振り向いてください、シャノン王子。

夜のトラフグ

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chapter10 返り血が跳ねる

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 エレノアがその存在に気付いたのは、偶々運が良かったから、と言うほかない。

(……見られている?)

 視線を感じ、しばし注意を逸らしたあとさっと振り向くと、ちょうど刀を振り上げた暴漢と目が合ったのだ。

「そっ、祖国の仇! 覚悟おぉぉっ!」

 それをエレノアは、その場にあった剣を構えて無感情に受け止めた。ふいを付いたはずが呆気なく受け止められ、暴漢は唖然と固まる。
 それを、一太刀で殺す。

「なっ……ぐああぁぁ!」
「……」

 動かなくなった敵を見下ろしながら、ドサリとソファにかける。エレノアが返り血の掛かった上着を脱ぎ捨てるのと、騒ぎで人が駆け込んでくるのは同時だった。

「しょ、少将殿! これは……」
「大事ない。剣を向けてきたから、切った。片付けておけ」
「は、はっ……!」

 部下たちの目が、化け物を見るものになる。無理もない、正面から向かってもふいを突いても殺せない、正真正銘の化け物チートなのだから。

(……仕方ない)

 殺したことも。
 殺されることも。

 その力を、恐れられることも。

 護国の英雄なんて、国から一歩外に出ればただの人殺しでしかないのだから。


 恐々と様子を窺う部下たちをよそに、エレノアは立ち上がった。

「ひっ……!」
「……気晴らしに、歩いてくる」

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