[完結】うちの第二隊副隊長さまはモテ過ぎるのでとっとと結婚してほしい

いかくもハル

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【番外編】マリモリ先生の受難1

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私はエマリア・モリーシュ。実家は建国以降、代々公爵領を管理している、古い家柄だ。

家は常に公爵家として人の手本となるよう、それはそれは厳しく躾けられて来た。
公爵と言っても、昔あった身分制度は今は廃止されていて、単に領地を管理する役職名だけなんだけど、うちは古くから管理して来たため、いまだに昔の習慣だけが残っている。


私にはアンソニーという二つ上の兄がいる。兄は頭も良く、運動も得意で、見目麗しく、人に優しい完璧な人だ。
次期公爵領管理者として申し分ない素晴らしい人なのだ。

それに比べ、私は運動は苦手だし、人見知りだし、勉強だってイマイチ。
赤みがかったストロベリーブロンドの髪は凄い巻毛でちゃんと手入れしないとすぐに爆発する。
同じ色でも兄はサラサラの直毛だ。羨ましい。

唯一自慢できるのは瞳の色くらい。
真ん中が濃い紫で外側に行くに連れて鮮やかな青になるグラデーションのある瞳。
宝石眼っていうんだって。凄く珍しいらしい。
美人と評判だった、ひいお婆さまから受け継いだんだけど、残念ながらわたしはそんなに美人じゃないし。
お兄様みたいな怜悧な美貌なら良かったのに、背も低く、年より幼く見える子供っぽい顔立ちも嫌だ。

お兄様は可愛いって言ってくれるけど・・・

地元公爵領の中等部からこの春、王都にある高等部へ編入して来た。
兄は既に二年前に編入して来て、寮に入っている。
私も初めて親元から離れて、寮に入る事になった。

さぞかし心細いだろうって?
全っっっ然、全っっっっく問題なしっっっ!!

実は私には密かな趣味があって、今までひた隠しにして、厳しい家族の目をかいくぐって来たのだ。
その趣味とは恋愛小説を書く事。
何度か公募に作品を投稿して来たけど全て落選。
前回のはちょっと自信あったんだけどな・・・残念。

また新しい作品を書くとしますか。

そう思いながら、入学式に臨む。
桜が満開の並木道を歩いていると、上級生だろうか、物凄く背の高い均整の取れた体つき、アッシュブロンドにブルーグレーの瞳の少年が足速に私を追い越して行った。
うわぁ、すっごい整った顔だな。彫刻みたい。
そして、物語の主人公みたいなオーラがある。
めちゃくちゃモテそう。

よし、次の主人公にしよう。心の中にメモを取る。
さすが王都だな。華やかな人が多い。


広い講堂で入学式があったんだけど、ここは美男美女パラダイスが何かなんでしょうか?
右を見ても左を見ても、美男美男、美女美女。
ひぇぇぇぇ。同じ年とは思えないほど、皆大人っぽい。
益々気後れする私。

上手くやっていけるのかな・・・
でも、せっかく家から離れて、自由に、好きな時に物語を書ける環境にある。
この機会を活かさなくてどうする!
はぁ。目の保養はいっぱいいる。今のうちに網膜に焼き付けるのよエマリア!




「ちょっと失礼」

ハッッ!いつの間にか入学式は終わっていた。
周りはガタガタと先を立って外に出ている。
私はぼんやりと椅子に座ったままで、誰が外に出るに邪魔っだったらしい。

「ご、ごめんなさい。すぐ退きます」

声のした方に目を向ける。
ヒュッと息を呑んで動けなくなった。
あれ?私天国に来たのかな?目の前に天使がいる。
サラッサラのプラチナブロンドに深い紫色の瞳。
小さな顔は恐ろしいほどに整っていた。
年齢は同じ年?とは思えない。年齢より幼く見える私もいる事だし・・・と思ってると。

「クリストファー様、こちらからどうぞ」

彼の後ろから柔らかな美声が聞こえた。
見ると、年齢は二十歳くらいの眼鏡をかけた深い緑の髪、執事服を着たこれまた信じられないくらいの美青年が立っていた。

お付きの人がいる?どういう事?
彼はくるりと踵を返すと、お付きの青年と去って行った。

周りの声が戻ってきた。あまりの美しさに音を認識していなかったらしい。
浄化師とか、飛び級とか声が聞こえてきた。
話を総合すると、彼が浄化師レオナルドさんの息子で、今年から飛び級で高等部に来たクリストファーくんという事らしい。

頭も良くて才能もあって、美しくて、天は二物も三物も与えるなと思った。

この年は有名人の息子さんが多く、最初に見た彫刻のような美形も同じ年で騎士団第二隊隊長の息子さんのグラントくんだったし、宰相の息子さんのウォルフくんという、何とも上品で優美な少年もいた。

ふぇぇぇ。凄いな、王都。今日から私も王都で学校生活送るぞ。



寮の部屋に入る。
個室と相部屋を希望できたが、私は個室を希望した。
今日会った、印象に残った人たちをメモに残しておく。

明日からの学園生活が楽しみだな。


***

「ストップ!!!魔力循環がおかしい」

グラントくんの切迫した声が響いた。

今日は魔力循環の授業で、体内で魔力を一定時間で均一に循環させる授業中だった。

声のする方を見るとぐっりしたクリストファーくんが膝をついたグラントくんに上半身を預けるように抱えられていた。
ひよっ!!まるで神聖不可侵のような美しい二人に、不謹慎ながら息を呑む。
あぁぁぁ、この光景目に焼きついて離れない。


体内魔力が異常に高まると、最悪死に至ることもあるらしい。
お付きのアルスさんが傍にしゃがみ込んで声をかけていた。

「クリストファー様、ゆっくり息を吸って、吐いてください」

クリストファーくんの顔はどんどん顔色が悪く、苦しげになっていった。
あぁ、どうしよう。私たちはオロオロしていた。

「どいてください。僕に任せて」

見るとウォルフくんがクリストファーくんの横にしゃがみ込むと、額に手を当てた。

「魔力コントロール」

そういうと、爆発しそうになってた魔力が徐々に正常に戻っていく。
凄い!!ウォルフくん、他者の魔力もコントロール出来るんだ。
クリストファーくんの顔色も少し良くなって来た。良かったぁ。
小さい体の胸がゆっくりと上下しているが、まだ意識は戻っていない。
アルスさんがすぐにクリストファーくんを抱えて保健室に向った。

見送ってホッと胸を撫で下ろした。
その後、授業は通常通り行われたが、クリストファーくんは今日の授業には戻ってこなかった。

やっぱり、五歳差は大きいよね。
頭は良くても魔術の才能はあっても体はまだ11歳だもん。
でもそれ以降、グラントくん、ウォルフくんがクリストファーくんの面倒みるようになって、3人が一緒にいるところを良く見るようになった。
そのうち、上級生のビルさんまで良く声をかけてるのを見かけた。

ビルさんは二つ上のバルパス王国からの留学生で、第一王子らしい。
赤い髪に海の様な濃い青の瞳をした、これまた美形だった。

この4人が揃うと壮観で、物凄く人目を引いた。
クリストファーくんもアルスさん以外にこの3人には心を許すのか、良く笑うようになっていた。

ほぉぉぉぉ、本当に天使みたいだ。
女の子だったら、完全にヒロインだよね、と思った瞬間に閃いた!
そうだ!この5人を登場人物にして小説を書いてみよう、と。
でも、今まで似たような話はいくらでもある。
いっそのこと、BLにしてみようか。初めて書くけど、自分で読む方はハッキリ言ってBLが好きだ。

そうなったら物語がどんどん湧いてきた。
えっと、学園ものだとモロバレるから、騎士団にして・・・
夢中で物語を書いた。
物語のタイトルは『青薔薇の騎士団』。
早速、公募に送る。今回は物凄く手応えもあって、良いところに行けると思う。

いつも人物像がイマイチリアリティに欠けるって言われちゃんだけど、何てったって今回は実在するモデルがいる。
自分で考えるよりもずっと綺麗だしカッコイイ。
ワクワクしながら、結果を待った。



どうなったかな~と、思いながら日々学校生活を過ごしていた。
人見知りの私も学校に慣れて、仲良くする友達も出来た。
流石に彼女達にBL書いてるとは言えなかったけどね。




























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