社畜モブの俺、異世界転移したら「Sub」っていわれたんだけど。え、「Sub」って何ですか?

鉾田 ほこ

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2章

23  部屋の外

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 部屋から出ることもなく、三日が経過した。
 その間もメイド長さんを含めて様々な人たちが健介の世話をしてくれる。時間になったら、食事が運ばれてきて、夜になったら風呂が用意され、毎日清潔で新しい洋服が用意されている。
 さすがに二日目の昼に、「サイベリアン様はお戻りにならないのですか?」と尋ねてみたものの、「申し訳ございません」としか返ってこず、状況はわからない。
 あまりにも暇すぎるので、「一度ハウスに戻って、サイベリアン様がお戻りになったら、またこちらに伺うのではダメでしょうか」と聞いてみるも、「サイベリアン様より、こちらにご滞在いただくように申し使っております」と返される。
 我儘を言って、この人たちに迷惑をかけてもいけないと思い、すごすごと引き下がるがあまりにも何もすることがない。
 元々社畜な健介は休みの日と言えば、疲労を癒すために寝ていたのだが、ここではそんなに寝ていられるほどの疲労も溜まっていない。まあ、心労は溜まっているが……。それだって普通の人からしたら贅沢な悩みで、健介が勝手に引け目を感じているだけだ。
 テレビも無ければ、ゲームもスマホもない。何かしていないと落ち着かないほど刷り込まれた社畜マインドが、この無為に過ぎていく時間に焦りを感じさせて急き立てる。
 食事の方はというと、初日の朝食を除いては与えられた部屋に持ってきてもらえていた。毎食あの部屋でメイドさんたちやコックさんたちに囲まれて食べてなくてよかったことは本当に幸いだった。ただ、毎食しっかりと届けられる食事の量はとても多く食べきれるものではなかった。そうでなくても、部屋から出ずに何もしていないのに腹が減るはずもない。
 ある意味健康的である意味不健康な日を丸二日過ごして、流石にこれ以上屋に閉じこもっているのもと思い、迷惑をかけない程度に部屋の外へ出たいと考え扉を開けた。

「?!」
 扉の前には騎士服を着た男の人が両脇に立っていて健介は驚いた。
「どうかしましたか?」
 と尋ねられて、予想外の状況に慌てて「あ、あの、外に出たい、のですが……」と若干しどろもどろに答える。
 健介は扉の外に誰か人が立っているとは全く想像もしていなかった。何せ、前回この屋敷を訪れた際には扉の前には誰もおらず、誰に見咎められることもなく、屋敷の外に出てたのだ。
 前に部屋から出た時は明け方の時間だったし、昼間は人が立っていたのかもしれない。何のためかはわからないのだが。

「少し部屋でお待ちください。確認してまいります」
 右に立っていた騎士服の男性がそう言い残して廊下を早足で歩き去って、左に立っていた騎士服の男性にやんわりと部屋に押し戻されて扉を閉められる。
 健介は再び元の位置に戻ってきてしまった。
 この部屋には風呂もトイレも備わっており、食事は運ばれてくるので、部屋から出る理由はない。そういえば、親切心かメイド長さんが本を数冊用意してくれていたのだが、まともに読み書きのできない健介には無用の長物だ。
 いい加減に天井の装飾の数を数えるのにも飽きた。この部屋の景色以外ならなんでもいいからほかのものを見たい。それは……我儘だろうか……。

 しばらくして、部屋の扉がノックされる。「はい、どうぞ」と健介はいつもと同じように返事をした。そして、部屋へと入ってきたのはいつもと同じくメイド長さんだった。

「ケン様。外に出られたいということですが……。大変申し訳ございません。外出の許可は難しく存じます」

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