着いた。
ふーヤバイな、ガン見しすぎないよう調節したつもりだったけど、不審がられたかな?
私は自分の机の上に持ってきた仕事に使う用具を仕舞い始めた。
何と!騎士団第二隊副隊長付き事務官だった。
副隊長と言えば、グラント・ロックス先輩では無いか!
まぁ、向こうは3学年下の地味な中坊など覚えて無いだろう。
うんうん、問題無い。
彼は人格者と言われてるし、無茶振りなどもしないだろう。
安心安心。
事務官にも普段着る執務用と式典用の軍服があり、黒に金のボタンの上着に膝丈のタイトスカートだった。
式典用はさらに細かい金で刺繍や房飾り、帽子やベルトも付いており、かなりゴージャスでカッコイイ。
式典用を着て家族に見せる。
黒の軍服にハニーブロンドの髪は映えると思うが・・・
母が興奮気味に声を上げる。
「やだ、似合うじゃない!!!」
「「お姉ちゃんカッコいい!」」
「ミランダ、凛々しくて女優さんみたいだぞ。騎士団のみんなにモテそうでお父さん心配だなぁ~」
「お父さん、何言ってるの。私は仕事しに行くんだから」
小さかった弟妹も今年魔術学校高等部1年生、妹も中等部2年になった。
相変わらず父の仕事は俳優だが、ナレーションの仕事やCMも以前よりは来るようになった。
また、連続テレビドラマのチョイ役などもあり、昔に比べれば収入は格段に増えた。
しかし、収入が増えるという事は、世に出て来るという事で、いつ私がヴィクトルの娘とバレるのかヒヤヒヤする。
身バレはしたくない。
まあ、他人の空似などよくある事だ。
よし、気にしない。
***
4月に入り、いよいよ騎士団入隊式が行われた。
事務官も騎士団所属なので、当然入隊式に参列する。
各隊にはカラーがあり、第一隊は白、第二隊は黒、第三隊は赤となっている。
それぞれ軍服も白、黒、赤になっており、式典などでは帽子も被り、全騎士団が揃う様はそれはそれは見事な眺めであった。
くっ!なんたる事だ。写真が撮れないことが口惜しい。
顔を引き締めていないと、ニヤけてしまうから要注意だ。
スン、と澄ました顔して心のシャッターを切りまくっていた。
こういう時、父の仕事の手伝いで、台本の読み合わせなどしておいてよかった。
チョイ役のくせに父は無駄にプロ意識が高い。
何故か配役全ての台詞を覚えるのだ。
もしもに備えて代役が出来る様にというのと、配役全てを覚える事で役に入りやすいからだそうだ。
必要か?犯人に最初に殺されるのに?ましてや女優の代役が出来るわけでは無いのに?
まあ、父がそう言うのならそうだろう。
だが、地道な努力の結果、徐々に仕事が増えて来たのも事実だから文句は言うまい。
母は仕事で遅くなる事も多いため、自然と読み合わせは子供達(まあ主に私)が相手をさせられた。
そのお陰か、自分で言うのも何だが、素人にしちゃかなり演技は上手いと思う。
今もこうして、好みの軍服姿を脳味噌のヒダにこれでもかと染み込ませて、後から妄想に耽ろうと思っているなど、はたからみれば微塵も思うまい。
ふっふっふっ。
その時、名を呼ばれたのか、壇上に一人の男性が上がった。
おおっ!何と麗しい肉体美!理想ですよ、理想。
頭と肩と腰から足のかけてのバランスも素晴らしいじゃ無いかっっ!!
黒の軍服の似合う事、神の如し。眼福、眼福。
心のシャッター、シャッターっと、よく見たらマクシミリアン様・・・じゃなくて、グラント・ロックス副隊長じゃないか。
軍服姿の記憶をするのに忙しくて、ちゃんと聞いて無かった。
辞令を貰いに行ったのね。
ふー危ない。
生けるマクシミリアン様。物語では青薔薇だが、黒薔薇も良いな。
***
無事、式典も終了し、いよいよそれぞれの執務室に向かう。
私の場合はグラント副隊長の執務室だ。
私の他にも二人、副隊長補佐官がついているのでその二人の後に続いて執務室へ向かった。
グラント副隊長は辞令をもらってから先に中にいるらしい。
ちょっと緊張してきた。
目の前にあの軍服姿があるのだ。
脳内録画スタート。
前の一人がノックをし、応えがあってドアを開ける。
私は節目がちに補佐官二人の後に続いて入室した。
「デパルさん、こちらへ」
「はい」
私は内心ドキドキしながらも、表情はスンと、したまま、グラント副隊長の隣に並んだ。
「今日から新しく配属された。事務官のデパルさんだ」
「ミランダ・デパルと申します。慣れるまでは皆さんにご迷惑おかけしますが、一日でも早く仕事に慣れるよう精進致しますので、よろしくお願い致します」
私は女優、と心に言い聞かせて、父に習った美しいお辞儀をした。
ほぅ、と感心されたようなため息が聞こえたが、ニヤけるな、堪えろ私。
頭を上げた時は元のスンとした顔にする。
グラント副隊長が私の席まで案内してくれた。
「副隊長、わざわざありがとうございました」
「いや、いい。仕事はおいおい覚えてもらう事にして、ロッカーや食堂などは後で女性隊員に案内させよう」
「はい。ありがとうございます」
「・・・」
「何か?」
「いや。明日からよろしく頼む」
戻って行く、グラント副隊長をさりげなく目で追いながら、自分の席に着いた。
ふーヤバイな、ガン見しすぎないよう調節したつもりだったけど、不審がられたかな?
私は自分の机の上に持ってきた仕事に使う用具を仕舞い始めた。
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