【完結】うちの魔術開発研究室室長さまがモテ過ぎています(主に男に)

いかくもハル

文字の大きさ
26 / 48

もう限界!!

しおりを挟む
~シェリル~

う~ん、どうしたもんかな。
どうやって説得したら良いんだろう。
その様子をジッと見ていた妖精王レギオンは少し眉を寄せた。

「シェリルから、他の人の魔力を感じるな。誰かと魔力の交換を行った?」

言われてハッと気がついた。
そうだ、アシュレイさんに口移しで解毒剤飲ませたんだっけ?

「少しですけど。人助けだったので」
「なるほど。良かった。まだシェリルの魔力は誰とも混ざってなくて純粋に保たれたままだから、こちらに連れて来れたんだよ」
「魔力が混ざるとダメなんですか?」

そう言うと、少し不愉快そうになった

「完全に混ざってしまうともう妖精には戻れないからね。普通、取り替えっ子は、幼い子供のうちに見つかる事が多いんだけど、シェリルの場合は随分と遅くなってしまった。けど、間に合って良かったよ」

レギオンはニコリと笑った。

えぇぇ、成人だよ、ド成人。もう見逃してくれよ。
私の年齢なら、結婚してる人も多いからね。
そんな事なら昨日アシュレイさんとがっつりヤッておけば良かった。と言っても後の祭り。

うぅ、アシュレイさん、会いたいよ~。
もう会えないのかな・・・
涙が滲んでくる。

「そんな悲しそうな顔しないで、シェリル。そうだ、何か飲む?お腹空いた?何かも持って来させよう」

レギオンが手をパンパンと叩くと、扉が開いて、ふよふよと浮きながらお茶とお茶菓子の乗ったトレーがやって来た。
ギョッとしてると、レギオンがフフフと笑う。

「そうか、シェリルはまだこの子達が見えてないんだね。私は魔力が多いから実体化出来るけど、普通の妖精達では魔力が弱いからね。見えるようにしてあげよう」

スルリと隣にやって来ると、私の両頬を包み、そっと左右の瞼にキスを落とした。
この人、見かけの割に素早くて、拒否する間もなく瞼とはいえ知らない人のキスを受けてしまった。うーむ、不覚。

瞼がほんのりと温かくなって、すぐに元にもどった。
違和感はない。

「妖精王の祝福だよ。これで人の世では見えなかったものまで見えるようになった」

言われてそっと瞼を開くと

「えっ!!!」

部屋の中は妖精王レギオン以外に、絵本の中でしか見た事無いような、小さな羽のついた可愛らしい妖精達があちらこちらに飛び回っていた。
キラキラ光る小さいのはこの子達だったんだ。

珍しいからキョロキョロしていると、小さな妖精達は私の周りに寄って来てくれた。

「シェリル、おかえり」「おかえり」「シェリル~~」

可愛らしい声で口々に言ってくれる。
ううう、おかえりと言われると、帰りたいとは言い難い。
ふと気がついた。

「あの~、レギオンさん、取り替えっ子は小さい子のうちに見つかってこちらに来るんですよね、私では大分育ちすぎなんじゃ無いですか?」

レギオンはふぅ~とため息をついた。

「そうなんだよねぇ、成人して妖精の国に来た人は居なくて・・・でも、我々は歓迎するよ」

大分困ってるじゃないかっっっっ!!
思わず立ち上がって大声で言ってしまった。

「それなら連れて来なくて良かったじゃないですかっ!私、結婚する事が決まってたんですよ。私の了解なしに連れて来たら、誘拐ですからね!誘拐!!」

急なことで混乱してたが、怒りが上回って爆発した。

妖精達はびっくりして、慌てたようにレギオンの後ろに隠れてしまった。
レギオンも少しびっくりしてこちらを見上げている。
何、びっくりしてるのさ、当然だよ。
これだから常識の通じない奴は困る。

「帰りたいんです。いえ、帰してくれないと困ります。帰さないなら暴れます」

ゆっくりと、一言一言区切るように、レギオンを睨みつけながら言った。

今までは、気まぐれな妖精達を怒らせたら二度と戻れないかもしれないと思って、下手に出てたのだけど、もう限界。
決めたっ!!暴れてやる。ゴリラと言われたこの私、存分に暴れてやるぅぅぅ!!
魔力がどんどん高まっていく。
グググと拳を握りしめた。

レギオンの顔が引き攣っていた。


その時、城の外から、ドォーンという音が聞こえた。
物凄い質量の魔力を感じる。
何事と、レギオンと二人で腰をソファから腰を浮かせた。
しばらくして察知したこの魔力ってまさか・・・魔王!じゃなくて、クリストファーさんっっ!?

あの人、妖精の国まで侵略出来るの!?さすが、人外。
あ、でもクリストファーさんがいると言うことは・・・


「シェリル!!!」

会いたくて会いたくてたまらない人の声がする。

「アシュレイさんっ!!」

声のする方にダッシュすると思いっきり抱きついた。

「ぐぇっ」

もうそこはヒーローらしく受け止めてよぉ・・・










しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える

たま
恋愛
次元を超えつがいに恋焦がれるストーカー竜人リュートさんと、うっかりリュートのいる異世界へ落っこちた女子高生結の絆されストーリー その後、ふとした喧嘩らか、自分達が壮大な計画の歯車の1つだったことを知る。 そして今、最後の歯車はまずは世界の幸せの為に動く!

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

裏庭係の私、いつの間にか偉い人に気に入られていたようです

ルーシャオ
恋愛
宮廷メイドのエイダは、先輩メイドに頼まれ王城裏庭を掃除した——のだが、それが悪かった。「一体全体何をしているのだ! お前はクビだ!」「すみません、すみません!」なんと貴重な薬草や香木があることを知らず、草むしりや剪定をしてしまったのだ。そこへ、薬師のデ・ヴァレスの取りなしのおかげで何とか「裏庭の管理人」として首が繋がった。そこからエイダは学び始め、薬草の知識を増やしていく。その真面目さを買われて、薬師のデ・ヴァレスを通じてリュドミラ王太后に面会することに。そして、お見合いを勧められるのである。一方で、エイダを嵌めた先輩メイドたちは——?

処理中です...