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7章
4 再会
しおりを挟む街灯も少ない、アパートの入り口から少し離れた場所に一人佇む人影が見える。
「ジェイミー!」
そう声をかけて、レナートは片手を上げた。
「教授!こっちです」
ジェイミーと声をかけられた青年(?)は手を振り、こちらを招く。
ふと風に乗って、夏のロスには場違いな桜の香りが漂う。気づいたリアムはあと数十メートルの距離を駆け出し、レナートを追い越して近づいた。
シロウのほうもリアムの訪れを感じていた。
顔もあわせたくないと思っていた相手の匂いのはずなのに、その甘くスパイシーな香りに胸の中の狼が尻尾をふって喜んでいるのがわかる。
たった数時間前に別れたばかりなのに、ほんの数週間前に出会ったばかりなのに、ずいぶんと待ち焦がれていた相手に出会ったような感覚に、シロウは思わず立ち上がり、身を隠した茂みから躍り出る。
「シロウ!」
そう呼ばれて、シロウは後ろ足で地面を蹴り上げると、勢い任せにはリアムに飛びついた。
大型犬より少し大きいかというシロウの狼姿でも、怯む事なく、リアムはそのがっしりとした体でシロウを受け止める。
あんなに会うことを躊躇ったのに、こうしてリアムの腕に抱かれ、その香りに包まれると、とても安心すると同時にそんな自分に少し驚く。
「シロウ……良かった」
そう言うとリアムは優しくシロウの背中を撫でた。
その声に、手の温もりに、自分の身を案じてくれていたこと、見つけられた安堵が滲んでいて、シロウの胸を締めつけた。
絆されているとは思う。よくわからないが自分の中の狼はリアムの胸の中にいることを心底望んでいるようだった。
人間のシロウの意識は狼になっていることで、押さえつけられているのだろうか、あんなに会うべきではないと、猜疑心に満ちていた自分の理性は少しどこかへ行ってしまったようだ。気づいたら、リアムに抱きついていた狼の自分は千切れんばかりに尻尾を振っていた。
「感動の再会が果たせたようで、良かったよ」
レナートの冷静な声が、二人の熱烈な再会にほんの少し水を差す。
リアムはシロウを地面に下ろすと、その場で片膝を立てて、しゃがみ、シロウ背中に手を置いた。
「ありがとう、シロウを見つけてくれて」
そう言って、前の二人を見上げる。
シロウを見つけけてくれたという人狼は見たことのない男だった。かなり、若い。
「本当に見つかってよかった。オーガミ君を見つけたのは彼だ。ジェイムズだ」
「ジェイムズ・マーフィーです。どうも」
レナートに紹介された人狼が軽い自己紹介をして、一歩近づき、自分より強い人狼に対しての尊敬の証に頭を傾けて首すじを晒しながら、右手を差し出してきた。
リアムはシロウの背中をひと撫でした後、立ち上がり、右手を差し出し握り返す。
「リアム・ギャラガーだ。本当にありがとう。どうお礼をしたものか……」
そうリアムが言うと、足元のシロウがピクリとして、「くぅーん……」と鳴き声をあげる。
「とりあえず、落ち着ける場所に行ったらどうかな?」
「そうだな。このまま狼のシロウをそのままにはして置けない」
レナートにそう促されて、一同はとりあえずリアムの部屋へと引き上げた。
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