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何だそれ!?
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~アシュレイ~
右隣にいるシェリルの横顔を見ながら、グロリア亭に来る前、仕事中のことを思い出していた。
***
書類に目を通しながら、チラリとシェリルを見る。
彼女は今、処理の終わった書類らを分類別にチェックしてファイリングしてくれている。
終わると、届いた書類に目を通して、急ぎのものから回してくれていた。
やりやすい、物凄く仕事が捗る。
シェリルは力の加減が下手なので、たまに物を壊すから大雑把に見えるけど、意外と慎重で気配りもできるタイプだ。
姉のミランダに似て仕事は出来る。
騎士に戻すのは惜しい。
このまま助手として雇いたいくらいだ。
ほぼ犯人は特定されたし、さっきのような目に遭わないとは限らないので、そばに置いておきたいのが本音。
それと魔力。シェリルの魔力は心地よかった。
魔力の相性なんて、今まで気にしたこともなかったし、魔力が多いのは家族とか同じ魔術師の野郎ばかりだったので、ちょっと衝撃だった。
あの感覚が忘れ難い。
どうしよう、気がつくとシェリルを見てしまう。
シェリルはあまり感じてないようだから、これは魔術師特有の執着というやつなのだろうか・・・?
浄化師のクリストファーが魔力の相性は抗い難く惹きつけられると言っていたが、これか?これなのか?
現に奴は異世界から来た渡り人と結婚までしている。
膝の上に乗せて、食事も自ら食べさせるくらいで、ドン引きした覚えはあるが、本人はお構いなしだ。
さすがクリストファー。
渡り人もそれが普通と言われたら、そうなのかな?くらいにしか思っていないようだし。
余計な事言うなよ、って目で制された覚えがある。
その時はえ~、ぐらいしか思わなかったけど・・・
ちょっとわかる。
バートンに迫られたところを助けてもらった吊り橋効果なのかも?と、思わないでもないが、とても惹かれている自分がいる。
どうしよう、どうすれば良い?
などと思ってたら、就業時間が終わってしまったのだった。
離れ難いし、腹は減ったしでシェリルを見たら、いつも通り、心得た、とばかりにお供するっていうから、グロリア亭まで来たのだった。
***
今日は金曜日なので、グロリア亭には混んでいた。
丁度カウンターの端が2席空いていた。
カウンターに近づいたら隣の男がシェリルをチラチラ見ていた。
私服のシェリルは騎士だなんて誰も思わないくらいの美人だから、見たくなる気持ちはわかるが、気に入らない。
シェリルが普通に男の隣に行こうとしたから、彼女を端にして俺がその隣に座った。
ツマミを頼んで、チビチビ飲んで食べていたら、話の流れで俺のことが苦手だった言われた。
えぇー・・・ちょっとショック、と思ってたら、シェリルがフォローする様に言った。
「ほとんど話したことないし、近寄りがたい印象しかなくて。でも、今は全然違いますよ、ホントに。話しやすくって、何というか・・・居心地良いです」
「居心地良い・・・」
そうか、シェリルも俺といるのは嫌なわけではないって事か。
苦手と言われた時はどうしようかと思ったが、希望が見えた。
だとしたら、確かめてみるしかないかもしれない。
護衛はいつ外れてもおかしくないのだ。
時間はあまり無い。
「ママさん、二階って空いてる?」
「一番奥の個室なら空いてるわよ」
「じゃあ、そこ借ります。シェリル、悪いけどちょっと移動しよう。ここ落ち着かない」
「?わかりました」
首を傾げるシェリルの腕を取って二階にさっさと上がって行く。
つまみを持ったママさんも後からついて来てくれた。
「じゃ、ごゆっくり~」と、ママさんがバタンと扉を閉めた。
「ソファ座ろっか」
「はぁ」
若干戸惑い気味のシェリルを促して、並んで座る。
何回も来たけど、個室に来たのは初めてだったな。
そこで、ハタと気がついた。
勢いでここまで来てしまったが、どうしよう。
魔力の相性確かめたいとか言ったら、気持ち悪がられるかな?
でも、シェリルが気になるのは確かだし・・・
ぐるぐる考え始めたら、どうして良いかわからなくなってしまった。
そういえば今まで、相手が自分をどう思うか気になる、なんて考えた事も無かった。
「アシュレイさん?どうしたんですか?具合悪くなっちゃいました?」
シェリルが心配気に顔を覗き込んで来た。
若草色の綺麗な瞳に自分だけを映しているのを見て、俄にドキドキして来てしまった。
おいおい、どうした俺、中等部の学生じゃ無いんだぞ!!
真っ赤になってあうあうしていると、ますますシェリルは心配そうに顔を寄せて来た。
「本当に変ですよ。色々あったし、熱でも出たのかな?」
そっとおでこをつけて、熱まで測られてしまった。
接触したおでこから微量ながら魔力を感じる。
うぅ、やっぱり心地良い。
「熱は無いなぁ」
そう言いながら離れようとするのを思わず腕を回して、ギュウっとシェリルを抱きしめてしまった。
あ、俺のバカ!
「!!!」
シェリルは突然のことでびっくりしてる。
当然だ。でも、離せない。
「ごめん、シェリル。ちょっとだけこのままでも良い?」
それだけ言うと、やっとわかった。
そうか、俺、いつの間にかシェリルを好きになってたんだな。
魔力に惹かれるのも納得だ。
そうっとシェリルを離すと、シェリルがびっくりした顔をしてこっちを見ていたが、急に心配そうな顔になると
「アシュレイさん、私に縋りたくなるほど辛かったんですね。そうですよね、バートンさんは仲良しでしたし、ショックも大きいですよね」
わかります、と頷きながら納得していた。
おい、ちょっと待て。
何故今バートンが出てくる。
「いや、そうじゃなくて・・・」
「良いんですよ。薄々みんなとの距離怪しいなって思ったのに、言うの遅かったですよね、すみません」
「だから、そうじゃなくてって。おい、みんなって何だみんなって?」
「?みんなですよ、え?アシュレイさん、研究所の人達にモテモテなの気がつかなかったんですか?」
はああああああ!?
何だそれ、何だそれ!?
バートンみたいに思ってる奴がまだいるってか!?
せっかく、シェリルへの気持ちに気が付いたのに、そのシェリルから恐ろしい事実を聞かされ、呆然としてしまった。
右隣にいるシェリルの横顔を見ながら、グロリア亭に来る前、仕事中のことを思い出していた。
***
書類に目を通しながら、チラリとシェリルを見る。
彼女は今、処理の終わった書類らを分類別にチェックしてファイリングしてくれている。
終わると、届いた書類に目を通して、急ぎのものから回してくれていた。
やりやすい、物凄く仕事が捗る。
シェリルは力の加減が下手なので、たまに物を壊すから大雑把に見えるけど、意外と慎重で気配りもできるタイプだ。
姉のミランダに似て仕事は出来る。
騎士に戻すのは惜しい。
このまま助手として雇いたいくらいだ。
ほぼ犯人は特定されたし、さっきのような目に遭わないとは限らないので、そばに置いておきたいのが本音。
それと魔力。シェリルの魔力は心地よかった。
魔力の相性なんて、今まで気にしたこともなかったし、魔力が多いのは家族とか同じ魔術師の野郎ばかりだったので、ちょっと衝撃だった。
あの感覚が忘れ難い。
どうしよう、気がつくとシェリルを見てしまう。
シェリルはあまり感じてないようだから、これは魔術師特有の執着というやつなのだろうか・・・?
浄化師のクリストファーが魔力の相性は抗い難く惹きつけられると言っていたが、これか?これなのか?
現に奴は異世界から来た渡り人と結婚までしている。
膝の上に乗せて、食事も自ら食べさせるくらいで、ドン引きした覚えはあるが、本人はお構いなしだ。
さすがクリストファー。
渡り人もそれが普通と言われたら、そうなのかな?くらいにしか思っていないようだし。
余計な事言うなよ、って目で制された覚えがある。
その時はえ~、ぐらいしか思わなかったけど・・・
ちょっとわかる。
バートンに迫られたところを助けてもらった吊り橋効果なのかも?と、思わないでもないが、とても惹かれている自分がいる。
どうしよう、どうすれば良い?
などと思ってたら、就業時間が終わってしまったのだった。
離れ難いし、腹は減ったしでシェリルを見たら、いつも通り、心得た、とばかりにお供するっていうから、グロリア亭まで来たのだった。
***
今日は金曜日なので、グロリア亭には混んでいた。
丁度カウンターの端が2席空いていた。
カウンターに近づいたら隣の男がシェリルをチラチラ見ていた。
私服のシェリルは騎士だなんて誰も思わないくらいの美人だから、見たくなる気持ちはわかるが、気に入らない。
シェリルが普通に男の隣に行こうとしたから、彼女を端にして俺がその隣に座った。
ツマミを頼んで、チビチビ飲んで食べていたら、話の流れで俺のことが苦手だった言われた。
えぇー・・・ちょっとショック、と思ってたら、シェリルがフォローする様に言った。
「ほとんど話したことないし、近寄りがたい印象しかなくて。でも、今は全然違いますよ、ホントに。話しやすくって、何というか・・・居心地良いです」
「居心地良い・・・」
そうか、シェリルも俺といるのは嫌なわけではないって事か。
苦手と言われた時はどうしようかと思ったが、希望が見えた。
だとしたら、確かめてみるしかないかもしれない。
護衛はいつ外れてもおかしくないのだ。
時間はあまり無い。
「ママさん、二階って空いてる?」
「一番奥の個室なら空いてるわよ」
「じゃあ、そこ借ります。シェリル、悪いけどちょっと移動しよう。ここ落ち着かない」
「?わかりました」
首を傾げるシェリルの腕を取って二階にさっさと上がって行く。
つまみを持ったママさんも後からついて来てくれた。
「じゃ、ごゆっくり~」と、ママさんがバタンと扉を閉めた。
「ソファ座ろっか」
「はぁ」
若干戸惑い気味のシェリルを促して、並んで座る。
何回も来たけど、個室に来たのは初めてだったな。
そこで、ハタと気がついた。
勢いでここまで来てしまったが、どうしよう。
魔力の相性確かめたいとか言ったら、気持ち悪がられるかな?
でも、シェリルが気になるのは確かだし・・・
ぐるぐる考え始めたら、どうして良いかわからなくなってしまった。
そういえば今まで、相手が自分をどう思うか気になる、なんて考えた事も無かった。
「アシュレイさん?どうしたんですか?具合悪くなっちゃいました?」
シェリルが心配気に顔を覗き込んで来た。
若草色の綺麗な瞳に自分だけを映しているのを見て、俄にドキドキして来てしまった。
おいおい、どうした俺、中等部の学生じゃ無いんだぞ!!
真っ赤になってあうあうしていると、ますますシェリルは心配そうに顔を寄せて来た。
「本当に変ですよ。色々あったし、熱でも出たのかな?」
そっとおでこをつけて、熱まで測られてしまった。
接触したおでこから微量ながら魔力を感じる。
うぅ、やっぱり心地良い。
「熱は無いなぁ」
そう言いながら離れようとするのを思わず腕を回して、ギュウっとシェリルを抱きしめてしまった。
あ、俺のバカ!
「!!!」
シェリルは突然のことでびっくりしてる。
当然だ。でも、離せない。
「ごめん、シェリル。ちょっとだけこのままでも良い?」
それだけ言うと、やっとわかった。
そうか、俺、いつの間にかシェリルを好きになってたんだな。
魔力に惹かれるのも納得だ。
そうっとシェリルを離すと、シェリルがびっくりした顔をしてこっちを見ていたが、急に心配そうな顔になると
「アシュレイさん、私に縋りたくなるほど辛かったんですね。そうですよね、バートンさんは仲良しでしたし、ショックも大きいですよね」
わかります、と頷きながら納得していた。
おい、ちょっと待て。
何故今バートンが出てくる。
「いや、そうじゃなくて・・・」
「良いんですよ。薄々みんなとの距離怪しいなって思ったのに、言うの遅かったですよね、すみません」
「だから、そうじゃなくてって。おい、みんなって何だみんなって?」
「?みんなですよ、え?アシュレイさん、研究所の人達にモテモテなの気がつかなかったんですか?」
はああああああ!?
何だそれ、何だそれ!?
バートンみたいに思ってる奴がまだいるってか!?
せっかく、シェリルへの気持ちに気が付いたのに、そのシェリルから恐ろしい事実を聞かされ、呆然としてしまった。
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