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【番外編】マリモリ先生の受難〜ジークフリード〜
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僕はジークフリード・グリードエンド。
グリードエンド王国の第一王子。そしてこの国の王太子をしている。
この度めでたく結婚が決まった。
あーやれやれ。
彼女とは10年前に魔術学校で知り合った。僕が16歳になる年だった。
我ながら凄い執念だと思ったけど、彼女とは何があっても結婚したいと、長い間かけて誰にも文句は言わせない様、用意周到に準備して来たのだ。
彼女、エマリア・モリーシュ。2学年上の僕の天使。
初めて会ったのは僕が一年生の春。
少し一人になりたくて、たまたま見つけた自分の秘密の場所。
学校のはずれにある古い小さな温室。
机と椅子がポツンと置いてあって、床を見ると椅子を引いた跡がある。
誰かもここで息抜きしてるのかな?とその誰かさんと秘密の場所を共有しているのは何となく楽しかった。
上手い事かち合う事もなく、誰かさんと共有していたんだけど、ある時ふと人の気配がした。
あ、共有してる人だ!とすぐにわかって、どんな人か少し興味を持った。
ちょっと覗いてすぐ帰ろうと思ったんだよね。
そっと見ると、ポツンと置いてある机に向かって一人の女の子が何か書いてる?
僕の位置からは横顔しか見えなかったけど、中等部の子かな?と思った。
赤みがかったストロベリーブロンドがキラキラしてて、生え際の髪がクルクルしてて、天使みたいに可愛い子だった。
びっくりさせない様、そーっと近づくが、全然こっちに気がつく気配がなくて。
凄い集中力だよね。びっくりさせないように、そっと声をかけたんだよ。
「何してるの?」
ビクッと上半身ごと飛び上がって、書きかけの紙が散乱した。
あ~ごめん。そんなにびっくりするとは思わなかった。
「お、お、お、王太子殿下!!何故ここに?」
あ、僕の事は知ってるんだ。
「んー?何でかって?よくここに気晴らしに来るからだよ。君は?」
するとその子は立ち上がって、それはそれは流れる様に見事な礼をした。
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私は高等部3年のエマリア・モリーシュです」
バッジを見ると、本当に高等部だった。え?3年生?嘘、年上だった。
モリーシュといえば、公爵領管理のお嬢さんだな。
あそこの家は古くから公爵で厳しく躾けられたのだろう。
綺麗な礼なのは納得。
顔を上げると、こぼれ落ちそうな大きな瞳。
中心が紫色で外側に向かって青のグラデーションになってる。
初めて見た。これが宝石眼というものか。
思わず吸い込まれそうになってクラクラする。
その時、一瞬で未来が見えた。
王家の特殊能力である『予知』。今までは何となくぼんやりと象徴的にしかわからなかったけど、彼女の目を見た瞬間にクリアに見えた。
僕の予知があの時初めて開花した。
今思えば、そこで一目惚れしたんだろうな。
予知したことなど、表面上微塵も感じさせず、彼女と会話を交わす。
ふと足元に彼女が書いてた手紙?作文?が数枚落ちている。
拾い上げて見ると表紙の様だった。『青薔薇騎士団~秘密の恋は蜜の味~』何だ?恋愛小説?ちょっと気になる。
拾った数枚は続きページだった。読んですぐわかった。
なるほど、アレね。今、女性達の間で密かに流行ってるという、BL、つまりボーイズラブというやつだ。
へえ~、人は見かけによらない。益々彼女に興味を持った。
残りの落とした原稿を拾うと、縮こまって俯いてる彼女に渡す。
まあ、この国の王太子に知られたら、そうなるよね。
ごめんね、本当に。
「じゃ、またね。マリモリ先生」
何で知ってるの?って顔したね。すぐ顔に出て本当に可愛い。
表紙を指差して口パクで”書いてある”と言うと、あぁ、と納得した様だった。
そのまま彼女と別れ、外にいた護衛と合流する。
学校なんて、面倒臭いと思ってたけど、彼女がいるなら楽しくなりそうだな。
「何か、ご機嫌ですね、殿下」
「そう?これから楽しくなりそうだからね」
僕の護衛、背は僕より少し高いくらいで、20歳超えてるけど、やや細身で高校生に見えなくもない、第一隊のクルスが声をかけて来た。
どうやら知らずに鼻歌を歌っていたらしい。
彼は僕のクラスの生徒に混って護衛をしている一人だ。
「至急、エマリア・モリーシュを調べてくれる?あとモリーシュ家も」
「かしこましました」
クルスの片眉がヒュッと上がったけど、特に何も言わずに了解してくれた。うん、いい護衛だ。余計な詮索はしない。
エマリアはあれから温室に来なくなってしまった。
やっぱりね。お近づきになりたいって擦り寄ってくるタイプじゃないよね。
仕方ない。クルスにエマリアのクラスに行ってくると声をかけて、隠密を使って一人で彼女のクラスに行った。
エマリアのリアクションは本当に外さないんだよなぁ。
もう、楽しくて仕方ない。
くるくる変わる表情に合わせて瞳もキラキラする。
放っておいたらすぐに他の男に持って行かれそう。
原稿を持って来週水曜に来て、と一方的に約束を取り付けて教室を出た。
こっちのペースに巻き込んだもの勝ち。
クルスの調べによると、公爵領でも王都でも、エマリアには今だかつて恋人も婚約者もいないとのことだった。
ふ~ん、なるほどね。小説を書くのに忙しかったんだろう。
彼女が由緒正しき公爵の娘だったのは本当に幸いだった。
公爵も領民に慕われてるし、結婚には何の問題もない。
あるとしたら、エマリア本人が全くその気が無さそうな事。
娘が大事な公爵も王家から婚約を打診しても、エマリアが難色を示したら断りそうだよな。
う~ん、どうするかな・・・
彼女の書いた既刊の小説を取り寄せて読んだけど、あれ自分のクラスのグラントやウォルフ、クリストファー達を登場人物としてるじゃないか。すぐにわかった。まぁ、あの濃ゆいメンバーは人目を引くし、物語にしやすいだろう。
奴等がBL読むはずも無いしな。
彼らのことも、騎士団の事も、僕ならもっと詳しく教えてあげられる。そう思うと笑いが止まらない。
彼女にとって自分が役に立つ存在であり、必要である、と強く意識させる事にした。
それから、案内にかこつけて騎士団には早速エマリアを紹介する。
僕自ら紹介する事は彼らにとって意味がある。
つまり、彼女も護衛対象とする事だ。
隊長はすぐに第一隊全員に彼女を紹介した。これで彼らのと顔合わせは完了。
後は僕と隊長とで、今後彼女をどう護衛して行くか相談だな。
周りを牽制しつつ、安全に配慮する。しかも彼女に悟られずに。結構大変だな。
水面下でエマリア捕獲作戦が静かに始まった。
僕が情報提供者兼アドバイザーとなるのに時間はかからなかった。
エマリアが卒業するまでの約一年程、それとなく周りには常に生徒に扮した騎士を配置し、同時にエマリアの両親に婚約の打診をしている。
もちろん、エマリアから了解をもらうまで、返事は待ってもらう事になった。
卒業後はそれとなく専科にも護衛を配置し、定期的に報告を受けていた。
写真を見ても相変わらずなエマリアが微笑ましい。
たま~に隠密で彼女を見に行く事もあった。内緒だけど。
僕が特化を卒業すると、正式に婚約者の査定に入るらしいと俄に周りが騒ぎ出した。
確かに世間的には学業に専念したいから、と最もらしい事を言って婚約者の事はのらりくらりと交わしていた。
今エマリアに打診しても断るだろうから、まだ早い。
もう少しだなあと2年?いや、3年くらいか?公務も忙しくなって来ているので、あっという間に過ぎるだろう。
エマリアも作家活動は順調で、売れっ子になっても生活が派手になる事もなく、今まで通りだと報告が上がっている。
忙しい公務の合間の彼女の報告は心が和む。
律儀なエマリアは年に一回程だが、新刊が出るたびに送ってくれている。
献上本として綺麗に装丁されたものと、気楽に読めるように一般的に売られているものと2冊も。丁寧な手紙と共に。
僕もそれに対して短いお礼の手紙を書く。
言葉一つ一つにもっと思いが込められると良いのに、と思いながら。
その時の季節の花と共に手紙を送るのが、今のところ彼女との唯一直接的な接点だ。
間接的なのはそれは沢山あるけどね。
出版社にもマンションの向かいにもよく行く喫茶店にも、スーパーにもそれとなく護衛は付いている。
交代しているといえ、本当によくやってくれている。
彼女の友人達や、周りの関係者も結婚して来たらしい。
あともう一押しかな。
おっとその前にダミー婚約者を2人ほど用意しなくては。
大臣達が選びそうな人達で信頼のおける者を用意しよう。
しかし、僕が特化を卒業して一年後の22歳の時だった。
今年の騎士団事務官でトップで入ったミランダ・デパルが注目を浴びた。
しかも母親は王国調査局局長のサマンサ・デパル。
彼女はノーマークだった。ヤバイ。魔術専科でも成績は優秀で魔術師にならないのが惜しまれるほどの逸材だったという。
このままでは婚約者の候補に入ってしまう。
どうしようか、今からでも協力者になってもらおうかと思ってると、父がグラント君の相手だから心配ない、と言い出した。
僕よりもハッキリ見えたらしい。
早速ウォルフを動かして、上手くグラントを焚きつけてくれた。
元々グラントがミランダ・デパルを事務官にと望んでいたらしいし、放っておいてもあの2人は結婚していただろう。
正式な候補者になる前に2人はとっとと婚約してしまった。
はぁ、やれやれ。父とウォルフとグラントには感謝だな。
ごめんね、ウォルフ。小説ではつい、君の嫌がるリアクションを考えて、ビルを相手にしてしまって。
でも、小説では君達は幸せそうだから許してくれ。
無事、ダミー婚約者候補も見つかった事だし、後は時が過ぎるのを待つだけとなった。
そして、僕が24歳になったころ、エマリアからまた新作が送られてきた。
僕はいよいよその時が来た!とお礼の手紙と一枚のカードを添えて彼女に送った。
律儀な彼女は何の疑いもせずに時間通りにやってくるだろう。
***
コンコン。
「殿下、エマリア・モリーシュさんをお連れしました」
「どうぞー、入って」
僕はソファに座って、ニンマリした。
グリードエンド王国の第一王子。そしてこの国の王太子をしている。
この度めでたく結婚が決まった。
あーやれやれ。
彼女とは10年前に魔術学校で知り合った。僕が16歳になる年だった。
我ながら凄い執念だと思ったけど、彼女とは何があっても結婚したいと、長い間かけて誰にも文句は言わせない様、用意周到に準備して来たのだ。
彼女、エマリア・モリーシュ。2学年上の僕の天使。
初めて会ったのは僕が一年生の春。
少し一人になりたくて、たまたま見つけた自分の秘密の場所。
学校のはずれにある古い小さな温室。
机と椅子がポツンと置いてあって、床を見ると椅子を引いた跡がある。
誰かもここで息抜きしてるのかな?とその誰かさんと秘密の場所を共有しているのは何となく楽しかった。
上手い事かち合う事もなく、誰かさんと共有していたんだけど、ある時ふと人の気配がした。
あ、共有してる人だ!とすぐにわかって、どんな人か少し興味を持った。
ちょっと覗いてすぐ帰ろうと思ったんだよね。
そっと見ると、ポツンと置いてある机に向かって一人の女の子が何か書いてる?
僕の位置からは横顔しか見えなかったけど、中等部の子かな?と思った。
赤みがかったストロベリーブロンドがキラキラしてて、生え際の髪がクルクルしてて、天使みたいに可愛い子だった。
びっくりさせない様、そーっと近づくが、全然こっちに気がつく気配がなくて。
凄い集中力だよね。びっくりさせないように、そっと声をかけたんだよ。
「何してるの?」
ビクッと上半身ごと飛び上がって、書きかけの紙が散乱した。
あ~ごめん。そんなにびっくりするとは思わなかった。
「お、お、お、王太子殿下!!何故ここに?」
あ、僕の事は知ってるんだ。
「んー?何でかって?よくここに気晴らしに来るからだよ。君は?」
するとその子は立ち上がって、それはそれは流れる様に見事な礼をした。
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私は高等部3年のエマリア・モリーシュです」
バッジを見ると、本当に高等部だった。え?3年生?嘘、年上だった。
モリーシュといえば、公爵領管理のお嬢さんだな。
あそこの家は古くから公爵で厳しく躾けられたのだろう。
綺麗な礼なのは納得。
顔を上げると、こぼれ落ちそうな大きな瞳。
中心が紫色で外側に向かって青のグラデーションになってる。
初めて見た。これが宝石眼というものか。
思わず吸い込まれそうになってクラクラする。
その時、一瞬で未来が見えた。
王家の特殊能力である『予知』。今までは何となくぼんやりと象徴的にしかわからなかったけど、彼女の目を見た瞬間にクリアに見えた。
僕の予知があの時初めて開花した。
今思えば、そこで一目惚れしたんだろうな。
予知したことなど、表面上微塵も感じさせず、彼女と会話を交わす。
ふと足元に彼女が書いてた手紙?作文?が数枚落ちている。
拾い上げて見ると表紙の様だった。『青薔薇騎士団~秘密の恋は蜜の味~』何だ?恋愛小説?ちょっと気になる。
拾った数枚は続きページだった。読んですぐわかった。
なるほど、アレね。今、女性達の間で密かに流行ってるという、BL、つまりボーイズラブというやつだ。
へえ~、人は見かけによらない。益々彼女に興味を持った。
残りの落とした原稿を拾うと、縮こまって俯いてる彼女に渡す。
まあ、この国の王太子に知られたら、そうなるよね。
ごめんね、本当に。
「じゃ、またね。マリモリ先生」
何で知ってるの?って顔したね。すぐ顔に出て本当に可愛い。
表紙を指差して口パクで”書いてある”と言うと、あぁ、と納得した様だった。
そのまま彼女と別れ、外にいた護衛と合流する。
学校なんて、面倒臭いと思ってたけど、彼女がいるなら楽しくなりそうだな。
「何か、ご機嫌ですね、殿下」
「そう?これから楽しくなりそうだからね」
僕の護衛、背は僕より少し高いくらいで、20歳超えてるけど、やや細身で高校生に見えなくもない、第一隊のクルスが声をかけて来た。
どうやら知らずに鼻歌を歌っていたらしい。
彼は僕のクラスの生徒に混って護衛をしている一人だ。
「至急、エマリア・モリーシュを調べてくれる?あとモリーシュ家も」
「かしこましました」
クルスの片眉がヒュッと上がったけど、特に何も言わずに了解してくれた。うん、いい護衛だ。余計な詮索はしない。
エマリアはあれから温室に来なくなってしまった。
やっぱりね。お近づきになりたいって擦り寄ってくるタイプじゃないよね。
仕方ない。クルスにエマリアのクラスに行ってくると声をかけて、隠密を使って一人で彼女のクラスに行った。
エマリアのリアクションは本当に外さないんだよなぁ。
もう、楽しくて仕方ない。
くるくる変わる表情に合わせて瞳もキラキラする。
放っておいたらすぐに他の男に持って行かれそう。
原稿を持って来週水曜に来て、と一方的に約束を取り付けて教室を出た。
こっちのペースに巻き込んだもの勝ち。
クルスの調べによると、公爵領でも王都でも、エマリアには今だかつて恋人も婚約者もいないとのことだった。
ふ~ん、なるほどね。小説を書くのに忙しかったんだろう。
彼女が由緒正しき公爵の娘だったのは本当に幸いだった。
公爵も領民に慕われてるし、結婚には何の問題もない。
あるとしたら、エマリア本人が全くその気が無さそうな事。
娘が大事な公爵も王家から婚約を打診しても、エマリアが難色を示したら断りそうだよな。
う~ん、どうするかな・・・
彼女の書いた既刊の小説を取り寄せて読んだけど、あれ自分のクラスのグラントやウォルフ、クリストファー達を登場人物としてるじゃないか。すぐにわかった。まぁ、あの濃ゆいメンバーは人目を引くし、物語にしやすいだろう。
奴等がBL読むはずも無いしな。
彼らのことも、騎士団の事も、僕ならもっと詳しく教えてあげられる。そう思うと笑いが止まらない。
彼女にとって自分が役に立つ存在であり、必要である、と強く意識させる事にした。
それから、案内にかこつけて騎士団には早速エマリアを紹介する。
僕自ら紹介する事は彼らにとって意味がある。
つまり、彼女も護衛対象とする事だ。
隊長はすぐに第一隊全員に彼女を紹介した。これで彼らのと顔合わせは完了。
後は僕と隊長とで、今後彼女をどう護衛して行くか相談だな。
周りを牽制しつつ、安全に配慮する。しかも彼女に悟られずに。結構大変だな。
水面下でエマリア捕獲作戦が静かに始まった。
僕が情報提供者兼アドバイザーとなるのに時間はかからなかった。
エマリアが卒業するまでの約一年程、それとなく周りには常に生徒に扮した騎士を配置し、同時にエマリアの両親に婚約の打診をしている。
もちろん、エマリアから了解をもらうまで、返事は待ってもらう事になった。
卒業後はそれとなく専科にも護衛を配置し、定期的に報告を受けていた。
写真を見ても相変わらずなエマリアが微笑ましい。
たま~に隠密で彼女を見に行く事もあった。内緒だけど。
僕が特化を卒業すると、正式に婚約者の査定に入るらしいと俄に周りが騒ぎ出した。
確かに世間的には学業に専念したいから、と最もらしい事を言って婚約者の事はのらりくらりと交わしていた。
今エマリアに打診しても断るだろうから、まだ早い。
もう少しだなあと2年?いや、3年くらいか?公務も忙しくなって来ているので、あっという間に過ぎるだろう。
エマリアも作家活動は順調で、売れっ子になっても生活が派手になる事もなく、今まで通りだと報告が上がっている。
忙しい公務の合間の彼女の報告は心が和む。
律儀なエマリアは年に一回程だが、新刊が出るたびに送ってくれている。
献上本として綺麗に装丁されたものと、気楽に読めるように一般的に売られているものと2冊も。丁寧な手紙と共に。
僕もそれに対して短いお礼の手紙を書く。
言葉一つ一つにもっと思いが込められると良いのに、と思いながら。
その時の季節の花と共に手紙を送るのが、今のところ彼女との唯一直接的な接点だ。
間接的なのはそれは沢山あるけどね。
出版社にもマンションの向かいにもよく行く喫茶店にも、スーパーにもそれとなく護衛は付いている。
交代しているといえ、本当によくやってくれている。
彼女の友人達や、周りの関係者も結婚して来たらしい。
あともう一押しかな。
おっとその前にダミー婚約者を2人ほど用意しなくては。
大臣達が選びそうな人達で信頼のおける者を用意しよう。
しかし、僕が特化を卒業して一年後の22歳の時だった。
今年の騎士団事務官でトップで入ったミランダ・デパルが注目を浴びた。
しかも母親は王国調査局局長のサマンサ・デパル。
彼女はノーマークだった。ヤバイ。魔術専科でも成績は優秀で魔術師にならないのが惜しまれるほどの逸材だったという。
このままでは婚約者の候補に入ってしまう。
どうしようか、今からでも協力者になってもらおうかと思ってると、父がグラント君の相手だから心配ない、と言い出した。
僕よりもハッキリ見えたらしい。
早速ウォルフを動かして、上手くグラントを焚きつけてくれた。
元々グラントがミランダ・デパルを事務官にと望んでいたらしいし、放っておいてもあの2人は結婚していただろう。
正式な候補者になる前に2人はとっとと婚約してしまった。
はぁ、やれやれ。父とウォルフとグラントには感謝だな。
ごめんね、ウォルフ。小説ではつい、君の嫌がるリアクションを考えて、ビルを相手にしてしまって。
でも、小説では君達は幸せそうだから許してくれ。
無事、ダミー婚約者候補も見つかった事だし、後は時が過ぎるのを待つだけとなった。
そして、僕が24歳になったころ、エマリアからまた新作が送られてきた。
僕はいよいよその時が来た!とお礼の手紙と一枚のカードを添えて彼女に送った。
律儀な彼女は何の疑いもせずに時間通りにやってくるだろう。
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コンコン。
「殿下、エマリア・モリーシュさんをお連れしました」
「どうぞー、入って」
僕はソファに座って、ニンマリした。
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