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7章
3 捜索
しおりを挟む照明もつけず、薄暗い部屋の中でリアムは帰らぬシロウを待ち続けていた。
警察に連絡しようかともおもったが、シロウが自分の意思で戻ってこない状況では、警察に相談しても詮無いことだと思い、ただただ鳴らない携帯を握りしめていた。
部屋に据え置かれた時計を見ると、時刻は既に12時をまわっている。
眠れる気がしないと、このままソファで一夜を明かす腹づもりを決め、明日からどうやってシロウを探すべきかと虚空を眺めていると、今夜はもう鳴らないだろうと思っていた携帯が着信音をたてた。
シロウか!?と慌てて携帯を見ると、着信の画面はレナートであった。
淡い期待を裏切られて、「何の用事だ?」と「なんだお前か」という両の意味を込めて「なんだ……?」と携帯に出る。
『なんだよ、その態度は』
確かにその通りである。夕方から夜にかけて、捜索に手助けをした相手に対して取る態度ではない。
リアムは軽く咳払いをすると、「すまない」と一言謝りを入れて先を促す。
『オーガミ君、見つかったよ』
レナートは事もなげにそう言った。
あまりの軽い物言いにリアムは一瞬聞き間違いかと思い、「あぁ、そうか」と電話を切りそうになったあと、電話口に大声で「見つかった!?」と叫んだ。
『だから、オーガミ君が見つかったんだって。道すがら詳しく説明するから、まずは車に乗って彼の部屋まで来てくれ』
言われたリアムは取るものもとりあえず、部屋を出ると、フロア専用のエレベーターに乗りこみ、駐車場へと向かった。
ホテルから出ると、夕方とうってかわって道に車は少なく、スムーズに流れる。
車中も切らずにいた電話の先のレナートによると、シロウのアパート付近、茂みの影に狼がいると手助けを頼んだ知り合いの人狼から連絡が入ったらしい。この街中に狼である。シロウかどうかは別にして、確実に人狼だ。
だが、シロウを知らないその彼に言葉を交わせない狼の姿のままでは、その狼がシロウかは定かではなく、レナートも家から向かっている途中とのことだった。ちょうど同じ頃に落ちあえると言う。
リアムは急く気を鎮め、運転に集中するとハンドルを握りしめ、アクセルを踏む足に力をこめた。
リアムが車を停めようとフロントガラスの先を見やると、ちょうど一台の車がシロウのアパート前の道路に停まるところだった。
リアムはその車の前まで車を寄せて止まると、止めた車からレナートが降りてくる。
リアムも急ぎ車を降りると辺りを見回した。
「シロウはどこに?」
そう問いかけるレナートは右手のひらをリアムの前に突き出し、左手で携帯を持って誰かと話している。
「どの辺り?──うん、うん……わかった。すぐ行く」
携帯を耳から外したレナートは「こっちの茂みだ」といって、踵を返して小走りに駆け出す。
リアムは何も言わずに後を追った。
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