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報告とざわつく人々

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~アシュレイ~

朝食後に兄貴に連絡を取り、丁度空いていたので、報告がてら兄貴の家に行き、夕方に帰って来てシェリルとまったりとうちで過ごした。
良かった。兄貴も義姉さんも、子供達までシェリルとの結婚を喜んでくれた。
反対される事は無いだろうと思っていたが、やはり嬉しかった。

夕飯はシェリルが任せてくれというので、任せたが、彼女は意外というか、料理が上手かった。
聞けば、忙しい母や姉に代わり、ずっと父とシェリルがご飯担当だったが、父親も忙しくなってからは、シェリルが作っていたらしい。

ぱぱっと手際よく見事に作ってくれた。しかも相当美味い。
 

夕飯を食べてから遅くならないうちに、と送って行った。
サマンサさんに、「あら、そのまま帰って来なくても良かったのに」と言われたので、先に言っといてくれよ、と正直思った。
だったら帰さなかったのに、なんてな。

ずっと一緒にいたから、離れるのは名残惜しい。
明日会えるんだけどな。仕事で一緒になるのとはやはり違う。

あ、仕事といえば・・・魔術研究所のみんな、シェリルと俺の魔術が混ざってるのわかるよな、みんな魔術師なんだから。
う~ん・・・ま、いいか。いずれバレる事だし、結婚するし。
俺たちが堂々としてればいいだろう。
そう思って、翌日、普通通りに出勤したのだった。
 


職員たちと挨拶を交わし、執務室に入る。
シェリルはまだ来ていなかった。
コーヒーでも淹れるかと、備え付けの給湯室に入った。

扉の開く音がして、給湯室から顔を出すと、シェリルが来たところだった。

「おはようございます」
「おはよう。コーヒー飲む?」
「いただきます」

給湯室にやって来たので、カップを渡す。

「一息ついたら、所長のところに報告に行くからな」
「例の妖精の件ですね」
「あと、結婚報告もな」
「そ、そうですね」

真っ赤になって恥ずかしそうにしてるのがめちゃくちゃ可愛い。
危ない、うっかり抱きしめそうになってしまった。
どうも、魔力混ぜ合わせてから、俺の理性はユルユルになってるな。
いかんいかん、自重しないと。




シェリルと所長室に向かう。
すれ違う奴らがギョッとして二度見して来るが気にしない、と思ってたらシェリルが気にした。

「何ですかね。さっきからびっくりしたように見られてません?」
「そうか?シェリルが可愛いからじゃない」

しれっとそう言っておく。

「なっっ!何言ってるんですか!そんなことサラッと言うキャラでしたっけ?」
「ははは。本当のことだろ」

もう、とシェリルにパシンと叩かれ、所長室に着いた。
昨日、所長には軽く報告してあり、詳しくは今日の朝に話すとあらかじめ言っておいた。

「おはようございます。所長、朝早くからすみません」
「待ってたよ。シェリルさんも掛けて」
「はい。失礼します」

所長は座るなり、ニーッコリと笑って

「うん、よく混ざってる。余程相性が良かったんだね。おめでとう」
「ありがとうございます」

俺も負けじとニーッコリと笑って返した。
シェリル一人が何故わかる!?とばかりに衝撃をうけていた。
そりゃ魔術師だから。魔力の流れに敏感だから。
宥めるように笑って隣に座ったシェリルの背中をポンポンと叩く。
それをみて、通りすがりにびっくりされていた理由がわかったのだろう。

「あ、それでさっき廊下でみんなに見られたのか・・・」
「魔術師は魔力に敏感だからね。境目がないくらいに混ざってたらわかるよ」

所長がおっとりと説明してくれた。

「うぅっ、そうなんですね・・・」

そう言うと、シェリルが下を向いてしまった。
一日中あの視線を浴びるとなると居た堪れなくなったのだろう。

「事情があったんだから仕方ないだろ。変に意識するより、堂々としていた方が良いぞ」
「はぁ~、そうですね。大丈夫です。切替は得意なんで」

背筋をピシリと伸ばして俺に向かって頷いた。
俺も頷き返すと、所長に向かい、一昨日の妖精界にまつわる顛末を事細かに話した。
シェリルは妖精王レギオンとのやり取りを話す。

所長は眉根を寄せたり、びっくりして目をまん丸にしたり、コロコロと表情を変えながらも、特に言葉を発せずに全て話を聞き終えた。
最後に俺たちが結婚することも伝えておいた。



「なるほどねぇ~。ここ150年ばかりは妖精界と人間界の繋がりは無かったからね。かなり貴重な話だったよ」
「昔は交流してたのですか?」
「そうだね。妖精王に気に入られて、妖精眼を持つものもいたようだ。取り替えっ子だって、もっと多かったはずだよ」
「私は大人になっていたから帰って来れましたけど、普通は子供のうちに連れて行かれて戻ってこれなかったのでしょうか?」

それを聞いた所長は沈痛な顔になって言った。

「取り替えっ子の多くはどこか普通の子と違うから、虐待されていたり、捨てられてしまったりする事が多かったんだ」
「普通と違う、とは?」
「魔力が人より多かったり、力が強かったり、走るのが早かったり。小さい頃から人と違う部分があって、普通の家庭では中々馴染めないんだよ」

それを聞いて、俺とシェリルは顔を見合わせた。

「あの・・・私、全て当てはまりますけど。と言うか、うちの家族、父以外は全て当てはまりますけど」
「うちなんか、家族全員当てはまるぞ」
「はは、そうだね。たまたま、な家庭に生まれたので目立つ事なくすんなり受け入れられたから、大人になるまで気がつかなかったんだろうね。幸せに暮らしている子は連れて行かれないらしいから」
「では、何故シェリルは連れて行かれたのでしょうか?」
「う~ん・・・そこはよくわからないけど、たまたま見つかったから、思わず連れて行ってしまったのかねぇ」

所長も首を捻っていた。
全く傍迷惑な!!まぁ、妖精のすることだから、特に深く考えることもなく連れて行ったのだろう。

「魔術師会としては妖精界とは積極的には関わりを持たないようにするつもりだから、シェリルさんをどうこうするつもりは無いから安心して。国には報告しなくてはならないから、私からしておこう。それより二人ともおめでとう。式はいつ頃予定なの?」
「ありがとうございます。色々お手数かけます。式は教会の空きがあればすぐにでも」
「準備が大変だね。では何かあればまた聞くことはあるかもしれない」
「よろしくお願いします」

俺たちは所長室から出て戻ることにした。
良かった。もっと大事になるかと思ったが、ずっと妖精界とは関わって来なかったからな。

二人で歩いていると、やはり周りがざわついている。
俺もシェリルも堂々と歩いていた。

「ちょっと、ちょっとアシュレイさんってば」

物陰から手招きする人がいる。見ると義姉さんだった。
何してるんだあの人は・・・


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大変お待たせして申し訳ありません。
来年2月まで家族の受験があったり、舞台に立つ機会があって忙しくなって来たので中々更新が捗らないんですけど、書ける時に更新して行きたいと思いますので、気長にお待ち下さい。

いかくもハル













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