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【プロローグ】表情筋が死んでる男

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「もう嫌。アシュレイといるとしんどいの」

またか。
大体3ヶ月もすると、同じような事を言われて振られる事が多い。
そんでもって、次は

「アシュレイは何考えてるかわからないのよね」

ほら来た。これも同じ。
そうなのか?わかりにくいのは自覚してるから、なるべく言葉で伝えるようにしていたつもりだったが、まだ足りないらしい。
何考えてるかって、みんないちいち言い合う物なのだろか・・・

「そんな難しい事は考えて無いけど・・・」
「というか、表情がわかりにくのよね。怒ってるとか楽しいとか。いつの間にかあなたの顔色ばかり伺ってる自分が嫌になるの」

え!そうだったのか?気を遣わせていたのか。
それは申し訳ない。

「私の事なんて、何とも思って無いのよ」
「そんな事はない」
「でも、仕事とが仲間を優先されて、私ばかりがあなたの都合に合わせて来たのよ。私を一番に思ってくれないなら、もう嫌なの」
「・・・」

そうは言っても、仕事は大事だし、仲間も大事だし・・・

「何も言ってくれないのね・・・もう良いわ。さよなら」
「あ、サラ・・・」

彼女は席を立つと、個室から出て行った。

よく来ていたお気に入りの「グロリア亭」。
良い思い出も、苦い思い出もあるんだよな、ここは。
でも居心地が良い。変わらないのはこの店だけだ。

はぁぁ、いつもこうだ。言われることも同じ、期間も同じ。
もう、自分に欠陥があるんだろうな。
28にもなって、恋愛が分からなくなっている。

アッシュブロンドの髪をぐちゃぐちゃにかき混ぜて、机に突っ伏した。

そんなにわかりにくいかな。
弟や妹たちには、表情筋死んでると冗談混じりに言われるけど、自分ではわからない。

無愛想なのは今に始まったわけじゃ無いし、それでも良いって言ってたんだよな。そこが良いとか。
あれは何だったんだ?
というか、付き合ってほしいって言って来るような人とは根本的に合わないのかもしれないな。
やっとわかった。
恋人がいないから付き合うって言うのは、自分には合わないのだ、きっと。

次は自分から好きにならない限り、付き合うのはやめにしよう。
苦いビールを飲み下して、俺は密かに決意していた。








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